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SAP BTP と AWS サービスによる SAP エコシステムのモダナイズ

お客様は 2008 年以来、AWS 上で SAP ワークロードを実行しています。SAP と AWS は 14 年以上に渡るパートナーシップと、お客様のために共同でイノベーションを起こしてきました。SAP は、SAP Concur、SAP CX(SAP Qualtrics によるカスタマーエクスペリエンス)、SAP NS2 HANA Secure Cloud などの社内システムやお客様向けサービスの運用に、長年にわたり一貫して AWS サービスを活用してきました。SAP 最大の SAP Business Technology Platform(SAP BTP)のデプロイは AWS 上にあり、お客様が ERP コアを中心にイノベーションを起こせるよう 80 以上のサービスを提供しています。SAP BTP ポートフォリオは、SAP HANA Cloud、SAP Integration Suite、SAP Data Warehouse Cloud、SAP Analytics Cloud など、アプリケーション開発と自動化、プランニング、データ/アナリティクス、統合、人工知能に対応するさまざまなサービスで構成されています。SAP on AWS のお客様は一貫して、クラウドに移行する動機の 1 つは、AWS インフラのコスト削減とスケーラビリティに加えて、ストレージ、データ分析、IoT、機械学習、自動化機能などの AWS サービスと SAP を統合することだと語っています。このようなお客様ニーズから逆算して、AWS と SAP は最初のステップとしてジョイント・リファレンス・アーキテクチャ・ガイダンスを通じてお客様にイノベーションを提供し、その後の自動化を提供するために継続的に投資しています。このブログでは、AWS と SAP が、初期のハイレベルなビジネスユースケースのリファレンスアーキテクチャパターンを通じて、お客様に共同ガイダンスを発行するアプローチについて説明します。また、各アーキテクチャパターンの詳細な実装ガイダンスの追加リファレンスもあります。

RISE with SAP on AWS

RISE with SAP は、オンプレミスで SAP やその他の ERP ワークロードを実行し、クラウド上の SAP S/4HANA への移行を検討しているお客様向けの、SAP によるフルマネージドソリューションです。AWSとSAPは、RISE with SAPを通じて、お客様がガイド付きのトランスフォーメーション・ジャーニーを通じて、このビジネス変革を加速できるよう協力してきました。AWS 上の RISE with SAP のお客様は、現在クラウドの旅のどの段階にいるかにかかわらず、迅速に移行、展開、革新することができます。SAP S/4HANA Cloud(RISE with SAP を通じて提供)は、お客様のビジネスプロセスを業界標準に合わせることを支援し、重要なビジネスプロセスの中央リポジトリとして機能を果たします。AWS と連携した SAP BTP は、ERP コアの統合された拡張機能としてアプリケーション開発、統合、アナリティクスのフレームワークを提供することで、クリーンコアモデルを採用する簡素化されたアーキテクチャアプローチを提供し、移行の簡素化と迅速化、ビジネスプロセスの自動化と最適化、360° アナリティクスなどのメリットをもたらします。

ジョイント・リファレンス・アーキテクチャのアプローチ

AWS と SAP は、ビジネスプロセスの統合、拡張、データ管理、アナリティクスシナリオなどの分野のリファレンスアーキテクチャパターンを考案するために提携しています。これらのパターンは、SAP BTP の基本サービスに沿ったプラットフォーム、データ・トゥ・バリュー、アプリケーションを含む 3 つの基本的な柱によって推進されます。これらの柱はそれぞれ、イノベーションに対応し、SAP BTP と AWS のサービスを補完して利用することで、お客様のビジネスオペレーションの効率化を促進します。この図(図1 – SAP BTP on AWS ジョイント・リファレンス・アーキテクチャの概要)は、AWS と SAP BTP のサービスの強みを組み合わせ、プラットフォーム、データ・トゥ・バリュー、アプリケーションの基本的な柱を確立するための包括的なアーキテクチャを表しています。この初期アーキテクチャの焦点は、SAP Build Work ZoneSAP Cloud IntegrationSAP Data Warehouse Cloud などの SAP BTP の基盤となるサービスと、Amazon Route 53Amazon SagemakerAmazon Redshift などの AWS サービスによる、高可用性、ビルトイン弾力性、自動化と技術的負債の削減に重点を置いたイノベーションです。

図 1 – SAP BTP on AWS ジョイント・リファレンス・アーキテクチャの概要

プラットフォーム基盤

ミッションクリティカルなビジネスアプリケーションの基本要件の 1 つは、ビジネスの継続性です。現代のビジネスアプリケーションは、ビジネスの継続性だけでなく、信頼性の向上とレイテンシの低減も要求しています。お客様は、厳格な監視フレームワークと信頼性の高いフェイルオーバー戦略を通じて、障害に強いアーキテクチャを持つことに依存しています。耐障害性の高い実装により、お客様は AWS グローバルインフラストラクチャを使用して、重要なアプリケーションへの中断のないアクセスを維持します。プラットフォーム基盤の柱では、Amazon Route 53 サービスと連携して AWS リージョンを活用することで、SAP Build Work ZoneSAP Integration Suite といった SAP BTP の基盤サービスが高い耐障害性を持つようにすることに注力しています。このアーキテクチャガイダンスの詳細と実装については、こちらをご覧ください。

データから付加価値を創出

データはあらゆるビジネスにおいて最も価値のある資産の 1 つであり、お客様はますますクラウド上のマルチソースデータストレージ戦略を採用するようになっています。データフェデレーション戦略は、データの重複やデータパイプラインを排除することで、マルチソースデータへのリアルタイムアクセスを提供するため、お客様の効率化に役立ちます。また、技術的負債を削減し、総所有コスト(TCO)を最適化することにもつながります。SAP Datasphere(旧名称 SAP Data Warehouse Cloud) を通じて、SAP、Amazon RedshiftAmazon S3Amazon Athena を含む様々なデータソースをセキュアに連携・融合することで、効率的なプランニング、キュレーション、機械学習、アナリティクスを可能にします。Amazon AthenaとSAP Datasphere を使用した双方向データ連携の可能性の 1 つについて、こちらのブログで説明しています。

データウェアハウスに蓄積されたデータから、お客様は機械学習技術を駆使して有意義な洞察を引き出し、ビジネスの将来の戦略的ニーズを予測しようとしています。ライブ SQL 接続を使用して、SAP FedML は SAP DWC から Amazon Sagemaker へのデータソースを支援し、AWS データストアと SAP にネイティブに存在する結合データセットに基づいてモデル化、トレーニング、予測を行います。この処理されたデータセットは、AWS 内でネイティブに消費されるか、FedML を通して SAP DWC に戻されます。詳細なアーキテクチャガイダンスについては、こちらのブログを参照してください。

統合とアプリケーション開発

現代のアプリケーションは、アプリケーションレイヤーだけでなく、基盤となるインフラやデータレイヤーにもビルトインされた弾力性のあるフレームワークを持つことが期待されており、それによって全体的に分散された弾力性が生まれます。SAP Cloud Application Programming Model(CAP)は、言語、ライブラリ、ツールのフレームワークとして機能し、開発者を実証済みのベストプラクティスの道へと導き、繰り返し発生するタスクに対してすぐに使える豊富なソリューションを提供します。SAP BTP 内でネイティブに構築されたこれらのアプリケーションは、Amazon Route 53 や Amazon Aurora のような AWS サービスの組み合わせにより、高可用性を実現できます。Amazon Aurora は、MySQL と PostgreSQL の完全な互換性を備えたクラウド用に構築されたリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)で、商用グレードのデータベースのパフォーマンスと可用性を低コストでお客様に提供します。このアーキテクチャ・ガイダンスの詳細と実装については、こちらをご覧ください。

SAP BTP と AWS のその他の統合可能性には、Amazon Simple notification Service(SNS)を活用して通知を送受信する SAP S/4HANA ビジネスプロセス拡張アプリケーションの構築が含まれます。この統合は、より迅速なサポート対応と解決のために、ビジネスプロセスや技術的なアプリケーション監査のためのリアルタイム通知を必要とする企業にとって特に有用です。また、IoT センサーと定期的に相互作用する CAP アプリケーションは、データ受信時に、確立された優先度レベルに基づいて Amazon SNS を使用して必要な通知をトリガーすることができます。こちらのブログでは、お客様が SAP Business partners を作成する際の SAP S/4HANA 移行シナリオに関連する実際のユースケースを取り上げています。

まとめ

このブログでは、SAP BTP と AWS サービスを使用して SAP エコシステムを近代化するためのアーキテクチャパターンを提供する SAP と AWS のハイレベルな戦略について説明しました。各パターンは、実際のユースケースを伴う簡単なソリューション概要とともに説明されています。これらのアーキテクチャパターンの詳細な実装については、SAP の各リファレンスブログで説明されています。このブログは、AWS と SAP が計画している一連の詳細な共同リファレンスアーキテクチャガイダンスの始まりとなります。

SAP on AWS ワークロードのための共同リファレンスアーキテクチャに関して、共同チームが 2022 年に発表した以下のセッションをチェックしてください。

さらに参考になる文献をいくつかご紹介します。

SAP on AWSAmazon Route53Amazon SagemakerAmazon RedshiftAmazon AthenaAmazon Auroraの詳細については、AWS 製品ドキュメントを参照してください。

さらに専門的なガイダンスが必要な場合は、AWS アカウントチームに連絡して、ローカルの SAP スペシャリストソリューションアーキテクトに依頼してください。

SAP on AWS ディスカッションへの参加

お客様のアカウントチームと AWS サポートチャネルに加えて、私たちは最近 re:PostA Reimagined Q&A Experience for the AWS Community を立ち上げました。私たちの SAP on AWS ソリューションアーキテクチャチームは、定期的に SAP on AWS トピックを監視し、お客様やパートナー様を支援するためのディスカッションや質問にお答えしています。もしあなたの質問がサポートに関連したものでなければ、re:Post で議論に参加し、コミュニティのナレッジベースに追加することを検討してください。何千ものアクティブなお客様が AWS 上で SAP を実行していることについては、SAP on AWS のページをご覧ください。

クレジット

ジョイント・リファレンス・アーキテクチャに関する AWS と SAP のパートナーシップは、SAP と AWS の組織からの深い協力と貢献の結果です。専門知識、サポート、ご指導をいただいた以下のメンバーに感謝いたします。

チーム AWS:Sabari Radhakrishnan, Sunny Patwari, Rajesh Chigurupati, Yuva Athur, Ganesh Suryanarayanan, Krishnakumar Ramadoss, Spencer Martenson, Adam Hill, Scott Rigney, Soulat Khan and Erik Kamman.

チーム SAP:Madankumar Pichamuthu, Sangeetha Krishnamoorthy, Karishm.a Kapur, Weikun Liu, Haridas Nair, Sivakumar N and Anirban Majumdar.

翻訳は Partner SA 松本が担当しました。原文はこちらです。