大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社

AWS IoT サービスを活用して 工場に設置したセンサーから情報を可視化 機器の遠隔監視など、設備の高度な運用保守を実現

2022

戸建てから賃貸住宅、分譲マンション、商業 / 事業施設、環境エネルギーなど幅広く事業を展開する大和ハウス工業株式会社。同社は 3 次元データを使用して建物や構造物の設計、建設、維持管理の生産性を向上させるビルディング インフォメーションモデリング(BIM)を推進しています。その一環として、同社総合技術研究所では、自社工場の設備の 3D データを活用したデジタルツインと IoT を組み合わせた工場設備の可視化に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用しました。

大和ハウス工業株式会社
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AWS IoT Greengrass など、工場に配置したセンサーのデータをクラウドにアップロードする機能が AWS に用意されているので、当社側で作らなくてよい安心感と、スピード感がありました

吉田 博之 氏
大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 住宅技術研究部 IT ソリューショングループ

AWS の IoT 技術を活用した建築物管理を 工場の分野に応用

「建築の工業化」という企業理念のもと創業された大和ハウス工業。戸建住宅から賃貸住宅、分譲マンション、商業施設、物流施設、医療・介護施設、環境エネルギーなど幅広い事業領域で活動しており、住宅 187 万戸、商業施設 4 万 5 千棟、シルバー施設 9 千棟を供給しています。リフォームや買取再販事業など、戸建住宅や団地の再生事業にも取り組んでいます。

2055 年に売上高 10 兆円を目指す同社は、成長戦略としてビルディング インフォメーション モデリング(BIM)による生産性向上を目指し、2006 年から BIM の活用研究をスタート。2018 年には建築イノベーションプロジェクト『D ’ s BIM』を掲げ、全社的な BIM 活用を推進しています。

同社はこのようなデータ活用の取り組みの一環で、住宅内の複数の機器を管理できるアプリケーションを第三者が開発できるようにするための『住宅 API』のコンセプトも考案しました。2017 年には、AWS IoT サービスなどを使って、AWS パートナーの富士ソフト株式会社の協力のもと、住宅 API を実現するスマートホームの実証実験を実施。さらに 2019 ~ 20 年にかけて、この技術を応用し、BIM を使った工場設備の保守・運用を行うプロジェクトに乗り出しました。

スマートホームの実証実験も担当した大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 住宅技術研究部 IT ソリューショングループの吉田博之氏は、「BIM で作成する 3D データで工場の管理状況をデジタルツイン化し、さらに工場にさまざまなセンサーを設置して IoT と組み合わせた施設管理をすることで、BIM データの付加価値を高めたいと考えました」と語ります。

サーバーレス/マネージドサービスの活用で クラウド側のコストを最適化

このプロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究プロジェクトに採択された東レ株式会社が、大和ハウス工業に大規模空間でのセンサー活用を依頼したことから始まりました。東レのセンサーを設置した大和ハウス工業の奈良第四工場の空間情報を把握し、快適さの創出・維持のために照明のオン/オフなど遠隔操作できるシステムの実現性を実証することが主な目的です。

125m × 100m スパンの工場棟と事務所棟に 24 個のセンサー(照度、温度、湿度、人感)を設置し、各センサーから取得する情報を AWS IoT サービスでクラウドに送信し、クラウド上で収集・分析。その結果を BIM データによるデジタルツイン上にて可視化し、遠隔地の PC やスマートフォンなどのデバイスから管理できるようにします。

クラウドにデータを送信する部分や、クラウド側のシステム構築は富士ソフトが担当し、AWS IoT Greengrass を中心としたサーバレスアーキテクチャでデータを集約するプランが採用されました。

「これまで工場設備の制御技術では、最新のIT 技術の活用が進んでいませんでした。物理的な配線工事も煩雑で、少し位置を変えるだけでも配線し直さなければなりません。そのため今回は工場内に分電盤を 4 台配置して、クラウドサーバー上で連携することにしました。1 台にコントローラーをつけてデータを集め、クラウドにアップロードすることで、配線施工費を削減し、設備のレイアウト変更にも対応できると考えました」(吉田氏)

AWS のソリューションは、2017 年のスマートホームの実証実験で得られた信頼性に加え、グローバルでのシェアの高さも踏まえて採用。富士ソフトから、今回のプロジェクトに役立つさまざまなサービスがあると提案を受けたことも決定を後押ししたといいます。AWS IoT Greengrass の利用には、連携するソフトウェアの更新自体も遠隔で制御できるメリットもあります。

富士ソフトは、スマートホームの開発時から AWS のサーバーレス、マネージドサービスを有効活用するノウハウを蓄積し、機能だけでなく、コストも最適化した提案を行いました。今回はデータベースにマネージドサービスの Amazon DynamoDB、センサーデータの取得/分析/可視化や照明機器の制御処理には AWS Lambda を採用しています。

「物理的な配線の手間がなくなっても、無線通信やクラウドサービスの費用が高いと意味がありません。コストを抑えて遠隔管理ができるよう、AWS のさまざまな技術を活用しています」(吉田氏)

本プロジェクトは 2019 年 4 月に開始されました。細かな検証を経て、AWS 環境が構築されたのは 2020 年 7 ~ 9 月の 3 か月間です。短期間で構築できた理由には、AWS のサーバレスアーキテクチャで需要に対して必要な機能を効率的に開発できたことが挙げられます。吉田氏は「データをクラウドにアップロードする部分は既存の AWS サービスに任せることができました。これをゼロから構築するとかなり大変だったと思います。クラウドのメリットやスピードを実感しました」と評価しています。

コストパフォーマンスの高い IT システムを より良い商品・サービス提供に活かす

今回のプロジェクトを通じて、BIM データを 3D 化するとデータ容量が大きくなり、動作が重くなるといった課題等も見えてきました。吉田氏は「いわゆるデジタルツイン的なことを実際にやってみたわけですが、さまざまな課題も見えてきました。今後もさまざまなプロジェクトを通じて、ノウハウを蓄積・共有していきたいと思っています」と述べています。

従来の建築制御関連のシステムは、一度設置したら 5 ~ 10 年は使用され、長い場合は 20 年も安定して動作するものでした。一方で AWS のようなクラウドからは常に新しいサービスが生まれ、既存のサービスも絶えず更新されています。こうした変化への継続的な対応も、今後必要だと考えています。

また、従来の建築制御システムは導入コストや利用料が非常に高く、中小規模の建築物には利用できない場合があります。大和ハウス工業は工場や物流センターの大規模な施設だけでなく、中小規模の建物も手がけているため、このような領域にも AWS などの最新 IT 技術を活用できるのではと期待を寄せています。

「施設管理のセンター化ができれば、全国、海外の施設を少数の拠点のエキスパートが遠隔管理できるようになります。そのような将来を見据えた場合、世界中で利用できる AWS の存在は非常に心強いです」(吉田氏)

吉田 博之 氏


カスタマープロフィール:大和ハウス工業株式会社

  • 設立:1947 年 3 月 4 日
  • 従業員数:6,535 人(2022 年 4 月 1 日現在)
  • 事業内容:戸建住宅、賃貸住宅、分譲マンション等の企画・設計・施工・販売および、商業施設、物流施設、医療・介護施設、法人施設の企画・設計・施工・リフォームほか

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • システムの早期構築と運用の簡略化を実現
  • 従来のシステムよりも安価に導入可能
  • さらなる実用化の促進

AWS プレミアティア サービス パートナー

富士ソフト株式会社

自動車や電子機器等の組込系ソフトウェア開発と、金融、製造、流通等における業務系システムの構築の 2 本柱を主力事業に AWS を活用したさまざまなシステムの導入や、運用保守まで含めたワンストップサービスを提供する プレミアコンサルティングパートナー。移行および IoT のコンピテンシーおよび、Amazon EC2 for Windows Server のサービスデリバリープログラムなどを取得している。

富士ソフト株式会社

ご利用中の主なサービス

AWS IoT Greengrass

AWS IoT Greengrass では、AWS をエッジデバイスにシームレスに拡張します。これによりエッジデバイスでは、管理、分析、耐久性のあるストレージのためにクラウドを使用しながら、生成されたデータに基づいてローカルで動作することが可能になります。

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AWS IoT Core

AWS IoT Core は、インターネットに接続されたデバイスから、クラウドアプリケーションやその他のデバイスに簡単かつ安全に通信するためのマネージド型クラウドサービスです。

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Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。

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AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。

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