導入事例 / エネルギー & ユーティリティ

2024
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JERA、AWS を活用することによりセキュアで高度な OT/IT 連係を実現。AI による予兆検知や運用最適化をグローバルに提供

20 %

削減された計画外停止時間

1 億円

対象ユニットにおける年間で削減された燃料費用

AWS サービスを駆使することでセキュアな OT/IT 連係を実現

新ビジネス展開のスピードアップ

概要

グローバルで競争力の高いエネルギー企業を目指して設立された株式会社 JERA は、脱炭素化された新しい発電を目標としてデジタル技術とデータの活用に注力しています。設立当時からアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用して高度な OT/IT 連係に取り組み、そのノウハウは自社設備だけでなく、ソリューションとして世界中のエネルギー企業にも提供。AWS の各サービスを用いて開発された IoT Platform は、予兆検知や運転最適化を実現し、高い効果をあげています。

ビジネスの課題 | 次世代の発電で世界のエネルギー課題に挑戦

JERA は 2015 年、国際エネルギー市場で戦うことのできるグローバルなエネルギー企業体の創出と、国際競争力のあるエネルギーの安定供給と企業価値の向上を目指して、東京電力と中部電力の燃料・火力部門の統合によって設立されました。「CO2 が出ない火をつくる」というキャッチフレーズで、ゼロエミッション火力と再生可能エネルギーを組み合わせた発電に取り組み、2050 年の CO2 排出量ゼロを目標として掲げ、クリーンなエネルギーを安定的、経済的に供給できる新しい基盤を創るという、日本および世界のエネルギー問題に取り組んでいます。

また同社では、発電技術の研究開発のみならず、デジタル技術を積極的に採り入れて、“データドリブンカンパニー”の実現に向けて取り組んでいます。

「2018 年から戦略や方針の策定に取り組み、統合データ基盤の構築や O&M の高度化など複数の DX プロジェクトを全社で推進してきました。すでにデータ可視化や分析、業務・運用への応用といったフェーズは完了し、業務プロセスの整備やデータガバナンスの強化に注力しています」と、JERA デジタルクリエーション部 デジタルトランスフォーメーションユニット 課長代理の大澤正紹氏は語ります。

デジタル技術やデータを活用したソリューションとして、O&M ・エンジニアリングサービス「JERA O&M Way」があります。長年の発電所操業で得られたノウハウをベースとした発電所運営をサービスとして提供するもので、デジタル技術を用いた遠隔監視やビッグデータを活用した予兆監視など最先端の運用手法を採り入れています。そのソリューションを提供する組織が「G-DAC(Global Data Analyzing Center)」です。

「2016 年に IoT 技術を活用した発電設備運用の高度化・効率化を目指したプロジェクトが発足し、2018 年には社外向けの監視サービスの提供を開始しました。そしてサービス強化・拡大に努め、2023 年にグローバルを含めた、サービス提供を加速するため G-DAC を設立しました。現在は日本・東南アジア・北中米の 64 ユニット、合計で出力約 30GW の発電設備をリアルタイムで監視し、機械学習を利用した最適化を図っています」と、JERA O&M ・エンジニアリング戦略統括部 G-DAC モニタリングユニット ユニット長の島添道裕氏は話します。

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「AWS の親身なサポートを受けながら、先進的な取り組みを推進できました。IoT ・ AI 技術を活用した予兆検知システムや性能管理システムによって発電所の可用性・効率性を高め、計画外停止時間や燃料費用の削減という大きな効果をあげています」

大澤 正紹 氏
株式会社 JERA デジタルクリエーション部 デジタルトランスフォーメーションユニット 課長代理

ソリューション | AWS を活用し、セキュアで高度な OT/IT 連係をグローバルへ

JERA では、プロジェクトの初期から AWS を用いて監視基盤を構築・運用してきました。クラウドファーストでプロジェクトを推進してきた大澤氏は、AWS の選定について次のように語ります。

「従来型のオンプレミスシステムは非効率で、私たちの目指す変革を担うことは難しいと考えていました。データ活用のための基盤として、堅牢でダウンタイムの少ないクラウドが望ましく、また海外展開も容易で先進的なサービスも多い AWS を選定しました。当初はクラウド技術や AWS に不慣れでしたが、 AWS プレミアパートナーのサービス事業者と AWS のソリューションアーキテクトの親身なサポートを受けて、導入と活用を推進することができました」(大澤氏)

G-DAC の遠隔監視サービスの中で、発電設備の運用実績や設備データを収集・分析する IoT Platform は特に重要な役割を果たします。従来、データ連係のシステムは OT ベンダーが発電所構内に設置するもので、データが手元にあったとしても、システムメンテナンスやデータマネジメントはメーカー主導になっていました。JERA は、自身で基盤を構築・運用することで、データもシステム設計も適切にコントロールしたいと考えました。

「OT/IT 連係はセキュリティが非常に重要で、各種規定やガイドラインへ準拠することが前提です。当社では、AWS Direct Connect で閉域網を利用しつつ、AWS Site-to-Site VPN を組み合わせて複数のネットワークに分けることで、OT/IT 間で高い安全性を確保することができました。

このように自社所有網で実現できていたのと同じ要件を満たせる仮想ネットワークが構成できたことは大きなメリットです」と、JERA 情報セキュリティ室 課長代理の佐藤正芳氏は語ります。

アーキテクチャ

導入効果 | 効率的で最適化された高品質な設備運用サービス

JERA が AWS 上に構築した新しい IoT Platform では、IoT Core や AWS Lambda、Amazon Kinesis を利用し、各発電所から受け取ったローデータをプラントごとに構築したサイトへ振り分けて、Amazon SageMaker といったサービスを活用して IoT Platform 上の発電設備の保守、監視、管理を実現しています。具体的には、予兆管理、性能管理/診断、運転最適化といった機能を提供しています。

予兆管理に使用する予兆検知システムは、機械学習で算出された予測値と実測値との差を測り、早期に異常を検知して発報します。不具合が起きてから発せられる従来型の警報発生の前に対応ができることで、計画外停止を回避できる可能性が高くなり、安定した発電所運営を実現できます。

性能管理/診断では、ボイラー効率やタービン効率、発電所内で使用する電力などを管理・診断し、設備の性能劣化やその原因を分析します。運用改善や設備清掃などの対処方法まで提案するため、現場で迅速に対策を検討・実施できるのが特長です。

運転最適化システムでは、過去の設備運転データを AI に学習させて、最適な操作パラメータを算出します。発電効率を最大化するには、燃料や外部環境の変化に応じてプラントの設定を調整する必要がありますが、操作パラメータと操作量は多岐にわたるため、細かい操作は行いません。またベテランの運転員であれば、経験や知識からそのような操作も可能ですが、経験の浅いオペレーターだとその対応ができません。この仕組みを活用することで、すべてのオペレーターが最適な運転を実現でき、属人性を排除することが可能となります。

そして、ミッションクリティカルな OT と連係する機能を実現するには、安全性も極めて重要です。JERA の IoT Platform は、国内電力会社向けに策定されたセキュリティガイドラインに基づく接続点の最小化やネットワーク分離などの厳格な要件を満たすため、プラントネットワークとインターネットやエンタープライズネットワークとを切り離し、安全な環境を構築しています。

こうした取り組みの結果、例えば予兆検知システムによって、計画外停止時間を 20 % 以上削減することができました。さらなる削減に取り組み計画外停止時間「0」を目指しています。また、性能管理/診断と運転最適化の働きによって効率が向上し、対象ユニットにおいて年間で 1 億円以上の燃料費削減効果を発揮しています。

JERA では、脱炭素化に向けたデジタルプラットフォームの構築に向けて、さらに AWS の活用を促進していく意向です。

「JERA は、データアナリストによる監視・分析と現場エンジニアの保全スキルを強固に連係し、また火力発電設備で長年培ってきたカイゼン・ノウハウに基づいた安定的で高効率な設備運営を提供していきます。新しいビジネスの創出や変化する IT リスクへの対応は、自社のみで実現できるようなものではなく、クラウド型のセキュリティ技術や AWS の専門的なサービスが欠かせません。今後も高品質なサポートで、私たちの先進的な取り組みを支えてほしいと考えています」(大澤氏)

企業概要 株式会社 JERA

国際的なエネルギー市場で競争力を持ったグローバルなエネルギー企業体を創出することを目標に、東京電力および中部電力の燃料・火力部門が統合し、2015 年に設立。「CO2 が出ない火をつくる」というキャッチフレーズで、水素やアンモニアを活用するゼロエミッション火力と再生可能エネルギーを組み合わせて脱炭素化を図り、2050 年までに CO2 排出ゼロを目標とする取り組みに注力している。

大澤 正紹 氏

島添 道裕 氏

佐藤 正芳 氏

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