AWS を活用したガバメントクラウドで
働き方改革を牽引する DX 人材を育成

2022

全国の自治体の中でもいち早く、DX に取り組んできた神戸市。デジタル庁の『ガバメントクラウド先行事業』に採択された同市は、2025 年度末までに地方自治体の基幹業務システムが国の標準準拠システムへの移行を義務付けられている動きに対応し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用して移行準備を進めています。また、デジタルを活用できる職員の育成にも力を入れ、DX 時代を牽引する人員体制の構築を目指しています。

AWS 導入事例  |  神戸市
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DX の根幹は“ X ”、すなわちトランスフォーメーションにこそあります。デジタル技術を取り入れ、具体的な業務改革を適切にリードしていける人材の育成こそが、DX 推進において重要と考えています

森 浩三 氏
神戸市企画調整局
デジタル戦略部 部長

震災後の行財政改革を契機に市を挙げて働き方改革を推進

古くから国際貿易の拠点港として栄え、異国情緒あふれる街として知られる神戸市。今も国内有数の経済都市として繁栄を続ける同市は、行政機関のデジタル活用における先進的な自治体でもあります。

神戸市が働き方改革へ取り組む大きな契機は、1995 年の阪神・淡路大震災でした。「震災は市民の暮らしや経済に甚大な被害を及ぼしました。そして復興費用を捻出するための厳しい行財政改革で大幅な人員削減が行われ、震災前と同等ないしはそれ以上の業務量を、より少ない職員数でこなさなければならない状況となりました。そのため一連の業務変革を、ICT の活用を軸に進める必要があったのです」と神戸市企画調整局 デジタル戦略部 部長の森浩三氏は説明します。

同市は、全職員が利用できるチャットツールなどを使って業務の効率化を図る一方、市民に質の高い行政サービスを提供するための DX に注力。少子高齢化や地球温暖化といった環境変化に向き合い、街や暮らしの質を高め、地域経済の好循環を支えることを目指してきました。

例えば、コロナ禍の経済対策として 2020 年に実施された特別定額給付金事業では、市民から寄せられる申請処理の問い合わせに対して、Web や電話音声で自動回答するサービスを構築。開発に携わった神戸市企画調整局 デジタル戦略部 ICT 総合戦略担当係長の伊藤豪氏は、「政府の決定から実際の給付までの時間的な余裕がなく、俊敏なサービスの立ち上げこそが命題であったため、内製でシステムを構築しました」と振り返ります。

公共分野での豊富な実績を評価しガバメントクラウドに AWS を選択

日本政府は 2018 年 6 月から“クラウド・バイ・デフォルト”の原則を打ち出しており、それに沿ってデジタル庁が整備を進める政府共通のクラウドサービスの利用環境『ガバメントクラウド』は、行政に必要なシステムを構築するために行政機関や地方自治体が共同で利用できるものです。

地方自治体の基幹業務システムには、2025 年度末までに国が示す基準に適合した標準準拠システムへの移行が義務付けられ、ガバメントクラウドの活用が強く推奨されています。神戸市は、この移行に伴う課題を検証する『ガバメントクラウド先行事業』に率先して応募しました。全国から 52 自治体が応募し、2021 年 10 月に採択された 8 自治体のうち、政令指定都市は神戸市のみです。

ガバメントクラウドで利用するクラウドには AWS を含む 2 つのサービスが提示されていますが、神戸市は AWS を選定しました。神戸市企画調整局 デジタル戦略部 ICT 業務改革担当の石田真智氏は選定理由について、「公共分野における豊富な実績を評価し、当市が進める行政データ利活用の仕組みを支えるデータ連携基盤にも AWS を採用しています」と語ります。伊藤氏も、「元々 AWS を使って庁内のデータを有効活用するためのデータレイクを構築していたこともあり、ある程度 AWS の知見が溜まっていました。また、AWS は LGWAN-ASP といち早く連携するなど、自治体の目線で多くの新しい取り組みに注力している印象がありました」と語ります。

神戸市はガバメントクラウド先行事業で、住民記録システムや、基幹システムを横断するデータ連携基盤システムを、AWS のガバメントクラウド上へ 2022 年度内に移行する計画です。現在は、移行時 / 移行後の各種課題について検証準備を進めています。

神戸独自の DX 人材モデルで 3 つの階層ごとに職員の育成を推進

一方で神戸市は、DX 人材育成にも力を入れています。働き方改革や DX を推進する中で、デジタル資源を有効活用できる人材を増やすことが目的です。『デジタルエキスパート』『DX(業務)推進リーダー』『一般職員』という 3 つの階層からなる独自のDX 人材構成モデルを策定し、各層に適した育成施策を展開しています。

最上位にあたる『デジタルエキスパート』は、庁内外に存在するさまざまなデータを理解し、各種サービスを連携させながらどのようにシステムを実現していくか、アーキテクチャの全体構想を描くことができる人材です。神戸市では、システムベンダーとも対等に会話ができるこのような人材を全職員の 1 %(120 名)程度確保していきたいと考えています。「そのために、AWS 認定ソリューションアーキテクトなどの資格取得を推奨しているほか、研修の実施など教育面で AWS から多大な助力を得ています」(伊藤氏)

次の『DX(業務)推進リーダー』は、文字通り現場で業務改革をリードし、デジタルツールを使いこなして DX の視点から業務をデザインしていける人材です。神戸市では実際に業務を遂行する数百の課それぞれに少なくとも 1 名ずつ配備していくことを想定しています。

デジタル戦略部は、デジタル技術の調達管理や DX 推進だけでなく、デジタル人材育成を牽引する役割も担っています。2021 年度から DX 人材として育成対象となる職員を庁内公募により募集し、配属された職員に対しては、1 年目は OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて IT の基礎的な素養を身に付け、2 ~ 3 年目にはさまざまな現場に出向いて業務改善を体験するという 3 年スパンでの人材育成プログラムを実施しています。
「単にデジタル技術に精通しているだけでは十分ではありません。デジタル技術を取り入れ、具体的な業務改革を適切にリードしていける人材の育成こそが重要と考えています」と森氏は強調します。

庁内の ICT ツールに関する情報交換や勉強会の場として、同市では KTL(Kobe Tech Leaders)と呼ばれる技術コミュニティを設置。「KTL では、AWS をはじめとする外部ベンダーの支援も受け、講演や研修、ローコード開発ツールの学習など、草の根的な取り組みも展開しています」(石田氏)

そして 3 つめの『一般職員』には、前述の 2 階層を除く全職員が該当します。一般職員には、ICT や情報セキュリティについての基礎研修、日々の業務で利用するツールの活用サポートを行い、自治体の職員に求められる ICT リテラシーの獲得を広範に支援します。

このように包括的な人材育成を進めながら、神戸市では国の要請に応え、2025 年度末までに業務システムの標準化とガバメントクラウドへの移行を完了させる予定です。さらにその後は、国が示す標準化の対象外となる業務システムについても、オンプレミス環境からガバメントクラウドに移していく構想を描いています。
「もはや、独自にデータセンターを用意してシステムを運用していくことに必然性はないと考えています。AWS の提供する各種サービスを最適な手法で使いこなし、俊敏性とコストメリットに優れたシステム運用を目指していきます」と森氏は語り、DX によって進化する神戸市の将来を見据えています。

森 浩三 氏

伊藤 豪 氏

石田 真智 氏


カスタマープロフィール:神戸市

  • 市制開始:1889 年 4 月 1 日
  • 年間予算規模:1 兆 8,804 億円(2022 年度)
  • 人口:151 万 2,287 人(2022 年 6 月 1 日現在)
  • 職員数:20,801 人(2021 年 4 月 1 日現在)

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • ガバメントクラウド先行事業における移行課題の検証
  • 業務システムの標準化とガバメントクラウドへの本番移行
  • 3 階層の人員体制による DX の効果的推進

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