沖永良部バス企業団

住民や観光客の利便性向上に向けて
リアルタイムの走行位置がわかるバスロケーションシステムを構築
位置情報をもとに路線バスで農作物を運ぶ「貨客混載」へ発展

2022

鹿児島県奄美群島の南西部に位置する沖永良部島(おきのえらぶじま)。同島で路線バス事業や貸切バス事業を展開する沖永良部バス企業団は、住民や観光客の利便性向上に向けて、スマートフォンや PC から路線バスの位置をリアルタイムで確認できるバスロケーションシステムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築しました。2022 年 2 月には、路線バスで農作物をスーパーに運ぶ“貨客混載”に向けて、自動音声で電話の対応を行う受付システムを AWS パートナーである株式会社クエイルとともに構築し、実証実験を実施。これらのシステムは地域経済の活性化や持続性向上など、さまざまな成果が期待されています。

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AWS を採用することで、開発費は 10 年前にオンプレミス上での構築を前提に提示された 3,000 万円と比べて、何十分の一まで圧縮することができました。運用費も自治体が予算を確保しながら提供するサービスとしては現実的なレベルで、持続的に提供し続けることが可能です

永野 敏樹 氏
鹿児島県大島郡和泊町 企画課

高齢者の移動手段確保が課題に IT を活用したさまざまな施策を実施

珊瑚礁の島として知られ、観光客にも人気の沖永良部島は、鹿児島県大島郡の和泊町と知名町の 2 町からなる人口 1 万 2,000 人あまりの島です。沖永良部バス企業団は、同島の公共交通機関として和泊町と知名町によって運営されています。「島内の移動は自家用車が中心ですが、路線バスは高齢者、学生、観光客の足として欠かせない存在となっています」と語るのは、2021 年まで同企業団に出向し、現在は和泊町 税務課に在籍する長尾太志氏です。

高齢化が進み、移動手段の確保が重要になる中、地域の公共交通の共通課題として挙げられているのが IT を活用したモビリティサービス(MaaS)の確立です。和泊町では 2008 年から鹿児島銀行グループの株式会社九州経済研究所とともに、地域公共交通の活性化に取り組んでいます。

九州経済研究所 企画戦略部 部長代理の眞竹龍太氏は「当初、開発費の見積をとったところ、オンプレミスのシステムで 3,000 万円を提示されて断念しました。それから 9 年が経った 2019 年、クラウドの活用で現実的なコストでの開発が可能になったことから、改めて検討することにしました」と語ります。

和泊町 企画課の永野敏樹氏は「スマートフォンが普及した今、利用者が自発的に情報を取得できるバスロケーションシステムは、住民や観光客にとって有益なシステムになると判断しました」と話します。

サーバーレスやマネージドサービスを活用し コストを抑えたバスロケーションシステムを構築

バスロケーションシステムの構築を決定した同企業団と九州経済研究所は、開発パートナーに鹿児島県のクエイルを採用しました。眞竹氏は「フットワークが軽く、インフラ構築からシステムのデザイン、設計、実装までスピード感を持って対応できる技術力の高さと、チャレンジ精神を評価して採用を決めました」と振り返ります。

プラットフォームには AWS を採用し、バス内に設置したスマートフォンアプリで取得した位置情報をもとに、Web ページ上に走行中のバスの位置をリアルタイムに表示するシステムを構築しました。クエイル代表取締役 CEO の池田武尚氏は「AWS を 2013 年から活用しており、その実績と開発要員の確保のしやすさ、高いセキュリティと低コストを保ちながらスピード感を持ってインフラ構築ができることを評価しました」と語ります。

アーキテクチャは、コストを抑制するためにサーバーレスを活かした構成としています。クエイル クラウドアーキテクト マネージャーの米元俊樹氏は「静的コンテンツは Amazon CloudFront と Amazon S3 で構成し、位置情報を取得する API は Amazon API Gateway、AWS Lambda、Amazon DynamoDB で構成しました」と説明します。

Web サービスとして提供される同システムは、PC、スマートフォン問わず、さまざまなデバイスから利用ができます。地元住民や観光客からは「便利で使いやすい」といった声が届いているといいます。同企業団にとっても利便性の高いサービスを低コストで提供できていることに価値を見出しています。

「開発費は 10 年前に提示された 3,000 万円と比べて、何十分の一まで圧縮することができました。運用費も自治体が予算を確保しながら提供するサービスとしては現実的なレベルで、持続的に提供し続けることが可能です」(永野氏)

自動音声受付システムを AWS で構築し 路線バスで農作物を運ぶ貨客混載を実施

同企業団と九州経済研究所は、バスロケーションシステムによって取得可能になった位置情報の発展的活用として、“貨客混載”に着目。その施策として、路線バスで乗客と一緒に農家が育てた農産物を運ぶ実証実験を 2021 年 3 月から約 1 か月かけて実施しました。

「島内の農家や住民は、家庭菜園などで育てた地場野菜を、自前でスーパーや販売所に運び、値付けや陳列をして販売していますが、高齢者にとって輸送は大きな負担となっていました。そこで路線バスが農家の近くのバス停やバス路線上で農作物をピックアップし、スーパーまで運ぶ貨客混載を企画し、沖永良部バス企業団で、実証実験を実施しました」(永野氏)

実証実験では、農家は無償貸与された専用のタブレットで農作物の引き取りを同企業団に依頼していました。しかし、高齢者の多くにとってタブレットの操作は容易ではないため、電話回線を使った自動音声の受付システムの導入を検討し、クエイルが開発を担当しました。

自動音声受付システムは、Amazon Connect とフルマネージド型 AI サービスの Amazon Lex を用いて構築しています。

池田氏は「AWS の専用サービスを使うことで開発期間を短縮することができました。音声認識率向上に向けて方言を学習させたり、受付時の設問数を減らして手間を省いたりと、高齢者でも利用しやすいシステムを目指しました」と語ります。

自動音声受付システムを用いた貨客混載の実証実験は、2022 年 2 月 4 日から 18 日にかけて行われ、好評のうちに終了しました。

「自動音声で申込みができ、近場のバス停で農作物をピックアップしてもらえる貨客混載は、モニター参加者からの評価も高く、本格運用の際には利用料金がかかっても使いたいとの声が上がっています」(長尾氏)

貨客混載の仕組みを発展させ 地域のさまざまな課題の解決へ

同企業団では今後、貨客混載の仕組みを農作物の輸送だけでなく、高齢者を対象にした買い物支援など、地域の課題を解決する手段として活用することを構想しています。

「路線バスをうまく使うことで労働力不足を補うことができるので、例えば、高齢者向けにお弁当を運んだり、早朝に空港から出発する観光客に島の名産物を届けたりといった新たなサービスを検討しています」(永野氏)

同時に九州経済研究所では、MaaS の新たな可能性を探るべく、公共交通のエンターテイメント化に取り組んでいます。同企業団公式キャラクターの『オキバスⅤ』を企画し、沖永良部島の公共交通のアイコンとして活用しています。2018 年にはバス車内を活用した『リアル謎解きゲーム』を開催しました。

「現在は、バスロボットの AR 画像を制作し、スマートフォンで AR マーカーを読み取ることでツーショット写真を撮影するサービスの提供も進めています。AWS とクエイルには、公共交通による新たな付加価値の創出・提供に向けて、引き続きさまざまな技術支援を期待しています」(眞竹氏)

長尾 太志 氏

永野 敏樹 氏


カスタマープロフィール:沖永良部バス企業団

  • 設立: 1956 年
  • 事業内容:沖永良部島内(和泊町・知名町)を運行地域とする乗合バス事業、貸切バス事業他

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 開発コストをオンプレミス比で何十分の一まで圧縮
  • 現実的なレベルの運用費でのサービス提供を実現
  • バスロケーションシステムや農作物の貨客混載サービスの利用者から高い評価を獲得

AWS セレクトティア サービスパートナー

株式会社クエイル

九州の鹿児島と東京に拠点を置くソフトウェアベンダー。公共、アパレル、小売、ヘルスケアなど、幅広い業界のお客様にソリューションを提供している。AWS のサービス構築から、UI/UX 設計(デザイン)、アプリケーション開発までトータルでソリューションを提供できることが特長。


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