Amazon Web Services ブログ

【開催報告】第9回鉄道技術展2025 AWS出展報告

2025年11月26日から29日の4日間、千葉県の幕張メッセにて「第9回鉄道技術展2025(Mass-Trans Innovation Japan 2025)」が開催されました。AWSはこの展示会に出展し、クラウドとAIを活用した鉄道保全システムのソリューションをご紹介しました。

1. 鉄道技術展とは

鉄道技術展(Mass-Trans Innovation Japan)は、鉄道に関する最新技術や製品、サービスが一堂に会する日本最大級の専門展示会です。車両、軌道、電気、信号、通信、保安、運行管理など、鉄道事業に関わるあらゆる分野の技術革新が紹介される場として、鉄道事業者、メーカー、研究機関など業界関係者が集まる重要なイベントとなっています。

主催者による発表によると、今年は4日間で39,120人の方が来場されたとのことです。
詳細は公式ホームページ (https://www.mtij.jp) をご覧ください。

2. AWSが提案する鉄道保全の未来

今回のAWS出展では、「クラウドとAIで変革する鉄道保全」をテーマに、鉄道保全業務が抱える課題に対し、IoTと生成AIを活用したソリューションをご紹介しました。

鉄道保全現場が抱える3つの課題

現在、鉄道保全の現場では深刻な課題に直面しています。

  • 第一に、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足です。鉄道機械メンテナンス従事者の減少が進む中、技能労働者の大量退職時代を迎えており、効率的な技術・ノウハウ伝承が急務となっています。
  • 第二に、保全対象機器の増加です。従来の鉄道機械に加え、ホームドアなどの旅客サービス向上のための新機器が増加しています。また、「省力化」のために導入した機械が、逆にメンテナンス対象を増やすというジレンマが生じています。
  • 第三に、情報資産の複雑化です。作業記録などの非構造化データが多く、管理が困難になっています。また、個別最適化によるシステムのサイロ化により、情報が散在している状況です。

3つの柱で構成されるソリューション

AWSが提案するソリューションは、これらの課題に対して3つの主要コンポーネントで構成されています。

ソリューション1:設備状態のリアルタイム把握

鉄道事業者が管理する設備は、駅のホームドアや改札機、券売機から、沿線に点在する電気設備まで多岐にわたります。これらの設備をネットワークで接続し、AWS IoT Services ( AWS IoT Core , AWS IoT SiteWise ) を活用することで、リアルタイムの状態監視が可能になります。

各設備から収集されたデータは、集中センターのダッシュボードに集約されます。オペレーターは、現地に赴くことなく、すべての設備の稼働状況を一画面で把握できます。異常が発生した際も、ダッシュボード上で即座に検知し、迅速な対応が可能になります。

AWS IoT SiteWise は、産業データを大規模に収集・整理・分析するためのマネージドサービスです。複数のデータソースから自動的にデータを取り込み、構造化し、パフォーマンス指標を計算します。リアルタイムデータと過去のデータを組み合わせて可視化することで、設備の稼働状況を常に把握できる環境を提供します。これにより、 IoT による機器データの自動収集と可視化を実現し、効率的な設備管理を支援します。

Grafanaを活用したダッシュボード画面

ソリューション2:イベント把握と初動調査支援

設備に異常が発生すると、AWS IoT SiteWiseが即座に検知します。この異常情報は、Amazon Bedrock Knowledge Basesを活用した生成AIアプリケーションに自動連携されます。

AIは膨大なオペレーションマニュアルやメンテナンスログから、その異常に関連する対応方法を瞬時に検索・抽出します。オペレーターには、異常の通知と共に具体的な対応手順が提示されるため、マニュアルを探し回る必要がありません。

Amazon Bedrock Knowledge Basesは、検索拡張生成(RAG)をフルマネージドで提供します。文書管理から情報検索、回答生成まで一貫して自動化されており、過去の類似事例や推奨される対応手順を即座に提示できます。これにより、経験の浅い担当者でも、ベテランと同等の初動対応が可能になります。

RAGを活用したメール通知サンプル

ソリューション3:関係システムの情報把握支援

AWS IoT SiteWiseが検知した異常イベントは、Amazon Bedrock AgentCoreでホストされるAIエージェントにも自動的に連携されます。

AIエージェントは、異常対応に必要な情報を多方面から自動収集します。まず輸送計画システムにアクセスし、設備異常が影響を及ぼしうる列車を推定します。次に設備管理システムから、対象機器のメンテナンス計画や実績、過去に報告された異常情報を調査します。これらの分散した情報を統合し、輸送への影響範囲、過去の類似事例、推奨される修理時間帯など、判断に必要な情報をワンストップで担当者に提示します。

Amazon Bedrock AgentCoreは、柔軟性の高いAIエージェントプラットフォームです。任意のフレームワークやモデルを使用してエージェントを作成でき、安全でスケーラブル、かつ信頼性の高い運用を実現します。担当者は、複数のシステムを個別に確認する手間から解放され、AIが統合した情報をもとに迅速かつ的確な判断が可能になります。

異常通知を契機にAIエージェントが自動収集した内容を保守担当者にメール通知します。これにより、多岐にわたる関連情報を迅速に把握することができます。

AIエージェントが作成したメールのサンプル

追加で情報を確認するためのチャット機能を備えています。Amazon Bedrock AgentCore Memory を活用することで機能間で情報が分断されることなく、発生事象などの背景情報を踏まえたやりとりが可能となります。

AIエージェントチャット機能の画面

3. デモンストレーション環境

今回の展示では、実際の鉄道運用を想定したデモンストレーション環境を構築しました。8つの駅に設置された257台のデバイスを管理する環境をシミュレーションしました。

来場者の皆様には、実際の画面操作を通じて、異常検知から対応完了までの一連の流れを体験いただきました。特に、生成AIが過去のメンテナンスログから関連情報を抽出し、具体的な対応手順を提示するデモンストレーションは、多くの関心を集めました。

デモソリューションのアーキテクチャ図

4. 来場者の声

展示ブースには、鉄道事業者、車両メーカー、保守事業者など、多くの業界関係者の方々にお越しいただきました。

実際にデモンストレーションをご覧になった方々からはこういった仕組みを導入したいと考えていた、まさに今導入に向けて検討を進めているといったお言葉もいただきました。

鉄道事業者様からは、「新人にとっては非常に良いソリューションになり得る」といったコメントや「ここからさらに作業計画書や実施報告書が作れると最高だね」と言ったアドバイスもいただきました。
メーカー様からは、「納品した機器のマニュアルに書いてある範囲で緊急の用件の問い合わせをよく受けるため、こういったソリューションがあると我々としても非常に助かる」と言った前向きなコメントをいただきました。
また鉄道事業者様、メーカー様の数名の方からは「今まさにこういったソリューションが欲しかったんです」といった今すぐ使いたいという非常にありがたいお言葉もいくつかいただきました。

5. まとめ

今回の第9回鉄道技術展2025への出展を通じて、鉄道業界が直面する労働力不足や技術継承といった課題に対し、クラウドとAIがどのように貢献できるかを具体的にお示しすることができました。

AWSは、AWS IoT Services ( AWS IoT Core , AWS IoT SiteWise ) 、Amazon Bedrock Knowledge BasesAmazon Bedrock AgentCoreといった先進的なサービスを組み合わせることで、鉄道保全業務の効率化と高度化を実現します。リアルタイムの設備監視、AIによる対応支援、複数システムの情報統合という3つの柱により、労働力不足という課題に直面しながらも、安全で信頼性の高い鉄道サービスを維持・向上させることが可能です。

鉄道は社会インフラの根幹を支える重要な産業です。AWSは、クラウドとAIの力で鉄道業界のデジタルトランスフォーメーションを支援し、持続可能で効率的な鉄道運営の実現に貢献してまいります。

今回の展示にご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。AWSの鉄道向けソリューションにご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


著者

岩永 昌寛
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

西部 信博
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 シニアカスタマーソリューションマネージャー

鈴木 真史
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 シニアソリューションアーキテクト

堀 竜慈
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

宮﨑知洋
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト