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運行中の列車の走行位置がリアルタイムに確認できる
『JR 西日本列車走行位置サービス』を AWS クラウド上に構築
ダイヤ乱れ時に急増するアクセスにも安定してサービスを提供

2021

「自分が乗る予定の電車が今、どこを走っているかを知りたい」。西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)は、顧客の移動に関する満足度向上のため、Web サイト『JR西日本列車走行位置サービス』を 2017 年 4 月より提供しています。プラットフォームは、フェンリル株式会社の支援を受けて、アマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築し、大量アクセスへの対応を実現しました。リアルタイムの走行情報が、いつでもどこからでもわかる本サービスは月間平均 400 万 PV を記録し、ダイヤ乱れ時には特に活用されています。

AWS 導入事例  | 西日本旅客鉄道株式会社
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大雨、台風、地震などの自然災害時にはアクセスが急増するため、バーストに耐えられるインフラが必要でした。高い拡張性を備えた AWS の採用で、サーバーやネットワークの負荷がボトルネックとならず、高い品質を維持しています

小山 秀一 氏
西日本旅客鉄道株式会社
IT 本部 デジタル技術室 室長
(デジタルソリューション本部兼務)

列車の走行位置を知りたいというユーザーニーズへの対応を検討

西日本エリアの 2 府 16 県で鉄道事業を中心とする運輸業のほか、流通業、不動産事業等を展開する JR 西日本。新型コロナウイルス感染症の拡大による経営環境の激変を受けて『中期経営計画 2022』の見直しに着手。2020 年 10 月に『グループデジタル戦略』を策定し、11 月には組織横断的に戦略を進める『デジタルソリューション本部』を新設しました。「新たなデジタル戦略は“顧客体験の再構築”“鉄道システムの再構築”“従業員体験の再構築”の 3 つを柱とし、グループが持つ多彩なデータの利活用を進めながら駅や店舗、地域のリアルな体験へとつなげ、新しい価値を生み出していくことを目的としています」と語るのは、IT 本部 デジタル技術室(デジタルソリューション本部兼務)の小山秀一氏です。

JR 西日本が顧客へのリアルタイムの情報伝達の取り組みを本格化させたのは 2017 年のことです。当時は、安全、CS(顧客満足)、技術の 3 つを戦略に据え、CS に関しては満足度調査を通して KPI 評価を行ってきました。その中で、ダイヤ乱れ(列車遅延)時の顧客への情報提供に関しては、改善が急務となっていました。
「これまでにも駅や列車内のディスプレイ、プッシュ通知アプリなどのツールを通して遅延情報を提供してきたものの、お客様からは数分単位の遅れや個別の列車の運行状況を知りたいといった声が寄せられていました」(小山氏) 

ユーザーからのアクセス部分はマネージドサービスで構成して安定性を確保

こうした背景から JR 西日本は、列車の走行位置情報をリアルタイムに提供する Web サイト『JR 西日本列車走行位置サービス』の立ち上げを企画し、プラットフォームに AWS を採用しました。AWS を選択した理由の 1 つとして、アクセスに応じてリソースを拡張・縮小できるスケーラビリティにあったといいます。
「運行情報系の Web サイトは、大雨、台風、地震などの大きな自然災害時にはアクセスが急増します。今回のサービスは、個々の列車単位で遅れ情報を案内するため、画像を使って一目でわかりやすく案内することが必須であったことから、大容量のデータを捌くことができ、バーストにも耐えられるインフラが必要でした」(小山氏)

それ以外の理由として、JR 西日本 IT ソリューションズ(J-WITS)デジタル推進部の青山学氏は「世の中に情報が多くあり、エンジニアやベンダーの確保が容易なことや、成功事例が豊富にあることがポイントとなりました」と語ります。

鉄道システムを扱う JR 西日本では元来、オンプレミスかつ自前のインフラが主流で、当初は社内でもクラウド採用に反対する意見がありました。「そうした中で SLA、セキュリティ、コストなどの課題が克服できることを粘り強く説明しました」と小山氏は語ります。

開発は 2016 年夏から着手し、要件定義、設計、開発などを経て 2017 年 4 月末にサービスをリリースしました。まずは京阪神エリアの 17 線区からスタートし、順次導入路線を拡大。現在は、北陸・中国エリアにも対応しています。
「お客様が違和感なくサービスを使えるよう、開発担当者と相談し、列車のアイコンに丸みを持たせたり、実際の路線カラーと Web デザインのカラーを統一したり、路線名や駅名の書体を駅構内のサインと揃えたりと、デザインにもこだわりました」(青山氏)

開発のパートナーには、AWS を活用した BtoC 向けシステム開発で実績があり、大阪に本社を構える AWS パートナーのフェンリルを指名。アプリの構築から、UI 設計、デザイン全般まで総合的な支援を求めました。フェンリルのエンジニア、野田奏氏は次のように語ります。
「システムに求められるスケーラビリティと可用性を達成するため、AWS のマネージドサービスを活用するアーキテクチャを考えました。ユーザーからのアクセスを受けるフロントエンドは、Amazon S3 による静的コンテンツ配信と Amazon CloudFront によるコンテンツキャッシュを中心に設計し、この構成に合わせてアプリケーションを実装しました。Amazon S3 に配置する走行位置データを処理するためのバックエンドサーバーは、マルチ AZ による冗長構成を組み、安定したサービス稼働を実現しています」

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平均月間 PV は約 400 万

過去最大で約 700 万 PV/ 月を記録

サービス提供開始以来、『JR 西日本列車走行位置』は多くのユーザーに利用され、2019 年の平均月間 PV は約 400 万に達しています。過去には約 700 万 PV / 月を記録したこともあるといいます。
「2018 年 7 月の西日本豪雨のように長期かつ広範囲にわたる災害時にはアクセスが急増しました。通常時でも朝夕の通勤・通学の時間帯にダイヤ乱れが発生すると、アクセスは著しく増加します。こうしたバースト時でもサーバーやネットワークの負荷がボトルネックとならず、高いサービス品質を維持できています」(青山氏)

ユーザー満足度も高く、自分が乗りたい列車の位置がピンポイントで確認できると好評です。駅に出向かなくても列車の位置が把握できるため、ダイヤ乱れが発生した際にも、駅構内が混雑する頻度が減り、駅員への問い合わせも減少傾向にあるといいます。

コスト面についても小山氏は「当初はバーストアクセスに対するトラフィック課金に一定のリスクを見込んでいましたが、試算以下の金額で維持できており、嬉しい誤算です」と話します。

位置情報を活用してダイナミックに

移動の全経路を案内するサービスへ

本サービスにより CS の向上を実現した JR西日本は今後、移動にまつわる全行程をサポートする情報サービスの提供と、さまざまな移動と生活サービスをシームレスに提供する MaaS の実現を目指していく計画です。
「2020 年 9 月に、経路検索、駅の混雑度傾向、周辺スポット情報などの機能をまとめた統合型 MaaS アプリ『WESTER』をリリースしました。将来的にはアプリの機能拡張を通して、リアルタイムの位置情報データを活用した最適経路案内、AI によるパーソナライズ化したナビゲーションなど、付加価値の高いサービスを提供していきたいと考えています」(小山氏)

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小山 秀一 氏

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青山 学 氏


カスタマープロフィール:西日本旅客鉄道株式会社

  • 代表取締役社長:長谷川 一明
  • 資本金: 1,000 億円
  • 設立年月日: 1987 年 4 月 1 日
  • 営業収益: 15,082 億円(連結)、9,619 億円(単体)(2020 年 3 月 31
    日現在)
  • 従業員数: 48,300 名(連結)、26,500名(単体)(2020 年 3 月 31 日現在)
  • 事業内容:運輸業、流通業、不動産業、その他

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 災害時などのアクセス急増時でも高いサービス品質を維持
  • 利便性の向上により高いユーザー満足度を獲得
  • ユーザー自身の情報獲得による駅員への問い合わせ数の削減
  • 試算以下のコストでの運用を維持

AWS セレクト コンサルティングパートナー

フェンリル株式会社

「Software meets Design」をミッションに 2005 年に設立。 先端的ウェブブラウザ Sleipnir の開発をはじめ 400 社 600 アプリを数えるアプリ開発によって、デザインと技術でユーザーにハピネスを提供している。またクラウド活用支援サービス「GIMLE(ギムレ)」を展開。アプリケーションを開発・運用する際の最適なインフラ環境の提案から構築、導入後の活用も支援。 2016 年 2 月より セレクトコンサルティングパートナー。

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