「未来の金融を創造する」を企業理念に掲げるマネックス証券は、1999 年に設立されたオンラインでの取引を専業とする証券会社です。時代にあった金融商品を継続してお客様に提供していくために、我々はつねに一歩先の未来を見据えていく姿勢を貫いています。MONEX という社名にも「”MONEY"の"Y"をひとつ前にだして、一歩先を行く未来の金融を作っていこう」という意味が込められています。

時代を先取りしたアプローチを取るならば、最先端の IT インフラ構築が必要になります。ましてやマネックス証券はオンライン専業の金融機関であり、洗練されたITインフラの構築と活用はビジネスを遂行していく上での最重要ミッションであるとも言えます。

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現在の金融業界における IT とビジネスの関係を見てみると、大きな課題が2つ挙げられると思います。

ひとつはビジネスの変化のスピードに IT がキャッチアップできていないということです。マネックス証券が設立された 1999 年と 2014 年の現在では、ビジネスを取り巻く環境は大きく変わっており、そのスピードはどんどん加速しています。にもかかわらず、IT に関しては 15 年間変わらないままという企業も少なくありません。お客様のニーズやマーケットの状況は秒単位で刻々と変化しているのに、IT が対応できていないのです。これはビジネスチャンスの大きな損失に直結します。

ではなぜ IT が対応できないのかというと、オンプレミスでシステムを導入する場合、システム構築に時間がかかる上、最低でも 5 年は使い続けなければ減価償却できないという理由が大きいです。もし仮に 5 年を待たずに新しいシステムにリプレースしようとすれば、手間もコストも莫大なものとなり、採算に合わないことがほとんどです。結果として、お客様のニーズに応えることができない、時代遅れの IT を使い続けることになります。そして時代遅れの IT で最先端の金融サービスを生み出すことはほぼ不可能です。

もうひとつはアクセスボリュームの増減に合わせた柔軟なインフラ設計が困難であることです。日本の株式市場は基本的に平日の午前9時にオープンし、午後 3 時にクローズします。取引のピークが最も高くなる時間帯はだいたい 11 時ごろで、14 時を過ぎると減少に向かいます。

しかしこの変化は決して一定ではなく、たとえば大きなニュースがあれば、突発的に市場動向が大幅に変化します。

こうした予期しない動きに、オンプレミスの IT リソースを最適化させることはできません。したがって、たいていの企業では市場動向を想定してインフラを設計しますが、当然、使われない時間帯には有休リソースと化してしまい、ムダが生じます。また、市場動向を想定して設計しても、それを超えるアクセスが発生した場合には対応しきれなくなります。使いたいときに使いたいだけ利用できるオンデマンドなインフラが、金融業界では切実に求められているのです。

オンライン専業であるマネックス証券は、ビジネスの重要なパーツである IT インフラの整備にはかなりの労力をかけてきましたが、すべてのシステムをオンプレミスで運用するには限界が来ていたことも確かでした。

変化するニーズと増え続けるボリュームに柔軟に対応していくためには、一部のシステムのクラウド移行は必然だったと言えます。

マネックス証券のインフラは大きく以下の5つに分けることができます。

  • トレーディングシステム … ミッションクリティカル、顧客情報など機密情報を格納
  • ホームページ(Webサイト) … スケーラビリティ重要、ピーク時の予測困難
  • マーケットデータ … スケーラビリティ重要、ピーク時の予測困難
  • 開発基盤、社内業務 … 社内での利用
  • 新サービス「MONEX INSIGHT」 … リアルタイムな投資情報を大量のユーザに提供

このうち、ミッションクリティカルな基幹業務を扱うトレーディングシステムに関しては現在もオンプレミスで運用を続けていますが、それ以外に関してはほとんどを AWS に移行、または移行を検討中です。AWS を選んだ理由は数多くありますが、まずクラウドにおける圧倒的なワールドリーダーであるということは非常に大きいですね。ユーザが世界中にいるということは、それだけの実績と信頼性があるということを表しています。ユーザからのサービスに対するフィードバックも多く、その改善サイクルも速い。ユーザやパートナー企業間の情報交換も活発で、エコシステムが非常に良い形で循環していると感じます。

サービスのメニューも他のクラウドプロバイダーに比べて圧倒的に種類が多いので、欲しいサービスがすぐに見つかります。ツールキットの充実度も完璧に近いですね。このあたりは小さなクラウドプロバイダーでは到底太刀打ちできないレベルとスケールだと思います。

そして何より素晴らしいのは、AWS を使うことで得られるスピード感です。たとえば 30 分でサーバ 100 台分のリソースを揃えるなんてことは、ハードウェアの調達に最低 2 週間はかかる既存のインフラでは考えられなかったことです。1 時間だけ 1000 台のマシンを使いたいなんて要望にも簡単に応えてくれる。しかも料金は使った時間に応じてのみ支払えばよいので、同じハードウェアを 5 年間も無理に使う必要がなくなります。開発にかかる時間も大幅に短縮されました。

また、課題だったピーク時のキャパシティプランニングも不要になり、突発的なアクセスの増大にも問題なく対応できています。今日やりたいことを今日のうちにできる、このスピード感は金融ビジネスを根底から変えるのではないでしょうか。

実は AWS の前にも別の ASP サービスを利用したことはありました。しかし AWS(クラウド)と ASP ではスケールメリットに大きな差があります。ASP は AWS のように、急なリソースの増減に対応できませんし、利用可能なリソースの量は契約期間に縛られます。

キャパシティプランニングを不要にするほどのパワーは、規模の経済にもとづいたクラウドを提供できる AWS だからこそ持ちえるものだと思います。

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マネックス証券では 2014 年 5 月から「MONEX INSIGHT(ベータ版)」という新しい投資情報サービスをお客様に提供していますが、これは AWS 上で展開しています。専用のアプリケーションをインストールしなければ利用できないタイプのサービスと異なり、誰もがどこからでも、どんなデバイスからも ブラウザだけでリアルタイムな投資情報をチェックすることができるものです。リアルタイム性をキープするため、 1 秒間に数回のデータ更新を実現しています。また同時アクセス数は最大 2 万ユーザを想定しており、取引時間帯のアクセス増減に応じてスケールアップ/ダウンを実行できるようにしています。パフォーマンス、高可用性、セキュリティ、自動化などを担保する AWS のクラウド環境があればこそ実現したサービスです。

こうした新しいタイプのサービスを迅速に開発するには、多少の失敗もすぐにリカバリーできるようなトライアンドエラーのアプローチを許容する環境が重要になります。失敗もすぐに後戻りできれば大きなリスクにはなりにくい。むしろトライアンドエラーの回数を多くすることが、より質の高いサービスの開発につながります。

そういう意味からイノベーションはスピードから生まれる時代になったといえるのかもしれません。そしてレガシーが多い金融機関だからこそ、クラウドというスピードをもたらすツールによってビジネスを変えられる余地は大きいはずです。

今後はクラウドをベースにしたビッグデータ分析の利用を検討しています。AWS にはビッグデータ分析のためのサービスも数多くあるので、我々のニーズに適したかたちで選んでいきたいですね。

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「レガシーが多い金融機関だからこそ、クラウドというスピードをもたらすツールによってビジネスを変えられる余地は大きいはずです。」
- マネックス証券株式会社 常務執行役員 チーフ・テクノロジー・オフィサー
ピーテル・フランケン様

私は日本に来てから 25 年以上経ちますが、日本のお客様の金融サービスに対する考え方もずいぶん変わってきたと実感します。それにともなって、以前は法人寄りだった金融機関も、個人のお客様に対するサービスの強化を図るようになってきました。こうした時代の変化に合わせて我々は商品を提供していかなくてはならないのですが、今後はもっとひとりひとりのお客様のニーズに寄り添ったサービスを展開したいと考えています。

また、グローバルビジネスの拡大も現在の重要なミッションのひとつです。こうしたマネックス証券の新たな事業戦略に、今後もクラウドが欠かせないツールとして存在していくことは間違いないでしょう。

 

- 常務執行役員 チーフ・テクノロジー・オフィサー ピーテル・フランケン様