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【開催報告】AWS Autotech Forum 2022
はじめに
みなさんこんにちは。ソリューションアーキテクトの眞壽田(ますた)です。2022年10月26日にAWSが主催する自動車業界向けイベント「AWS Autotech Forum 2022」を開催しました。AWS Japanでは、では自動車業界の皆様にクラウドを活用してビジネスを加速して頂くことを目指し、 2018 年より事例や最新技術の活用方法等をご紹介する本イベント「 AWS Autotech Forum」 を開催して参りました。今回で5回目となる本イベントはオンライン開催となりましたが、1000名以上の多くの方にご登録頂きました。今年は、次世代のコネクテッドカーや最先端の通信技術を取り入れた自動運転開発、さらには、その推進のための組織・人材といった課題まで、自動車業界の共通の関心事について、困難を克服しながらビジネス実装を進められている先進的なお客様にお取り組みをお話頂くことで、AWSとして業界全体の活性化を支援していきたいという目的のもと、AWSを活用されているお客様を代表して、本田技研工業株式会社、株式会社SUBARU、パイオニア株式会社、株式会社Mobility Technologiesにご登壇頂きました。
オープニング
– 竹川 寿也 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 事業開発本部 シニア事業開発マネージャー
オープニングでは、これまでAuto Tech Forumのあゆみをお伝えすると共に、今回のAuto Tech Forumのテーマ「自動車業界としてすでに普及期を迎えつつあるCASEへの対応と、さらに実践的付加価値を追求する次の一手は?」について、視聴者の皆様にどのように貢献できるかということをご説明しました。
AWSオープニングセッション
– 福嶋 拓 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 シニアソリューションアーキテクト
AWSオープニングセッションでは、AWSの自動車業界向けの最新テクノロジーの紹介として、AWSが分析している業界のトレンドであるCASE、次世代車両開発のためのSoftware Defined Vehicle (SDV)、それから自動車だけでなく多くの業界の関心事であるサステナビリティの実現を目指したESG(環境、社会、企業統治)への取り組みについて紹介しました。まずは、CASEのC, Connected Carに関するサービスとして、AWS IoT Fleetwiseの紹介。CASEのA, Autonomousとして、自動運転開発のシステム構築をサポートするためのリファレンスアーキテクチャーであるAutonomous Driving Data Framework (ADDF)のバージョンアップについて紹介しました。SDVについては、AWSのSOAFEEへの参画やクラウドネイティブな車載ソフトウエア開発ハンズオンの紹介を行いました。最後にAWSのサステナビリティに対する取り組みの説明と、AWSクラウドが自動車業界のお客様にどのように貢献できるかを紹介しました。
AWS オープニングセッション | AWS Auto Tech Forum 2022
Hondaコネクテッド領域におけるCCoEの取り組みについて
– 梅原 啓佑 氏 本田技研工業株式会社 ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部
– 元木 康貴 氏 本田技研工業株式会社 ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部
セッションでは、本田技研工業様は、2016年からグローバル共通で車側にテレマティクスコントロールユニット(TCU)が搭載され、本格的なコネクテッドサービスを開始し、2020年にはリモート操作などの便利な機能を追加され、こうしたシステムを支えるグローバルなクラウド基盤として2013年からAWSを採用されていることを冒頭でお話頂きました。さらに、2016年にはAmazon RDSなどのマネージド型サービスの利用、2020年にはAWS IoT, Amazon Kinesis, AWS Lambdaなどを用いたクラウドネイティブな設計でコネクテッドプラットフォームを刷新し、サービスのさらなる安定化とスケーラビリティの強化を実施してこられた現在までの変遷や、その開発を振り返りながら、プロジェクトでの実際の取り組みについてお話頂きました。次の動画では、本田技研工業様が、実際のプロジェクトから得た教訓を元に、クラウド推進組織(CCoE)を立ち上げ、そのプロセス、ポリシーや構造についてのお話を視聴していただくことができます。
Hondaコネクテッド領域におけるCCoEの取り組みについて | AWS Auto Tech Forum 2022
SUBARUコネクテッド自動運転研究の取り組み
– 小山 哉 氏 株式会社SUBARU 技術研究所
– 山口 史人 氏 株式会社SUBARU 技術研究所
セッションでは、2030年死亡交通事故ゼロを目指して技術開発を進められているSUBARU様に、自動運転研究の取り組みについてお話頂きました。SUBARU様が考えておられる自動運転は、システム故障に対する多重性、環境条件に対し広く対応できる冗長性が必要という前提において、今回用いたコネクトは、車両の自律センサに対して多重性、冗長性を担う第3のセンサという位置付けで利用されているとお伝え頂きました。コネクトには、AWS WaveLengthを用いて、クラウド側での管制制御、車両制御機能を検証されました。
私個人的な見解として、C-V2Xの様々なユースケースで用いられる通信において、将来どのような通信が主要な通信になるかは、今現在の2022年の時点では定かではありませんが、将来、通信のレジリエンスが強化されるであろう前提において、高負荷な制御をAWS WaveLengthのようなクラウドから延伸されたエッジクラウド環境で処理することで、車両側の負荷を減らし、車両の低価格化を実現できるのではないかと想定をしています。
パイオニア カーナビのクラウド化と固まっていた常識を変えるプロダクト開発
– 廣瀬 智博 氏 パイオニア株式会社 SaaSテクノロジーセンター Piomatixコアテクノロジー統括グループ LBS開発部
セッションでは、パイオニア様にPioneerカーナビ通信サービスの歴史について、2000年代初期からオンプレミスサーバー上でルート探索やサーバー地点検索をCGIで実行されていた時代から2010年ぐらいから徐々にクラウドサービスに移行し、現在はAWSに集約されていることを冒頭でお話頂きました。また、Workload実行のベースとしてコンテナを利用することで、オンプレからAWSへの移行はスムーズに実施され、現在はAmazon API Gateway、Amazon EC2、Amazon EKSを活用してルート探索機能を実装しているとお話頂きました。次の動画では、前述のアーキテクチャーのお話と、パイオニア様の最新サービスPiomatixや音声ナビの開発秘話についてのお話を視聴していただくことができます。
カーナビのクラウド化と固まっていた常識を変えるプロダクト開発 | AWS Auto Tech Forum 2022
イベント中に頂いたご質問とご返答
Q:カロッツェリアとPiomatixの関係、つながる計画でしょうか?ビジュアルから音声に来たのは、一件先祖返りのような気もしますが、人間的でとても良いと思いました。2001年宇宙の旅のHALの方向ですね。
A:ありがとうございます。具体的な計画はお答えできませんが、今後様々なプロダクトやサービスにPiomatixの活用を検討しています。音声を中心に考えたのは、クルマを運転中に最も適したインターフェースだと考えたからです。社内でもHALの他にナイトライダーやサイバーフォーミュラなど世代によっていくつかの作品が挙がります。(廣瀬氏)
Q:NP-1の次世代型の構想等はございますか?
A:具体的な製品の計画についてはご回答できませんが、NP1に関してもOTAによって大型アップデートを既に何度か実施しており、今後も続々アップデートを予定しています。(廣瀬氏)
Q:地方や、道路データが少ないところで工夫したところはありますか?
A:音声ナビは運転する際に注目する目印を使って音声で案内を行いますが、道路が少ない場所では目印になるものも少ないので何も目印がない場合は距離で案内したり、右ですというようなシンプルな案内になります。そのような場所では間違える他の道路も無いので、実用上は問題ありませんでした。(廣瀬氏)
MoT DRIVE CHARTにおけるAI開発とアーキテクチャ全容
– 森本 淳司 氏 株式会社Mobility Technologies(MoT) スマートドライビング事業部 システム開発部 AI基盤グループ
セッションでは、Mobility Technologies様でサービスされている、タクシーアプリ「GO」と、タクシーを起点により大きな課題解決をしていくというビジネス的なアプローチを冒頭でお話頂きました。また、AIを搭載したドラレコによる事故防止支援サービスであるDRIVE CHARTの機能概要とビジネス的な戦略アプローチについてもお話頂きました。後半のシステムのご説明では、リスク運転の検知を推論を使用していることに触れられ、それを実現する基盤として、Amazon ECS、Amazon SQS、Amazon Auroraを採用されていることをご説明頂きました。また、顔認証システムにおいては、Amazon SageMaker、Amazon Managed Workflows for Apache Airflow、Amazon EC2のGPUインスタンスを使用した学習パイプラインについても紹介頂きました。その他、AI開発者がロジック変更前後での変化点を検証するためのシミュレーション環境において、Amazon EKS + Kubelow Pipelineを採用されていること、さらに、Amazon EC2とAWS Systems Managerを使用してAI開発環境を構築していることもお話頂きました。詳細は以下の動画で確認頂くことができます。
DRIVE CHARTにおけるAI開発とアーキテクチャの全容 | AWS Auto Tech Forum 2022
パネルディスカッション
– 梅原 啓佑 氏 本田技研工業株式会社 ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部
– 元木 康貴 氏 本田技研工業株式会社 ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部
– 廣瀬 智博 氏 パイオニア株式会社 SaaSテクノロジーセンター Piomatixコアテクノロジー統括グループ LBS開発部
– 森本 淳司 氏 株式会社Mobility Technologies(MoT) スマートドライビング事業部 システム開発部 AI基盤グループ
– 竹川 寿也 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 事業開発本部 シニア事業開発マネージャー
パネルディスカッションでは、共通トピックとして「クラウド人材育成」についてお話頂きました。中でもパイオニア株式会社廣瀬氏には、組み込み開発者が多い開発チームにおいて、並列処理を実現する方法として(Amazon EKSを用いて)Podを何百個も構築された際に1つのリソースにアクセスするにはどうするか?といったような悩みに直面されたところから、AWSのアカウントチームがパイオニア様向けに開催した「Modern Application Day」を契機に、AWSのProServeチームによる教育支援が役に立ったというエピソードをご紹介頂きました。その他、登壇企業様に特化して「グローバルなコネクテッド基盤に関して、国の違いによって生じる課題に対してどのようにアプローチをしたか?」、「AI搭載の車載器(ドラレコ)開発の将来展望として、よりソフトウエアに価値にシフトされていくか、どのような展開が考えられるか?」といった、車載機器のSoftware Definedなアプローチに関する質問がありました。詳細は下記の動画でご視聴頂くことができます。
パネルディスカッション | AWS Auto Tech Forum 2022
おわりに
5年目となる今回の AWS Autotech Forum も、お客様からご自身の取り組みやソリューションについて紹介頂き、非常に貴重な機会であったと考えております。今後も先進的な取り組みを発信されたいお客様にイベント登壇頂き、これから取り組みを進める皆さまへの参考としていただけるように活動を続けて参ります。
過去のイベント
– AWS Autotech Forum 2019
– AWS Autotech Forum 2020 #1
– AWS Autotech Forum 2020 #2
– AWS Autotech Forum 2021
著者
Mobility領域のお客様を支援するソリューションアーキテクト。好きなAWSサービスはAmazon Managed Streaming for Apache Kafka (MSK)です。