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Infor が効果的な CFM 戦略で200万ドル以上を節約した方法
本稿は、2024年8月28日に AWS Cloud Financial Management で公開された “How Infor saved $2 millions with effective CFM strategies” を翻訳したものです。
多くの組織がクラウド財務管理 (CFM) を実践し、クラウドコストを最適化しようとしている中、世界的なリーディング・ソフトウェア・カンパニーである Infor は、コスト可視化から最適化に至るまで、さまざまな実践を試みてきました。このブログでは、自動化とモダナイゼーションの取り組みを通じて200万ドル以上の節約を実現するのに役立った、彼らの成功と学びを共有します。
概要
Infor はエンタープライズ・ソフトウェア製品をクラウドサービスとして提供しています。同社はクラウド上で業界向けスイートを構築し、ユーザー体験を改善しており、データサイエンスを活用して簡単に既存システムと統合することができるテクノロジーを展開しています。しかしながら、10,000を超える Amazon Elastic Cloud Compute (EC2) インスタンスとそれに関連するリソースを運用し、そのインフラコストを管理することは、Infor にとって大きな課題でした。
契機:コスト削減の取り組み
組織全体の取り組みの一環として、Infor は、AWS 上で稼働する安定したワークロードのコスト最適化を目指していました。メンバーアカウント全体の Amazon Cost and Usage reports (CUR) を分析した結果、 Amazon Simple Storage Service (S3) 、EC2、Amazon Elastic Block Store (EBS) など、複数のAWSサービスで高額なコストが発生していることがわかりました 。Infor には、AWS アカウント全体の主要コストを一か所で監視・管理するダッシュボードがありませんでした。チームは Amazon Elastic Load Balancer(ELB) 、EBS ボリューム、Elastic IP 、EC2 インスタンスなどの未使用リソースを自動でクリーンアップする AWS Lambda のカスタム機能を実装していましたが、この仕組みが適切に機能していることを監視する仕組みはありませんでした。 この課題に対処するため、Infor のインフラストラクチャチームは Amazon QuickSight と CUR を活用して、 AWS Organization 内のすべてのメンバーアカウントのコストを一か所で集中的に監視・管理できるダッシュボードを構築しました。また、現在の自動化された機能が期待どおりに動作するように改善することも計画しました。さらに、Infor チームは、AWS テクニカルアカウントマネージャ (TAM)と密接に協力し、現行のワークロードを分析してコスト最適化の機会を探りました。これらの結果、EBS ボリューム、スナップショット、S3 ストレージ、ELB など、削除可能な未使用リソースが判明しました。また、EC2 インスタンスを適切なサイズに調整し、最新世代のインスタンスタイプに移行することでさらなる節約が可能であることが分かりました。
「私たちは、コスト節減の推奨事項を実施するための自動化ソリューションを作成し、大幅なコスト削減を実現しました。AWS Cost and Usage Report によって可能になったコスト分析と、AWS テクニカルアカウントマネージャ (TAM) から提供されたレポートの洞察は、コスト削減の機会を特定し、優先順位付けするうえで非常に有益でした。」
Santhosh Simhachalam
Director, Cloud Services Infor
ソリューション:コスト最適化のための自動化とモダナイゼーション
Infor は、集中管理ダッシュボードから得られた洞察を活用し、継続的に AWS アーキテクチャを改善し、コスト最適化を実践しました。Infor のインフラストラクチャチームは、AWS Lambda 、AWS Systems Manager State Manager 、Amazon EventBridge 、Amazon Simple Notification Service (SNS) を使ってカスタマイズされた自動化の仕組みを構築することで、コスト最適化の機会を自動的に検出・対処し、使用されていないリソースを排除しました。
チームは、終了させるリソースを特定するためのいくつかのルールを設定しました。
- 6か月以上前の Amazon Machine Images は、ストレージコストを削減するために自動的に削除する。
- 3日間アクティビティのない EBS ボリュームは、リソースの無駄を最小限に抑えるために削除する。
- バックエンドインスタンスが正常でない Elastic Load Balancers は、30日間の非アクティブ期間後に終了する。
- 4 週間以上非アクティブな EC2 インスタンスは、自動的にスナップショットを作成して終了(ターミネート)する。また、特定のリソースタグでマークされたインスタンスを除外するオプションを追加した。
Infor のこうした自動化の取り組みにより、さまざまな AWS サービスを柔軟に活用しながら、同時にコストをコントロールすることが可能となりました。
また、Infor は以下のようないくつかのコスト最適化を実践しています。
- EBS ボリュームは、汎用SSDボリューム (gp2) から汎用 SSD ボリューム (gp3) ストレージに移行され、年間100万ドル以上のコスト削減が実現した。
- AWS Compute Optimizer を使用することで、Infor は EC2 インスタンスを適切なサイズに調整し、既存の第4世代と第5世代のインスタンスから第6世代のインスタンスタイプに EC2 を移行することができた。EC2 を最適化し適切なサイズに調整したことで、本番環境と非本番環境の両方のワークロードで月額80万ドルのコスト削減が実現した。
- Amazon S3 Storage Lens により、Infor は大規模な S3 バケットのストレージ使用パターンを可視化できた。これにより、使用されていないバケットから 10TB のストレージを削除することができ、適切なライフサイクルルールがないバケットも特定できた。ライフサイクルポリシー が実装され、期限切れのオブジェクトを自動的に削除するようになった。分析の結果、相当量のデータが標準ストレージ層に保存されていることが判明し、オブジェクトを Amazon S3 Intelligent-Tiering に移行することで最適化を図ることができた。これらの最適化により、Infor は月額1万5千ドルの S3 ストレージコスト削減を実現した。
- 最後に、Infor のチームは、予想以上に高コストとなっていた AWS CloudTrail のログについて使用状況を確認し、ログ保持ポリシーを見直し、使用されていないデータを削除してコストを最適化した。これにより、月額1万7千ドルのコスト削減が実現した。
このようにインフラストラクチャチームは、AWS のスケーラブルなサーバーレスと自動化機能を活用し、リソースを積極的に最適化してコスト削減を実現しました。
結果と次のステップ
コスト最適化の取り組みにより、230万ドル以上のコスト削減が実現しました。自動化の導入と AWS のベストプラクティスの適用により、チームはクラウドインフラストラクチャを最適化し、コスト超過を防ぐことができました。 次のステップとして、チームは他の Infor のチームと協力し、これらの学びと自動化スクリプトを共有することで、組織全体でのコスト最適化を目指しています。
著者について
Sunil Kumar Patro は、AWSのシニアテクニカルアカウントマネージャです。19年以上にわたり、マルチテクノロジー プラットフォームの設計と導入を推進してきました。グローバル企業の顧客と協力し、AWS で拡張性、モダナイズ性、コスト効率の高いソリューションを構築しています。Amazon EKS の専門家として、顧客が EKS のベストプラクティスを採用できるよう支援しています。
Shri Hamilpurkar は、14年以上のIT業界経験を持つ戦略的アカウントのテクニカルアカウントマネージャです。顧客にAWSソリューションの実装と複雑な問題の解決のための技術的ガイダンスを提供しています。彼の強みは、セキュリティ、ネットワーク、コスト最適化です。仕事の合間には、レストラン探索や家族との質の高い時間を過ごすことを楽しんでいます。
翻訳は、カスタマーソリューションマネージャの大東が担当しました。