日本電産は精密小型モータで世界No.1の地位を築き上げてきました。そして、同時に製品ラインアップも小型から大型までの各種モータ、さらには応用製品である機器装置や電子光学部品などへと次々に拡大してきました。
現在では、当社製品の活躍するフィールドは情報通信機器、OA機器分野にとどまらず、家電製品、自動車、産業機器、環境・エネルギーなど幅広い分野に広がっています。
すべての「回るもの、動くもの」をキーワードに、当社は社会のニーズに応える次代の駆動技術を創造しています。
これら我々のビジネス展開を支えるのは、比類なきスピードとグローバル視点での拡大戦略です。昨今のグローバルにおける激しい市場変化は更に加速してきており、立ち止まることなく常に成長し続けていくためには、この時間軸から取り残されることは許されません。常に1番を目指した競争力を維持するためには、グローバルで駆け巡る大容量の情報を、常に共有・管理することが必須の業務要件となっていました。
- 開発・研究部門が取り扱う、動画・3D・解析結果等の大容量データの情報共有
- あらゆる部門が取り扱う、非構造データ(Excel, Word, Powerpoint等)の共有と活用
- 膨大な量の製品カタログ等の、グローバル一体管理に向けた体系的な情報の集約・管理
- 情報共有に伴う情報漏えいリスクを回避するためのセキュリティ対策
- M&Aやグローバル展開に伴う事業拡大スピードを支える、スケーラブルなインフラ基盤
これら全ての要件にグローバルな目線で柔軟に対応でき、最速・最低コストで実現するためのツールは、世の中にありそうで実はなかなかなく、どれも「帯に短し襷に長し」の状態でした。そこでこれを機に、社内でこれらの要件を実現できるデジタル情報共有基盤の構築に挑んだのが「GreenForest」誕生のきっかけです。「Dog Fooding」という考え方をもって、実際に社内ユーザに利用検証してもらうことで課題を抽出し、それを解決していくことで機能的にも磨き上げていきました。その成果として社内での活用が順次進む中で、世の中に同じ課題を抱える企業が実に多いことを知り、外販活動に踏み切ろうという判断に至っています。現在、データクック社、アルゴグラフィックス社を代理店に、拡販活動を展開中です。
グループグローバルに情報の一体管理・共有ができる基盤の構築プロジェクトがスタートしましたが、先述のような要件をクリアする環境を実現するには、迅速性、拡張性に優れたクラウドが最適であると判断しました。
これまでも当社は、オンプレミスベースのプライベートクラウドや他社の IaaS を利用していましたが、今回のような、高度なセキュリティで世界中からインターネットを通 じて利用し、大容量ファイルを低コストかつ高スケーラブルに保管できるインフラを検討すると、IaaS 型クラウドの中では、 AWS 以外の選択肢はありませんでした。さらに AWS はサーバ、ストレージ、データベースのサービスだけでなく、フルマネージド型のサービスを活用することで更に安定したシステムを提供できることが大きな評価点でした。
また、セキュリティについては、クラウドを選択する際によく議題に上がる「クラウドだから危険、オンプレミスだから安全」という考えに縛られずに検討しました。その結果、運用次第で高いセキュリティを担保できると結論に至り、システム全体で高いセキュリティを担保できるように設計しました。
以上を踏まえ、今回構築した情報共有基盤アプリケーションの GreenForest は AWS を選択しました。そして、2013 年 10 月頃から開発環境として導入を開始し、2014 年 4 月には本番稼働しています。
「GreenForest」構築により得られた効果は非常に大きく、求められる要件に対して期待以上の効果が得られました。例えば、動画等の大容量ファイルは DVD-R や USB メモリによる運搬や、有料の他社サービスの利用が一切不要となりました。また、プレビュー機能によりダウンロードが不要となり、海外拠点でも迅速に共有することが可能となりました。更に営業マンは、何百ページもある製品カタログやバインダー何冊分に及ぶ資料を「GreenForest」に保管し、必要に応じてその場でモバイルによってお客様にプレゼンできるという武器を得ました。セキュリティレベルを維持しながらのこれら営業活動のみならず、社内のあらゆるグローバルレベルでの会議運営にも使用され、大きな効率化に貢献しています。海外に広がる製造現場では、工程・品質状況を日本の開発センターと動画等を交えてやり取りが適時可能になったほか、3D・解析結果等の大容量データは各国の研究所とシームレスにやり取りが始まっています。また、業務上で発生したエビデンス等の文書保管場所を「GreenForest」に統一することで、グローバルでの業務標準化の一翼も担っています。
これらを「いつでも、どこでも、どんな時でも」支えているのが AWS であり、次々に出てくる追加要件に対しても手離れよく短期間に、しかも安価に構築できるメリットを大きく享受しています。オンプレミスで必要となる事前の準備から一連のセットアップ作業が一切不要であることはもちろん、インフラの制約条件がないことから設計に要する時間も大幅に短縮できるようになりました。アクセス集中等による負荷によりリソースが逼迫した際も、「いつでも、どこからでも」すぐにメンテナンス対応できるため、システム部員の業務負荷さえも大幅に低減しています。まさに成長し続ける当社において、「GreenForest」の提供先がいかように拡大しても、常に安定してサービス提供が可能となる基盤が、AWS によって完成したと言えます。
これら効果は、外販活動において採用いただいたお客様にとっても、同様に享受できるメリットとなることは言うまでもありません。
「GreenForest」の構築により、当社情報システム部門における AWS の活用レベルが格段にアップした中、当社にもフルスタックエンジニアが若手中心に着々と育ってきていると言えます。過去にオンプレミスを中心にシステムに携わってきたエンジニアとは明らかに思想・発想の異なる彼らが、今後更にビジネスに直結した高付加価値を生むシステム構築をリードしてくものと考えます。要は AWS の導入は、システム構築の在り方・情報システム部員の存在価値そのものにまで大きな変革を与える、いわば「IT の文明開化」のようなものだと言えます。
一般的に IaaS は、機能が豊富、コストが安いといった単純なポイントで評価されがちですが、実は様々な情報が常にオープンになっていることが重要なポイントだと考えています。特に AWS は日本でのコミュニティが非常に活発であり、これらを活用することで他業種を含めたトップエンジニアから常に刺激を得られ、それが部員の意識向上や業務の質の向上、更には業務スピードのアップにまで繋がっていくことを目の当たりにしています。これこそが、まさに AWS を導入する本当の効果だと考えます。まずは触ってみること。クラウドの導入をお悩みの方も、食わず嫌いにならずに、まずは小さくていいので始めてみることをお勧めします。AWS はそれだけの価値を必ずもたらします。
日本電産株式会社
- 情報システム部 業務改革推進室 課長代理 中村 稔典 様
- 情報システム部 業務改革推進室 麻生 拓郎 様