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Kiro で Amazon Connect AI エージェント開発を加速
はじめに
Amazon Connect の AI エージェントを構築する際、開発者はお馴染みの課題に直面します。それは、厳しいスケジュールの中で複雑なインテグレーション要件に対応しなければならないことです。複数のバックエンド API の接続、堅牢なエラーハンドリングの実装、リアルなテストデータの生成、複数サービス間のデバッグ、これらすべてをコード品質と一貫性を保ちながら進める必要があります。10〜15 の API を統合する概念実証 (PoC) では、経験豊富なチームでも 2〜3 週間かかることも珍しくありません。バックエンドシステムに直接アクセスできず、リアルに動作するモック実装を作成しなければならない場合では、複雑さはさらに増します。
Kiro はこの状態を変えます。AI コーディングアシスタントの Kiro はシステムアーキテクチャ全体を理解するエキスパートのペアプログラマーとして機能します。AWS Lambda 関数の本番品質のコード生成、Amazon DynamoDB スキーマの設計、MCP ツールスキーマの作成、Amazon CloudWatch Logs の分析による問題特定まで、コードベース全体の一貫性を保ちながら対応します。AI を活用したこのアプローチにより、通常数週間かかる手作業のコーディングを数日に短縮できます。
本記事では、Kiro を使って 15 のバックエンド API を備えた Amazon Connect AI エージェントをわずか 3 日間で構築した方法を紹介します。対話型の開発と、Kiro による CloudWatch ログの自動分析・問題修正の組み合わせで、野心的なスケジュールでどのように高速イテレーションを実現するかを解説します。
課題: API 仕様から動作するエージェントへ
このプロジェクトは一般的なシナリオから始まりました。お客様は複雑なカスタマーサービスのワークフローを処理できる Amazon Connect AI エージェントを必要としていたのです。要件は Excel スプレッドシートに記載された 15 の API 仕様として届きました。各行にはエンドポイント、パラメータ、期待されるレスポンス、ビジネスロジックが記述されていました。これらの API は、認証とプロファイル検索、検索と取得操作、予約の変更とキャンセル、支払い処理と検証、ドキュメントの生成と提供、テストとデータ管理のための管理機能など、カスタマーサービス業務の全領域をカバーしていました。
ユースケースは包括的でした。顧客は音声で AI エージェントとやり取りし、エージェントはエンドツーエンドのワークフローを完了するために 15 の API すべてを横断的に呼び出す必要がありました。たとえば、顧客が認証を行い、既存の予約を検索し、予約を変更し、差額を計算し、支払いを処理し、確認書類を要求する、これらすべてを 1 回の会話で行います。AI エージェントはコンテキストを理解し、どの API / ツールをいつ呼び出すかを適切に判断し、エラーを適切に処理し、やり取り全体を通じて自然で有用な応答を提供する必要がありました。
さらに難しかったのは、お客様の開発環境やテスト環境にアクセスできなかったことです。バックエンドシステムはまだ開発中でした。つまり、既存の API に AI エージェントを接続してテストを開始するだけの方法では実現できません。リアルな API 動作をシミュレートし、複数の呼び出しにまたがって状態を維持し、Excel に記述された仕様通りのビジネスロジックを正確に反映し、レスポンスを生成できる、完全なモックバックエンドが必要でした。
タイムラインも厳しいものでした。動作するデモを 3 日間で納品する必要がありました。その間に、モックバックエンドアーキテクチャの設計と実装、15 の API すべての Lambda 関数の作成、リアルなテストデータを含むデータベースの設計と投入、動的なレスポンス生成のための Amazon Bedrock 統合、シームレスな AI エージェント統合のための MCP スキーマの作成、ライブデモでスムーズに動作するようシステム全体のデバッグを完了させる必要がありました。
このシナリオは、現代のソフトウェア開発でよくある課題を反映しています。制約下での高速プロトタイピングです。顧客向けの PoC 構築、ステークホルダーへのコンセプト実証、本格開発前のアーキテクチャ検証など、いずれの場合も同様のプレッシャーがあります。複雑なインテグレーション要件、不完全またはアクセスできないバックエンドシステム、厳しいスケジュール、そして実際の実装に発展できるような本番品質のコードが求められます。
Kiro で Amazon Connect AI エージェント開発を加速する方法

AI を活用した設計
従来のアーキテクチャ設計には、何時間ものリサーチ、設計会議、ドキュメント作成が必要でした。Kiro では異なるアプローチを取りました。AI を活用した仕様駆動設計です。要件 (15 の API、バックエンドアクセスなし、リアルなレスポンスの必要性、Amazon Bedrock AgentCore Gateway 経由の Amazon Connect 統合) を説明すると、Kiro はそれを正式な要件ドキュメントに変換し、次に詳細な設計ドキュメントを作成し、最後に実行可能なタスクリストを生成しました。この仕様駆動ワークフローにより、漏れのない、要件から実装までの明確なトレーサビリティが確保されました。

通常丸 1 日かかるアーキテクチャ設計が、Kiro との 1〜2 時間のインタラクティブな議論で完了し、明確で合理的な設計がすぐに実装可能な状態になりました。
高速なコード生成
アーキテクチャが定まると、Kiro は 15 の Lambda 関数すべてと、関連する Amazon DynamoDB テーブル、Amazon Bedrock 統合、AWS IAM 設定を数時間で生成しました。各関数には以下が含まれていました。
– API 仕様の完全な実装
– 構造化されたエラーコードによる適切なエラーハンドリング
– 相関 ID トラッキングを含む包括的なログ記録
– 状態管理のための DynamoDB 統合
– リアルなレスポンス生成のための Bedrock 呼び出し
– 入力バリデーションと防御的プログラミング
コードを素早く開発できただけでなく、さらに Kiro は一貫性の維持にも役立ちました。すべての関数がエラーハンドリング、ログ記録、統合において同一のパターンに従っていました。パターンの調整が必要になった場合 (認証トークンの処理方法の変更やエラーレスポンス形式の修正など)、変更を一度説明するだけで、Kiro が 15 の関数すべてを一貫して更新しました。類似のコンポーネントを手作業で複数実装する際に起こるドリフトや不整合も解消されました。
CloudWatch Logs の自動分析と高速イテレーション
Kiro との開発で最も強力だったのは、高速なイテレーションのフィードバックループです。開発サイクルは次のように進みました。

1. Kiro がコードを生成・更新 (Lambda 関数、MCP スキーマ、インフラストラクチャ)
2. CDK で AWS にデプロイ
3. AI エージェントの会話フローをテスト
4. Kiro に CloudWatch Logs (AI エージェント + Lambda 関数) の読み取りを指示
5. Kiro が問題を特定し、根本原因を説明し、修正を提示
6. Kiro に修正の実装と再デプロイを依頼
7. 正常に動作するまで繰り返し
このフィードバックループは非常に高速でした。デプロイ、テスト、ログ分析、修正、再デプロイという 1 サイクル全体がわずか 10〜20 分で完了しました。Kiro の自動ログ分析と根本原因の調査能力がなければ、各サイクルで数時間の手動デバッグが必要だったでしょう。
付け加えると Kiro で AI エージェントのログを分析するには、Amazon Connect AI エージェントの CloudWatch へのロギングを有効にする必要があります。
実際のデバッグ事例
DynamoDB クエリの失敗: Kiro がパーティションキーの不一致を検出し、スキーマの調整を提案
AI エージェントのインテント認識の問題: Kiro が会話ログをレビューし、MCP ツールの説明文に曖昧な表現があることを特定
エラーハンドリングの不備: Kiro がログから処理されていないエッジケースを発見し、防御的なコードを生成
3 日間で数十回のイテレーションサイクルを完了しました。毎回、Kiro の自動ログ分析が手動デバッグのボトルネックを解消し、開発の勢いを維持しました。
まとめ
本記事では、対話型の仕様駆動設計と CloudWatch Logs の自動分析により、Kiro が Amazon Connect AI エージェント開発をどのように加速したかを紹介しました。私たちは 15 のバックエンド API を備えた完全に機能する AI エージェントをわずか 3 日間で構築しました。従来の開発アプローチでは 2〜3 週間かかるスケジュールです。
これを可能にした 3 つの機能は次のとおりです。
仕様駆動設計: インタラクティブな要件収集により、何日もの会議が不要に
デバッグの自動化: CloudWatch ログへの直接アクセスで手動トラブルシューティングを排除
高速フィードバックループ: 10〜20 分のイテレーションサイクルで継続的な改善が可能に
このアプローチは、今回のユースケースに限らず幅広く適用できます。カスタマーサービスエージェント、テクニカルサポートボット、セールスアシスタントのいずれを構築する場合でも、Kiro による対話型開発と自動デバッグの組み合わせで、Amazon Connect AI エージェントのプロジェクトを大幅に加速できます。
Amazon Connect AI エージェント開発を加速しませんか? Kiro を使い始めて、対話型開発と自動デバッグによる、数週間かかっていた作業を数日で実現する体験をお試しください。
Amazon Connect 開発で AI コーディングアシスタントを使ったことはありますか? ぜひ体験を共有してください。
リソース
Kiro
Amazon Connect AI エージェント
Connect AI エージェントを使用したリアルタイムのサポート
ワークショップと学習リソース
Amazon Connect の Agentic AI を活用したインテリジェントカスタマーサービスの構築
Amazon Connect AI Agents Workshop
Enable CloudWatch Logging for AI Agents
関連する AWS ドキュメント
Amazon Bedrock AgentCore Gateway (MCP)
著者について

Thomas Rindfuss は Amazon Connect のエージェント型・対話型 AI のワールドワイドリード SA です。対話型 AI サービスの新しい技術機能やソリューションの考案、開発、プロトタイピング、エバンジェリズムを通じて、カスタマーエクスペリエンスの向上と導入の促進に取り組んでいます。AI エージェントを構築していないときは、新しい AI テクノロジーの探求や、顧客のコンタクトセンター体験の変革を支援しています。
Kiro は、仕様、ステアリング、フックなどの機能を備えたエージェント型 IDE です。Kiro は本ブログ記事の共著者として、構成の整理、技術的正確性の確認、編集支援を行いました。ブログ記事の共著をしていないときは、開発者のコード作成、ログ分析、システムデバッグの高速化を支援しています。
翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの高橋が担当しました。原文はこちらです。