導入事例 / 情報通信

2024

NTT東日本、複数の SaaS を組み合わせたクラウドネイティブなモダンアーキテクチャによるクラウドストレージサービス『コワークストレージ』を 6 か月で開発

2 倍

サービスのリリーススピード

6 か月

開発期間

20,000

累計の契約実績(2023 年 8 月時点)

アジャイルによる継続的なサービス開発の実現

概要

クラウドストレージサービス『コワークストレージ』を提供する東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)。同社は、サービス提供基盤としてアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し、複数の SaaS と組み合わせたモダンアプリケーションを 6 か月で開発しました。クラウドネイティブなアーキテクチャの採用により、リリーススピードは従来の 2 倍に向上し、地域の中堅・中小企業のニーズに即したサービスを短期間に提供しています。

ビジネスの課題 | クラウドストレージの新規開発にあたり、アジャイル開発を採用

NTT東日本が提供する『コワークストレージ』は、“簡単に操作ができて、誰もが使いやすい”、“セキュアで、安心して使える”をコンセプトとしたクラウドストレージサービスです。Windows 標準のエクスプローラーと同じ感覚でファイルを扱うことができるため、利用者は新たな操作を覚える必要がありません。現状の社内フォルダと同様の構成のまま導入することができ、階層構造によるアクセス権限の設定も可能です。リンク発行によるファイル・フォルダ共有機能も装備し、外部の顧客や協力会社とも安全かつ簡単に情報をやり取りすることができます。

「コロナ禍におけるテレワークの拡大により、お客様からオンプレミスの NAS やファイルサーバーと同等の環境が欲しい、ファイルを添付したメール送信後にパスワードを別送する“PPAP”を何とかしたいといった要望・ご相談をいただく機会が増えてきたことから、テレワークを支援するソリューションとしてコワークストレージを企画しました」と語るのは、ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当 担当部長の柴田貴博氏です。

サービス提供は東日本エリアだけでなく全国をカバーし、料金は月額 2,750 円(100GB/5ID)から 4 つのプランを用意しています。契約実績は 2023 年 8 月の時点で累計 20,000 契約に達し、業種・業界を問わず、多くの企業、組織、SOHO などで採用されています。

コワークストレージの新規開発に際しては、開発手法を従来のウォーターフォール型ではなくアジャイル型を採用する方針としました。ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当 担当課長の菊池保文氏は「お客様ニーズに即したサービスをスピーディかつ継続的に提供するためには、クラウドネイティブな開発手法を採り入れる必要があると判断しました」と話します。

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「今やクラウドとネットワークは切っても切れない関係性にあります。当社は、これまで培ってきた現場力・技術力で、地域の皆様が元気になれる循環型社会を共創してまいります」

山口 肇征 氏
東日本電信電話株式会社
執行役員
ビジネス開発本部 本部長

ソリューション | マイクロサービス群を AWS のマネージドサービスで構築

コワークストレージのサービス提供プラットフォームは、リソースの拡張が容易なクラウドを前提に検討し、サービスラインナップが豊富な AWS を採用しました。ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当の長浜聡氏は「短期開発を目指して、マイクロサービス化を前提に検討しました。そこで重要になるのが、マイクロサービス間の連携の柔軟性です。AWS はサービスラインナップが豊富でクラウドネイティブなアーキテクチャが作りやすく、素早いサービス開発が実現可能なことが決め手となりました」と語ります。

NTT東日本としても AWS の利用実績は豊富で、2016 年より自社の業務システムのインフラとして採用したのを皮切りに、外部向けサービスの一部にもAWSを利用しています。

「コワークストレージの開発には、以前にフレッツ光の契約者向けのオンラインストレージサービスを、オンプレミスから AWS に移行した経験のあるメンバーが多く参加しています。当時は AWS のソリューションアーキテクトから、移行に関してさまざまなサポートをいただきました。コワークストレージでも、そこでのノウハウが活かせることもポイントになりました」(長浜氏)

コワークストレージの開発はアーキテクチャの設計から実装まで内製で進めました。

アーキテクチャは、要素技術として採用したSaaS サービス(ファイルストレージ)と AWS を組み合わせたモダンアプリケーションのベストプラクティスとし、SaaS サービスの領域以外で必要なマイクロサービス群を AWS で構築しました。

「マイクロサービスについては、マネージドサービスを活用し、サーバーレスの構成としています。これにより検証や開発の期間を短縮し、短期間でのサービスリリースにつなげました。また、回線認証を行うためのNTT東日本の次世代ネットワーク(NGN)との接続には、専用線接続の AWS Direct Connect を活用しました」(長浜氏)

アーキテクチャ

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導入効果 | クラウドネイティブな開発により、リリーススピードが 2 倍に向上

サービス開始以来、コワークストレージは順調に契約数を伸ばしています。東日本エリアだけでなく西日本エリアでの販売も好調です。

「新型コロナが第 5 類に移行してテレワークの導入が一段落した現在も順調に契約数が伸びています。最近は完全義務化が始まった電子帳簿保存法への対応に向けてコワークストレージを検討するお客様も多くいらっしゃいます」(菊池氏)

サービス開発においても、アジャイル型の採用とクラウドネイティブな環境により、リリーススピードが従来の 2 倍に向上し、顧客ニーズに即したサービスを迅速に提供できるようになりました。ハードウェアの調達や設定等からも解放され、技術検証の環境としても気軽に使えるようになり、開発メンバーのモチベーション向上につながっています。

2023 年 9 月には Amazon Quicksight を活用してユーザー管理用のダッシュボードを開発しました。ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当の兼田浩明氏は次のように語ります。

「ユーザーの利用状況を可視化してみようというアイデアから、PoC 的に Amazon Quicksight を使ってみたところ想像以上に使い勝手のいいものができ、本番利用することになりました。ダッシュボード上では契約者の利用時間、ログイン回数、データ量などの推移を 1 日単位や1週間単位で見ながら、解約防止施策の実施やアップセル・クロスセルなどの営業活動に利用しています」

コワークストレージの強化は今後も継続し、顧客の利便性向上に貢献する考えです。将来的にはコワークストレージを地域の中堅・中小企業におけるDXプラットフォームとするべく、APIをベースに他のサービスとの連携を強化しながら、業務プロセス全体をカバーする方針で検討を進めています。

「すでに複合機で受信した FAX をストレージに保存する機能や、Microsoft Teams と連携したチャットによるファイル共有の機能などを実現済みですが、今後も各種 SaaS サービスとの連携を実現しながら、ドキュメントを起点とした一気通貫のデジタライゼーションを加速していきます。そしてゆくゆくは、お客様の DX だけでなく、企業対企業の取引においてもコワークストレージをご利用いただける世界を目指していきます。そのためにも AWS には AI の領域を含めて、さまざまなサービスの強化を期待しています」(柴田氏)

カスタマープロフィール:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)

東日本地域における電気通信業務、電気通信業務に附帯する業務、その他会社の目的を達成するために必要な業務、活用業務を展開。現在、パーパス(存在意義)を「地域循環型社会の共創」とし、情報通信事業者として、高品質で安定した通信インフラを提供することに加えて、身近な ICT 企業として地域の課題解決や価値創造に取り組んでいる。

山口 肇征 氏

柴田 貴博 氏

菊池 保文 氏

兼田 浩明 氏

長浜 聡 氏

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