TuSimple は、自動運転をトレーニングするために AI を活用しています。

AI を使用して完全自動運転トラックを作る

自動運転の乗用車を取り巻くすべての問題に対して、自動運転の技術者は、より重要な問題の解決に取り組んでいます。それは、自動運転技術を長距離トラックに導入することです。

トラック輸送は安いものではありません。長距離トラックの運用には平均で 1 マイルあたり $1.69 の費用が必要で、その 40% がドライバーの給料となっています。一方で、トラック運転手は不足しています。ある予測によると、現在米国の貨物業界は 10 万人の運転手不足に直面しており、e コマースにより貨物輸送の需要が高まり続けることで、この数字は 2026 年までに 3 倍になると言われています。

また、トラック輸送には危険が伴います。2017 年に発生した大型トラックが関係する死亡事故は 4,700 件以上に上ります。乗用車による死者は全体として減少しているにもかかわらず、2016 年と比較すると 9% 増加しているのです。今や「トラック運転手」は、米国で最も危険な職業として分類されるに至っています。

このような難題に対しては、複雑ながらも明確な解決策があります。人工知能 (AI) を活用してトラックの一部を自動運転にし、現在の運転手不足を補い、安全性を向上するのです。ただし、自動運転トラックを作るのは容易な仕事ではありません。

トラックを完全自動運転にする

TuSimple は、この仕事を実現すべく最先端を走っています。この企業はサンディエゴと中国に拠点を持ち、まずアリゾナで商用配送に自動運転トラックを使用中です。

TuSimple は 2015 年、社長兼最高技術責任者の Xiaodi Hou 氏によって設立され、現在 2 つの拠点で約 400 名が雇用されています。配送は 1 日あたり 3~5 件行われており、それぞれが約 100 マイルの行程となっています。これらの配送行程を使用して TuSimple の深層学習アルゴリズム用に試験データが生成され、車道のルールが次々と習得されていますが、これは収益も生み出しています。

「車道に車を走らせている企業は多数あります」と、Hou 氏は TuSimple の競合企業について語ります。「ただし、実際の商用貨物を運んでいる企業は多くありません」

現在 TuSimple のトラックは、車両分類の「レベル 4」で走行しています。トラックは完全に自動で走行しますが、人間の運転手が常に乗車し、緊急事態に備えています。Hou 氏は、2020 年末までには人間による安全確保を撤去したい考えです。また、同社ではこれを実現するためすでに動いているとのことです。

「車道に車を走らせている企業は多数あります。ただし、実際の商用貨物を運んでいる企業は多くありません」

Xiaodi Hou
社長兼最高技術責任者
TUSimple

「車道に車を走らせている企業は多数あります。ただし、実際の商用貨物を運んでいる企業は多くありません」

Xiaodi Hou
社長兼最高技術責任者
TUSimple

運転席の AI

トレーラーを牽引して数百マイルを走行するのは簡単な作業ではありません。また、大型車両で高速道路を走る場合、他のドライバーに対し解決しなければならない大きな問題が 2 つあります。まず、トラックの全長が非常に長いことです。プリウスを自動運転する場合は 15 フィート (4.5m) の車体を制御すれば済みますが、トレーラートラックは全長が約 70 フィート (21m) になるため、加速、停止、合流に関するあらゆる計算が複雑化します。Hou 氏によれば、トラックの幅がより大きな問題だと言います。乗用車であれば州間高速道路のレーンの幅 (米国では法により 12 フィート (3.6m) に規定) の半分にもなりませんが、一般的なトレーラートラックの場合、高速道路レーンの両側にわずか 21 インチ (53cm) の余裕しかありません。街中の一般道ではさらに狭くなります。

これらの車両に関係する計算は極めて高い精度が要求されます。しかもその計算は走行中にリアルタイムで行う必要があり、失敗は許されません。人の命がかかっているのです。この困難な仕事をやり遂げるにはコンピューターの協力が必要です。Hou 氏はこれを「スーパーコンピューター」と呼びますが、トラックに直接搭載するのです。各 TuSimple サーバーは、最大 100 種の個別の AI モジュールを搭載し、路上の車種識別からトラック周辺の物体の速度判定まで、あらゆる作業を行います (最も困難なアルゴリズムタスクです)。これらのモジュールは、主にアマゾン ウェブ サービス (AWS) の Apache MXNet 深層学習フレームワークを使用して構築されており、システムから流れ込むデータを取り込みます。車載のカメラ、LiDAR、レーダー装置からアップロードされるデータは最大 1 テラバイトになり、そのデータを利用して道路のライブ 3D モデルを構築します。モデルはトラックの路上走行中に随時更新されます。

「本システムは、あらゆる状況下で動作しなければなりません。ベストな状況だけとはいかないのです」と、Hou 氏は言います。「たとえば、明け方や夕方に運転しているとします。どのように対処すればよいでしょうか? 雨天の場合はどうでしょう?」

すべてのセンサーの相互作用や、そのデータ分析とトラックの実際の制御を行うアルゴリズムは極めて複雑です。それに明快に処理するのが高度な AI です。このデータポイントすべてを処理し、確率分析を使用して、毎秒数回の最適解を出すことが最も複雑な計算タスクの 1 つです。これを取り扱うことのできる唯一のエコシステムが機械学習環境です。また Hou 氏によれば、この技術は極めて正確です。貨物を積んだトレーラーが時速 65 マイル (105km) で走行していても、制御アルゴリズムは 5cm 単位の精度で、レーンの真ん中を走らせることができます。

今後走行できるように

配送完了後、TuSimple のトラックが本部に戻ると、その行程で収集された全データの分析作業が始まります。その結果は更新され、各トラックのオンボードサーバーのアルゴリズムモジュールに送られます。簡単な作業のように聞こえますが、路上で期待されるような挙動を確実に行うよう、アルゴリズムが更新されるたびに安全テストやシミュレーションを数千回実行する必要があります。

Hou 氏によれば、このようなテストを社内で実行すると、新しいコードの取得ごとに数週間が必要となりますが、Amazon EC2 P3 インスタンスの AWS GPU 活用コンピューティングの持つ膨大な計算力のおかげで、テストを数時間で完了し、トラックが再度出発するまでの準備時間を最小化できるとのことです。また、TuSimple は現在 AWS Snowball Edge の評価を行っています。これは新しいエッジコンピューティング機器で、トラックと AWS クラウドサービス間のすべてのデータ移行を効率化するものです。

Hou 氏は、今後を考えた場合、トラックのほとんどをコンピューターが運転するようになるのは必然であり、怖がるような事ではないと言います。

「数百年前まで、私達は牛を使って土地を耕していました」と Hou 氏は言います。「人間が行っている仕事の中に、機械でできることがまだあるはずです。これが人間の文明の自然な進化でしょう。その最前線に立っていることを私は誇りに思います」

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