DCMグループの仲間を増やしていく過程において、新規グループイン企業への柔軟な対応を実現するためにも
IT リソースの拡張性が得られるクラウドサービスは必須と判断しました。
 
桑山 英二 氏 DCMホールディングス株式会社 システム・物流統括部 システム開発部長

国内最大のホームセンターグループとして 37 都道府県に 674 店舗(2018 年 8 月現在)を展開する DCMホールディングス株式会社。5 つの事業会社を傘下に持つ同社は、各社が個別に運用していたシステム基盤をオンプレミス環境に統合し、運用してきました。さらなる事業の拡大に向けて、同社は次世代の IT インフラとしてクラウドシフトを決断。グループ共通の分析基盤を Amazon Redshift で構築したのを皮切りに、Web-EDI システムを Amazon EC2 に移行しました。現在も全社システムのクラウド化を見据えて開発基盤などの AWS 化を推進しています。


 

DCMホールディングスは、中部を中心に事業を展開する『DCMカーマ』、四国・中国・近畿・九州を中心に事業を展開する『DCMダイキ』、北海道・東北・関東を中心に事業を展開する『DCMホーマック』の 3 社の経営統合によって 2006 年に誕生しました。その後、2015 年に青森県・北海道を中心とする『DCMサンワ』、2016 年に山梨県・神奈川県を中心とする『DCMくろがねや』を加え、現在は 5 つの事業会社でホームセンター事業を展開しています。社名のDCM には経営方針の“Demand Chain Management お客さま視点からの流通改革”と、コーポレートスローガンの“Do Create Mystyle くらしの夢をカタチに”の 2 つの思いが込められています。

同社の重点施策の 1 つに情報システムの改革があります。「2009 年頃から事業会社が個別に構築・運用していたシステム基盤の統合を進める中、2016 年にシステム開発の権限をホールディングスに集約し、戦略的にプロジェクトを進めています。DCMグループの仲間を増やしていきながらもコストの低減と新規グループイン企業への柔軟な対応を実現することがシステム統合の狙いです。」と語るのは、システム・物流統括部 システム開発部長の桑山英二氏です。

全社システムの統合を進める中で、次に見据えたのが IT インフラのクラウド化でした。桑山氏は「オンプレミス環境では、数年おきにシステムの更改が発生し、移行のコストばかりでなく日常的な保守コストの負担も大きくなります。今後、経営戦略に応じてビジネスの多角化を進めていく過程において、IT リソースの柔軟性や拡張性を高めるためにもクラウド化は不可欠だと判断しました。」と振り返ります。

 

IT インフラのクラウド化に向けて、同社が最初に手掛けたのがグループ全体で利用する分析(BI)システムでした。Oracle Exadataで構築していたオンプレミス環境のDWH 基盤に加えて、Amazon Redshift を用いた DWH 基盤を構築しました。システム・物流統括部 システム開発部 システム開発課長の遠藤将一氏は次のように語ります。「きっかけはオンプレミスの DWH 基盤のレスポンスが低下し、ユーザーから改善要望の声が大きくなったことです。全国に 674 店舗を展開する当社グループの場合、1 日に作成されるレコード数は約 7,000 万件に達します。今後もグループに加わる事業会社が増えていくことを想定すると、分析レコードのさらなる増加が予測されることから、リソースが柔軟に拡張できるクラウドがベストと判断しました。」

IT 戦略として自社にノウハウを蓄積することにした同社はまず、2018 年 3 月にテストとして Amazon Redshift や AmazonEC2 を用いて DWH 基盤を自社で構築しました。ここで十分な手応えを得てから、導入パートナーの選定に着手。複数の提案の中からクラスメソッドを採用し、2018 年 8月から本格的な構築を開始、同年 11 月より本稼働を開始しました。「AWS を採用した理由は、クラウドサービスの歴史が長く、安定稼働の実績が豊富だったことです。サービスメニューも幅広く、今後クラウド化を進めていくうえで有利になると考えました。パートナーにクラスメソッドを選定した理由は、確かな技術力と対応の柔軟性です。当社主体で開発を進めたいというリクエストに対して、バックエンドから適宜サポートするという提案をいただけたことが採用の決め手となりました。」(遠藤氏)

Amazon Redshift で構築した DWH 基盤は現在、オンプレミスの DWH 基盤と並行して利用中で、蓄積したデータをもとに BIツールを用いて KPI 情報の可視化や、帳票ツールでレポートの作成をしています。「今後もデータ量やグループ企業の追加に応じて拡張しながら、将来的には DWH 基盤を Amazon Redshift に一本化したいと考えています。」と遠藤氏は話します。

DWH 基盤に続き、次に同社がチャレンジしたのが、取引先のメーカーや卸売業者と受発注データをやり取りする Web-EDI システムのクラウド化です。オンプレミスの Windows Server を Amazon EC2 上に移行するプロジェクトを 2018 年 9 月より開始し、2019 年 1 月に本稼働を開始しました。「Web-EDI はオンプレミスのインフラ基盤を基準に、余力のリソースを確保してサイジングを実施し、本番環境と検証環境合わせて 11 台の AWS 上に作成された Windows Server に移行しました。自社のネットワークで閉じている DWH 基盤に対して、Web-EDI は外部に公開しているオープンな基盤であるため、特に安全性の確保が必要です。そこで、クラスメソッドに協力を依頼して、セキュリティや冗長性に細心の注意を払って構築しました。」(遠藤氏)

Web-EDI 基盤に続き、2018 年 11 月にはビジュアルベースのコードレス開発基盤(OutSystems)を AWS 上に新規で構築し、現在はホールディングスやグループ会社で利用する業務系システムのアジャイル開発を進めています。OutSystems の基盤には、サーバーに Amazon EC2、データベースに Amazon RDS を採用。Amazon EC2 上で Windows Server 2016 を 5 台、Amazon RDS 上で SQL Server 2016 を 4 台稼働させています。「AWS 上で Windows Server と SQL Server を稼働させることに関して、特に不安はありませんでした。限られた人員でクラウドサービスへの移行を進める中、現段階では複数のクラウドサービスを使い分けるより、1 つに統合したほうが運用面やセキュリティ面などでメリットが大きいと判断しました。」(桑山氏) 

その他、公開用ホームページのサーバー、パッチテスト用の一時サーバー、BI ツールの管理用サーバーなど、小規模なシステムのインフラも AWS 上に構築しました。今後もオンプレミスのサーバー保守の更改のタイミングで順次 AWS に移行しながら、クラウド比率を高めていく考えです。デジタルトランスフォーメーションの観点からも、AWS の機械学習や AI のツールの活用を見据えながら、DCMグループのビジネスに貢献していく方針です。

「クラウド化することで、システム更改時の業務委託費用やライセンスの重複費用が不要になるため、長期的な TCO(総保有コスト)の削減効果が期待できます。保守コストを下げ、新たな施策や新たな事業へ投資し、ビジネスの成長に貢献していきたいと思います。」(桑山氏)  

桑山 英二 氏

遠藤 将一 氏

 

AWS プレミアコンサルティングパートナー
クラスメソッド株式会社

ビッグデータ、モバイル、センサー、音声認識の企業向け技術支援を展開し、コンサルティングやシステム設計開発を行い、ビッグデータコンピテンシー、Windows SDP など所有する AWS のプレミアコンサルティングパートナー。国内有数の情報量を誇る技術メディア「Developers.IO」での技術共有も積極的に展開している。 


AWS では、分析用のデータレイクを迅速かつ容易に構築して管理するために必要な事柄すべて提供する統合されたサービス一式を提供しています。
詳細は、AWS でのデータレイクと分析 ページをご参照ください。