AWS を活用することでビジネスサイドの要求に速やかに応えられるようになりました。
これはオンプレミスの仕組みでは実現できないことです。

 

石原 潤一 氏 資生堂ジャパン株式会社 EC事業推進部 グループマネージャー

 

1872 年に日本初の洋風調剤薬局として創業した資生堂は、後に化粧品事業への転換を果たし、「美しい生活文化の創造」というミッションのもと発展を続けています。化粧品メーカーのビューティー部門としては日本、アジアではトップのシェアを誇り、約 120 の国と地域で製品やサービスを展開。資生堂グループ全体の売上高は 8,503 億円(2016年)にも達します。

2020 年までの中長期戦略「VISION 2020」では、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指して、「売上 1 兆円超、営業利益 1,000 億円超」という数値目標が掲げられました。2012 年に運営がスタートした「ワタシプラス」は、インターネットを通じた新たな価値提供に向けた同社のチャレンジです。  

VISION 2020 の推進において大きなポイントとなったのが、顧客とのあらゆる接点を最適化するデジタル化です。開設から約 5 年で300 万人を超える会員を獲得し、月間ページビューも 数千万に達するなど、順調な成長を遂げてきたワタシプラスにとっても、このことは顧客とのさらなるエンゲージメント強化を実現するための最優先の課題でした。

そのため資生堂が着手したのが、さまざまなキャンペーンを迅速に展開することができ、またキャンペーンの反響などで大きく変動するアクセスに柔軟に対応できるインフラ基盤の確立でした。

 

ワタシプラスでは、LINE のメッセージ配信を使ったキャンペーンを積極的に展開しています。「LINE は情報の拡散力が高いだけに、メッセージをお昼休み時間に発信すると瞬時に急激なアクセスが発生します。」と語るのは、資生堂ジャパン株式会社 EC事業推進部グループマネージャーの石原 潤一 氏です。

こうした極端なスパイクアクセスに耐えられるインターネット回線やハードウェアをオンプレミス環境で構築・運用を行うためには、相応のコストとファシリティーが必要となります。そこで、新たな選択肢として浮上したのがクラウドサービスの利用です。さまざまなクラウドサービスを比較した結果、コスト、スピード、拡張性、将来性、さらにはサポート体制やインテグレーションのしやすさで、同社が白羽の矢を立てたのが AWS でした。

2013 年にまずはスパイクアクセスを処理するために、既存の仕組みをなるべく変更せずに Amazon EC2 ベースの仕組みに負荷を振り分けるようにしました。これを本番環境で動かし問題なく運用できると確認したことで、次のステップを検討開始。そして資生堂では、ワタシプラスで利用しているシステムすべてを AWS へ移行することを決断しました。「AWS であれば国内ベンダーのクラウドサービスと比べ安価で、スペック的にも増強できると考えました。」と、資生堂ジャパン株式会社 EC事業推進部の藤戸 充 氏は話します。

移行においてはセキュリティが懸案事項となりました。AWS はセキュリティに関する第三者認証を多数取得していること、さらにはさまざまなシステムで個人情報を取り扱っている実績が数多くあることから安全性に問題はないと判断されました。

2015 年から始まった移行プロジェクトは2017 年 2 月に完了し、100 以上のインスタンスが AWS 上で稼働しています。構成は Amazon EC2 をベースに、データベースに Amazon RDS for Oracle を、ロードバランサーに Elastic Load Balancing、ファイアウォールには AWS WAF を活用し、Amazon VPC で仮想プライベートクラウド環境を構築しています。オンプレミスでは Oracle Real Application Clusters 構成でしたが、Amazon RDS では Multi-AZ 配置で可用性を担保しています。また障害監視にはサーバーレスの AWS Lambda も活用し、レスポンスの確保では Amazon CloudFront も利用しています。

約 30 テラバイトあった分析データの移行では当時まだベータだった AWS Snowball を活用し、AWS にデータを移行して最新データと同期するまでをわずか 2 週間で実現しました。もし AWS Snowball がなければインターネット越しに数ヶ月かけデータを移行し、その後また数ヶ月かけデータ同期することになったはずです。さらに AWS 化したことで、インターネット回線の帯域幅拡大のメリットも享受できました。「オンプレミスではサーバーの増強はできてもインターネット回線は簡単に拡張できません。すべてを AWS 化したことで、インターネット回線のボトルネックも解消されました。」(藤戸氏)

さらなるメリットは、ビジネスサイドの要求に迅速に応えられることです。たとえば LINE のキャンペーンは、調整などに時間を要し従来は週に 1 回程度の配信頻度でした。これが AWS 化で制約が減ったために週に複数回の実施も可能になり、急ぎの場合は前日の依頼にも対応できるようになりました。

コスト面でもメリットがありました。AWS に移行して IT インフラのコストは低減。これにマネージドサービスの利用による運用コスト削減も含めると、TCO はさらに下がることになります。「ハードウェア更改やバージョンアップ、さらにはハードウェア増強の手間は、思っている以上に大きなものです。こうした対応がこれから不要になったことを考えると、オンプレミスの時よりも運用コストは大きく下がっています。」(石原氏)

今回の AWS への移行プロジェクトをサポートしたのが、APN プレミア コンサルティングパートナーで、移行コンピテンシーを持つ株式会社野村総合研究所(以下、NRI)です。「Amazon RDS のチューニングや IO の制約を回避する工夫をして頂き、DBの上位エディション購入しないですむようにしてくれました。さらには NAS や SAN の代替え方法の検証など、アプリケーションの特性と AWS を熟知する NRI だからこそ、信頼を持って任せることができました。」(藤戸氏)

NRI はワタシプラスのアプリケーション構築も手がけており、その上で AWS のスキルがあるため、インフラからアプリケーションまでトータルにサポートできます。そのため、NRI からは迅速な対応が得られているとのことです。

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IT 部門はハードウェア資産の管理や 5 年ごとのハードウェア更改などから解放され、そこで生まれた時間を新しいサービスの企画やプランニングに割けるようになりました。

「生活者が好きなときに、好きなところで、化粧品や美容について体験できるようにしたい。それを実現するためにも、AWS のさらなる活用を進めていきたいと考えています。」(石原氏)

今後も、顧客とのエンゲージメントを深める施策の実現に AWS のマネージドサービスや最新技術を積極的に取り入れる予定です。

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石原 潤一 氏

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藤戸 充 氏

 

APN コンサルティングパートナー
株式会社野村総合研究所

AWS で多くのお客様のビジネス課題解決をご支援。シンクタンク由来の DNA で未来を見据えたクラウド活用をご提案。実績に裏打ちされたプロジェクト運営と技術力で AWS 導入を成功に導く。2013 年より AWS プレミアコンサルティングパートナー。移行、金融など国内最多 7 つのコンピテンシーを取得。

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