東芝メディカルシステムズ株式会社(以下、東芝メディカルシステムズ)は、医療施設におけるワークフロー全般(疾病に関する早期発見のためのスクリーニン グ、診断から治療、治療後のフォローアップに至るまで)におけるあらゆるニーズに対応するトータルソリューションを提供しています。医用機器(診断用X線 装置、医用X線CT装置、磁気共鳴画像診断装置、超音波画像診断装置、放射線治療装置、診断用核医学装置、医用検体検査機器、医療機関向け情報システム など)の製造、販売、技術サービスをグローバルに提供しており、画像診断システムの国内トップメーカーです。
「Made for Life™」(患者さんのために、あなたのために、そしてともに歩むために)を経営スローガンとして掲げており、かけがえのない命とお客様の成長・成功に役立つよう努めています。

2012 年 4 月 1 日より、東芝メディカルシステムズは、社長直轄のクラウド推進室を設置し、ヘルスケアクラウドサービス、 「Healthcare@Cloud(登録商標申請中-2012年4月時点)」を推進しています。このサービスの第一弾として、医療機関で撮影したエック ス線や、CT、MRI などの画像データを、東芝メディカルシステムズが提供する「PACS(RapideyeCore™)」の電子保存および運用管理技術 と(株)東芝が持つICTクラウド技術を組み合わせ、アマゾン ウェブ サービス(以下AWS)が提供するクラウドサービス(東京リージョン)上の Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) に外部保存するサービスを始めています。

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2010年2月厚生労働省より発表された「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正により、ガイドラインの遵守を前提に民間企業の医 用画像外部保存サービスの事業環境が整備されました。さらに昨年3月の東日本大震災以降、医療情報におけるバックアップの重要性が再認識されています。
一方、医療機関で発生する画像データは医用画像診断装置の高性能化に伴いCTやMRIによる3D画像、心血管の動画像データなどが急激に増加しており、医療情報の外部保存ニーズが急速に高まりつつあります。

このように、主に、法改正、病院経営の効率化の実現、そして、災害対策のためのDRへの要求、それら3つが診療画像データをクラウドサービス上に保管するシステム構想を練る上での大きな要因でした。

このような状況下、東芝メディカルシステムズでは、クラウド構想を打ち出し、複数のデータセンター(ホスティング~クラウドを実施している箇所を含む)について物理的仕様、運営、その他、月々の料金についても比較検討するようになりました。
AWSのクラウドサービスを検討するにあたり、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン、医療情報を受託する情報処理事業者向けガイドラインを順 守できているのかを検証しなければいけませんでした。電子保存の三原則※の遵守や個人情報保護などガイドライン遵守の要求事項が200項目ほどありました が、要求事項の解釈やエビデンスの収集など、1年近くを費やして医療データを格納するにあたり、AWSのクラウドサービスに東芝の鍵管理技術、サービス運 用体制を組み合わせることで適切であると確認することができました。

※三原則は、1)「真正性の確保」、2)は「見読性の確保」、3)保存性の確保」の3つから成りたっています。「真正性の確保」は、データ の書き換えや消去、混同を防止することを定義しています。また、データを作成した際の作成者の責任の所在を明確にすることを規定しています。「見読性の確 保」は必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること。及び直ちに書面に表示できることを定義しています。「保存性の確保」は法令に定める保存期間内、復 元可能な状態で保存することが書かれています。

医療機関として保管が義務付けられている診療データ(画像)を、安全な場所に保管することにより、災害時やシステムトラブルなどで院内に保管している画像 データが消失しても速やかに復元または参照できることから、患者への質の高い医療サービスを継続するようになりました。さらに次のような効果が得られると 考えています。

  1. 医用画像を安全に保管するための冗長なストレージ機器の導入コストやランニングコストを削減、省スペース化やエネルギーの消費の抑制も実現できるため、環境に配慮したシステムが実現できるようになります。
  2. 画像システムの保守・管理の省力化が図れることから、画像管理者やエンジニアによる作業を削減することができます。
  3. 保存するデータは二重の暗号鍵を使うことと、さらに、AWS が提供するクラウドサービスの特徴を生かし、物理的に離れた3箇所のデータセンター上に画像データを格納することができるようになるため、相互チェックによる安全性とセキュリティを確保しています。
  4. 小容量から大容量までスケーラブルな保存方式を採用することにより、さらに、柔軟な料金・提供体制により、小規模から大規模の医療機関まで対応できるようになっています。
  5. 外部保存された画像データは国際標準規格である DICOM ※に準拠した形式に暗号化を施して格納されるため、施設内の画像システムを更新する際におけるコンバージョンが不要となりコストや時間が大幅に削減できるようになります。

※DICOM: 米国放射線学会 (ACR) と北米電子機器工業会 (NEMA) が開発した、CT や MRI、CR などで撮影した医用画像のフォーマットと、それらの画像を扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した標準規格

AWS のクラウドサービスを採用する際、診断画像データをクラウド上で取り扱う上では、特に 3. で記載したような「安全性とセキュリティ」が確保されること、4. のスケーラブルな対応ができることが重要視されました。

クラウドを活用する事で削減できたコストの一部は、サポート体制の確立やクラウド対応型運用支援ツールの導入に充当する心構えが必要だと考えています。

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取材協力:
東芝メディカルシステムズ株式会社SI事業部 参与 川本卓司様
東芝メディカルシステムズ株式会社SI事業部 参事 高橋幸男様