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どの AI ツールをどの FinOps ユースケースに使うか?
現在、FinOps プラクティショナーは増え続ける AI ツール群を利用できるようになりました。しかし、それぞれのユースケースに適したツールを組み合わせることこそが、プラクティスを加速させるか、不要な複雑さを持ち込むかの分かれ目になります。AWS は、AI ラインナップの各ツールを、それぞれ異なるコンテキストと異なる種類の作業に向けて設計しています。このブログでは、5 つのツールについての実践的な整理、それぞれをいつ使うべきか、そしてなぜそれが FinOps にとって重要なのかを説明します。
ここで重要なのは、ある仕事をこなせるツールと、専用のツールとの間には意味のある違いがあるという点です。AWS FinOps Agent は、Cost Optimization Hub および AWS のコストと使用状況データとのネイティブなインテグレーションを備えたフルマネージドソリューションであり、精選され、検証されたインサイトを提供します。このブログで説明されている他のアプローチは、追加の設定やデータ接続が必要であり、マネージドソリューションが持つ深さ、精度、運用面での即応性には及ばない場合があります。最適な選択肢を選ぶ際には、これらのトレードオフを自社の要件と照らし合わせて評価することが重要です。
FinOps プラクティショナーはどのような AI ツールを利用できるか?
- AWS FinOps Agent
- Amazon Quick
- Kiro
- Amazon Q(In Console)
- AWS DevOps Agent
それぞれのツールについて、その中核となる目的と理想的なユースケースを見ていきます。
AWS FinOps Agent
AWS FinOps Agent とは:コスト異常を根本原因まで調査し、組織全体のコストに関する質問に答え、すでに使用している Jira や Slack などのツール上に直接インサイトを届ける、エージェント型 AI ソリューション(現在パブリックプレビュー中)です。
FinOps Agent をいつ使うのか:
- コスト異常調査:コストのスパイクを関連付けて根本原因と責任者を特定し、オーナーチーム宛の Jira チケットまたは Slack メッセージを作成するのに役立ちます。
- 自然言語によるコスト問い合わせ:エンジニアが「先月支出が増えたのはなぜですか?」といった質問をして、FinOps チームの関与を必要とせずに、実際の AWS Cost Explorer データに基づいた回答を得られるようにします。
- 定期的なコストレポート:ステークホルダーごとに内容を調整したレポートを、そのままプレゼンテーションに使える形式(HTML、PDF、PPT)で、設定したスケジュール(日次/週次/月次)に従って生成します。
- 最適化の推奨事項:AWS Cost Optimization Hub と AWS Compute Optimizer から節約機会を取得し、エンジニアリングチームがすぐに着手できる Jira チケットとしてまとめます。
Amazon Quick
Amazon Quick とは:既存のデータソースやツールに接続する、AI を活用したデスクトップおよび Web サイトのコンパニオンです。FinOps にとっての価値は、プラクティショナーがターミナルに触れることもコードを書くこともなく、コストデータ、ダッシュボード、ワークフローに対する会話型のインターフェースを得られる点にあります。
コストデータに接続する方法は 2 つあります。Billing Cost Management MCP (Model Context Protocol) を介して AWS Cost Explorer やその他の請求 API に接続すると、状況に応じたリアルタイムの回答が得られます。一般的なチャットボットの応答ではありません。自社のアカウント、自社のデータ、自社の数値です。あるいは、複数の Payer を持つ組織で Amazon Quick dashboards (CUDOS/CID) を導入している場合は、Quick Spaces を使用してそこから支出データをクエリできます。CUDOS と組み合わせて Quick を使用する方法については、こちらのガイドを参照してください。結果が得られたら、それを Slack、メール、その他のツールに接続して、テキスト、PPT、または必要な形式で関連付けて共有できます。
Quick は、再利用可能なスキル(平易な言葉で記述できる、自動化された多段階のワークフロー)、インタラクティブなアプリ(計算ツール、モデリングツール、数秒で作成できるダッシュボード)、そしてスケジュール実行される監視(毎日のコスト異常ダイジェストを毎朝フィードに配信)をサポートしています。
FinOps で Amazon Quick をいつ使うのか:
- 「X はいくらかかりますか?」という質問にその場で回答(料金の確認、サービス比較、影響のモデリング)
- 複数の Payer をまたいだクエリ:実際の AWS コストデータに会話形式で問い合わせ(「今月と先月のコスト要因の上位 5 つ」)
- 手動で掘り下げる代わりに、Amazon Quick のダッシュボード上の数値について「なぜ」を質問
- スキル作成:アカウントのビジネスコンテキストを使用して、チームメイトからのコストに関する質問への回答を自動化
- 定期的なレポートの自動化:エグゼクティブサマリー、タグ付けコンプライアンス、チャージバックの配分
- その場で軽量アプリを構築(Savings Plan の損益分岐点計算ツール、予算バーンレートトラッカー)
- ステークホルダー向けコミュニケーションのドラフト作成:責任追及しないコスト通知、エグゼクティブサマリー、トレーニング資料
Kiro
Kiro とは:ユーザーと並んで自律的にコードの記述、読み取り、変更を行うエージェント型 IDE です。FinOps にとっての価値は、コーディングを高速化できることだけではありません。何かをデプロイする前に、開発ワークフローにコスト意識を組み込めることです。Kiro は、実装の時点でコストの問題を捉えてシフトレフトすることを支援します。そのために Kiro Cost Optimization Power が役立ちます。Kiro Power は、MCP、コストのベストプラクティスを含むステアリングファイル、最適化の機会を自動化するためのフックをまとめたものです。詳細は、動画「Kiro for Cost Optimization: Agentic AI for FinOps」をご確認ください。
FinOps で Kiro をいつ使うのか:
- Infrastructure as Code の構築または変更:Terraform または CDK で構築する際、作業を進めるうちに Kiro が高価なリソースの選択肢にフラグを立て、より安価な代替案(適切なサイズのインスタンス、Graviton、gp2 ではなく gp3)を提案します。
- コスト見積もりの生成:Kiro に IaC を分析させ、デプロイ前に毎月の予測コスト内訳を作成してもらうと、計画段階で想定外の出費に気づけます。
- Cost Optimization Hub の推奨事項をコードに変える:推奨事項を取得し、Kiro に変更(インスタンスのサイズ変更、ライフサイクルポリシーの追加、アイドルリソースの削除)をリポジトリへ直接実装させ、レビュー用にプルリクエストを作成させます。
- コード全体のリソースに一括タグ付与:ファイルを手動で編集する代わりに、コードベース内のすべてのリソースに一貫したコスト配分タグ付け戦略(コストセンター、プロジェクト、環境)を 1 回で適用できます。
- 出力がコード、設定、またはデプロイメントアーティファクトであるあらゆる技術的な FinOps タスクの自動化:タグ付けを強制するポリシー、コストガードレールとなるSCP、予算アラーム、または未使用リソース用のスケジュール実行されるクリーンアップスクリプトを作成します。
- 1 つのプロジェクトについて複数アカウントにまたがるコストをクエリ:Cost Explorer の請求ビューを使用して、支出を 1 つのプロジェクトに絞り込み、Kiro に数値の取得と要約、およびその数値に基づく対応を依頼します。
Amazon Q
Amazon Q(in the AWS Console)とは:AWS マネジメントコンソールに直接組み込まれた、生成 AI によるコスト管理アシスタントです。AWS への支出について自然な言葉で質問すると、分析、可視化、実行可能な推奨事項が得られるため、複数のツールを行き来する時間を削減できます。主な利点は、Amazon Q がお客様のアカウント内で動作するため、ワークロードのすべての要素とそれらの相互作用を把握できることです。
FinOps で Amazon Q をいつ使うのか
- コンソール内での根本原因のコスト調査:「先週、コストが増えたのはなぜですか?」と聞くと、Q が複数のソースから自律的にデータを収集し、仮説を検証し、変化の背後にある特定のサービス、アカウント、および使用量の要因を特定します。
- 節約機会の発見:Cost Optimization Hub と Compute Optimizer から、サイズ適正化、アイドルリソース、コミットメントベースの割引に関する推奨事項を 1 つの会話で明らかにします(例:「コスト最適化の機会として上位のものは何ですか?」)。
- オンデマンドのコスト見積もり:「ダブリンの Amazon Simple Storage Service (S3) に 1 PB を保管するにはどれくらいの費用がかかりますか?」といった料金と予測に関する質問に答えます。コンソールから離れずに構築前のコストモデリングを行えるため、この機能が役立ちます。
- セルフサービスのコスト可視化:Amazon Q が Cost Explorer のフィルターを自動更新できるようになったため、チャートやテーブルなどを動的に作成することも、Cost Explorer 経由で作成することもできます。
AWS DevOps Agent
AWS DevOps Agent とは:いつでも対応できるチームメイトとして機能するフロンティア AI エージェントです。本番環境のインシデントを自律的に調査し、オブザーバビリティスタック、デプロイパイプライン、コードリポジトリにまたがるシグナルを相互に関連付けることで根本原因を特定し、将来の問題を防ぐための改善を積極的に推奨します。現在は GA で、2 か月の無料トライアルがあります。DevOps Agent は FinOps にとどまりませんが、スキルとデータへのアクセスを提供することで、コストを意識した状態を保たせることができます。動画「AWS DevOps Agent for FinOps」をご確認ください。
FinOps で AWS DevOps Agent をいつ使うのか
- 自動インシデント調査:CloudWatch のアラームが発生すると、エージェントはすぐに調査を開始できます。そのため手動でのトリアージが不要になり、エージェントがログ、メトリクス、トレース、最近のデプロイを相互に関連付けて、根本原因を数時間ではなく数分で特定します。インフラストラクチャにサイズ適正化の変更を加えている場合は、DevOps Agent に使用状況への影響を監視してもらうことで、問題が起きていないかを確認できます。
- ダウンタイムのコスト削減:インシデントを 3〜5 倍速く解決することで、停止による収益や生産性への影響を軽減できます。これは多くの場合、組織内で追跡されていない最大のクラウドコストです。
- インフラストラクチャの推奨事項についてコストを念頭に置く:エージェントは過去のインシデントを毎週分析して改善を提案します。DevOps Agent に、コストも考慮すべき要素であると伝えておけば、最適化された改善案を探し、事後対応型から計画的な最適化作業へと支出をシフトするのに役立ちます。
まとめ:FinOps ペルソナに合った適切なツールを選ぶ
それぞれのツールが何をするのかを知ることと、特定の場面でどのツールを使うべきかを知ることは別のことです。下のグリッドは、6 つの FinOps ペルソナ(行)と 5 つの AI ツール(列)をマッピングしています。各セルには、適切なデータ接続を前提として、そのツールで使用するサンプルプロンプトが各ペルソナの視点から書かれています。クイックリファレンスガイドとして活用してください。自分の役割を見つけ、行を横に見ていき、各ツールが日常業務にどのように役立つかを確認しましょう。一部のツールは機能が重複していることに気づくでしょう。どのツールが最適かは、どこで作業しているか、何を作ろうとしているのか、そしてどれだけ深く掘り下げる必要があるのかによって決まります。
ペルソナ別の FinOps AI ツールのプロンプト
| ペルソナ | AWS FinOps Agent | Amazon Quick | Kiro | Amazon Q | AWS DevOps Agent |
|---|---|---|---|---|---|
| FinOps Practitioner | 「CRON 自動化を使用して、いずれかのチームの 1 日の支出が 30 日間の移動平均を 25% 超えたら通知してください。根本原因分析を行い、オーナーチーム向けの Jira チケットを作成してください。」Jira インテグレーションが必要です | 「フレームワークの進捗状況を追跡するために、タグ付けコンプライアンス、コミットメントカバレッジ率、およびチームレベルの導入指標を含む FinOps 成熟度の概要を作成してください。」 | 「毎週すべてのアカウントをスキャンし、チームの FinOps 成熟度を評価し、改善アクションプランを生成するタグ付けコンプライアンスの自動化を構築してください。」 | 「コミットメントカバレッジが最も低く、無駄が最も多いチームはどれですか?今四半期の FinOps 支援の重点分野を優先的に決めるのを手伝ってください。」 | 「チームが FinOps のベストプラクティスに従わなかったことが原因で発生した前四半期のインシデントを分析してください。FinOps 文化への投資のビジネスケースを構築するのを手伝ってください。」 |
| Engineering | 「過去 3 か月で最大のコスト要因は何でしたか?アーキテクチャを大きく変更せずにコストを節約するにはどうすればいいですか?」 | 「リソーストラッカーを構築してください。サービス別のデプロイあたりのコスト、環境別のアイドルリソースインベントリ、オートスケーリングの効率指標を含めてください。」 | 「コスト最適化の機会について、この Terraform モジュールをスキャンしてください。サイズが大きすぎるインスタンス、オートスケーリングが設定されていないもの、コスト配分タグが付いていないリソースにフラグを付けてください。タグ付けを自動修正し、コスト削減のためのアーキテクチャ変更を提案してください。」 | 「us-east-1 のどの Amazon EC2 インスタンスが 10% の CPU 使用率を下回っていますか?サイズ適正化による推定月間節約額はどれくらいですか?」 | 「オートスケーリンググループは、オフピーク時にオーバープロビジョニングになっています。CloudWatch のメトリクスを分析し、SLO の目標を維持しながら、スケジュールベースまたは予測に基づくスケーリングポリシーを推奨してください。」 |
| Finance | 「標準テンプレートを使用して、CFO 向けの PowerPoint ファイナンスレポートを生成してください。Slack 経由で毎月第 1 月曜日の午前 8 時に配信をスケジュールしてください。」Slackインテグレーションが必要です | 「ファイナンスレポートを設計してください:事業部別の毎月の実績対予算、予測精度の追跡、チャージバック/ショーバックビュー、請求書の照合状況。」 | 「毎月の CUR/FOCUS ファイルに基づいて、コストセンター、環境、ビジネスユニットごとにグループ化されたコスト配分レポートを生成してください。」 | 「第 1 四半期と第 2 四半期のサービス別の前月比コスト差異を、連結アカウント別に表示してください。20% を超える差異を強調表示し、承認された予算基準を超える差異があればフラグを付けてください。」 | 「インフラ支出をサービスの信頼性指標と関連付けてください。投資不足による財務リスクを定量化してもらえれば、インシデント関連の費用に備えて正確な予算準備金を積むことができます。」 |
| Product | 「今月、ML 推論コストが 40% 増加した理由は何ですか?支出が当社の戦略的投資の優先事項と一致しているかどうかを判断できるように、製品機能とユーザーセグメントごとに分類してください。」 | 「アクティブユーザー 1 人あたりのコストの傾向を、6 か月にわたって製品ラインごとにビジュアライゼーションで示してください。ユーザー 1 人あたりの収益と重ね合わせ、ユニットエコノミクスの観点でどの製品が改善または悪化しているかを示してください。投資の優先順位付けに役立てます。」 | 「新機能リリースのコストモデルを作成してください。1 万人、5 万人、10 万人のユーザー規模でのインフラストラクチャコストを見積もり、各規模での ROI を示すビジネスケース文書を生成してください。」 | 「過去 90 日間で product:ProdA とタグ付けされたリソースの総費用はいくらですか?ユーザーあたりのコストを計算してください。当社の価格モデルがビジネスケースを裏付けていることを検証できます。」 | 「ProdA のコストパフォーマンス比を評価してください。コンピューティングに 20% 多く投資した場合、信頼性の向上はどのくらい見込まれますか?」 |
| Procurement | 「月額 5,000 ドル以上の節約額で絞り込んだ最適化の推奨事項を見せてください。次のベンダー契約交渉に使用できる調達概要を作成してください。」 | 「ベンダーコミットメントのポートフォリオダッシュボードを作成してください。すべてのテクノロジーカテゴリにわたって追跡できるようにしてください。」 | 「MCP で現在の Savings Plans と RI ポートフォリオを問い合わせてください。90 日後に期限が切れる契約を特定し、更新シナリオをモデル化し、レバレッジポイントを含む交渉概要を作成してください」AWS Billing and Cost Management MCP サーバーインテグレーションが必要です | 「現在のコミット済み支出レートをオンデマンド料金と比較してください。ベンダー交渉に役立つ情報として、当社が過剰にコミットしている箇所とカバレッジにギャップがある箇所を特定してください。」 | 「特定されたリソースに基づいてインスタンスの一覧を作成してください。Graviton または Spot インスタンスの恩恵を受けるインスタンスファミリーとリージョンはどれですか?」 |
| Leadership | 「毎日午前 8 時に Slack のメッセージを送り、昨日の支出と戦略的予算、そして経営陣の注意が必要な異常を含めてください」 | 「すべての BU のクラウド ROI、コスト効率比、単価の傾向を示すエグゼクティブスコアカードを作成してください」 | 「自動化された経営層向けアラートシステムを構築してください。予算の 80% に達したときにマネージャーに通知を送り、どの取り組みが支出に影響を与えているかを伝えてください。」 | 「戦略的な概要を教えてください。12 か月間の AWS 総支出の傾向、次の四半期の予測、成長を牽引する上位 3 つのサービス、そしてクラウドへの投資と収益の伸びの相関関係です。」 | 「戦略的リスクレポートを生成してください。当社のインフラ投資がビジネスの優先事項と一致していない箇所に焦点を当ててください。」 |
結論
最も成果を上げている FinOps プラクティショナーは、AI ツールの機能を成果に合わせて選び、ビジネス価値が確実に提供されるようにしています。今いるところから始めましょう。コストのスパイクを手動で調査するのに何時間も費やしている場合は、AWS FinOps Agent を試してみてください。ステークホルダーからの「X はいくらかかりますか?」という場当たり的な質問に追われているなら、コンソールの Amazon Q を案内するか、Amazon Quick を設定してください。開発者がコストガードレールなしでリソースをデプロイしている場合は、Kiro から始めてもらいましょう。そして、既製の選択肢のどれも自社独自のワークフローに合わない場合、それがまさに Amazon Bedrock の出番です。
FinOps を取り巻く AI の状況は急速に進化しています。早い段階で実験に取り組むプラクティショナーこそが、人員を増やさずに影響力を広げられるようになります。これらのツールはすべて価格体系が異なるため、使い始める前に必ず確認してください。完璧なタイミングを待たないでください。小さく始めて、早く学び、繰り返してください。まずは、このブログの各所でリンクしているツールを見てみてください。また、より実践的なコスト最適化のガイダンスについては、「The Keys to AWS Optimization」を参照してください。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの加須屋 悠己が担当しました。原文はこちらです。