20 年来の業務システムを AWS で刷新
アプリケーションの刷新に加え、社員が使えるデータ分析基盤を構築し、ビジネスの俊敏性を向上

2021

1980 年にパスタ専門店『洋麺屋ピエトロ』を福岡市・天神にオープンし、現在はレストラン、食品製造販売、通信販売事業を展開する株式会社ピエトロ。同社の IT システムは、1990 年代に導入したものをデータセンターに移設し、更改を繰り返してきましたが、老朽化やメンテナンス手間が大きな課題となっていました。そこで、消費税の軽減税率対応を機に業務システムを AWS に移設して刷新。ビジネス分析ツールも新たに導入し、経営の俊敏性を高めています。

AWS 導入事例  | 株式会社ピエトロ
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AWS へのシステム移行によってセキュリティの強化、運用負荷軽減につながっています。また取引先とのやり取りも全体的にスピードが高まりました。そしてデータ分析基盤を整えたことで、多くの社員が積極的にデータを活用できています

松下 加奈 氏
株式会社ピエトロ
システムプランニング&イノベーション室

保守やライセンス更新の負荷軽減に向けクラウドの活用を検討

2020 年 12 月に創業 40 周年を迎えたピエトロは、パスタレストランを発祥とする企業です。パスタが茹で上がるまでの間に提供したサラダにかけていた手作りドレッシングが評判となり、レストランだけでなく、ドレッシングの製造販売を手がけるようになります。現在もおいしさと健康を追求しながら、レストラン事業に加え、ドレッシングやパスタソース、スープなどを製造・販売する食品事業、通信販売事業などを展開し、2025 年には新工場の稼働も予定しています。

同社の業務システムは、1990 年代に社内サーバーに導入したものをベースとしてデータセンターに移設して利用していました。20 年近く更新を重ねてきたものの、消費税の軽減税率対応や、設備そのもののメンテナンスが困難になってきたことから、2018 年ごろからシステム刷新の検討を開始しました。
「ハードウェアの保守やソフトウェアのアップデートなどを考えると、システム自体を変えないと対応に限界があると感じ、見直しを図ることにしました」と、株式会社ピエトロでシステム関係を担当する S&I 室の松下加奈氏は振り返ります。

ピエトロの業務特性に合ったシステムを模索するなかで、ベンダー数社の案を検討した中から、AWS のクラウドへの移行を提案した株式会社 NTT データ九州の案を採用しました。ピエトロのシステムを 1990 年代から支援してきた NTT データ九州はピエトロのシステム構成に精通し、旧システムのデータセンターへの移設も担当していました。

AWS を選定した理由を、松下氏は次のように語ります。「Web ベースのシステムにしたいと思っていましたので、クラウド化は必須と考えていました。AWS の実績は以前から社長の耳にも入っており、AWS パートナーでもある NTT データ九州のご提案に沿って進めることを決めました」

AWS への対象となるシステムは、生産管理、販売管理、顧客管理に加え、ファイルサーバー、資産管理、帳票などです。これに加えて、属人化したデータの作り方を統一し、リアルタイムに売上の数値など、経営判断に必要な指標を分析するツールも新たに導入することを検討しました。
「従来の基幹システムの場合、見たい数値があっても場合によっては月次のみ、日次でも決まった時間にしか見られないことがあり、また入手するにはシステム担当者にその都度依頼しなくてはなりませんでした。このような、人に依存するという状況も変えられればと考えていました」と、ピエトロの執行役員で広報室長の籠島知宏氏は語ります。

商品特性や製品現場に配慮したシステムを短期間で構築

AWS への移行は、2018 年 5 月に要件定義を開始し、2019 年 9 月にサービスインを迎えました。Amazon EC2、Amazon RDS を導入して各種業務アプリケーションの刷新を実施しています。
「ピエトロでは、生産工場のことを“大きな厨房”と呼んでいます。唯一無二のおいしさにこだわって作っており、創業時の製法を守るため、ドレッシングなど賞味期限が短いものもあります。アプリケーションを検討していくなかで、期限のない商品を扱うなど当社に合わないものも候補に上がりましたが、NTT データ九州が当社の商品の管理に適切なアプリケーションの提案をしてくれました。また、短期間での移行だったので、NTT データ九州のサポートには本当に助けられました」(松下氏)

プロジェクトでは、古いシステムからのデータ移行は中間サーバーを介して段階的に実施し、分散するファイルサーバーも統合するなど、さまざまな整理・最適化について、NTT データ九州の支援を受けました。時には生産現場に赴き、現場の担当者の話を聞いて新しいシステムの要件を確定することもあったといいます。
「生産現場ではどのタイミングで何をしなければならないかなど、担当者でないと分からないこともありますから、工場の担当者から直接ヒアリングいただいて助かりました」(松下氏)

ビジネス分析ツールには Tableau を導入し、データウェアハウスサービスである Amazon Redshift をバックエンドとしながら、リアルタイムなデータ分析が可能となる環境を構築しました。

運用負荷とコストが軽減し社員自らデータ分析が可能に

AWS での新システム稼働後、さまざまな効果が現れました。まず、クラウドへの移行によって、ハードウェアのメンテナンスやシステムのアップデート、ソフトウェアのライセンス管理なども合理化されています。数年おきにかかっていたライセンス更新のコスト負担も軽減されました。旧システムを長年使い続ける中で、紙の書類や帳票も多く、製造現場の業務も煩雑になっていましたが、新しいシステムと分析ツールによって伝票などの仕組みを置き換えることができたため、将来構想としていたペーパーレス化が自然に促進され、業務も効率化されました。
「旧システムでは、バージョンの互換性などを気にしてアップデートしていましたが、完全に仕組みを変えたことによって、こうした心配がなくなりました。サーバーリソースのほぼリアルタイムな監視によって運用負荷の軽減、セキュリティ面も強化されています。全体的にスピードが高まり、社内だけでなく、取引先とのやり取りも速くなっていると感じています」(松下氏)

また、システム運用の面でも改善がみられています。サーバーの CPU やメモリがどれくらい使われているかなど、リソースの監視や異常の検知がタイムリーにできるようになり、運用負荷の軽減につながっています。

Tableau によるデータ分析は、NTT データ九州が用意した導入マニュアルを活用し、現在は営業担当をはじめ、データを必要とする多くの社員に利用されているといいます。「旧システムではデータを抽出するための知識がある人に依頼が集中していましたが、今回の刷新によって多くの社員が自らデータを扱えるようになりました。私自身も広報担当として、業界誌などの取材に対応する際、業績の数値を自分で調べて回答できるようになっています。特定の人に業務負担がかからなくなったのは大きな効果と感じています」(籠島氏)

今回の AWS への移行とシステム刷新は、生産・販売のシステムを中心に行われました。業務に役立つ分析ツール活用体制が整ったことで、経営陣からはもっと使いこなせないかと期待が寄せられているといいます。ピエトロにはまだ統合していないシステムも点在しており、会社全体の事業を分析できるようレストラン事業や通販事業においても分析基盤を入れるべきだという議論も交わされています。今後も AWS をはじめとしたクラウドサービスを積極的に利用していく方針で、さらに、現在建設予定の新工場とのデータ連携などのシステム構築も控えています。

「AWS からは次々と新しいサービスが登場していますから、随時情報を提供していただき、当社の業務に役立てられればと思っています。NTT データ九州とは、先日提案いただいた『Amazon FSx for Windows ファイルサーバー』の導入も検討しており、継続的なサポートに期待しています」と語る松下氏は、既にさらなるシステムの進化を見据えています。

松下 加奈 氏

籠島 知宏 氏


カスタマープロフィール:株式会社ピエトロ

  • 設立:1980 年
  • 従業員数:社員 250 名、パートタイム 245 名
  • 事業内容:ドレッシング、ソースの製造販売、レストランおよびファストフード店経営など

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 多くの社員がデータ分析可能に
  • 帳票のペーパーレス実現
  • システム更改やライセンス費用の負担軽減

AWS セレクトコンサルティングパートナー

株式会社 NTT データ九州

九州エリアで Web システムから基幹システムまで多様な AWS 上でのシステム構築実績を持つ NTTDATA グループ企業。お客様の立場で最適なクラウド活用、グランドデザインを策定するクラウドコンサルティングから、エンタープライズシステムで重要な障害監視、運用代行を含むマネージドサービスまで、上流から運用まで一貫してお客様のクラウド導入を支援している。

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Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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Redshift では、データウェアハウス、運用データベース、およびデータレイクにあるペタバイト規模の構造化データと半構造化データを、標準的な SQL を使用してクエリすることができます。

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