株式会社ファンコミュニケーションズ(以下、ファンコミュニケーションズ)は、インターネット上でマーケティング活動を行う企業に対して、アフィリエイト 広告サービス「A8.net」、「Moba8.net」を提供しています。このアフィリエイト広告は「成果報酬型広告」とも呼ばれ、広告主のWebサイト において何らかの成果(購買、資料請求、会員登録など)が発生した場合に、送客元であるアフィリエイトサイト(広告主の広告素材を掲載するサイト)に対し て成果に応じた報酬を支払う広告形態です。
広告主にとっては広告目的が達成された場合に成果報酬を支払えばよいため費用対効果が高いこと、アフィリエイトサイトにとっても媒体のスペースを生かした収益獲得が可能となるため、インターネットでの効果的な広告手法として広く普及しています。

サービスを提供するにつれ、ファンコミュニケーションズでは、日々急増するトラフィックや蓄積されるビッグデータに対応するためのハードウェア初期 投資や準備期間にオンプレミス環境のままでは限界を感じ始めていました。その折、データセンターからクラウド環境に専用線接続が可能になったことで可用性 の道が開けたのが、クラウド導入のきっかけとなりました。

導入にあたっては、小規模なサービスの立ち上げの際に他のクラウドサービス利用による比較検討をいくつか行い、結果的にコストや可用性、データセンターとの親和性を重視しました。

ファンコミュニケーションズでは、ディザスタ・リカバリ対策やビッグデータを分散処理するた めの経路としてAWSを活用しています。具体的には、AWS Direct Connect(専用線)で自社データセンターとAWSを繋ぎ、AWS Storage Gatewayを利用して自社データセンターにあるデータをAWSに自動的に転送しています。

 

 

 

 

「ファンコミュニケーションズ システム構成図」

実装にいたるまでは、以下のような流れで実装が行われました。

  • 2012年8月: AWS Direct Connectの接続確立。
  • 2012年9月: AWS Direct Connectを利用したソリューションの設計、スケジューリング、Amazon VPC(Virtual Private Cloud) 構築/検証。
  • 2012年10月:テープバックアップの移行を目指しAWS Storage Gateway(Stored Volume)によるバックアップ環境を構築/検証。
  • 2012年11月: AWS Storage Gateway(Cached Volume)のリリースに伴い環境をリプレース、再検証。
  • 2012年12月: AWS Storage Gateway(Cached Volume)にて本番バックアップ稼働。テープと並行稼動。
  • 2012年12月: アドサーバー環境構築、検証。
  • 2013年1月: 新サービス環境構築。

AWS Storage GatewayはCached Volumeを利用することで、バックアップの保管ボリュームを柔軟に確保可能です。また、永続的な保管を行いたいデータに関しては、Amazon Glacierの利用を見越してAmazon S3(Simple Storage Service) に直接アップロードしています。AWSへのデータの転送については、専用線経由で行っています。また、Amazon VPC(Virtual Private Cloud) 内にSOCKS/HTTPプロキシを配置し、データの転送量に応じて、スケールアップ/ダウンを行い、転送時間と運用コストの調整を行っています。

AWS を導入したことによるメリットについて、ファンコミュニケーションズは次のように述べています。 「テープ交換や倉庫移動による運用コストを削減できることが分かったほか、バックアップの例では運用コストは1/5~1/10程度にまで抑えられるという コストメリットがありました。また、新サービスの提供開始時の場合、オンプレミス環境におけるハードウェアや人件費の初期投資が大幅に抑えることができて います。」

セキュリティ面では、AWS Direct Connectによりデータセンター間に専用のプライベート接続を確立できることから既存のオンプレミス環境とのハイブリッド構成により、安全な運用が可 能となっています。併せてAmazon VPCの利用によりセキュリティを保ちつつプライベート領域の拡張性が向上しています。また、バックアップに関しては、物理媒体利用時に比べてデータ保全 性が向上し、また人的運用が減ることで情報の保安性も向上しました。

また、ファンコミュニケーションズは次のように述べています。
「オンプレミス環境に比べて、開発者にとっては非常に敷居の低いインフラ環境であるため、最初の一歩を踏み込んでみれば意外に道が開ける事は多いと思います。
広告配信事業においては、急増するトラフィックやビッグデータの処理、新サービスの展開に日々対応を迫られる状況ですので、伸縮/拡張性の高いAWSのようなクラウドサービスはこれからのインフラ環境として適していると考えております。」