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AWS Wavelengthでのエッジキャッシング
エッジキャッシングとコンテンツ配信ネットワーク(CDN)はオーバー・ザ・トップ(OTT)とオーバー・ザ・エア(OTA)の配信で重要な役割を担っています。エッジキャッシングとCDNはオリジンサーバーや長距離ネットワークの負担を軽減しつつ、ユーザーデバイスの近くにデータを一時的に置いておくことで地理的な配信を可能にします。これにより数千人のユーザーがより大きな都市圏や地域においてレスポンスタイムを短縮しながらコンテンツに効率的にアクセスできるようになります。
この記事ではエッジキャッシングを「最初のデータソース(オリジンサーバー)からのデータを、データソースから離れたデバイスで消費するために中間で保存すること」と大まかに定義します。データはオリジンサーバーからエッジキャッシュによって取得され、後続の「近隣」のデバイスはエッジキャッシュからコンテンツを取得します。CDNでは、エッジキャッシュが1つまたは複数のCDNエンドポイントにサービスを提供し、そのエンドポイントが多くのデバイスにサービスを提供します。これは単一のアセット(静的なウェブページやオペレーティングシステム(OS)のアップデートなど)の場合もあれば、ライブストリーミングコンテンツの場合もあります。一般的に、エッジは非相互的(コンテンツを提供するだけで、受信はしない)で、人口が大規模な地域にあり、国際的には国全体、米国ではいくつかの州をカバーしていることが多くなっています。
どうしてエッジキャッシングやCDNが必要か?
インターネット上で動画やデータを配信するための主要なプロトコルであるHTTP(S)は、トランスポート層としてTCP(Transmission Control Protocol)を使用しており、RTT(Round Trip Time)は、TCP接続の最大ビットレートを決定する基本的な要素です。TCPパケットを送信するたびにACK(acknowledgement of receipt)が必要となるため、RTTが高ければ高いほど、ACKが遅ければ遅いほど、可能な最大ビットレートは低くなります。CDNとエッジキャッシングがなければ、オリジンサーバーまでの距離が長くなり、RTTが増加してビットレートが制限されるため、利用可能な帯域幅にかかわらず速度が低下します。最高品質のビデオコンテンツを求めている場合でも、最新のOSアップデートのダウンロードを待っている場合でもスピードが重要であることはご存知の通りです。
20年前、CDNはデバイスがネットワーク上のより近くに、より低いRTTとより速い速度で接続できるようにすることで、距離がもたらす問題を解決しました(当時の消費者にとって妥当といえる帯域の速度まで)。また、需要の急激な増加に応じて接続数を拡張することもできました。CDNはコンテンツをデバイスに配信するため、オリジンサーバーへのネットワークストレスや帯域幅の奪い合いを軽減することができます。CDNの利用は年々大幅に増加しています。今日CDNは、ユーザーとの双方向のやり取りを除いて、大規模なイベントのコンテンツ配信、様々な形でのOTTサービス、膨大なVODライブラリをサポートしています。
家庭用インターネットのギガビット化やモバイルの5G化が進む中、サービス加入者はより多くの帯域を利用できるようになり、いつ、どこで、どんなデバイスを使っていても、より高い品質が求められるようになりました。 従来のCDNはこのような低遅延で高速なラストマイルへの接続を利用するようには設計されていませんでした。さらにコンテンツオーナーにとっては、従来のCDNでは視聴指標やセッションインサイトの可視性が限られています。(詳しくは、後述の「コンテンツオーナーのために」のセクションをご覧ください)
では、5Gが提供する低遅延(RTT)・超広帯域の接続によって、加入者やコンテンツオーナーはどのような恩恵を受けるのでしょうか?加入者が旅行などの出先で、自宅のブロードバンドで得ているのと同じ高品質を期待する場合、コンテンツ・オーナーはどのように対応すべきでしょうか? AWS Wavelengthとパブリック5G接続は、より高速で高品質なモバイル体験を可能にし、インタラクティブなコンテンツのような加入者の体験を向上させます。
キャリアエッジでのキャッシング
AWS Wavelengthは、AWSリージョンのインフラをモバイルキャリアネットワークに直接拡張したもので、幅広く、奥深いAWSサービスへのアクセスを提供します。通信事業者のモバイルネットワークのエッジに組み込まれることで、開発者はアクセスするデバイスと同じ高速・低遅延の通信事業者のネットワーク上で、コンテンツやデータの可用性を最適化し、これまでにないアプリケーションを作成することができます。大都市圏では複数のWavelength Zoneを使用することができ、各通信事業者は個別のWavelength Zoneを持っているため、コンテンツやデータを地域や通信事業者に合わせて利用することができます。
キャリアネットワークの中でエッジでの分散型キャッシュにより、加入者は現在のCDNやエッジソリューションと比較して、より優れたユーザー体験を得ることができ、より速いダウンロードが可能になります。キャリアネットワークの低いレイテンシーと高い利用可能なスループットが、AWS Wavelengthのネットワーク内エッジコンピュートと組み合わさることで、起動時間の短縮、高品質、ビデオコンテンツの機能強化、没入型およびインタラクティブな体験、OSやアプリケーションのアップデートなどのデータダウンロードの改善が可能になります。AWS Wavelengthのエッジキャッシングは、10万人以上の視聴者を対象としたスペシャルイベントから、最新のソフトウェアアップデート、遠隔医療、コネクテッド・オートモービルまで、多くの同時接続に対応したスケーリングをサポートします。また、オリジンサーバー、ピアリング、インターネットリンクへの負担を軽減します。コンテンツの所有者は、セッションデータをより正確に把握することで、コンテンツの評価をより明確にすることができます。また大量の視聴や配信だけではなく、エッジに近い場所でキャッシュを運用することでエッジからのオリジネーションが可能になります。
AWS Wavelengthのエッジキャッシュは、アプリケーションや処理、AI/MLにAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)のコンピュートインスタンス、ローカルストレージにAmazon Elastic Block Storage(Amazon EBS)やAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)、Amazon RDSなどのデータベースがご利用可能です。アプリケーションロードバランサーの背後にあるWavelength にエッジキャッシュアプリケーションおよびデータソリューションを展開することで、キャリアネットワーク上の加入者は、キャッシュフロントエンドとデータストリーミングサービスに直接アクセスすることができます。デバイスからは、インターネットに接続したり、AWSリージョンに接続したりすることなく、キャリアネットワーク上で直接コンテンツをダウンロードします。ユーザーは低遅延でアプリケーションで双方向通信を行うことで、臨場感あふれる体験をすることができます。AWS Wavelength Zoneへのリソースのデプロイは、AWSマネジメントコンソール、CLI、SDKを使って他のAvailability Zoneにデプロイするのと同様に簡単です。コンテンツオーナーは、Amazon Machine Images(AMI)とAWS CloudFormationを使用して、高トラフィックが予想されるエリアにエッジキャッシュサーバを迅速かつ容易に配備することができます。
例えば大規模なスポーツイベントが開催され、10万人以上のファンが数日間にわたって首都圏に集まり、チームや選手、他のファンとの交流を楽しみたいと考えているとします。ファンは、複数のカメラアングル、オンデマンドビデオ、リアルタイムの選手情報、どの会場の入り口が一番短い列になっているか、試合当日のおいしい食べ物はどこにあるかなど、イベント特有のコンテンツを求めているはずです。チケットを持っていないファンでも、超低遅延のストリーミングコンテンツやリアルタイムのスタッツにアクセスして試合を楽しむことができます。 これによりどこにいても、すべての視聴者が、勝利の喜びと敗北の苦しみを味わうことができます。
ライブに加えて、VOD(Video on Demand)コンテンツは、最も必要とされる場所に事前に配備することができ、インターネットネットワークの競合を排除しながら、加入者に高速で予測可能なパフォーマンスを提供し没入感のあるエンゲージメントを実現します。
キャリアエッジでのキャッシングは大規模なビデオイベント(スポーツ、特別番組、シーズンプレミア)、OSやアプリケーションのアップデート、自動車や地図のアップデート、ヘルスケア、さらにはテレビ放送や緊急警報など、革新的なユーザー体験を可能にします。 またAWS Wavelength上で動作するエッジキャッシュはキャリアネットワーク上にあるため、ネットワークのホップ数が最も少なく、デバイスに最も近い場所でコンテンツを利用することができます。
アップストリームデータとハイパーローカルアクセス
モバイルキャリアのネットワークにAWS Wavelength Zoneを設置すると、アップストリームのユースケースも可能になります。ここではコンテンツやデータは、ビデオカメラやオリジン・サーバーなどの5Gネットワーク上のデバイスや自律型デバイスから発信され、低遅延が成功に不可欠となります。ビデオオリジネーションの場合、大量配信が必要なハイパーローカルイベントに役立ちます。例えば、スポーツイベントで異なるカメラアングルを共有したり、地域の災害に関する重要な情報を、長距離接続でなくても一度に多くの人に配信したりすることができます。 また、自動車やロボットなどの自律型デバイスでは、AI/MLを活用してアイデンティティや制御を行い、遠隔医療では、簡単な遠隔医療予約から遠隔手術までが実用化されます。
コンテンツオーナーのために
AWS Wavelengthでエッジキャッシュを運用することで、加入者やコンテンツオーナーの体験を向上させることができます。5Gサービスが提供する低いRTTと高い帯域幅と組み合わせることで、加入者は品質の向上(4Kビデオ以上)、応答性の高いアプリケーション・パフォーマンス、そして、ほぼリアルタイムのインタラクションやAR/VR/XRなどの機能を利用できます。独自のキャッシュを運用するコンテンツオーナーは、キャッシュサーバとデバイスアプリケーションの両方から、デバイスタイプ、消費量、継続時間、ユーザーエクスペリエンス、チャンクサイズ、ビットレート、Adaptive Bit Rate(ABR)ラダースイッチなど、実際のメトリクスを収集することができます。コンテンツ所有者は、これらのメトリクスを素早く繰り返し活用することで、加入者の体験を継続的に改善し、コンテンツや広告の在庫を適切に管理することができます。
エッジにおけるビデオコンテンツのABRラダーを最高品質のものだけに限定することで、コストと価値の向上を実現できます。デバイスはより近くで接続されるため、より高いビットレートで接続し消費することができます。このビットレートを達成できないデバイスは、従来のCDNにフォールバックすることになります。AWSのサービス、またはAWSパートナーのソリューションは、場所、能力、コンテンツの可用性、および容量に基づいて最適なキャッシュをプログラムで選択することができます。
消費者が差別化されたサービスを求める中、コンテンツプロバイダーは、AWS Wavelengthのエッジキャッシングなどのソリューションを5Gサービスと組み合わせることで、顧客体験を向上させ、視聴やデータ転送セッションの透明性を高め、配信コストを削減することを検討する必要があります。AWS Wavelengthは、現在、米国の10都市と海外の3都市で一般提供されており、2021年までにさらに拡大する予定です。AWSパートナーは、すでにエッジキャッシングやその他の差別化ソリューションを提供しています。 エッジキャッシングの詳細については、AWS Telecomをご参照ください。
参考リンク
AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)
AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
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翻訳は BD山口とSA小林が担当しました。原文はこちらをご覧ください。