2023 年
株式会社ニチレイ
ニチレイ、SAP S/4HANA のインフラを AWS 大阪リージョンに移行。IT 要員の運用負荷を軽減し、DX 戦略を加速

4 年

SAP S/4HANA のバージョンアップサイクルを 5 年から 4 年に短縮

IT 要員の負荷軽減による新たな施策へのリソース集約

オンプレミスと同等またはそれ以上のパフォーマンスを発揮

DR 環境の切り替え手順の簡略化による時間短縮

概要

加工食品事業を筆頭に、多彩な事業を展開する株式会社ニチレイ。SAP S/4HANA をオンプレミス環境で運用してきた同社は、サーバー更新を契機にアマゾン ウェブ サービス(AWS)へ移行。AWS の大阪リージョンをメインサイトとし、マルチ AZ 構成で DR 環境を構築しました。AWS への移行により、インフラ更新の工数削減、セキュリティの強化、パフォーマンスの向上、データの利活用の加速などのメリットを得て DX 戦略を加速させています。

株式会社ニチレイ

課題 | IT 要員の負荷軽減を目指して、SAP S/4HANA のクラウド移行を決断

食の総合グループとして、世界中の食生活に貢献するニチレイ。現在、“食と健康における新たな価値の創造”、“食品加工・生産技術力の強化と低温物流サービスの高度化”、“持続可能な食の調達と循環型社会の実現”、“気候変動への取り組み”、“多様な人財の確保と育成”の 5 つを重要事項(マテリアリティ)と定め、グループ一丸となって取り組んでいます。「5 つのマテリアリティと DX 戦略と紐づけ、データ・テクノロジーを活用したビジネス変革活動により、新たな価値の創出を目指しています」と語るのは、執行役員 情報戦略部長の坂口譲司氏です。

DX 戦略の基盤となる基幹システムは、2018 年に長年利用してきた SAP ERP をリビルドする形で SAP S/4HANA(会計/販売/購買・在庫)に刷新しました。しかし、インフラはオンプレミス環境を利用していたため、ハードウェアの保守期限に合わせたインフラ更新が必要となります。そこでインフラ更新と SAP S/4HANA のバージョンアップを機に、クラウド移行を決断しました。

「定期的に IT 要員がインフラ更新に関与しなければならないことから脱却することが一番の目的です。近年はクラウド上でデータを利活用する動きも強まっており、データをクラウド環境で管理することも重要と考えていました」(坂口氏)

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AWS への移行によりハードウェアの制限から解放されることで、適切なタイミングで SAP S/4HANA のバージョンアップができるようになりました”

坂口 譲司 氏
株式会社ニチレイ 執行役員 情報戦略部長

ソリューション | メインサイトに大阪リージョンを採用し、DR 環境をマルチ AZ 構成

複数のクラウドサービスを検討した同社は AWS の採用を決めました。情報戦略部 部長の小松唯史氏は次のように語ります。

「実績面、マルチ AZ 構成による可用性、パートナー企業を含めた導入後の運用性を評価して AWS を選びました。SAP S/4HANA のインフラ基盤に関しても、稼働実績、信頼性、セキュリティ、パフォーマンス、プロジェクト全体のコスト、パートナー企業の移行実績を総合的に評価しました」

SAP S/4HANA の AWS 移行において、同社の特徴はメインサイトに大阪リージョンを採用し、DR 環境をマルチ AZ 構成で実現していることです。その理由をニチレイの IT 開発と運用保守を担う日立フーズ&ロジスティクスシステムズ 理事 兼 プラットフォーム事業部 事業部長の村山佳久氏は次のように語ります。

「ニチレイの SAP S/4HANA は、オンプレミスの時代から、本社がある東京と反対の西日本をメインサイト、東日本を DR サイトとする“たすき掛け構成”でリスク分散を図ってきました。AWS でも同様に大阪リージョンをメインサイトとし、AZ 間の距離が停電や地震などの問題からより安全に隔離され保護されている事を加味して大阪リージョン内でのマルチ AZ 構成としました」

AWS への移行プロジェクトは、2021 年 9 月からの準備フェーズを経て、2022 年3 月より要件定義を開始。同年 6 月からの設計・開発、結合・総合テスト、移行の各フェーズを経て、2023 年 4 月末からの大型連休で本番移行を実施しました。システム停止期間は 4 日間。移行前のリハーサルは 3 回実施し、万全の準備を整えたうえで本番移行を行いました。メインサイトへは、AP サーバー 2 台と DB サーバー 1 台、周辺系サーバー、開発系サーバー、検証系サーバー合わせて 8 台を移行し、DR サイトは本番系の AP サーバー 2 台と DB サーバー 1 台の 3 台で構成しています。

AWS への移行に際し、ポイントになったのは大阪リージョンでの環境構築です。大阪リージョンは開設されたばかりということもあり、同社が求める Amazon EC2 のインスタンスタイプでは、マルチ AZ 構成が取れない状態でした。

「AWS ジャパンの担当者にグローバル本社との調整をお願いし、対応していただきました。私たちが欲しかったサービスを欲しいタイミングで提供していただけたことに感謝しています」(村山氏)また、総合テストの段階で、AP サーバーと DB サーバー間の通信速度が想定以上に出ない問題も発生したものの、AWS のサポートにより解決ができたといいます。

アプリケーション側も、ユーザーインターフェース周りや周辺システムの連携領域を中心に、前システムから新システムへの移行時の非互換機能を考慮したアドオン改修を実施しました。「影響分析ツールでピックアップしたアドオンプログラムの改修と並行して、テストフェーズでも検証しながら改修を進めました。比較的想定されたパターンの改修のみで、スムーズに進みました」(小松氏)

導入効果 | SAP S/4HANA のバージョンアップサイクルを 5 年から 4 年に短縮

AWS への移行によりハードウェアの制限から解放されることで、タイミングに応じて必要な IT 施策が打てるようになったことが同社にとっての最大の効果です。

「SAP S/4HANA のメインストリームサポートを維持していくためはハードウェアがボトルネックになります。今回、AWS に切り替えたことでその制約がなくなり、必要に応じてバージョンアップができるようになりました。新たな IT 施策を実行する際も、IT 人材のリソースやコストを大きく増やす必要もなく、ランサムウェアに対応するためのセキュリティ強化や、データの利活用などがやりやすくなりました」(坂口氏)

今回の AWS 移行で同社は SAP S/4HANAの利用サイクル(バージョンアップサイクル)を従来の 5 年から 4 年に短縮し、SAP S/4HANA の新機能を積極的に採り入れていく方針にしました。情報戦略部 プロフェッショナルの松永弘幸氏は「試算した結果、コストを増やすことなくメインストリームのサポートに投資できることが判明し、短サイクルでのバージョンアップを決めました」と語ります。

インフラ面では、夜間バッチ処理を中心にオンプレミスと同等のパフォーマンスを発揮し、一部で処理スピードが速くなるなどの効果が出ました。これまで複雑だった DR 環境の切り替え手順も、AWS の機能を活用して簡略化・自動化したことで、前環境より短い時間での切り替えが可能になりました。

現在は、SAP S/4HANA と連携する統合マスタ、EDI、輸入業務、営業支援、物流支援などからなるフロントシステムの AWS 移行を 2024 年 1 月の終了を目指して進めています。情報戦略部 部長代理 兼 情報企画グループリーダーの渡邉史子氏は「それに先駆けて、2022 年 10 月に帳票システムを AWS の大阪リージョンに移行しました。現在はそこで得たノウハウをもとに、フロントシステムの移行を進めています」と語ります。

将来展望として、工場・倉庫などの IoT データ、ESG 情報や人事情報などの非財務情報も含めた利活用に向けて、データレイクやデータウェアハウスなどの再整備を実施していく予定です。

「統合データ分析基盤の構築は構想段階ですが、AWS の活用も候補のひとつですので、引き続きの支援と情報提供を期待しています」(坂口氏)

カスタマープロフィール: 株式会社ニチレイ

1945 年に日本冷蔵株式会社として設立し、1985 年に株式会社ニチレイに商号変更。2005 年 4 月に持株会社体制に移行し、現在は加工食品事業「ニチレイフーズ」、水産・畜産事業「ニチレイフレッシュ」、低温物流事業「ニチレイロジグループ」、バイオサイエンス事業「ニチレイバイオサイエンス」の 4 事業を展開する。

坂口 譲司 氏

坂口 譲司 氏

小松 唯史 氏

小松 唯史 氏

渡邉 史子 氏

渡邉 史子 氏

松永 弘幸 氏

松永 弘幸 氏

村山 佳久 氏

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