朝日新聞社 国際編集部はAsia & Japan Watch (AJW) を編集・製作しています。私たちの部署では元々ヘラルド朝日という英字新聞を発行してましたが、国際市場向けに電子媒体で記事配信する形態に転換を決定 し、2010年からアマゾンのKindleやアップル社のiPhone、iPad向けの記事配信を開始しました。 2011年5月より、端末に依存しないWebサイトを通じた記事配信を開始しており、現在は英語圏だけでなく、中国語圏、韓国語圏への配信も行っています。

AJWのサイト全体のプラットフォームとして利用しています。システム構成的にはロードバランサー(Amazon Elastic Load Balancing)と、東アジア地域以外からのアクセス対策としてCDN(Amazon CloudFront)を活用することで、突発的な大量アクセスへの対応力とコンテンツの高速配信を実現するようにしています。

 

 

朝日新聞 Asia&Japan Watchシステム構成図

新たにサービスを開始する場合に、小さく、かつ手早くスタートでき、更に拡張性にも富んでいるというのがクラウドの利用を決めた理由の一つです。

2011年の震災直後に、FacebookにAsahi.comの英文記事を掲載した情報発信を行ったところ「いいね!」の数が、震災前の 100人弱から、3月中には1万人を超える規模に急増し、日本の情報に対する海外からのニーズの高まりを実感しました。そこで、当初予定していたWebサ イトの構築を前倒しすることを決定し、数社から提案いただいた中から採用したのが、日本技芸のCMSとアマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドサービスの組合せによる提案でした。

日本技芸の提案を採用した決め手はサイト構築までのスピードの早さでした。
実際4月12日に1回目の打ち合わせを行い、その約1ヶ 月半後の5月26日には記事ページを順次追加する形でサイトをソフトオープンさせるなど、極めて短期間でのサイト立ち上げを実現しています。その上、 AWSを利用する際も日本だけでなく複数の海外データセンター(リージョン)を選択できるので、日本に居ながらにして、読者層に近い場所でサイトを構築で きる事も決め手となっています。

前述しましたように、提案から1ヶ月半でシステムの稼働まで実現できたスピード感は、当時の状況では最大のメリットの一つでした。
それに加えて、インフラ部分にかかる運用コストの安さや、機能拡張時のフレキシビリティも、継続したサービスを行う上で重要な要素となっています。

クラウドサービスの拡張性、運用コストに加えて、クラウドの特性を知っているパートナー選定が重要だと思います。例えば、今回ご提案いただいた日本技芸 は、単にクラウドを使っているだけでなく、クラウドの特性を生かしたアジャイル開発体制をもっていることが大きな魅力でした。これにより、最近多く聞かれ る「リーンスタートアップ」という無駄のないプロジェクトの推進を行う事ができました。クラウドのシステムを導入される際は、どのクラウドを選定するかだ けでなく、開発会社がどれだけクラウドのメリットを引き出せるかについても注意したほうがいいでしょう。

立ち上げの早さもさることながら、システム構成を柔軟に変える事ができるところが気に入っています。
英語、中国語、韓国語と対応言語が増えるたびに変わるシステム要件にも、スピーディーかつフレキシブルに対応できるうえ、以前のシステムへの反映も容易に おこなえるというフィードバックループの良さが大きなポイントといえます。運用側からすると、「課題が見えた時に、打てる手がたくさんある」ということに で、これは変化の激しいインターネットでのビジネスを進めるうえで大きな力になっています。

1年間、英語版を運用してきた経験から、現在オートスケールの利用を検討しています。これ以外にも、次々と新しいサービスがリリースされていますので、その時の課題に応じて新サービスの利用も検討していきたいと思います。

朝日新聞社様の Asia & Japan Watchは、http://ajw.asahi.com/をご覧ください 。