連結会計のスタンダードソフトを 6 カ月で SaaS 化
マネージドサービスの活用で運用負荷を軽減し開発者はアーキテクチャの改善や機能強化に専念

2020

連結会計やグループ・ガバナンスのソリューションを提供する株式会社ディーバ。これまでオンプレミスのパッケージソフトとして提供していた連結会計ソフト『DivaSystem』を、クラウドサービスの『DivaSystem LCA』としてリリースするにあたり、サービス提供プラットフォームにアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用しました。サーバー調達が不要な AWS の利用で、開発着手からわずか 6 カ月でのリリースを実現。
AWS のマネージドサービスを活用することで、運用負荷も大幅に軽減し、開発者はアーキテクチャの改善など、機能強化に向けた業務にリソースを集中することが可能になりました。

961581650
kr_quotemark

AWS の採用で通常は 1 年くらいかかる開発期間が、半分の 6 カ月で済みました。
新たな設備投資も不要で、コスト面でも有利な形でスタートを切ることができました

細野 淳 氏
株式会社ディーバ
開発統括本部 プラットフォーム統括部 
インフラサービス部長

顧客ニーズの高まりに応えて連結会計パッケージの SaaS 化を決断

AVANT グループの一員として「経営情報の大衆化」をミッションに掲げ、グループ経営を効率化するソリューションを通じて日本企業を支えてきたディーバ。主力製品の連結会計パッケージ『DivaSystem』は幅広い企業が採用し、日本の上場企業総数約 3,700 社の中で 1,000 社以上が導入しているスタンダードなソフトウェアです。

1997 年の設立以来、順調に顧客数を増やしている同社ですが、現在 AVANT グループでは 2023 年度に向けた中期経営計画「BE GLOBAL 2023」でビジネスモデルの変革を掲げ、ストック売上比率 70 % を目指しています。ソフトウェアの SaaS 化は、サブスクリプション型ビジネスへの転換を図る同グループのクラウドネイティブ戦略に沿うもので、ディーバは主力製品である DivaSystemの SaaS 化に踏み切ることにしました。

「DivaSystem の SaaS 化は、グループの戦略に加えて、連結会計システムをクラウドで利用したいという顧客ニーズの高まりに応えるものでもあります。お客様からはここ数年、オンプレミスのシステムの運用負荷やコストを減らしたいという声が大きくなっています。会計システムのリプレースと同時に連結会計のクラウド化を検討するお客様も増えていることから、その声に応えることにしました」と語るのは、開発統括本部 プロダクト統括部 連結会計プロダクト部長の山本陽昭氏です。

クラウドならではの柔軟な拡張性とマネージドサービスの豊富さを評価

連結会計システムの SaaS 版を『DivaSystem LCA』としてリリースするに際して同社は、AWS をサービス提供プラットフォームに採用しました。選定の理由は、クラウドならではの柔軟な拡張性と、マネージドサービスの豊富さにありました。開発統括本部プラットフォーム統括部 インフラサービス部長の細野淳氏は次のように語ります。

「まず、自社でサーバーを保有せず、スケーラブルな基盤で作りたかったのがひとつです。加えて自社でインフラ運用はせず、コアな業務に開発者のリソースを集中したかったことがもうひとつ。総合的に判断して、もっともカバレッジが広かったのが AWS でした」

今回、アプリケーションを配信するサーバー基盤にはコンテナを採用し、Amazon ECS でクラスタを管理する構成としました。

「Amazon ECS を採用した理由は、パッチ適用や再起動など仮想マシンで発生する運用を排除することと、お客様ごとに異なる環境を用意するのにコンテナを使って集積度を上げてコスト効率を高めるためです。運用負荷をより下げるため、フルマネージド型の Amazon ECS を採用しました」(細野氏)

プラットフォームの設計は 2020 年 2 月から着手し、PoC を実施しながら Amazon ECS によるクラスタ構成の実現性を検証しました。5 月からは機能開発とテストに移行し、7 月に本番リリースを迎えます。開発期間は実質 6 カ月。5 名のインフラエンジニアが設計から構築までを担当し、計画どおりのスケジュールで開発を終えました。開発統括本部 プラットフォーム統括部インフラサービス部 SRE グループの岡野安佐子氏は次のように振り返ります。

「AWS は AWS Well-Architected としてベストプラクティスが充実しているため、迷うことなくリソースを構成することができました。AWS のソリューションアーキテクトに他社の事例を紹介いただいたり、私たちの設計がベストプラクティスに合っているかチェックしていただいたりしたおかげもあり、開発はスムーズに進みました」

インフラ調達のリードタイムを数カ月から約 3 時間に短縮

DivaSystem LCA を 2020 年 7 月にリリースして以降、ユーザー企業からは大きな反響が寄せられています。リリース後すぐに数社の導入が決まり、引き合いも多数あるといいます。2020 年 8 月には金融・流通系の情報システム会社が、時間短縮と経理部のみで少人数体制で導入が進められるクラウドサービスにメリットを感じて DivaSystem LCA を採用し、リモート決算・リモート監査のさらなる効率化を進めています。

「新規導入と並行して、オンプレミス環境からの移行案件も多く寄せられており、10 月から受け入れを開始する予定です。しばらくはオンプレミス版と SaaS 版を並行しながら、個々のお客様ニーズに応えていきます」(山本氏)

AWS の導入効果については、6 カ月の短期間導入を高く評価しています。細野氏は「通常 1 年くらいはかかるところが半分の開発期間で済みました。新たな設備投資も不要で、コスト面でも有利な形でスタートを切ることができました」と語ります。

オンプレミスでの導入の場合、サーバー調達からアプリケーションのインストールで数週間から数カ月かかるところが、AWS なら 3 時間あれば準備が終了します。結果としてインフラ関連のリードタイムが大幅に短縮でき、顧客に対してスピーディーにサービスを提供することが可能になりました。

インフラの運用負荷もマネージドサービスによって大幅に軽減。インフラエンジニアはアーキテクチャの改善など、機能強化に向けた業務にリソースを集中することが可能になっています。

「構築後は Amazon CloudWatch に監視を任せておけばパフォーマンスの変化に対応して、リソース使用率を最適化してくれるので運用負荷はほとんどありません。クラスタ運用もパッチ適用も必要なく、設計の際もとりあえず作ってみて問題があればすぐに変えられるので、心理的な負担も軽減されます」(岡野氏)

その他にも、SaaS 化によってリリースサイクルも短縮が可能になり、これまで半年に 1 回、1 年に 1 回のサイクルで実施してきた機能追加やパッチ適用が、数カ月単位の間隔で実行できる見込みです。コンテナ化したことで顧客ごとに機能追加やパッチ適用ができるため、よりアジリティを高めた形で不具合の改善や、新たな価値の提供が可能になりました。

サーバーレスなどを採用しながらモダンなアーキテクチャへ移行

DivaSystem LCA はリリースされたばかりですが、今後はクラウドの柔軟性を活かした形でアーキテクチャを進化させていく方針です。

「現在のコンテナを使ったシングルインスタンスによる提供形態を、マルチインスタンスとして提供できるようサーバーレスなどを採用しながらアーキテクチャをモダン化することを検討しています。」(山本氏)

ディーバの SaaS 化戦略は、主力サービスの DivaSystem LCA をリリースしたことで大きな山を越えました。今後は新たな付加価値の提供として、機械学習を活用した予測機能の提供や、データ活用のさらなる高度化を構想しています。

「例えば、連結を目的として集められた複数の子会社の会計データをソースとした分析環境を提供したり、機械学習を用いて管理会計に予測分析機能を付加したりとさまざまなことが考えられます。AWS には引き続き、機能のエンハンスとともに、最新の情報提供を期待しています」(細野氏)

細野 淳 氏

山本 陽昭 氏

岡野 安佐子 氏


カスタマープロフィール:株式会社ディーバ

  • 代表取締役社長:永田 玄
  • 創立年月日:2017 年 8 月 7 日(創業:1997 年 5 月 26 日)
  • 事業内容:連結会計システム「DivaSystem LCA」および関連製品の開発のほか、連結決算業務・単体決算業務などのアウトソーシング事業を手掛け、情報開示を通じた企業の価値創造プロセスを総合的に支援

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 6 カ月の短期開発を実現
  • インフラ調達のリードタイムを数カ月から約 3 時間に短縮
  • マネージドサービスによる運用負荷の軽減
  • 機能強化に向けた業務に開発者のリソースを集中
  • リリースサイクルの短縮による迅速な機能強化やパッチ適用の実現
  • サーバーレスの活用などアーキテクチャのモダン化を検討
  • 機械学習を活用した予測機能の提供やデータ活用のさらなる高度化を検討

ご利用中の主なサービス

Amazon ECS

Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。

詳細はこちら »

Amazon ECR

Amazon Elastic Container Registry (ECR) は、完全マネージド型の Docker コンテナレジストリです。このレジストリを使うと、開発者は Docker コンテナイメージを簡単に保存、管理、デプロイできます。

詳細はこちら »

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

詳細はこちら »

Amazon CloudWatch

Amazon CloudWatch は、DevOps エンジニア、開発者、サイト信頼性エンジニア (SRE)、および IT マネージャーのために構築されたモニタリング/オブザーバビリティサービスです。

詳細はこちら »


上記は 2020 年 10 月時点での情報です。