投稿日: Apr 23, 2024
オンプレミスと比較してインフラ拡張に要する時間を半減
2026 年をめどに業務システムを AWS に移行予定
日本最大 1,200 万の証券総合取引口座の保有者向けに資産拡大を支援
Amazon.com, Inc. の関連会社であるアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 (以下、その関連会社も含み総称して「AWS」) は、本日、株式会社 SBI 証券 (以下、SBI 証券) が、国内株式にかかるオンライン取引システムを AWS クラウドに移行したことを発表しました。SBI 証券は国内最大*1 の 1,200 万を超える証券総合口座数を有しており、この度の移行により国内証券会社として初めて、1 日あたり 2 兆円を超える国内株式の取引が AWS 上で実行されることになります。さらに、SBI 証券は、コードでインフラストラクチャを構築・管理、自動化により俊敏性(アジリティ)と信頼性を向上させる 「AWS Cloud Development Kit(以下、AWS CDK)」 を活用して Infrastructure as Code (IaC) を実装することで、オンプレミスのインフラストラクチャと比較して半分以下の期間でキャパシティを拡張できるようになり、株式取引需要の急増にも対応が可能となります。SBI 証券は 2026 年をめどに、その他の業務システムも AWS クラウドに順次移行していく予定で、移行業務をより効率的かつ短期間で進めるために開発業務などで、高性能な基盤モデル (FM) を単一の API で選択でき、生成 AI アプリケーション構築に必要な幅広い機能を備えたフルマネージド型サービス Amazon Bedrock の活用を検討しています。
2022 年 11 月、日本政府は、家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資につなげ、成長と資産所得の好循環を実現させるため NISA 制度(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化を打ち出しました。この政策の下、SBI 証券は顧客の投資を促進するため日本で初めて国内株式売買手数料の無料化を発表しました。加速度的に拡大する顧客基盤に対応するため SBI 証券は、より短い期間でキャパシティの拡張が可能で、高い拡張性と柔軟性を備えた取引システムを AWS 上に構築することを決定しました。取引システムの AWS への移行において SBI 証券は、AWS が無償で提供するクラウド移行支援プログラム 「IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0 for FIN」*2 を活用し、大幅な移行コスト削減も実現しています。
キャパシティ拡張期間の短縮
AWS CDK は、コードでクラウドインフラを定義し、AWS CloudFormation を通じてプロビジョニングするオープンソースソフトウェア開発フレームワークで、ネットワーク構成やサーバー、データベースなどのインフラをコードとして扱うことを可能にします。SBI 証券は AWS CDK を活用して、株式の取引やその他のミッションクリティカルなシステムをコードに変換して構築しています。これにより SBI 証券は、クラウドインフラストラクチャを手動で設定する場合に比べて、AWS 環境への実装速度を大幅に加速させたことに加え、リリースおよび運用の品質向上を実現しています。さらに、SBI 証券は、取引口座数や株式取引需要の急増に対して、オンプレミスのインフラストラクチャと比較して半分以下の期間でキャパシティの拡張ができるようになりました。
冗長構成による取引の安定
SBI 証券は、AWS のアジアパシフィック(東京)リージョンで複数のアベイラビリティゾーン(AZ)を使用することで可用性を高め、さらに低レイテンシーを実現しながら 1 日あたり 1 億におよぶ取引サイトへのアクセスおよび 1 日あたり約 360 万件の取引(発注)処理を実行する高い拡張性と柔軟性を備えた取引システムを構築しました。フォールト・インジェクションは、ソフトウェア・アプリケーション、インフラストラクチャ、ネットワークにおける潜在的なシステム障害や弱点を事前に特定し、緩和するために使用されているテスト手法で、これまで SBI 証券は、手作業でこのフォールト・インジェクションを実施していたため多くのリソースを要していました。AWS Fault Injection Service(以下、AWS FIS)を活用することで SBI 証券は、アベイラビリティゾーンにおける障害をシミュレートして、システムの予期せぬ停止にどのように対処するかなど、高可用性の設計を自動で検証することが可能になりました。これにより SBI 証券は、顧客サービスが円滑に稼働し続けることを確信しながら、フォールト・インジェクションの実施に要する人的リソースと時間を削減しています。さらに、トラフィックの急増など大規模な負荷時をシミュレートする AWS ソリューションである AWS Distributed Load Testing を利用して、顧客需要の急増に対応するインフラストラクチャの拡張性についても自動検証を行っています。
SBIグループ企業間でセキュアなプライベート接続を構築
2022 年、SBI ホールディングス株式会社は AWS を推奨クラウドプロバイダーに選定*3 し、SBI グループ各社において積極的な AWS 活用を推進しています。SBI 証券は仮想プライベートクラウド(VPC)と AWS のサービス間の接続を確立する AWS PrivateLink により、株式会社 SBI 新生銀行や大阪デジタルエクスチェンジ株式会社など、SBI グループ内の事業体およびグループ外のパートナー企業間でセキュアなプライベート接続が確立され、シナジー効果を創出しています。
SBI 証券の代表取締役社長 髙村 正人氏は次のように述べています。
「SBI 証券では、「ゼロ革命」「新 NISA」開始に伴い、口座開設数および取引量が急増しました。証券投資への関心が高まり「貯蓄から投資へ」の流れが加速しており、今後も当社の口座数・取引量が増加することが想定されることから、キャパシティ確保の観点で AWS が提供する強靱性(レジリエンシー)と俊敏性が当社のプラットフォームにとって不可欠と考えています。オンプレミスでなく AWS へ移行することで、リードタイムの短縮およびコスト削減が可能となります。今後もより多くの個人投資家の皆さまの資産形成を全力で支援するべく、安心して取引できるような投資プラットフォームを提供することに努めていきます」
AWS グローバル金融事業統括責任者である Scott Mullins は、次のように述べています。
「日本国民の投資を促進する取り組みにクラウドの技術が活用されるように、日本の金融サービス業界は急速に進化しています。SBI 証券は、投資に関する様々な課題から逆算して、投資を容易にし、顧客の貯蓄の有効活用と資産拡大といった顧客の利益を重視した取り組みを促進するためトレーディングソリューションを AWS 上に構築しました。AWS は、SBI 証券が最新の生成 AI ソリューションを活用して顧客サービスをさらに向上させ、投資家にとってより良いサービスを構築するためのイノベーションが加速されることを期待しています」
AWS は、2027 年までに国内クラウドインフラに 2 兆 2,600 億円を投資し、日本におけるクラウドサービスに対する顧客需要の拡大に対応する計画を 2024 年 1 月に発表しました*4。AWS が日本にもたらす経済効果に関するレポートによると、この投資計画は、日本の国内総生産(GDP)に 5 兆 5,700 億円貢献し、国内で年間平均 30,500 人以上の雇用を支えると推計されます。AWS は、2011 年から 2022 年にかけてすでに 1 兆 5,100 億円を日本に投資しており、国内でのクラウドインフラへの投資総額は、2027 年までに約 3 兆 7,700 億円に達する見込みです。
* 1 : SBI 証券プレスリリース「国内初となる証券総合口座 1,200 万口座達成のお知らせ(2024 年 2 月 6 日)」
*2 : IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0 for FIN:IT システム環境のへの移行を、評価(Assess)、準備(Mobilize)、マイグレーション&モダナイゼーション(Migrate & Modernize)のフェーズに分けて無料で支援を行う IT トランスフォーメーションパッケージ 2.0 に、コンプライアンス観点での情報提供、金融アーキテクトによるアーキテクチャーレビューなどを追加し、セキュリティと可用性が求められる金融固有の要件に対応したプログラム
*3: SBI ホールディングス、AWS を推奨クラウドプロバイダーに選定、 新生銀行グループとのビジネス最適化を促進 (2022 年 12 月 15 日)