山之内製薬、藤沢薬品の統合により、2005年に発足したアステラス製薬は、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」という経営理念に基づき、革新的で有用な新薬の研究開発に全力で取り組んでいます。
会社名:アステラス製薬株式会社
所在地:東京都中央区日本橋本町2-5-1
創業年:1923年
資本金:1,030億円(2013年3月31日現在)
従業員数:17,454名(2012年3月31日現在、連結ベース)
事業内容:医薬品の製造・販売、輸出入
弊社のコーポレートサイトでは、患者さんやその家族、医療関係者、株主・投資家などへの情報発信だけでなく、研究公募サイト等を提供しているため、24時間365日、無停止で稼働することが求められています。
従前のウェブサーバで使用していたOSのベンダサポート終了のタイミングが近づいたことを機に、サイトの可用性を担保するための運用上・技術上の各種課題 を洗い出し、こうした課題をサーバー更新に合わせて解決することになりました。大きくは以下の3つに集約されました。
OS、各種ソフトウェアの最新バージョンが利用可能である事。ただし旧来の環境で稼働している各種アプリケーションや動的コンテンツが稼働できる事。
2011年の東日本大震災を受け、BCP対策をより高度にすること。具体的には複数のデータセンターに公開用ウェブサーバーを分散配置するなどして、可用性を向上させる事。
物理サーバーのもつ各種制限を、仮想サーバー環境に切り替えることで解消。そのうえで、環境のカスタマイズ、権限管理、ソフトウェアのインストール等が行えるフレキシビリティを持つ事。
こうした条件に対応する環境として、検証環境を柔軟に用意でき、複数ロケーションの利用が可能なクラウドの採用が検討されるようになりました。
5社の候補業者様にアステラス製薬の現状と要件を説明したうえで、ウェブサーバー更新プロジェクトのRFPを提示しました。最終的に選定を行う際は、以下の点も合わせて重視しました。
- テスト環境(公開前のコンテンツ動作検証)を実装可能かどうか。可能であれば、どのような方式で実装するのか?
- セキュリティ対策(パッチ適用・ウイルス対策・改ざん監視・脆弱性チェック)がどこまで充実しているか?
- 運用の品質(SLAが定義されているか?)
- 旧ウェブサーバーから新ウェブサーバーへのコンテンツ・システム移行の際のサポート体制
AWSであれば、前出の課題への対応に加え、こうしたポイントをクリアにできることがわかり、新しいインフラ基盤としてAWSを、システムインテグレーターとして、AWSのパートナーである富士ソフト様を選定しました。
導入までの流れはおおまかに以下の通りとなります。
2012年2月: 各社にRFP提示・提案。
2012年3月: インフラ基盤として AWS の採用を決定。(協力会社として富士ソフトを採用)
2012年4月: 発注
2012年5月: テスト用環境構築(現在は公開前動作検証用環境として継続的に利用中)
2012年5~9月末: AWS の概要設計・詳細設計・VPN 環境整備・バックアップ環境構築・運用設計+手順書作成
2012年10月~2013年1月: コンテンツ移行+動作検証+改修
2013年1月: ウェブサーバー切り替え
「アステラス製薬株式会社様 システム構成図」
AWS は2013年1月から本番環境として利用を開始し、OSは全て RedHat Enterprise Linuxで統一し、ウェブ、及びアプリケーションサーバーにApache・Tomcatを使用、データベースサーバーとして Amazon RDS for MySQLを利用しています。なお、コーポレートサイトの CMS には、MovableType と独自開発の公開・バックアップツールを利用しています。セキュリティ対策には、トレンドマイクロ社のDeep Securityを利用しています。
AWSへの移行後は、従来のレンタルサーバーと比べウェブサーバーの台数は増加しているにも関わらず、年間利用コストでおよそ 50% のコスト削減効果が出ています。検証用などで追加のサーバーを立てる際も、都度1台分の新規サーバー費用がかかるのに加え、OSのライセンス等も必要と なっていましたが、AWSであれば、こうしたコストはすべて利用料金に含まれているので、無駄な支出が無くなります。そのうえ、AWSの利用料金は初期投 資不要で、使った分だけの支払となる従量課金なので、CAPEXの削減に大きく寄与しています。
パッチ適用・ウイルス対策・改ざん監視・脆弱性チェックをはじめとしたセキュリティ面に関しても、大きな改善が見られます。セキュリティ対 策としてAWS に対応したトレンドマイクロ社のDeep Securityを採用、導入したことにより、サーバーごとのウイルス対策や改ざん検知、IPS/IDS(不正侵入検知/防御)、仮想パッチなどを行うこ とで、重要なシステムやデータの確実な保護を実現することができました。これまで利用していたレンタルサーバーでは、権限設定やセキュリティ対策ツールの 導入等自由な設定ができなかったのですが、AWS の場合自由に環境設定ができるため、こうした要望を実現することができ、非常に助かっています。
導入にあたっては、初めてクラウドを採用することもあり、AWS サポートの「ビジネス」プランを利用しました。従来であれば、ハードウェア障害・OSやミドルウェア障害は各々のメーカに問い合わせる必要がありました が、AWS Supportの場合はサポート窓口を一本化できるので、効率的に疑問点を解決することができ、非常に満足しています。
AWS では、SLA基準を明確に定義している点も大きなメリットだと思います。これまで利用していたレンタルサーバーにはSLAがなく、決算発表時やウェブ上の ニュースなどに弊社に関する記事が掲載された時などにWebアクセスのレスポンスが低下することが多かったのですが、AWS では、Webアクセス集中発生時も対応能力が高く、信用性を維持することができています。
今後は、特定コンテンツの印刷、コピー、ダウンロードを制限する機能を組み込むなどして、提供可能な情報の種類や量を拡大するなど、新基盤を活かしたサービスを拡充していくつもりです。
- アステラス製薬株式会社 コーポレートIT部 課長代理 平木 修一 様
※ APN パートナーである富士ソフト株式会社様の情報は、こちら をご覧ください。