名鉄グループを中心とした 5 社共同で 3 次元地図の実証実験を実施
AWS を活用して付加価値の高いサービスの提供を推進

2021

名古屋鉄道株式会社、中日本航空株式会社、株式会社メイテツコム、名鉄タクシーホールディングス株式会社の名鉄グループ 4 社と、株式会社マップフォーは、新規事業開拓の一環として営業中のタクシーを使って高精度 3 次元地図を作成する実証実験を 2020 年 10 月~ 12 月まで実施しました。データ収集のためのインフラを、柔軟性が高く、スケールアウトが容易なアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に構築した基盤を通じて、付加価値の高いサービスの提供を目指す意向です。

AWS 導入事例  | 名古屋鉄道株式会社
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AWS 上にシステムを構築して、自動運転やデジタルツインのインフラとなる高精度 3 次元地図の作成の実証実験を行いました。これらのデータに付加価値を付けて、将来的に街や都市を整備する取り組みなどにも活用できるようにしていきたいと考えています

岩田 知倫 氏
名古屋鉄道株式会社
経営戦略部 課長

名鉄グループ 4 社とベンチャーの発想を融合させた画期的なプロジェクト

今回のプロジェクトが生まれたきっかけは、ドローンを使った新規事業を模索していたことが 5 社共同での実証実験につながったと名古屋鉄道株式会社 経営戦略部課長の岩田知倫氏は説明します。
「名鉄グループは、鉄道を中心に地域に根差したモビリティサービスを提供してきました。ドローンは将来的に空のインフラとなりうる存在であると考え、成長基盤のひとつとしてドローンを使った新たな事業の可能性を探っていました。また、グループ会社の中日本航空は従来から有人機で航空測量を行っており、ドローンを活用した測量をすでに実用化していました。そこで、有人機やドローンを用いてデータを集める 3 次元地図の将来性に注目し、その活用先や、膨大なデータを効率的に収集、加工、可視化処理する方法を研究する勉強会を名古屋鉄道と中日本航空にグループでシステム開発を行っているメイテツコムを加えた 3 社で開催しました。さらに、愛知県が主導してスタートアップを支援する Aichi Open innovation Accelerator で採択されたマップフォーが自動運転用の 3 次元地図技術を事業にしていることに注目し、マップフォーを加えた 4 社で勉強会を続けていきました」

勉強会を重ねる中で、有人航空機やドローンではなく、営業中のタクシーに 3 次元計測システムの MMS(モービルマッピングシステム)を搭載させるという今回の実証実験のベースとなる構想が生まれ、まとまっていきました。その後、グループの名鉄タクシーホールディングスを加えた 5 社で画期的なプロジェクトがスタートしました。

迅速なシステム構築とニーズに合わせて柔軟に対応できる AWS を採用

同プロジェクトでは、データ収集・分析のためのインフラとシステムが新たに必要となりました。さまざまな検討を重ねた結果、AWS 上にシステムを構築することを選択しました。「オンプレミスも検討しましたが、このプロジェクトは利用者の増加やニーズの変化があることと、早期にシステムを構築する必要があったため、クラウドを選択しました。AWS を選択したのは、事例や実績が多く、運用や監視のサービスが充実しているからです。Amazon S3 に蓄積されたデータの並列処理に AWS Lambda が役立ち、ネットワークからセキュアにアクセスできる AWS Direct Connect も用意され、監視機能の Amazon CloudWatch も便利です」と株式会社メイテツコム デジタル戦略室 マネージャの坂口良樹氏は話します。

「開発では、できるだけサーバーレスな構成にするようにこだわり、認証基盤を AWS 上に置いて基本的に AWS のサービスだけで完結させました」と続ける坂口氏は、サーバーレスでの Web アプリケーション開発などを AWS が提供するチュートリアルを活用してスムーズな開発ができたと振り返ります。

「毎週 1 時間ほど AWS に相談できる時間を設けていただき、その場で解決できない問題もすぐにメールで解決してくれました。構築から運用まで親身にサポートしていただいています。オンプレミスで構築した場合、調達から始めておよそ半年程度の規模感でしたが、約 2 ヶ月で終えることができました」とメイテツコム デジタル戦略室の堀江直人氏は語ります。

営業中のタクシーを利用することでコストをかけずにデータを収集

2020 年 10 月~ 12 月に行われた実証実験では、週に 5 日間営業で街中を走るタクシーがデータを収集し、週に 1 度データをアップロードする形で行われました。「タクシーは、営業中に何百 km も走るので、地図を作成するためだけに走行する必要がなく、コストをかけずに多くのデータを集めることができました。将来的には、毎日自動的にデータをアップロードできるようにし、頻度を上げることで新たな価値を生み出すようにしたいと考えています」と坂口氏は話します。

収集したデータを分析して基盤となる高性能 3 次元地図データとし、自動運転などに役立てることが考えられますが、岩田氏はそれだけでなく、さまざまな用途に使える可能性があると説明します。「シンガポールでは、すでにバーチャルシンガポールというプロジェクトで国土を丸ごと 3D データ化しています。日本でも産学官連携による国土交通データプラットフォーム整備計画や、東京都のスマート東京実施戦略(東京版 Society 5.0)でデジタルツインを推進しようとしており、都市をデジタル化する試みが行われています。公共インフラとして都市をデジタル化していくことについては、地域と共に生き、モビリティの提供やまちづくりを通じて、新たな魅力や価値を創造し続ける企業グループ目指す当社としても、デジタル時代の新たな基盤の確立を支援していけるようになりたいと考えています」

高精度 3 次元地図の作成にとどまらず付加価値の高い情報の提供へ

実証実験に参加した中日本航空株式会社取締役 調査測量事業本部 副本部長の鈴木浩二氏は、「私たちが培ってきた 3 次元計測や解析処理が、将来的な自動運転に役立つことを願って参加しました。低価格機材で高精度なデータ取得が行えて、システム導入のハードルが低い今回の仕組みが普及することに期待しています」と話します。また、株式会社マップフォー 代表取締役の橘川雄樹氏も「自動運転社会の普及の課題となっている、高精度 3 次元地図の低コスト化や簡易化を目的に、データ収集システムを構築するメンバーとして参画しました。今後は、作成した地図の精度検証を行い、将来的なサービス化を想定して、クラウドシステムで地図作成までできることを期待しています」と話します。

今後のシステムについて、坂口氏は「今後は、どのようなデータをどのような人が求めているかを検討し、それに合わせて AI なども活用してシステムを進化させていきたいです。今後、利用が増えていけば、スポットインスタンスなどを使ってコストを抑えていくことも考えています」と話します。

岩田氏は将来展望として、「都市のデジタルツインのインフラとなる付加価値のあるデータを提供するようになり、地方自治体や関係省庁の方々、デジタルでまちづくりの変革を目指す方々、インフラにおける DX を推進する方々などに活用していただけるサービスにしていきたいです。そのために、街や都市をデジタル化するだけでなく、そこに新たな付加価値をつけていきたいと思います。名鉄沿線に限定せず、日本中、世界中に興味がある人がいれば、ぜひ話をしてみたいと思っています」と語ります。

岩田 知倫 氏

坂口 良樹 氏

堀江 直人 氏


カスタマープロフィール:名古屋鉄道株式会社

  • 資本金:1,011 億 58 百万円(2020 年 3 月末現在)
  •  設立年月日:大正 10 年 6 月 13 日
  • 年間収入:1,097 億 42 百万円(2020 年 3 月期)
  • 事業内容:名古屋鉄道をはじめとする名鉄グループは、地域と共に生きる企業として、運輸、不動産、流通、レジャーなどの事業を展開する企業グループです。 地域の皆さまの豊かな生活を実現する事業を通じて、地域の価値向上に努め、永く社会に貢献することを使命にしています。

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • オンプレミスでは半年かかるシステムを約 2 ヶ月で構築
  • 構築から運用までの細やかなサポート
  • 今後は収集したデータの分析と活用法を検討して事業化を目指す

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