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Amazon HealthLake の新機能により、次世代の画像ソリューションと高精度な医療データ分析が可能になります。

この記事は、”New Amazon HealthLake capabilities enable next-generation imaging solutions and precision health analytics” を翻訳したものです。

AWS では、クラウドで画期的なイノベーションを構築した Moderna、Rush University Medical Center、NHS などのお客様とともに、Day 1 からヘルスケアに投資してきました。公衆衛生分析ハブの開発から、医療の公平性と患者のアウトカム向上、わずか65日での新型コロナウイルスワクチン開発まで、お客様は機械学習(ML)とクラウドを利用して医療の最大の課題に対処し、より予測的で個別化された医療に向けた変化を推進しています。

昨年、我々は Amazon HealthLake のサービスを開始しました。これは、医療データをクラウドに保存、変換、クエリする専用のサービスで、個人または患者集団のヘルスデータを大規模に把握できるというメリットがあります。

本日、医用画像とデータ分析に革新をもたらす2つの新機能を HealthLake で発表できることを嬉しく思います。

Amazon HealthLake Imaging

医用画像データの規模と複雑さが増し続ける中、医療従事者は以下のような多数の課題に直面しています。

  • 放射線科医の数は毎年減少している中、医用画像データの量は過去10年間増加し続けており、世界中で毎年55億回を超える画像検査を行っています。
  • 解像度の向上と3D画像の利用増加により、より高度な画像検査が行われるようになったことで、検査画像の平均規模は過去10年間で2倍の 150MB に達しました。
  • 通常の医療システムでは、同じ画像データの複数のコピーを診療システムや研究システムに保存するため、コストと複雑さが増します。
  • データサイエンティストや研究者が高度な分析や機械学習によって重要なインサイトを引き出すのに数週間または数か月かかることがあり、このようなデータを管理するのは難しい場合があります。

こうした複合的な要因が意思決定を遅らせ、医療提供にも影響を及ぼしかねません。これらの課題に対処するため、Amazon HealthLake Imaging のプレビュー版を発表できることを嬉しく思います。これは、医用画像をペタバイト規模で簡単に保存、利用、分析できる HIPAA 対応の新機能です。この新機能は、診療ワークフローにおいて、どこからでも(Web、デスクトップ、スマートフォンなど)、高可用性で安全にアクセスできる医用画像を 1 秒未満で高速に取得できるように設計されています。さらに、標準化されたメタデータと高度な圧縮により、クラウド内の同じデータの単一の暗号化されたコピーから、既存の読影ビューワと分析アプリケーションを実行できます。その結果、HealthLake Imaging は医用画像ストレージの総コストを最大 40% 削減するのに役立つと推定されています。

HealthLake Imaging の立ち上げにパートナーと協力してクラウドネイティブソリューションの採用を加速させ、エンタープライズの画像診断ワークフローをクラウドに移行し、イノベーションを加速させることができることを誇りに思います。

Intelerad と Arterys は、HealthLake Imaging を活用して、次世代の PACS システムと AI プラットフォームのスケーラビリティ、そして表示パフォーマンスを向上させているローンチパートナーです。Radical Imaging は、HealthLake Imaging API に基づいて構築された OHIF や Cornerstone.js などのオープンソースプロジェクトを使用して、これまで前例のないクラウド対応の医用画像アプリケーションをお客様に提供しています。また、NVIDIA は AWS と協力して HealthLake Imaging 用の MONAI コネクタを開発しました。MONAI は、AI アプリケーションにモデルを開発して大規模に展開するためのオープンソースの医療 AI フレームワークです。

「 Intelerad は、医療における複雑な問題の解決に、常に注力してきました。同時に、お客様が成長し、世界中のより多くの患者に優れた患者ケアを提供できるようにしています。継続的なイノベーションの過程で、Amazon HealthLake Imaging の活用を含む AWS とのコラボレーションにより、ユーザーに比類のない規模とパフォーマンスを提供しながら、イノベーションをより迅速に進め、複雑さを軽減することができます。」

— Intelerad Medical Systems 最高製品責任者 AJ Watson

「 Amazon HealthLake Imaging を使用することで、Arterys はアプリケーションのパフォーマンスと応答性を大幅に向上させることができました。また、将来を見据えた機能強化の豊富な機能セットにより、画像データから将来を見据えた価値を引き出すソリューションを推進する利点と価値も提供できました。」

— Arterys 製品管理担当ディレクター Richard Moss

医用画像の可用性を高め、画像ストリーミングを利用する目的で HealthLake Imaging を利用しているお客様の中には、Radboudumc とメリーランド大学メディカルインテリジェントイメージングセンター(UM2ii)があります。

「 Radboud 大学メディカルセンターのミッションは、患者さんを中心とした革新的な医療の未来を形作る、そのパイオニアになることです。私たちは、機械学習アルゴリズムをより迅速に臨床医の手に届け、イノベーションを加速させるために、臨床医と研究者向けに Amazon HealthLake Imaging と共同で AI ソリューションを構築しています。」

— Radboudumc 画像診断分析グループ委員長 Bram van Ginneken

「 UM2ii は、アカデミアや産業界のイノベーター、オピニオンリーダー、サイエンティストらが連携できる場として設立されました。AWS との連携は、医用画像における AI 活用の限界を押し広げるという我々のミッションを加速するでしょう。Amazon HealthLake Imaging とスケーラビリティ、パフォーマンス、信頼性を兼ね備えた AWS との経験を活かして、次世代のクラウドベースのインテリジェントイメージングを構築できることを嬉しく思います。」

— UM2ii ディレクター Paul Yi

Amazon HealthLake Analytics

嬉しい 2つ目の機能は、Amazon HealthLake Analytics です。非常にハイコンテクスト、かつ複雑で多様な医療データが活用できるようになることは、患者に高度に個別化され、きめ細やかな診断と治療を提供する上で、とても有意義な進歩への鍵と言えます。

HealthLake Analytics は、組織間でデータを安全に共有し、数回クリックするだけで高度な分析と機械学習を実現できるため、個人レベルまたは集団レベルでの大規模で多様な医療データから簡単にクエリを実行してインサイトを引き出すことができます。これにより、複雑なデータエクスポートやデータ変換を実行する必要がなくなります。

HealthLake Analytics は、複数の異なるソース(診療記録、保険請求情報、ヘルスレコード、医療機器など)からの生の医療データを、分析と相互運用性に対応した標準形式にわずか数分で自動的に変換することができます。また、他の AWS サービスとの統合により、 Amazon Athena を使用して SQL を使用してデータを簡単にクエリしたり、データを共有および分析して高度な分析や機械学習を実現したりできます。Amazon QuickSight では、患者集団全体の治療ギャップ分析や疾病管理に役立つ強力なダッシュボードを作成できます。また、 Amazon SageMaker で多数の機械学習モデルを迅速、かつ効率的に構築してトレーニングし、再入院のリスクや治療方針の全体的な有効性などの AI 予測を行うこともできます。HealthLake Analytics は、何ヶ月ものエンジニアリングに掛かる労力を削減し、患者さんのためにベストを尽くすこと、つまり最善の医療を提供できるようにしてくれます。

結論

AWS の目標は、お客様が便利で個別化された、価値の高いケアを提供できるようサポートすることです。これにより、コラボレーションのあり方の見直し、データに基づく臨床上、およびオペレーション上の意思決定、個別化医療の実現、治療開発の迅速化、および治療費の削減が可能になります。

Amazon HealthLake のこれらの新機能により、私たちはパートナーとともに、HIPAA、GDPR、その他の規制に準拠しながら、クラウドで次世代の画像診断ワークフローを実現し、多様な医療データからインサイトを引き出すことが可能になります。

さらに、詳細を確認するには、 Amazon HealthLake AnalyticsAmazon HealthLake Imaging を参照してください。


著者について

Tehsin Syed は、AWS のヘルス AI 担当ジェネラルマネージャーであり、Amazon Comprehend Medical や Amazon Health などのヘルスケア AI エンジニアリングと製品開発の取り組みを率いています。Tehsin は、エンジニアリング、サイエンス、製品、テクノロジーを担当する AWS のチームと協力して、画期的なヘルスケアおよびライフサイエンスの AI ソリューションと製品を開発しています。AWS に勤務する前は、Tehsin は、Cerner Corporation でエンジニアリング担当副社長を務め、ヘルスケアとテクノロジーの両面から23 年間働いていました。

Dr. Taha Kass-Hout は、AWSの機械学習(ML)担当副社長 兼 最高医療責任者であり、Amazon Comprehend Medical や Amazon HealthLake などのヘルスケア AI 戦略と取り組みを主導しています。彼は Amazon のチームと協力して、新型コロナウイルス検査の科学、技術、規模の開発を担当しています。これには、Amazon が初めて従業員を検査するための FDA 認可も含まれており、現在は自宅での検査として一般に提供されています。医師でありバイオインフォマティシャンでもある Taha は、オバマ大統領の下で2期務めました。その中には、FDA の初代最高健康情報責任者の役職も含まれていました。この間、公務員として、彼は新しいテクノロジーとクラウド(CDC の電子疾病サーベイランス)使用のパイオニアとして、広くアクセス可能なグローバルデータ共有プラットフォームを確立しました。それらは研究者や一般市民が有害事象データを検索、および分析できるようにする OpenFDA と、PrecisionFDA(大統領精密医療イニシアチブの一部)です。

翻訳は Senior Business Development Manager 亀田と Solutions Architect 窪田が担当しました。原文はこちらです。