AWS なら 必要なときに必要な分だけ自動で拡張できますし、新しいシステムも小さく始めて徐々に大きくすることも容易です。これでインフラコストを最適化することができました。
調達のためにハードウェアの比較をする時間などは、本当にもったいないと思います。さらにシステムの冗長性まで考えれば AWS のメリットはかなり大きなものがあります。
坂口 豊 氏 株式会社 あきんどスシロー 情報システム室長

あきんどスシローは、「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を企業理念に、回転寿司企業の売上高ランキングで 6 年連続日本一を達成しています。創業当時の「より多くの人に美味しいすしを食べてもらいたい」との願いは、国内 451 店舗、社員数約 4 万人(パート、アルバイトを含む)という大きな規模に成長した現在でも、魚の仕入れやネタの鮮度管理を徹底し、手間をかけた店内調理にこだわりながら、新鮮でうまいすしを安価で提供する挑戦が続けられています。

また、2015 年 4 月にリリース後、延べ 550 万ダウンロードを達成した公式スマートフォンアプリ「スシローアプリ」や、その利用者を対象に、アプリからの予約・来店や、テイクアウトのネット注文でポイントを付与するサービス「まいどポイント」を全国の店舗で展開するなど、お客様に楽しみながら来店いただけるようなサービスを提供しています。

あきんどスシローでは、顧客に「うまいすし」を提供するため、商品原価率は約 50 %と業界水準を大きく上回っています。この高い原価率で事業展開していくためには、他のコストを抑えなければなりません。人件費や IT コストなどをできる限り抑えながら商品やサービスの質をさらに良くするため、あきんどスシローでは IT システムを効率的に活用することに積極的に取り組んでいます。これまでもすし皿に IC タグを取り付けて、レーンを流れるすしを管理したり、顧客の来店状況や着席状況などを管理することができる技術をいち早く開発し、個々の店舗での業績管理や売り上げ予測などに活用してきました。

大きな規模に成長した事業を安定して継続させていくためにも、信頼性・可用性の高いシステムが必要になったため、2 年程前にシステムの移行を行いました。とはいえ、新たな IT システム環境では期待していた安定性や信頼性に至らないものもあったため、より安定したシステム環境を構築することが 1 つの課題でした。また、それらの保守運用から新規システムの企画、構築に至るまでを、情報システム部の限られた人員で対応しなければならなかったことも大きな課題でした。

あきんどスシローでは、この仕組みを 4 年間運用し集まった 40 億件ものビッグデータを分析・活用するため、2012 年、BI ツールトライアルの検討を始めました。ただ、当時 BI ツールを動かせるサーバーは社内になく、検証のための環境が安価に手に入らないかと検討した結果、最適と判断されたのが AWS クラウドでした。「我々が想定する必要スペックに足りるサービスは AWS しかありませんでした」と、情報システム室長の坂口 豊 氏は振り返ります。さらに、動作保証されている BI ツールの種類が最も多かったことも、AWS を選択するポイントとなりました。「AWS 環境で DWH を構築し、そこへ 2 日間かけて 40 億件のデータを転送し、3 日目にはデータの分析が始められるようになり、費用も約 10 万円と、安価にトライアルを行うことができました。」(坂口氏)

その後あきんどスシローでは、2013 年後半から、Amazon RDS for SQL Server、Amazon Redshift を活用した本格的な DWH の構築を行いましたが、その際には Amazon VPC と社内の IP-VPN 網を AWS Direct Connect で接続し、データ転送時の通信速度に対する不安が解消されました。また、店舗で稼働するすしテクノロジーからのデータ収集では、Amazon Kinesis を使用した『KineSushi』という仕組みも構築し、分析・活用サイクルの高速化を実現しました。この仕組みを活用することで、さらなる食材廃棄の削減やオペレーションの改善にも引き続き取り組みました。さらに、トラフィックの増減にあわせて拡張性が必要となる Web サイトや Web アプリケーション、SAP ERP の財務会計、管理会計のモジュールなども AWS 上で稼働しています。

AWS には信頼性と安定性があり、サポート体制も整っていたことが、重要な基幹系システムのプラットフォームを含むシステムのインフラとして採用する決め手となりました。もう 1 つの AWS 採用のポイントとして挙げられたのが、事業継続性の仕組みを安価に導入できることでした。「以前は重要なシステムを含め、国内の 1 カ所のデータセンターで運用していました。これをまずは AWS クラウドに移行し、東京リージョンとシンガポールリージョンにデータを置くことで、災害対策の仕組みを構築しようとを考えました。」(坂口氏)

その後、あきんどスシローでは、テイクアウトのネット注文や来店予約ができ、ポイントが貯まるモバイルアプリケーション「スシローアプリ」をクラウドネイティブで開発、提供しています。

「テイクアウトの注文は、平日に比べお盆、クリスマス、年末年始といった数日間だけが極めて大きく増加します。また TV 番組に取り上げられた際なども同様です。これら数日間の注文をさばくためには、平日の 100 倍くらいのスペックが必要になります。AWS なら、Auto Scaling を使用して必要なときに必要な分だけ自動で拡張できますし、新しいシステムも小さく始めて徐々に大きくすることも容易です。これでインフラコストを最適化することができました。」(坂口氏) さらに停止時間なしでサーバの入れ替えができる点も、運用管理の手間を削減し、運用の自動化につながりました。結果的にあきんどスシローでは、テイクアウトのシステムを AWS で構築して以降、Fax や電話で注文を受けていた当時より、テイクアウト全体におけるネット注文の比率がじわじわと増えてきています。また、あきんどスシローのポイントシステム『まいどポイント』では Amazon Aurora も活用されており、データベースシステムの運用効率化が図られています。「スシローアプリは現在 550 万ダウンロードを超えており、数多くのモバイルアプリケーションからの変動するトラフィックにも AWS のシステムは柔軟に対応できています。」(坂口氏)

あきんどスシローでは、今後も構築するシステムはクラウドネイティブで開発する方針となっており、新規サーバなどのハードウェア購入は基本的に行っていません。「調達のためにハードウェアの比較をする時間などは、本当にもったいないと思います。さらにシステムの冗長性まで考えれば AWS のメリットはかなり大きなものがあります。」(坂口氏)

さらに、AWS Elastic Beanstalk を使用することで、継続的なクラウド上のアプリケーション更新も容易にできると坂口氏は評価しています。「運用には手間がかからないので、その分ビジネスにフォーカスすることができます。情報システム部門は私を含め 7 名と決して多くはないのですが、この人数で開発プロジェクトのマネージメントから、全国の店舗システムの運用保守、本部システムの管理やメニュー情報の配信までを担っています。その中で AWS のコンソールを見て運用監視を実質的に行っているのは私 1 人だけです。」(坂口氏)

このように手間をかけず運用できているのは、AWS のコンサルティングパートナーも含めた充実したサポート体制にもあるようです。「AWS のサポートはもちろん、何かあればAWS のパートナーさんが柔軟かつ迅速に対応してくれます。時には私たちが求めているものを先回りして提案してくれたりします。こういった手厚いサポートもメリットの 1 つだと感じています。」

あきんどスシローでは、KineSushi で集められているビッグデータの活用が今後の課題となっています。「店舗運用の細かい情報がリアルタイムで見られるようになり、管理担当者が詳細なレベルで店舗運営の管理、サポートができるようになったため、さらにデータを活用して店舗オペレーションをより良いものにしていきたいと考えています。」(坂口氏)

また、AWS 環境のさらなる安定化にも力を入れており、安定化に効果がありそうなサービスの利用も今後検討されています。Elastic Load Balancing は「Classic」を主に利用されていますが、AWS Application Load Balancer についても、AWS WAFとあわせて評価の上、結果が良ければ切り替えていく予定との事です。

さらに『まいどポイント』のシステムで利用した Amazon Aurora の信頼性の高さも確認できたため、「現在 MySQL で動いている部分を順次 Amazon Aurora へ移行し、管理工数を減らしていきたいと考えています。」(坂口氏)

- 株式会社 あきんどスシロー 情報システム室長 坂口 豊 氏

AWS クラウドがウェブアプリケーションにどのように役立つかに関する詳細は、ウェブサイトおよびウェブサイトホスティングの詳細ページをご参照ください。