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【開催報告&資料公開】 流通・小売・消費財業界向け:クラウドと生成 AI による顧客接点改革

流通・小売・消費財業界に関わられている方々を主な対象として、2024 年 5 月 9 日に「流通・小売・消費財業界向け:クラウドと生成 AI による顧客接点改革」のオンラインセミナーを開催しました。ご参加いただきました皆さまには、この場を借りて御礼申し上げます。本ブログではセミナーの内容を簡単にご紹介します。

今回のセミナーでは進化を続ける「顧客接点」をキーワードに、2 つのテクノロジー「クラウド化されたコンタクトセンター(Amazon Connect)」「生成 AI」を取り上げて、お客様事例とデモをお届けしました。

セッション 1. オープニング

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 エンタープライズ技術本部 流通小売・消費財グループ 本部長 五十嵐 建平

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オープニングは、企業収益に直接的な影響を与える顧客接点においてテクノロジーによる新たな価値提供の可能性を示すところから始まりました。大丸松坂屋百貨店様の事例および AWS デモにおいて登場する AWS の提供するクラウドベースのコンタクトセンターサービスである、Amazon Connect の強み、そして Amazon Connect がどのように顧客体験 = Customer Experience (CX) の向上に貢献できるのかを簡単に紹介しています。またルームクリップ様、および AWS デモにおいて生成 AI の主題となっている画像について、企業の持つ画像から、生成 AI によって価値ある情報を引き出すことの重要性についてお話しました。

セッション 2.お客様事例 (1) Amazon Connect、Zendesk を連携したコンタクトセンターの対応品質改善 ~ 6 か月間のプロジェクト~

株式会社 大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部 デジタル事業推進担当 木村 崇文 様

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株式会社大丸松坂屋百貨店様では、新規事業領域から既存事業領域まで広くデジタルトランスフォーメーションを推進されています。その中のテーマの一つが「お客様との関係性の深化」、まさに顧客接点におけるトランスフォーメーションです。大丸松坂屋オンラインストアのコンタクトセンター刷新の 3 つの目的、つまりなぜこの取り組みが必要とされたのか、それを踏まえてプロジェクトを進めるにあたり取り入れた「顧客」「業務委託先」「大丸松坂屋百貨店」という 3 つの視点で、課題や KPI を具体的に示しつつ、ご紹介いただきました。その上で、お問い合わせのチャネルで電話の構成比が高いという百貨店様ならではという特性を考慮した上で、Amazon Connect、またこれと組み合わせてご利用いただける Zendesk 社サービスの採用のポイントとして信頼性や、柔軟なカスタマイズが可能であること、問い合わせチャネルの一元管理、分析集計機能への期待といったことを挙げて解説いただきました。プロジェクトは要件定義から約 6 か月という短期間でローンチし、これによって具体的なビジネス効果が上がっていらっしゃる点も具体的に共有され、今後の取り組み予定や期待で締めくくられました。

セッション 3. お客様事例 (2) Lambdaで動くプロンプトライクな物体検出システム

ルームクリップ株式会社 CTO 平山 知宏 様

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住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」では、ユーザーにより日々、家具や雑貨といったインテリア写真が投稿されています。写真を共有・閲覧するだけでなく、投稿された写真に写っているものを購入できるページを案内するなどのサービスも提供されており、そういったサービスのためには写真から物体を検出する必要があります。今回のセッションでは、ルームクリップ様のビジネスに必要とされる物体を柔軟に検出するために、様々な軽量動作検出モデルを試行された中で得られた知見、解決策をお話いただきました。画像からの物体検出の各種モデル、サービス、LLM などの得意領域を組み合わせることで、よりビジネスニーズに応えるシステムを検討し、「形式化されたフォーマットで、プロンプトによる運用中心の高速な微調整が可能な物体検出」を実現されました。さらに、コスト面でも軽量化をはかり、AWS Lambda 上で動作させるアーキテクチャを採用されました。一つの技術だけでビジネス課題を解決できることは現実的には少なく、LLM であれ各技術の得意な領域を組み合わせていかに課題を解決していくのか、そこにこだわることでテクノロジーがビジネスに確実に貢献できるようにする、その重要性を改めて伝えていただきました。

セッション 4. 顧客接点にイノベーションをもたらすマルチモーダルな生成 AI の使い方

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 エンタープライズ技術本部 小売・消費財 第二ソリューション部 ソリューションアーキテクト 中島 佑樹

*配布資料はありません

テキストのみならず、画像を含めた複数チャネルを入出力できる「マルチモーダル」な生成 AI の活用が広がりつつあります。このセッションでは、マルチモーダルな生成 AI を顧客接点改革につなげるいくつかのアイデアを紹介しました。生成 AI の基盤モデルを API 呼び出しできるフルマネージドな Amazon Bedrock を呼び出すだけのシンプルな構成で画像とテキストの 2 種類のデータを活用するアプリケーションを用意しました。このアプリケーションを使って「商品画像と商品説明文からユーザに訴求するメッセージを生成する」「商品の比較文を生成する」「画像やテキストを入力に柔軟な検索を行う」といった具体的なユースケースについてデモをお見せしました。

今回のデモのコードはは公開の準備が整いましたら別途ブログでご案内しますが、類似のアセットである Titan Multimodal Embeddings を用いた検索機能のサンプルや、マルチモーダルに限定せず幅広く AWS の生成 AI をお試しいただける生成 AI ユースケースデモなど既に公開されているものがありますのでご活用ください。

セッション 5. 顧客接点の変革を実現 – コンタクトセンターにおける生成 AI 活用術

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 エンタープライズ技術本部 小売・消費財 第一ソリューション部 ソリューションアーキテクト 千代田 真吾

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大丸松坂屋百貨店様の事例でもご紹介したクラウドベースのコンタクトセンターサービスである、Amazon Connect。Amazon Connectではこれまでにも AI/ML を組み込んだ機能が提供されています。このセッションでは、Amazon Connect に セッション 4 でも登場した Amazon Bedrock、エンタープライズナレッジ検索を実現する AI サービスの Amazon Kendra、テキストから感情分析を行う自然言語処理 AI サービスの Amazon Comprehendを組み合わせ、「生成 AI による回答作成」「通話内容の自動要約」「お客様の感情分析」のデモを紹介しました。音声やテキストを扱うコンタクトセンター業務において、Amazon Connect と生成 AI や AI/ML サービスが技術的な親和性の高さだけでなく、エージェント業務の作業効率向上や生産性向上といった実用的な価値を生み出しやすいものであることがわかります。

デモでご紹介したソリューションのアーキテクチャやコードは公開されており、ブログ「Amazon Bedrock と Amazon Connect によるコンタクトセンター向け生成系 AI ソリューションの構築手順」の中で詳しくご紹介していますので、ご活用ください。

まとめ

今回のセミナーでは「顧客接点」をキーワードに、2 つのテクノロジー「クラウド化されたコンタクトセンター(Amazon Connect)」「生成 AI」を取り上げました。コンタクトセンターについては、顧客体験に対する利用者の期待に応えるため、大丸松坂屋百貨店様が取り組まれた Amazon Connect によるコンタクトセンター刷新のプロジェクトでどのような課題が解決できたのかをご紹介いただきました。もう一つのテーマである生成 AI については、企業にとっての宝である画像から価値を引き出すべく重ねられた工夫について、ルームクリップ様にお話いただきました。後半は AWS ソリューションアーキテクトから、マルチモーダル生成 AI で商品説明文生成やユーザーの検索を支援するユースケース、そして Amazon Connect と生成 AI を組み合わせたコンタクトセンター業務の実用的なデモをご紹介しました。事例、デモ、いずれも一つのソリューションで解決するのではなく、ビルディングブロックの組み合わせでビジネス課題を解決するものとなっており、まさに AWS の使いどころを感じていただけるものだったと思います。

2024 年 6 月 20、21 日に開催される AWS Summit Japan において、流通・小売・消費財業界向けの展示ブースをご用意します。今回ご紹介した生成 AI のデモをはじめ、店舗と e コマースをシームレスに繋ぐ新しい顧客のカスタマージャーニーや、次世代自動販売機などの物理デバイスなど「Accelerate Innovative Customer Journey」をテーマに展示いたしますのでぜひお立ち寄りください。

今後も、流通・小売・消費財業界の皆さまに向けたイベントを企画し、情報発信を継続していきます。ブログやコンテンツも公開しておりますのでご覧ください。

流通小売参考情報

[1] AWS ブログ ”流通小売” カテゴリー
[2] AWS ブログ “消費財” カテゴリー
[3] AWS 消費財・流通・小売業向け ソリューション紹介ページ

このブログは、ソリューションアーキテクト 杉中 が担当しました。