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速報:AWS Summit Washington, DC 基調講演 – 2021秋
今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、この秋に開催された「AWS Summit Washington, DC 基調講演 ハイライト」を紹介します。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。(以下、米国現地のAWS Public Sector Blog Teamが執筆したブログの翻訳となります。)
コロナが契機となったイノベーション
政府およびセキュリティ・サービス
AWS Marketplace上で米国の公共部門のお客様向けに Zoom の製品リストを発表
AWS は、米国公共部門のお客様向けに AWS Marketplace上で Zoom の製品リスト (Zoom と Zoom for Government) を提供開始します。AWS GovCloud (米国) において米国政府機関におけるクラウドセキュリティ認証制度 (FedRAMP、Federal Risk and Authorization Management Program) が認定した Zoom for Government プラットフォームが利用可能になることにより、連邦政府機関、州政府、地方自治体は、セキュアでシームレスな方法で通信プラットフォームを刷新できます。
VMWare Cloud on AWS GovCloud (米国) が High Impact レベルで FedRAMP Agency Authority to Operate (ATO) を達成
VMware Cloud on AWS は、公共部門の IT チームがクラウド内のインフラストラクチャをシームレスに拡張・移行・保護できるスケーラブルなオンデマンド ハイブリッド クラウドサービスを提供します。VMware Cloud on AWS GovCloud (米国) が FedRAMP の High Impact レベルの機関認可を取得したことで、公共部門の各機関は FedRAMP プログラムの高度なセキュリティと低コストのメリットを享受しつつ、機密性の高い政府機関のワークロードを実行しながらコンプライアンスを維持することができます。
政府機関はAWS を使用してセキュリティとミッション・レディネスを維持
世界中で 7,500 を超える政府機関が AWS を利用しています。パンデミックに見舞われて以降も、政府サービスが完全に閉鎖されることはありませんでしたが、対面での職員対応は制限される一方で、政府サービスに対する市民の要求は急増しました。失業手当の支給から、緊急ホットラインの提供、そして急増する健康データの新しい管理手法まで、公共部門の各組織はクラウドを使用して今までになかった方法でサービスをスケールさせ、提供することが求められているのです。そして、AWS は、政府機関がこれらの重要なミッションに対応していくことを支援し続けていきます。
昨年2020年の夏、米 民主・共和両党の全国大会は、歴史的に数日間にわたって開催されていた従来型の対面イベントから、仮想イベントへのドラスティックな変更を余儀なくされました。両党は、外部からの情報セキュリティの脅威に対処しながらも失敗の許されない、限られた時間枠で大統領選の直前の全国大会を開催したのです。どちらの全国大会も、AWS を使用することにより成功裏に終了しました。
また、2016 年にオーストラリア政府は、一連のDDoS(サービス拒否)攻撃、ハードウェア ルーターの障害、そしてデータの不正流出に関する誤検出報告が原因で、国勢調査ウェブサイトをシャットダウンしなければなりませんでした。過去 2 年間、AWS パートナーの PwC Australia と AWS は、2021 年の国勢調査に向けて、堅牢なデジタルサービスの構築に取り組んできました。今月[=2021年9月]初めの時点で、政府は推定 930 万件の国勢調査フォームを受信し、そのうち 750 万件がオンラインで入力されたものでした。オーストラリア政府は、2021 年の国勢調査を「成功」と見なし、中断や、過度に長い待機時間、そしてセキュリティ侵害はいずれも発生しなかった──としています。
AWSは、政府機関がコンプライアンスとセキュリティを維持することを支援
公共部門の組織が満たさなければならないセキュリティとコンプライアンスの要件は、増え続ける一方です。EU の Schrems II 判決や GDPR、そしてサイバーセキュリティに関する米国大統領令は、公共部門の組織が直面している規制環境の要件増加を示す一例に過ぎません。AWS は、お客様がリソース、専門知識、テクノロジー、プロフェッショナル・サービスにアクセスすることを支援し、米国大統領令で義務付けられているセキュリティとコンプライアンスの要件を満たすためのタイムラインを短縮しています。
6 月、AWS は Wickr社の買収を発表し、エンドツーエンドの暗号化コラボレーション製品を市場に投入しました。米国の国家安全保障局 (NSA) が「テレワークのコラボレーションサービスの選択と安全な使用に関するガイド」を発表した時点で、Wickr社は、米国を拠点とし、かつ、すべてのセキュリティ要素を満たしている唯一の企業でした。
”必要とされるスピード”で動く米国空軍
米国空軍省(US Air Force)の最高情報責任者(CIO) Lauren Knausenberger 氏は、クラウドによって組織が時間とリソースを節約し、ミッション・クリティカルなタスクに集中できるようにする方法に関する興味深いストーリーを提供してくれました。
「今まで不可能だったことが、日々出来るようになっているのです」──と Knausenberger 氏は述べています。多くの政府機関と同様に、空軍省は旧式のプラットフォームで複数のサイトとアプリケーションを実行していました。米国空軍は複数のクラシフィケーション・レベル[の情報分類]に及ぶマルチ・ハイブリッド・クラウドへの移行に取り組んでいて、その大部分は AWS で実行されています。これにより、ローンチと認定の時間の短縮、「必要とされるスピード(at the speed of need)でのデプロイ」、時速 400 マイルで移動しながら航空機に燃料を補給する方法などの課題解決、そしてコネクティビティ・インフラストラクチャが制限されているエリアにおいてはエッジデバイスの使用によって隊員のコネクティビティ維持──を実現しています。スピードの実現には、これまで必要とされていた900もの事務手続きを合理化できたことも大きいと、同氏は強調します。Knausenberger 氏は「私たちはサイバー領域で多くの課題を抱えています」としながらも、大部分が自動化されたセキュリティ・ソリューションによってデータを安全に保持するための「すばらしい環境をセットアップできました」──と、彼女は登壇を締めくくりました。
ヘルスケア
AWS が「健康の公平性」に関するイニシアチブ・プログラムを開始
AWS は、クラウドテクノロジーのパワーを活用し、健康の公平性をグローバルに推進することを目的に、 3年間にわたる 4,000 万 USD を拠出するコミットメントを進めています。このプログラムでは、AWS は 3 つの分野 (サービスが十分に提供されておらず過小評価されてきたコミュニティにおける保健および社会サービスへのアクセスの向上、健康の社会的/行動的決定要因の改善、および、より公平なケアシステムを導入するための介在の特定と通知) において、健康の公平性を推進している世界中の対象組織に AWS のプロモーショナル・クレジットと技術的な専門知識を提供しています。
AWS は Children’s National Hospital の 150 周年記念に 100,000 USD を寄付
「Children National Hospital」 の研究者は約 10 年間にわたって AWS を使用し、ビッグデータに基づいてがんと闘うためのパーソナライズされたケア戦略の開発、遺伝子ターゲットの特定、将来の治療法を発見する可能性のある分野の予測を行うための画期的な研究を推進してきました。ワシントン DC にある新しい独創的な Research & Innovation Campus では、多くの子供たちの生命を救い、生活を向上させるために AWS が活用されています。来月、Children’s National Hospital では、150 周年記念イベントの一環としてバーチャル 5K (競技レース)の「Race for Every Child」の開催が予定されています。AWS は 100,000 USD の寄付を行う予定です。Children’s National Hospital の革新的な研究と「Race for Every Child」への参加方法の詳細については、こちらをご覧ください。
教育とワークフォース開発
学校と EdTech がクラウドを使用して生徒をサポート
パンデミックから生徒の安全を守るために休校を余儀なくされたとき、教育機関はほぼ一夜で、遠隔のバーチャル学習環境に移行しなければなりませんでした。ボイシ州立大学工学部がオンライン授業を開始したとき、学生は、それまでキャンパスのコンピュータでしか利用できなかった特定のソフトウェア・プログラムにアクセスする必要がありました。授業を順調に進めるために、同大学は Amazon AppStream 2.0 を使用して、ブラウザを介してアプリケーションをストリーミングする仮想コンピュータラボをセットアップし、学生が重要なソフトウェアにアクセスしてオンラインで授業を受けることを可能にしました。
教育工学 (EdTech) 企業は、学業の達成度を向上させると共に、学生の健康と精神的安定をサポートするためにクラウドを使用しています。Indigo Education Company のような EdTech 企業は、Amazon CloudFront を使用して、ベトナム、コロンビアから中国、そして米国まで、学生に社会的および精神的な健康をサポートするさまざまなオンラインコースとチュートリアルコンテンツを提供しています。
AWS ワークフォース トレーニング イニシアチブが
次世代の優秀なクラウドエキスパートを育成
テクノロジーが発達するにつれ、公共部門の組織では、最先端テクノロジーを活用するために優れたワークフォースのニーズが拡大しています。昨年 12 月、Amazon は 2025 年までに世界中の 2,900 万人のユーザーにクラウドコンピューティングのスキルトレーニングを無償で提供することを発表しました。
その目的の下、AWS は米国の 8 つの州とのコラボレーションを開始し、コミュニティカレッジ、4 年制の教育機関、および高校と協力して、学位、専門分野、証明書、トレーニングプログラムの開発を支援しています。また、AWS は最近、ラテンアメリカへの AWS re/Start プログラムの拡張を発表し、5 つの国 (コロンビア、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ペルー) に導入しました。
ヨーロッパでは、スペインのアンダルシア州政府と協力して、今後 2 年間で同地域の高等教育機関向けのクラウド・コンピューティング・カリキュラムを提供しています。3 月下旬以降、AWS はアンダルシアの 700 人以上の教育者にバーチャルのプロフェッショナル開発トレーニングを提供してきました。この新しいコラボレーションでは、105 の学校で 6,000 人の学生を対象に、このクラウド・コンピューティング・カリキュラムが 175 以上の IT コースで提供される予定です。公共部門がグローバル ワークフォースのスキルを向上させ、クラウドのキャリアの拡充を計画している今日、このコラボレーションは世界中の他の地域のモデルになると期待されています。
ユタ州政府機関は AWS でモダナイゼーションを実現してスタッフのスキルを向上
ユタ州政府の Department of Human Services (DHS) Office of Recovery Services (ORS) のディレクターを務める Liesa Stockdale 氏は、コラボレーションに関する強力なストーリー、および 1 つの機関のデジタルトランスフォーメーションがユタ州全体のワークフォースの刷新にどのように役立っているかを共有してくれました。
1995 年に COBOL でプログラミングされた ORS のメインフレーム・システムが時代の流れに取り残され始めたとき、Stockdale 氏は変革の必要性を実感しました。「私たちは退職した COBOL プログラマーを雇っていました」──と語る Stockdale 氏は、システムを維持するためのサポートが欠如していたことに言及しました。AWS パートナーである Deloitte と AWS との協力の下、ORS は、システムのリファクタリングやリプラットフォームの支援に加えて、ユタ州政府スタッフのトレーニングの受講を開始しました。このプロジェクトは従来の最新ソリューションの 5% という低いコストで 15 か月弱の期間で完了し、ダウンタイムはゼロでした。このコスト削減は、従業員のスキル開発への継続的な投資を含め、今後 5 年間にわたる ORS のモダナイゼーションの取り組みへの資金としてプールされています。「このプロジェクト全体はユタ州政府スタッフの OJT として提供されたため、この小規模なプロジェクトは、州政府としてクラウドジャーニーを推進するにあたって組織全体に大きなメリットをもたらす機会になりました」と Stockdale 氏は述べています。この取り組みにより、1日あたり、90万件のトランザクションを処理し、1億2,500万回のデータベース・コールを実施してる──との数値も、合わせて紹介されています。
社会的インパクト
世界で最も差し迫った問題に、専門家のアドバイスを提供する「AWS Innovation Studio」
新しく開始された取り組み: これまでになかった「 AWS Innovation Studio」の開始 – バージニア本社 (HQ2) の新しい Amazon Arlington のオンラインおよび実際の区画で、この取組をはじめます。AWS Innovation Studio では、Amazon の専門家とのコラボレーションを通して、持続可能性、住宅不安、社会的正義、健康と教育の公平性など、世界で最も差し迫った社会問題に取り組む新しい方法を見つけることができます。現在、AWS Innovation Studio は、世界中の 100 の都市をサポートする Resilient Cities Network と連携しています。特に気候変動の影響が増大している今日、AWS と Resilient Cities Network は、コミュニティが安全で適応と繁栄が可能な場所にシステムを配置することを支援します。さらに、ジョージタウン大学は AWS Innovation Studio と協力してビッグデータプロジェクトを実現し、より透明で公平な裁判所システムの構築をするために、研究者たちが米国の民事裁判所のデータにアクセスして分析すること──などを支援しています。
AWS は災害への救援を組織的にサポート
2018 年以来、AWS Disaster Response チームは、自然災害の影響を受けたグローバルコミュニティへの救援と対応に取り組んできました。最近、同チームはハリケーン Ida で被災した湾岸地域へのサポートを提供しました。これには、AWS ボランティアの提供、コミュニケーションを支援する AWS のサービスのデプロイ・サポート、インターネット接続と充電ステーションの再構築の支援が含まれていました。
AWS がバージニア州に新しいオポチュニティ提供と投資を開始
今週、AWS は、バージニア州と AWS のコラボレーションの成功を示す 10 年間にわたる経済的影響に関する調査を公開しました。2011 年以来、AWS はインフラへの投資を通じて 350 億 USD を同州に投資してきました。2020 年だけでも、AWS データセンターの建設と運用によりバージニア州の国内総生産として 19 億 USD が新たに生み出され、13,500 人分を超える雇用を支えました。AWS の経済的影響に関する調査: バージニア州での AWS 投資の詳細はこちらをご覧ください。
再生可能エネルギーに対する AWS のコミットメントがバージニア州の経済を支援
AWS が実施した経済的影響に関する調査では、Amazon の太陽光発電への投資がバージニア州の地域経済に及ぼすプラスの影響も示されました。現在、Amazon は世界中で合計 232 の風力および太陽光発電プロジェクトを実施しています。電力生産能力 は 10ギガワットに上り、これは、米国の 250 万戸の住宅に電力を供給するのに十分な量です。バージニア州では、2019 年から 2023 年にかけて AWS は州南部で 15 の公益事業規模のオフサイト ソーラー ファームを新たに導入しました。その総容量は 1,430 メガワットに達しています。投資総額は 21 億ドルです。バージニア州の太陽光発電への投資により、2025 年までに 100% 再生可能エネルギーで事業運用に要する電力を供給するという Amazon の目標達成に一歩近づきました。このプロジェクトでは、プリンス ウィリアム郡全体に相当する 225,000 世帯に電力を供給するのに十分な再生可能電力の出力が可能で、毎年 130 万トン以上の CO2 排出量が削減されます。
AI における「芸術」の位置付け
Reddymade Architecture and Design の創設者である芸術家 Suchi Reddy 氏は、AWS の AI サービスによるインタラクティブ彫刻「me + you」の内覧会を行いました。一般公開は 2021 年秋にスミソニアン芸術産業館で予定されています。
「me + you」では、ユーザーは、彫刻の周りの指定ポイントに将来のビジョンを入力するよう求められます。「このアートワークは、自然言語処理と AWS AI サービスを使用して、来館者が意味したこと、トーン、そして感情を色と光のユニークな組み合わせに変換します。この組み合わせは、彫刻のトーテムを通過し、他の来館者が入力したビジョンと共に織り込められて、『集合的な未来』の絶えず進化し続けるきらめく曼荼羅を作り出します。『me + you』は、人々が恐れていることや望むことを反映し、その 2 つの極の間の状態を反映するのです」と Reddy 氏は述べています。「AI は、公平と共感のレンズを通して私たちの世界を見るための強力なツールになり得るのです」──とも、彼女は述べています。
最近、Reddy 氏は AWS Fix This ポッドキャストにも参加し、「me + you」について詳しく語りました。エピソード全体は、こちらから再生できます。
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・AWS Summit Washington, DC のセッションは、2021年12月現在、YouTubeで63個のセッションが公開されています。
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今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、国内外の公共部門の皆さまとの取り組みを多数紹介した過去のブログ投稿に関しても、ぜひご覧いただければ幸いです。「クラウド×公共調達」の各フェーズでお悩みの際には、お客様・パートナー各社様向けの相談の時間帯を随時設けておりますので、ぜひAWSまでご相談ください(Contact Us)。
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このブログは英文での原文ブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が翻訳・執筆しました。
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