SCM 統合パッケージ『mcframe 7』の DB を PostgreSQL に対応
Amazon RDS for PostgreSQL の提供により商用 DB と同等のインスタンスコストを約 42 % に抑制

2021

自社開発の SCM 統合パッケージ『mcframe シリーズ』のライセンス販売や、システムインテグレーションビジネスを通して日本の製造業を支援するビジネスエンジニアリング株式会社(以下、B-EN-G)。mcframe のミドルウェアに商用 DB を採用してきた同社ですが、近年はオープンソース(OSS)の DB を求めるユーザーが増えています。
そこで、2020 年 10 月にリリースした最新の『mcframe 7』で PostgreSQL に対応し、クラウド利用者向けに Amazon RDS for PostgreSQL でもシステム導入を可能にしました。マルチ DB 対応により顧客の選択肢が増え、商用 DB と同程度のインスタンスを約 42 % のコストで利用できるようになりました。

AWS 導入事例  | ビジネスエンジニアリング株式会社
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マルチ DB 対応によりお客様の選択肢が増え、実績重視なら商用 DB、コストや運用を重視するなら PostgreSQL というように、さまざまな提案が可能になりました。また近い将来、時代の流れに応じて途中で DB 製品を乗り換えるといった選択も現実的になります

中村 俊一 氏
ビジネスエンジニアリング株式会社
新商品開発本部 商品開発本部
テクニカルディレクター / プロダクトマネージャ

お客様ニーズの増加を受け『mcframe 7』のマルチ DB 対応を検討

製造業向け ERP システムのパイオニア B-EN-G の業務ノウハウや、経験をシステム化した mcframe シリーズ。SCM ・原価管理のコア領域の基幹業務システムに加え、IoT、PLM などの周辺製品群も用意し、パートナー経由で 1,000 社を超える企業に導入されています。以前はオンプレミス環境への導入が主力だった『mcframe 7』ですが、近年はクラウド環境も増え、製品によっては SaaS 版も提供しています。

mcframe は、誕生以来ミドルウェアに商用 DB を採用してきましたが、昨今は 商用 DB 以外の選択肢を求める声が大きくなっています。また、競合他社も OSS DB に対応した製品への転換が加速しているため、同社は『mcframe 7』を OSS DB にも対応させ、マルチ DB として提供することを決断しました。

「商用 DB はハードな性能要求に応える一方、コストや開発自由度が柔軟性に欠ける面があります。そこで OSS DB を採用し、新たな選択肢を提供することにしました」と語るのは、新商品開発本部 商品開発本部 テクニカルディレクター / プロダクトマネージャの中村俊一氏です。 

品質担保に向けて移植ツールと検証ツールを自作

ストアド移植には AWS SCT を活用

OSS DB を検討した同社は、商用 DB との親和性や、コスト、性能、可用性などを考慮して PostgreSQL の採用を決定。クラウド環境への対応としてアマゾン ウェブ サービス(AWS)の Amazon RDS for PostgreSQL を選択しました。

「Amazon RDS は、可用性と将来性を評価して、2018 年の段階で商用 DB の稼働環境に採用した経緯があります。その際、AWS からさまざまな相談に乗っていただいたご縁もあり、PostgreSQL 対応でも引き続き支援をお願いしました。自社内に PostgreSQL に詳しいエンジニアが少ない中、AWS の担当者から外部の技術者を紹介していただいたり、社内向けに PostgreSQL のトレーニングを実施していただいたりと、手厚い支援に助けられました」(中村氏)

『mcframe 7』 の PostgreSQL 対応プロジェクトは、2019 年 7 月から 12 月までの検討・準備フェーズを経て、SCM 版の開発からスタートしました。2020 年 1 月から 9 月までに開発・テストを終え、2020 年 10 月に先行リリースしました。並行して原価管理版の開発を進め、こちらも 2021 年 1 月にリリースしてフルバージョンの対応を終えています。
プロジェクトのポイントは、商用 DB を前提としたアプリケーションソースコードの移植と、商用 DB と PostgreSQL の互換性テスト、ストアドプロシージャ(以下、ストアド)の移植の 3 つが挙げられます。ソースの移植については、商用 DB と PostgreSQL の仕様差異を吸収するマッピングツール(O/Rマッパー)を自社開発し、DB アクセスのソースを O/R マッパーに置き換える移植ツールを開発しました。新商品開発本部 商品開発本部 商品開発 1 部 シニアソフトウェアエンジニアの別役雅洋氏は次のように語ります。
「品質を担保するため、O/R マッパーをゼロから作り直しました。30 万行近くある DB アクセスを手作業で変換するのも非効率なので、SQL の構文解析から変換までを自動化する移植ツールを用意して開発生産性と品質を高めています」

商用 DB と PostgreSQL の互換性テストも、移植前の DB アクセスを網羅したテストケースを、双方の環境で自動実行する検証ツールを開発して実行しています。
「開発した検証ツールを用いて、移植前の商用 DB 環境で画面操作を実施し、サーバーへのリクエストやマスタ設定などの入力と帳票や DB の更新内容といった出力を記録しました。そして、移植後の商用 DB 環境と PostgreSQL 環境で、同様の処理を実行した時の出力結果との差異を検証する、現新比較テストを毎日自動実行することで、デグレードによる品質劣化を防止できました」(別役氏)
ストアドの移植については、AWS が DB 移行用に提供する AWS Schema Conversion Tool(SCT)を利用しました。開発初期の段階から商用 DB の資源を PostgreSQL に移行し、開発環境を整えることで開発効率を高めています。新商品開発本部 商品開発本部 商品開発 1 部 マネージャの近藤裕之氏は次のように語ります。
「開発着手の時点では PostgreSQL の DB を構築するツールが整っていませんでした。SCT を利用していち早く Amazon RDS 上に開発環境が構築できたことで、前倒しでストアド開発を進めることができました。ツールの活用で 90% 近くの資源を開発環境に移植できたことで、当初は外部委託を考えていたストアド開発を内製化に切り替える決断ができました。結果として作業工数の削減が実現できました」
 

商用 DB と同程度のインスタンスを約 42 % の料金で利用可能に

『mcframe 7』 のマルチ DB 対応により、お客様の選択肢が増え、実績重視なら商用DB、コストや運用を重視するなら PostgreSQLというように、さまざまな提案が可能になりました。
「これによって近い将来、時代の流れに応じて途中で DB 製品を乗り換えるといった選択も現実的になります。グローバルに事業を展開されているお客様の場合、海外の拠点は Amazon RDS でクイックに立ち上げたいという要望も多く、すでに引き合いも来ています」(中村氏)

コスト面では、商用 DB と同程度のスペックのインスタンスを、約 42 % の料金で利用できるようになりました(商用 DB:標準エディションとの比較)。また、夜間バッチの実行時に DB を一時的にスケールアップしたいというニーズに対しても、リザーブドインスタンスの割引を受けながら、ライセンス費用を気にせずスケールアップできるようになりました。インフラの調達面でも、オンプレミスならハードやソフトの調達や、セットアップで数カ月はかかるところが、Amazon RDS によって早期に DB 環境を用意することができます。結果として前倒しで性能評価や機能評価を実施することができ、プロジェクトのリスクヘッジにもつながります。

PostgreSQL の運用保守についても、フルマネージドサービスの Amazon RDS が、バージョンアップやパッチ適用などメンテナンスを代行するため、お客様はより安心感を持って利用することができます。

『mcframe 7』 の SaaS 版を開発し SaaS ビジネスの拡大へ

B-EN-G では今後、Amazon RDS だけでなく性能と拡張性に優れた Amazon Aurora PostgreSQL の適用に向けて検証を進めていく予定です。製品の付加価値を高めるために、マネージドサービスのさらなる活用を検討していくとしています。今後も『mcframe 7』 の SaaS 対応を推進し、将来的には、パートナーとの協力体制のもとで SaaS ビジネスを拡大していく構想です。

「mcframe のライセンスビジネスと、他社 ERP による SI ビジネスに続く 3 本目の事業の柱として SaaS ビジネスを強化し、マルチテナントによる SaaS サービスや、カスタマイズ性を重視した SaaS 導入サービス、開発環境も含めたクラウド化など、さまざまな導入モデルの提供を通して日本の製造業に貢献していきます。AWS にはクラウドビジネスの拡大に向けて、導入パートナーへの技術支援、運用にあたってのサービス提案、クラウドのスケーラビリティや柔軟性を享受するためのアドバイスを引き続き期待しています」(中村氏) 

中村 俊一 氏

別役 雅洋 氏

近藤 裕之 氏


カスタマープロフィール:ビジネスエンジニアリング株式会社

  • 取締役社長:羽田 雅一
  • 設立年月日:1999 年 4 月 1 日
  • 資本金:6 億 9,760 万円
  • 連結売上高:177 億 2,800 万円(2020 年 3 月期)
  • 従業員数:連結 : 618 名 単体 : 465名 (2020 年 3 月 31 日現在)
  • 事業内容:製造業向け ERP を中心としたシステムインテグレーション事業、自社基幹業務システム『mcframe 7』、『mcframe CS』、『mcframe GA』等を中心としたライセンス事業など

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • mcframe 7 のマルチ DB 対応により、お客様の選択肢が増加
  • 商用 DB と同程度のスペックのインスタンスのコストを約 42 % に抑制
  • リザーブドインスタンスの適用によるコストの最適化
  • インフラ調達のリードタイム短縮による、早期 DB 検証の実現
  • フルマネージドサービスによる運用負荷の軽減、顧客への安心感の提供
  • Amazon Aurora PostgreSQL の適用を検討
  • 製品の付加価値を上げるためのマネージドサービスの活用を検討
  • mcframe 7 の SaaS 版を開発し、SaaS ビジネスの拡大へ

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