Siemens が宇宙観光事業の開発を加速するために AWS の機能を使用してスタートアップである Space Perspective をサポート

エグゼクティブサマリー

スタートアップである Space Perspective と、AWS パートナーである Siemens は、宇宙観光事業向けの革新的で豪華なカプセルを構築するために、シミュレーションプロセスに革命を起こしています。Space Perspective は、Amazon Web Services (AWS) 上で Siemens のソリューションを利用して、カプセル設計に影響を及ぼす構造、熱、その他の要因の分析にかかる時間を、1 週間から 8~12 時間に短縮しました。Space Perspective は、数値流体力学 (CFD) モデリングの膨大な処理要件に対応できる包括的なツールスイートを必要としていました。Siemens の STAR-CCM+ マルチフィジックスシミュレーションソフトウェアと AWS サービスを併用することで、Space Perspective は AWS 上で同時シミュレーションを実行し、時間とコストを大幅に節約できました。

宇宙観光事業におけるデジタルイノベーションの加速

Space Perspective は、自社の宇宙観光用のビークルを利用して、冒険好きな民間の人が宇宙に行けるようにする方法を模索しています。同社は、宇宙から青い惑星を眺めるという一生に一度の体験を提供することで、宇宙において人類がどのように位置づけられるのかについての新たな視点を乗客に提供したいと考えています。大型のスペースバルーンから吊り下げられた豪華で快適性の高い与圧カプセルに乗り、8 名の乗客と 1 名のパイロットが時速 12 マイルで大気中をゆっくりと上昇します。乗客は高度 100,000 フィートで 2 時間ホバリングし、滑らかかつ緩やかに降下し始めるまで、地球の曲線を眺めます。カプセルは海に着陸し、回収船が乗客を出迎えて、旅が終わります。 

一般的な宇宙船とは異なり、カプセルとビークルの切り離しはありません。飛行全体を通じて、宇宙船のカプセルとバルーンは一体のままです。このタイプのダイナミクスは、Space Perspective に 3 つの側面を持つ課題をもたらします。すなわち、宇宙に向かって上昇する中でカプセルがどのように機能するか、宇宙での最高巡航高度に達した後にカプセルがどのように機能するか、そして地球に向かって降下する中でカプセルがどのように機能するか (これには穏やかな着水が含まれます)、ということです。 このプロジェクトでは、乗客のために安全かつ快適な環境を維持しながら、大気、宇宙、水中の移動を伴う往復 6 時間の複雑な負荷と CFD を把握するための堅牢な分析が必要です。「安全かつ効果的に動作するようにビークルを設計できるよう、あらゆる異なる環境でビークルがどのように動作するかを理解する必要があります」と Space Perspective の Co-CEO 兼 Chief Technical Officer である Taber MacCallum 氏は述べています。「当社の分析負荷が非常に高い理由はここにあります」。 

Space Perspective は、分析負荷のオンプレミスでの実行には莫大なコストと時間がかかることにすぐに気づきました。市場投入までの時間を短縮し、シミュレーション機能を拡張するために、Space Perspective は、企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートする AWS パートナーである Siemens Digital Industries Software に目を向けました。Space Perspective が直面したタスクでは、高コストのプロトタイプに依拠することなく、可能な限り多くの仮想ツールを使用する必要がありました。2021 年 8 月に、Space Perspective は Siemens のスタートアップ向けソフトウェアソリューションを採用し、その直後に AWS を利用したシミュレーションを開始しました。同社は、Siemens Xcelerator ポートフォリオを利用しています。これは、ソフトウェア、サービス、およびユーザーが独自のアプリケーションを作成するのに役立つアプリケーション開発ソリューションで構成される、包括的な統合ポートフォリオです。「これらの課題に対応するために CFD を使用するかどうかは戦略的な決定でした」と MacCallum 氏は述べています。「Siemens と AWS の組み合わせがなければ、当社がこの道を進むことはなかったでしょう」。

「Siemens と AWS の組み合わせがなければ、当社がこの道を進むことはなかったでしょう」。

- Space Perspective、Co-CEO 兼 Chief Technical Officer、Taber MacCallum 氏

強力な並列処理ツールの構築

カプセル、リギング、バルーン、風や波などの自然要素の相互作用を理解するには、最大数百の処理コアを同時に使用する複雑な CFD モデルが必要となります。Siemens は、AWS ソリューションを利用して、Space Perspective がビークルの構造設計の基礎として使用するのに十分な速度で分析をイテレーションできる大規模な並列処理ツールを開発するのをサポートしました。Xcelerator ポートフォリオ内で、Space Perspective は、Siemens が開発したマルチフィジックスシミュレーションソフトウェアである Simcenter STAR-CCM+ を利用しています。STAR-CCM+ を利用することで、エンジニアは現実世界の条件下で動作する製品をシミュレートできました。このことは、チームがより適切な設計に関する決定をより迅速に下し、最終的には市場投入までの時間を短縮するのに役立ちました。マルチフィジックス CFD モデリングは効率的な実行に高度な処理を必要とするため、STAR-CCM+ は高性能コンピューティングクラスター上で実行されます。高性能コンピューティングクラスターとは、高帯域幅のネットワークの相互接続によって連結される、ノードと呼ばれる個別のサーバーを集めたものです。

AWS は最近、AWS 上で CFD ワークロードのパフォーマンスとスケーラビリティを向上させる新しいハイパフォーマンスコンピューティングサービスをリリースしました。STAR-CCM+ は、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) において 100 Gbps で実行されます。Amazon EC2 は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能を備え、事実上あらゆるワークロードに対応します。具体的には、アプリケーションは Amazon EC2 C5 インスタンスを使用し、高度なコンピューティングを多用するワークロードを実行するために、低いコンピューティング単価比でコスト効率の高いハイパフォーマンスコンピューティング性能を提供します。Space Perspective はこれまで、8 個のコアを備えたローカルコンピュータ上で 100 万セルを含む 1 回のシミュレーションを実行するために、約 1 週間の実行時間を要していました。 

AWS のハイパフォーマンスコンピューティングサービスを利用することで、Space Perspective は平均 72 個のコアにアクセスし、同じシミュレーションを平均 10 時間で実行することができました。仮に、Space Perspective が、実行中の複数のシミュレーションから物理的なプロトタイプを、それぞれ異なる形態、速度、形状で構築しなければならなかったとすれば、数百万 USD のコストが発生していたでしょう。同社はこれに代えて AWS 上で複数のシミュレーションを同時に実行することで、大幅なコスト削減を実現しています。シミュレーションは、Space Perspective が分析によって明らかにした最良のシナリオに基づいてプロトタイプを構築するのに役立ちます。「分析により多くの処理能力をもたらすことができなければ、スケジュールを維持することはできなかったでしょう」と MacCallum 氏は述べています。「当社は、現在行っている作業を並列処理する方法を見つけるために AWS に問い合わせました。そして、そのプロジェクトは今も進行中です。当社はまだ多くの分析作業を進めています」。

「それは、これまでに作られたことのないビークルを生み出し、これまでに提供されたことのないタイプの飛行を実現するためにエンジニアリング作業を行う戦略とプロセスなのです。Siemens と AWS は、宇宙観光事業についての当社のビジョンの実現をサポートしてくれています」

- Space Perspective、Co-CEO 兼 Chief Technical Officer、Taber MacCallum 氏

設計の微調整の継続

Space Perspective は、顧客のために可能な限り安全で贅沢なビークルを開発するために、分析プロセスに取り組み続けています。陸上から出発し、大気中を通って宇宙に接する場所まで移動してから、地球に戻って着水することは、カプセルに計り知れない負荷をもたらします。Space Perspective は、デジタル化されたアプローチを通じて、これらのさまざまな環境の動作を高い精度でモデル化し、開発にかかる時間と多額のコストを削減しています。「それは、これまでに作られたことのないビークルを生み出し、これまでに提供されたことのないタイプの飛行を実現するためにエンジニアリング作業を行う戦略とプロセスなのです」と MacCallum 氏は述べています。「Siemens と AWS は、宇宙観光事業についての当社のビジョンの実現をサポートしてくれています」。

Space Perspective

Space Perspective について

フロリダのスペースコーストに本社を置く Space Perspective は、ゆっくりと宇宙まで上昇して地球に戻ってくる宇宙船を開発することで、宇宙観光事業の新境地を開拓しています。同社は、宇宙から地球を眺めることで、これまでにない新たな視点を乗客に提供したいと考えています。

Siemens について

Siemens Digital Industries Software は、北米に拠点を置く Siemens のグループ企業です。さまざまな業界にサービスを提供し、企業によるデジタルトランスフォーメーションの達成をサポートしています。Siemens は、AWS ISV ワークロード移行パートナーおよび AWS 公共部門パートナーです。

公開日: 2022 年 8 月