Amazon Web Services ブログ

国防総省の演習において AWS がレジリエントかつセキュアなエッジトゥクラウドを実証

本ブログは 2025 年 4 月 24 日に公開された AWS Public Sector ブログ「AWS demonstrates resilient and secure edge-to-cloud at Department of Defense exercise」を翻訳したものです。

米国国防総省 (DoD) は、任務の成功に不可欠な新規技術や新興技術の採用と統合において、民間企業への依存を高めています。現代の防衛環境は急速に進化しており、産業界との連携が成功の重要な要素となっています。

2025 年 3 月 6 日付けの覚書「Directing Modern Software Acquisition to Maximize Lethality(戦闘効果を最大化するための現代的ソフトウェア調達の指示)」において、国防長官 Pete Hegseth 氏は、「国防総省は、ソフトウェア調達に関する既存の権限、契約戦略、およびプロセスの活用を最大化しなければならない。これにより、国防総省は民間技術の進歩に歩調を合わせるよう設計された体制に直ちに移行することが可能になる」と述べ、この考えを反映しています。

Amazon Web Services (AWS) は、軍事イノベーションの推進に向けたこの民間重視かつ協調的なアプローチを実現するという課題に取り組んでいます。最近では、AWS は Technology Readiness Experimentation (T-REX) シリーズのイベントへの参加を通じてこれを実現しました。

OUSD/R&E (研究工学担当国防次官室) が主催する T-REX イベントは、軍用技術の迅速なプロトタイピングと実験を行う場です。「競争は複雑で、状況に応じて変化し続けます。競合他社を上回るためには、未来を探る手段が必要です。新興のテクノロジーや機能が作戦遂行上もたらす価値を相対的に評価することで、実験的取り組みから意思決定のためのエビデンスが得られます。それらのエビデンスに基づき、特定のテクノロジーや機能について、さらなる研究が必要か、または、本格的な投資に値する段階に達していると判断することができます」と、OUSD/R&E のプロトタイピング・実験・評価担当ディレクターである An ‘Mike’ Tran 博士は述べています。これらのイベントにおいて、国防総省は防衛産業基盤 (DIB) ソリューションと軍事用途向け民間技術の評価を行います。

AWS のパートナーである General Dynamics Information Technology (GDIT) は、T-REX の直近 2 回の実施において、マルチドメインのクラウドコンピューティング機能を成功裏に実証しました。T-REX 24-2 は 2024 年 8 月 19 日から 28 日まで開催され、T-REX 25-1 は対無人航空システムの限定目標実験として 2025 年 3 月 6 日から 21 日まで実施されました。

Tony Jacobs briefs Cloud Edge Global Access (CEGA) on AWS to distinguished visitors, highlighting the data feeds and interconnectivity it provides to the exercise’s Common Operating Picture (COP).

AWS で米国国防総省のお客様をサポートする Tony Jacobs が Cloud Edge Global Access (CEGA) on AWS について説明し、演習の共通状況図 (COP) に提供するデータフィードと相互接続性を紹介。

国防総省が軍事利用に向けて AWS の民生技術を検証

AWS の DOD 担当チームは、AWS 上の Cloud Edge Global Access (CEGA) を使用して、タクティカルエッジから AWS GovCloud に接続する、回復力とセキュリティを備えたネットワークアクセスを提供しました。CEGA は、SD-WAN (Software-Defined Wide Area Networks) を使用した自動 PACE 通信ソリューションです (Primary [主]、Alternate [代替]、Contingency [予備]、Emergency [緊急] )。CEGA は AWS のグローバルバックボーンの力を活用し、AWS のお客様が活動するあらゆる場所でタクティカルネットワークにスピードと回復力をもたらします。

CEGA の使用は、指揮官のデータから意思決定までを加速するマルチドメインユーティリティを実証しました。チームは航空、地上、海上のデータを統合するタクティカルエッジノードを確立しました。これらのノードからのデータは共通状況図 (COP) に送信され、T-REX スタッフと参加者に包括的な指揮統制 (C2) 支援を提供しました。

Defense Operations Grid Mesh Accelerator (DOGMA) とは AWS と GDIT の合同ソリューションであり、GDIT の LunaAI 予測分析を Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、Amazon Kinesis、Amazon Athena、Amazon SageMaker、AWS Lambda、AWS Wickr など、複数の AWS サービスと統合します。これにより、任務の管理と実行のための堅牢でスケーラブル、かつセキュアな環境を提供します。DOGMA は、シームレスな通信、リアルタイムデータ処理、効率的なリソース管理を支援することで国防総省の目標に合致しています。

この高度な分析とクラウドサービスの統合により、DOGMA は任務成功に不可欠なリアルタイムの洞察と予測を提供することで、現代の軍事作戦における動的なニーズに対応できることが保証されます。DOGMA を使用して、AWS と GDIT は AWS クラウドとエッジの両方でドローン脅威の人工知能 (AI) 予測モデリングを実証しました。

図 1. AWS と GDIT のソリューション DOGMA のアーキテクチャ図。AWS 上の CEGA と GDIT の LunaAI を使用。ソリューションの主要な AWS コンポーネントには Amazon Kinesis、Amazon Athena、AWS Wickr が含まれる。

図 1. AWS と GDIT のソリューション DOGMA のアーキテクチャ図。AWS 上の CEGA と GDIT の LunaAI を使用。ソリューションの主要な AWS コンポーネントには Amazon Kinesis、Amazon Athena、AWS Wickr が含まれる。

国防総省が取り組む次世代自律機能の実現に AWS が寄与

作戦の俊敏性と情報優位性が最重要となる時代において、クラウドイネーブルド自律システムは現在のニーズを満たすだけでなく、今後の戦域を予測し、形作っています。T-REX 24-2 と T-REX 25-1 において、AWS とそのパートナーは国防総省の任務における UAS の自律任務管理の未来も実証しました。

Tactical Edge Embodied AI Mesh (TEEAM) により、AWS は防衛産業パートナーである Gambit と協力し、AI が開発した行動パターンを使用した複数の無人航空システム (UAS) の一元的な運用管理を実証しました。これにより、UAS オペレーターは任務指揮官からの指示を受けて UAS 群をより効率的に制御できるようになりました。

GDIT との AWS の戦略的パートナーシップを活用し、AWS は DOGMA により T-REX 25-2 期間中に OUSD/R&E を支援しました。DOGMA は 16 の異なるデータソースを統合し、8 つのイベント会場にわたって状況認識と意思決定を向上させる統一された COP を提供しました。これは、インディアナ州の Camp Atterbury と Muscatatuck Urban Training Center の両方にある Task Force Research and Development Experimentation Reserve (TF RDER) 基地防衛作戦センターを直接支援しました。AWS タクティカルエッジノードは、AWS 上の CEGA とともに、回復力とセキュリティを備えたエッジからクラウドまでの接続性を提供し、複数の参加者が自律機能を成功裏に実証することを可能にしました。

T-REX イベントの一環として、OUSD/R&E の評価者は AWS と GDIT のソリューションの評価を実施しました。評価者は 3 つの重要な作戦上の課題、8 つの目標、15 の有効性指標に関するデータを収集しました。これらの評価は、イベントの数日間にわたって、複数のセンサータイプとネットワークパスで繰り返し実施されました。

AWS は、インフラ支援を提供することで TF RDER のリソースプロバイダーとしても機能しました。AWS は、T-REX 25-1 参加者のソリューション同士、他の参加者のソリューション、TF RDER COP、そしてより大きなイベントネットワークの一部としてインターネットと AWS クラウドを接続するバックホール接続を提供しました。

「TREX において他の企業が自社の機能を実証できるよう、回復力のあるネットワークバックボーンを提供してくれた AWS に感謝したいと思います。T-REX を会場として活用することで、これらのイノベーションを関連性のある作戦環境でテストし、各社のコラボレーションを通じて作戦即応性を向上させることができます」と、Principal Deputy Assistant Secretary of Defense for Mission Capabilities (任務能力担当国防次官補首席代理) の Marcia Holmes 氏は付け加えました。

まとめ

防衛に関連するお客様向けに、AWS の商用クラウド技術に基づく商用アプリケーションを提供することは、国防の近代化に向けた重要な一歩を表しています。AI と自律システムを組み合わせ、AWS と GDIT は国防総省の任務指揮官の状況認識能力を強化するとともに、国家安全保障における官民パートナーシップの新たな基準を設定しています。

防衛に関連するお客様と共に、AWS が戦域をどのように再形成しているかについて、今後の情報にご注目ください。タクティカルエッジまたは AWS クラウドによるミッションのイノベーション施策を通じて、AWS はパブリックセクターに変革をもたらしています。国防の近代化における AWS の役割についての詳細は、AWS のウェブサイト「Cloud Computing for U.S. Defense」および「Tactical Edge」をご覧ください (英語コンテンツ)。

著者について

Dwayne Dickens

Dwayne Dickens

Dwayne Dickens は AWS のシニアテクニカルデリバリーマネージャーで、軍事および技術分野で 30 年以上のリーダーシップ経験を持っています。米国国防総省のアカウントを専門とし、クラウド導入と戦略的成果を推進し、大幅な収益成長に貢献しています。Dwayne は大規模プロジェクトの管理において実績があり、特にサイバーセキュリティ、衛星通信、IT 管理の分野で経験を積んでいます。Army War College で修士号を取得しています。

Graham Boone

Graham Boone

Graham Boone は AWS のソリューションアクセラレーションエンジニアです。通信情報分野での経験を持つ米国空軍の退役軍人で、Park University で学士号を取得しています。AWS では、エッジデモンストレーションを可能にするハードウェアプラットフォームとネットワークインフラストラクチャの設計、構築、サポートを行っています。ハイブリッドデプロイメントについてお客様にアドバイスを提供し、接続性や環境条件を問わず間断なく動作するミッションクリティカルなワークロードの実現に貢献しています。

John DeRosa

John DeRosa

John DeRosa は AWS のプリンシパル、プロダクトマネージャー(テクニカル)です。Amazon 入社前は、国防総省で文民職員、将校、兵士として 30 年間勤務し、統合軍、陸軍、特殊作戦司令部で戦略担当者を務めました。イラクおよびバルカン作戦の陸軍退役軍人で、George Mason University で博士号を取得し、National War College を卒業しています。

Tony Jacobs

Tony Jacobs

Tony Jacobs は AWS のソリューションアクセラレーションマネージャーです。タクティカルエッジでの運用を専門とするチームを率い、通信、コンピュート、統合の課題を解決しています。指揮統制システムでの経験により、パートナーが適切なデータ処理レベルで、サイズ、重量、電力の制約内で航空、水上、地上、宇宙システムを統合できるよう支援しています。機密システム、メッシュネットワーキング、軍用データリンク製品、レーダー解析、可視化のための商用ソリューション開発において、技術リーダーとして 25 年の経験を持っています。

このブログは WWPS Proposal Writer 中村昌幸が翻訳しました。