「わけあって、安い」をキャッチフレーズに、西友のプライベートブランドとして 1980 年に誕生した無印良品は、2015 年で設立 35 年を迎えます。おなじみの赤いロゴの "MUJI" に彩られた商品は安くて良いモノの代名詞として、いまや国内のみならず、世界各国のお客様に愛用されるようになりました。当社ではこの無印良品を日本全国、そしてグローバルで展開することを主事業としています。

当社では 2014 年、基幹系と情報系のそれぞれでクラウドの導入を進めました。グローバルの経営環境は変化のスピードが速いため、これまでの IT システムではその変化に追いつけなくなる懸念がありました。時代のニーズに応えた商品を提供していくことが使命の小売業にあって、変化に追いつけないという事態は避けたい一方で、新しい IT システムの導入にはリスクが伴います。ハードウェアの調達にかかる多大なコストを抑えつつ、変化に対応しやすい IT の導入が検討され、クラウドが最も合理的な選択肢であると判断しました。

以前は連結会計システムとして電通国際情報サービス (ISID) の「STRAVIS (ストラビス)」を、そして人事給与システムとしてワークスアプリケーションズの「COMPANY」を、それぞれオンプレミスで利用していましたが、現在どちらも AWS クラウド上に移行しました。

STRAVIS の場合はハードウェア保守切れがクラウド移行の大きな要因でした。この場合、1カ月以内でのシステム移行が必要となり、ハードウェアを購入しての移行作業は現実的ではありませんでした。そこで、ISID が AWS 上で構築しているクラウドサービス (STRAVIS on CLOUDiS) へのリプレースを決め、2014  年 3 月から AWS 上で利用を開始しました。

一方、COMPANY に関してはサイジングが大きな課題でした。企業規模が大きくなるにしたがい、性能が出ないという問題に直面しており、この課題を解決する上でこちらも AWS クラウドへの移行を決定しました。導入後の効果として、情報システム部における運用管理が非常に楽になりました。おそらくオンプレミスで動かしている基幹系システムは、企業規模を問わず、このサイジングの問題に遅かれ早かれ必ずぶつかるようになると思いますが、クラウドに移行したことで、こうしたサイジングの課題から解放されました。オンプレミスにつきものの無駄なリードタイムがいっさい必要ないことは本当にクラウドならではの魅力だと実感しています。

情報系のほうはリプレースではなく、マーケティングの新規プロジェクトで AWS クラウドを導入しました。2013 年 12 月から、EC サイトの「無印良品ネットストア」と実店舗の「無印良品」の両方の顧客行動をビッグデータから分析する DWH システムを Amazon Redshift 上で構築しています。

当社では、ネット/リアルを問わずお客様が無印良品に関わる時間と体験を"顧客時間"と呼んでおり、より良い顧客時間をお客様に提供するために必要なことを導き出す基盤として、データを重視しています。今回、当社が目指したのは、従来からの POS データの集計や分析に加え、スマートフォンアプリの「MUJI passport」やオンラインショップ「MUJI.net」、さらには Facebook や Twitter などのソーシャルメディアから得られるデータまでも統合し、分析するシステムでした。膨大なデータを横串で分析し、行動と購買の関係をつきつめ、ひとりひとりのお客様の姿を浮かび上がらせるようなプロファイリングを行うところをゴールに、システムの検討を行いました。

オンプレミスの DWH を新規に導入しようとすればハードウェアを含め数千万円~数億円ものコストがかかることがわかりましたが、マーケティング施策で数千万円~数億円の予算を DWH に投入することは現実的ではありませんでした。そうした状況にあって、クラウド上で低コストな従量課金でのビッグデータ分析を可能にする Amazon Redshift は非常に魅力的でした。実際にビッグデータ分析を試すのにも Amazon Redshift だと部長決済で十分なコストで実現できました。構築に時間もかからないので、PoC の期間も短くでき、限られた予算で億単位のデータをマネージできる Amazon Redshift はまさに今回の目的に合致した DWH でした。

当社では現在、Amazon Redshift 上で年間約 9 億件の Web ログ、4 億 7,000 万件の購買データを処理していますが、十分なパフォーマンスが出ています。利用が進むにつれ、データを処理するための最適なパターンが見えてくるので、処理時間がより短くなるという効果も出ており、大変満足しています。DWH 上では会員情報を含まないデータ形式で処理することで、社内外から寄せられるセキュリティに関する懸念に対応しています。

Aamzon  Redshift の導入を開始してから約 1 カ月のうちに、データ分析をもとにしたマーケティング施策をいくつか打ち出すことができ、実店舗への来店者数増や売上増といった効果が確認できるまでになりました。このように早く結果を出すことができ、仮に失敗してもすぐに次の手を打てるということは、大きな経営効果だと感じています。

基幹系、情報系ともに、今後もクラウド導入範囲の拡大を検討しています。

今回紹介させていただいた内容以外にも、すでにお客様に対するレコメンドシステムを、コスト的にクラウドの方が安く済むため、AWS で構築を行い公開しています。また、世界中のお客様を対象にしたグローバルポータルも AWS 上で展開を開始しています。

クラウドでやりたいと思っていることはたくさんあります。とくにグローバルにおける事業拡大はクラウドによる支援がなければ達成が難しいのではないでしょうか。たとえば Amazon WorkSpaces のようなクラウド上の仮想デスクトップサービスは、海外拠点で勤務する日本人従業員にとって、パフォーマンスやセキュリティの面などから考えても導入するメリットが大きいのではないかと考えており、現在導入を検討しています。

グローバルかつ、競争の激しい小売業のビジネスに挑戦する当社にとって、クラウドはリスクをとりやすい IT、つまり新しいことへのチャレンジを後押ししてくれる存在として、今後も活用を予定しています。

「早く結果を出すことができ、仮に失敗してもすぐに次の手を打てるということは、大きな経営効果だと感じています。」

- 株式会社良品計画 WEB事業部長 奥谷 孝司 様
- 株式会社良品計画 情報システム担当 運用管理課長 安田 俊治 様