コンテナを使ってモノリスを分割する方法をグラレコで解説

2020-06-01
AWS グラレコ解説

Author : 安田 茂樹

本記事では、2019 年 9 月 15 日に AWS Summit Bahrain にて行われたセッションの 1 つである ”Breaking Up the Monolith with Containers (コンテナを使ってモノリスを分割する)” セッションの概要を、グラレコを使って解説します。

※ awsgeek.com は Amazon Web Services, Inc. プリンシパル・テクニカル・エバンジェリスト、ジェリー・ハーグローブが運営しているサイトです。

アプリケーションを開発していると、時間の経過とともに機能がどんどん増えていき、コードが複雑化・巨大化してしまう場合があります。開発チームも増え、他のチームに依存する機能が出てきたり、開発スピードが遅れたりしていきます。 

この課題を解決する方法の 1 つが、マイクロサービス化です。
単一の巨大なアプリケーション (モノリス) を独立した個別の小さなサービス (マイクロサービス) に分割することで、各サービスをそれぞれの担当チームが独立して設計・管理することができるようになります。
 

なお、各担当チームの人数に関し、Amazon/AWS では創業者のジェフ・ベゾスが提唱する Two-Pizza Team (ピザ 2 枚分の小規模チーム) というルールがあります。「各チームの人数は、ピザ 2 枚を分けられる人数を超えてはならない」というルールです。チームの人数が多すぎると、意思決定が遅れたり、効率的に動けなくなったりすることからこのようなルールが提唱されています。ルールに具体的なチームの人数は定められていませんが、1 人あたりピザ 4 分の 1 枚を食べると計算すると、各チームの最大人数は 8 名までとなります。

注意点として、モノリスの持つ機能を全て一度にマイクロサービスへ分割・移行するのは、費用対効果や、人員リソースの観点から現実的ではない場合があります。数ある機能の中から、まずは変更が頻繁に行われる機能を中心に徐々にマイクロサービスへ移行することで、マイクロサービスの特徴である「変更による影響範囲の局所化」のメリットを活かすことができます。 

なお、マイクロサービスに利用可能な AWS のコンピューティング環境としては

が挙げられます。

今回は、上記の中から「コンテナ」を利用する場合について見ていきます。
 

こちらの図が示すように、AWS の提供するコンテナサービスには、機能別に

  1. コンテナを管理するサービス : Amazon ECS または Amazon EKS
  2. コンテナをホスティングするサービス : Amazon EC2 または AWS Fargate

があります。通常は、1. と 2. の両方を組み合わせて使用します。
 

1. コンテナを管理するサービスとは、コンテナの状態をチェックし、設定に応じてスケールしたり、正常でないコンテナを正常なものと置き換えたりするサービスのことです。以下のうち、いずれかを選択します。

  • ECS – AWS が独自に開発したコンテナ管理サービスです。
  • EKS – コンテナ管理用オープンソースソフトウェアである Kubernetes のマネージドサービスです。既に Kubernetes を利用しており、引き続き AWS において Kubernetes でコンテナを管理したい場合はこちらを選択します。

2. コンテナをホスティングするサービスとは、実際にお客様のコンテナの実行場所となるサービスのことです。

以下のうち、いずれかを選択します。

  • EC2 – Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) の略。コンテナを EC2 インスタンスで動かす場合はこちらを選択します。ワークロードで必要になる CPU / メモリや、ソフトウェア構成を自身で設定・管理します。 Amazon Machine Image (AMI) を利用可能です。
  • Fargate – AWS Fargate の略。コンテナ向けの専用サーバーレスコンピューティングエンジンです。フルマネージド型サービスのため、コンテナが動作するホストのセキュリティパッチ適用などの運用は AWS が行います。

また、モノリスを複数のマイクロサービスに分割し、コンテナ化することで得られる主なメリットとしては、以下のものが挙げられます。

  • 必要に応じスケールする事によるコストの削減
  • チームに最適なツール類の利用
  • コンテナコミュニティのナレッジ・ツールの活用
  • アプリケーション開発の俊敏性の向上
  • マイクロサービス間の分離によるセキュリティの向上

続いて、分割されたサービス同士がどの様に通信するのかをアプリケーションレベルでみていきましょう。

コンテナ化された各マイクロサービス間の通信をプロキシ経由で行うことで、全トラフィックの監視・ルーティング制御が行えるようになり、可観測性 (Observability) の向上に役立ちます。

フルマネージド型サービスの AWS App Mesh を使うことで、Envoy (オープンソースのプロキシソフトウェア) を使用したサイドカー型プロキシを実装できます。  

最後に、全体の図を見てみましょう。

今回は「コンテナを使ってモノリスを分割する」方法の概要をご紹介しましたが、アプリケーションによっては、そもそもモノリスをマイクロサービスへ分割することが最善の方法ではない場合もあります。適切に分割することが難しかったり、マイクロサービス化によって生じる複雑性への対応がビジネス的に対価に見合わなかったりする場合もあるためです。そのため、あくまでケースバイケースで必要性をご検討頂ければ幸いです。

また、今回ご紹介した AWS のコンテナサービスの詳細に関しましては、こちらをご覧ください。

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筆者紹介

安田 茂樹

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
テクニカルコンテンツマネージャー

2014 年にアマゾンジャパン合同会社に入社後、デバイス試験部門にて発売前の数多くの Amazon デバイスの試験に携わる。2019 年より現職。
趣味は新しいガジェットを試すこと、旅行、食べ歩き。

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