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「フィジカル AI 開発支援プログラム by AWS ジャパン」Community Meetup #1 を開催しました

2026 年 6 月 1 日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)は、「フィジカル AI 開発支援プログラム by AWS ジャパン」の第 1 回コミュニティイベント「Community Meetup #1」を、 AWS ジャパン 麻布台オフィスにて開催しました。本プログラムは 2026 年 1 月 27 日に発表し3 月 3 日にキックオフイベントを開催しました。今回の Community Meetup は、約 6 ヶ月間の開発支援期間のなかで、採択企業同士の交流を主な目的として開いた初めてのコミュニティイベントです。

フィジカル AI 開発支援プログラムとは

フィジカル AI とは、物理世界で動作する AI の総称です。 AWS では、これを「物理世界と相互作用するために知覚、理解、推論、学習を統合したハードウェアとソフトウェアのシステム」と定義しています。大規模言語モデル(LLM)の進化を背景に、視覚情報と言語、行動を統合的に扱う Vision-Language-Action(VLA)モデルをはじめとしたロボット基盤モデルの研究開発が、世界的に加速しています。

本プログラムは、AWS 上でこうしたロボット基盤モデルを開発する、日本に法人または拠点を持つ企業・団体を支援する取り組みです。データ収集・前処理からモデルトレーニング、シミュレーション、実環境へのデプロイまで、開発の一連のパイプラインづくりを、技術支援・コスト支援・コミュニティ形成・GTM 支援の 4 つの柱で支えます。

本プログラムが大切にしているのは、技術的な側面にとどまらず、一つのコミュニティとして共に取り組み、育てていくという考え方です。今回の Community Meetup は、その実践の第一歩として企画しました。

イベント概要

当日のアジェンダは以下のとおりです。

  • オープニング
  • パネルディスカッション(採択企業 3 社が登壇)
  • アンカンファレンス(テーマ別のグループディスカッション)
  • クロージング
  • ネットワーキング

以降では、パネルディスカッションとアンカンファレンスの様子をご紹介します。

パネルディスカッション

前半は、本プログラムに参画いただいている 3 社の方々によるパネルディスカッションです。AWSの針原をモデレーターとして、それぞれ異なる立場からフィジカル AI に取り組む登壇者をお迎えしました。

  • 小堀 訓成 様 (株式会社メルカリ 研究開発組織R4D 所長)
  • 末永 匡 様(株式会社Enactic オープンソース事業部長)
  • 鈴木 徳馬 様(株式会社JDSC データサイエンティスト)

各社の取り組み

3 社それぞれ立場は異なりますが、「現実世界のデータをどう集め、どう活かすか」という共通の課題に向き合っています。

株式会社メルカリの小堀 訓成 様は、自社倉庫の作業をロボットに置き換える取り組みを紹介しました。海外向け出荷では、届いた商品の検品や、ブランド品が本物かを確かめる真贋判定、梱包までを人手で行っていますが、これらをロボットで担うことを目指しています。中古品はバリエーションが大きいため、まずはばらつきの小さい品目から着手しているといいます。たとえば靴、なかでもスニーカーのように形状が比較的安定したものを選び、テレオペレーション(遠隔操作)でロボットを動かして学習用データを集めています。

続いて、株式会社Enacticの末永 匡 様は、同社が開発するオープンソースのロボットアーム「OpenArm」について語りました。末永様が強調したのは、Sim-to-Real ギャップは大きく、実機でのデータ収集が重要だという点です。そのうえで、実機データの「質」と「量」をいかに確保するかが課題になるといいます。データの「質」は、操作者のスキルだけでなく、映像とロボットの関節データのタイムスタンプのずれといった見えにくい要素にも左右されるそうです。「量」を確保するには、収集作業の自動化や、並列に集める工夫が効くといいます。2026 年 5 月にリリースされた OpenArm 2.0では、アーム本体の改良に加え、照明や電源などをパッケージ化し、同じ条件でモデルを評価できる標準実験環境「OpenArm Cell」が含まれており、データの「質」と「量」の改善に寄与するとアピール。さらに、人間の肩にかけられる軽量かつ高精度な教示デバイス「OpenArm KER」の開発も進めているとのことです。OpenArm の GitHub スター数は、登壇時点で 2,500 ほどに達しており、オープンソースを起点にコミュニティが広がっています。

株式会社JDSCの鈴木 徳馬 様は、物流分野のパートナー企業と連携して参加しています。フィジカルAIの研究開発を行っていたタイミングで本プログラムの話が重なり、共同での参加に至ったそうです。実機でのデータ収集は重要です。一方で、人手作業はどうしてもばらつき、時間もかかります。そこで、シミュレーター内で合成データを生成し、量をスケールさせるアプローチを採用したといいます。実機とシミュレーションのそれぞれの長所をどう組み合わせるかが、議論の焦点となりました。

技術的な課題と AWS の支援

フィジカル AI の開発には、シミュレーションや大規模な学習など、つまずきやすい局面が数多くあります。パネルでは、そうした課題に直面したときに AWS がどう支援したかが語られました。

その一例として、株式会社JDSCの鈴木様がシミュレーションの事例を紹介しました。同社では、シミュレーター「Isaac Sim」での合成データ生成が GPU でうまく高速化できず、開発が思うように進みませんでした。社内の定例会で議論しても解決しきれなかったため、AWS を通じて NVIDIA に問い合わせ、一緒に原因を探ったところ、Isaac Sim 自体ではなく、その土台となる物理シミュレーターに起因する問題だと分かったといいます。これを踏まえ、同社は現在、使い慣れた別のシミュレーターと AWS Batch を組み合わせて合成データの生成を進めています。

この事例のように、一社では解決が難しい課題に対しても、AWS は日本の担当チームに加え、AWS グローバルのスペシャリストや NVIDIA のようなパートナーと連携して支援にあたります。株式会社メルカリの小堀様も、分散学習について個別にレクチャーを受けられた経験に触れ、「困っていることを相談すると、課題に適したエンジニアを呼んでくれる。かゆいところに手が届く」と語ってくださいました。答えを示すだけでなく、お客様とともに考えながら解決策を探っていくことを、本プログラムの技術支援では大切にしています。

会場との質疑応答

会場との質疑も活発でした。たとえば「現在の VLA モデルは英語ベースのものが多いが、日本語への対応は必要か」という問いには、登壇者から「英語で作って日本語に変換しても問題なく動くことが多く、現時点で言語は大きな障壁ではない。ただし触覚を表すオノマトペのような日本語特有の表現には工夫が要るかもしれない」といった実感が共有されました。照明の条件が学習データの質を左右するといった、現場ならではの作り込みについても質問が交わされました。

終盤には、「身体性があるからこそ生まれる知性はあるのか」「そもそもフィジカル AI とは何か」といった、より本質的な問いも飛び交いました。「入力か出力のどちらかに物理が関わっていればフィジカル AI ではないか」「ヒューマノイドに限らず、ロボットアームも、さらには工作機械も含まれるのではないか」など、登壇者それぞれの定義が語られました。

アンカンファレンス

後半は「アンカンファレンス」を行いました。これは、決まった発表を聞くのではなく、参加者が実際に困っていることや関心を本音で語り合うグループディスカッションの形式で、AWS の Tech コミュニティでも好評の進め方です。

まず全体で各社の開発進捗を共有したところ、多くのチームがまだ実機を導入して動作確認する段階にあり、本格的なモデル開発はこれからプログラム後半にかけて行うという状況が各社に共通していました。その後、希望の多かったテーマごとに分かれて議論を深めました。たとえばシミュレーションの活用場面については、多数を並列に回せる強化学習では有効な一方、実機で丁寧にデータを取りたい模倣学習とは相性が異なるといった使い分けが話題になりました。また、公開モデルはベンチマークでは高性能でも実機や異なる環境では期待どおり動かないことがあり、何を基準に選ぶか悩ましいという声も挙がりました。

普段はなかなか共有しづらい悩みや知見が、率直に語り合われました。

コミュニティとしての意義

パネルディスカッションとアンカンファレンスを通じて、各社が共通の課題に直面している様子が浮かび上がりました。データ収集の難しさ、ハードウェアとソフトウェアの融合、研究と社会実装のギャップ、計算資源へのアクセスなど、その多くは一社だけで解決するのが難しいものです。立場の異なる開発者が本音で知見を交換できる場は、こうした課題に向き合ううえで一つの助けになります。実際に、参加企業同士が連携して開発に取り組む動きも生まれています。

AWS は、開発者の皆さまが課題を持ち寄り、ともに議論を深められる伴走者でありたいと考えています。今後もこうしたコミュニティの場を重ねていきます。

今後のスケジュール

支援期間中、引き続き各種イベントを予定しています。

※ 以下の日程・内容は調整中のものを含みます。最新の情報は各社の担当チームよりご案内します。

時期 イベント 内容
2026年6月12日 GENIAC ロボット基盤モデルの研究開発応募者向け勉強会 ロボット基盤モデルをスケーラブルに開発するための環境について、応募者向けに情報を提供します
2026年6月24日 ロボット勉強会 AWSのフィジカルAIスペシャリストがグローバルの動向を紹介するほか、ロボットメーカーを招き、協働ロボットの活用について学びます
2026年6月25–26日 AWS Summit Japan 幕張メッセにて開催。本プログラムの開発成果のデモ展示などを予定しています
2026年8月31日(調整中) 最終成果報告会 プログラムの成果発表と、採択企業による開発内容の共有を予定しています

おわりに

第 1 回 Community Meetup を通じて、日本のフィジカル AI を担う多様な企業・関係者が一堂に会し、率直な対話を交わすことができました。ご登壇いただいた 3 社の皆さま、そしてご参加いただいた採択企業の皆さまに、心より御礼申し上げます。

AWS は、本プログラムを通じて日本のフィジカル AI エコシステムの発展に貢献してまいります。次回のコミュニティイベント、そして成果発表会をどうぞご期待ください。

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