ポスト M&A の加速とグループシナジーの創出を目指し
世界 5 極のグローバル IT インフラを AWS で統合
先行する日本モデルを標準に海外の基幹システムを移行中

2020

「人と自然と響きあう」を企業理念に、グローバルな食品酒類総合企業として多彩な事業を展開するサントリーグループ。買収した海外企業とのシナジー創出を目指す同グループは、グローバル IT インフラ統合プロジェクトを立ち上げ、日本・欧州・アジア・オセアニア・アメリカの 5 拠点の基幹システムのインフラ基盤にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用しました。日本における移行プロジェクトは、2019 年 3 月に先行して開始し、2020 年 7 月までに完了。現在は、日本のモデルを標準に海外拠点の基幹システムの移行を進めています。

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海外では新規のシステムはクラウドネイティブなアーキテクチャで構築するケースが増えており、今回のプロジェクトがデジタルトランスフォーメーションの加速にも貢献しています

城後 匠 氏
サントリーホールディングス株式会社
経営企画・財務本部 BPR ・ IT 推進部 部長

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AWS は単なるインフラではなく、IT に対する考え方に変化をもたらしました。日本がグループ全体をリードしていくための新たな役割を果たしています

加藤 芳彦 氏
サントリーシステムテクノロジー株式会社
取締役 基盤サービス部長

海外 5 極で独自運用していたインフラをクラウドで統合して標準化・共通化

創業以来受け継がれる「やってみなはれ」の精神のもと、“ Growing for Good ”を目指して挑戦を続けるサントリーグループ。ビール、洋酒から飲料・食品、健康食品、外食、花など多岐にわたる事業を展開する同グループは、2009 年にホールディングス制に移行。2014 年にアメリカの蒸溜酒最大手であるビーム社を買収するなど、グローバル展開の動きを活発化する中でインフラ基盤の在り方が課題となりました。

従来のインフラ基盤はリージョン単位で独立し、業務システムもグループ各社が個別に開発・運用していました。その結果、迅速な意思決定などの課題が顕在化。危機感を抱いた各社の CIO とともに対応策を検討した結果、世界 5 極のインフラ基盤をクラウドで統合することを決定しました。「インフラとシステムを標準化・共通化することでポスト M&A の最適化の加速とともにグループ全体のシナジーを高めることが目的です」と語るのは、サントリーホールディングス 経営企画・財務本部 BPR・IT 推進部の城後匠氏です。

AWS Cloud Discovery Workshop を実施し移行に向けたロードマップを作成

インフラ基盤の世界共通化を目指した同グループは、各国の CIO が議論を重ねた結果、AWS の採用を決定しました。その理由は、日本本社が先行して AWS を採用していた実績があり、そのノウハウを拡張する狙いがあったからです。日本のインフラ統合を担当したサントリーシステムテクノロジー(以下、SST) 基盤サービス部 インフラ基盤グループの小山知岐氏は次のように語ります。

「日本では BtoC のキャンペーンサイトから小規模業務システム、基幹業務システムへと拡大してきました。AWS を選択した理由は、マネージドサービスによって運用負荷が軽減できることと、公開されている情報が多く、自分たちで問題が解決しやすいことです」

日本の基幹システムを AWS に移行するにあたり、2016 年 9 月には AWS Cloud Discovery Workshop を実施し、現状の課題を整理してロードマップを作成しました。

SST 基盤サービス部長の加藤芳彦氏は次のように振り返ります。

「効果的なアーキテクチャやプロジェクトの進め方について、AWS の担当者と 3 日間しっかり議論しました。その後、小規模の業務システムを構築してみて十分な効果が得られると確信し、世界共通インフラ基盤にも適用するべきと判断しました」

先行している日本をひな型に 2022 年にかけてグローバルに展開

世界共通インフラ基盤の構築は「グローバル IT インフラ統合プロジェクト(Suntory Island2:SI2)」の名称で 2018 年 4 月からスタートしました。

「グローバルの詳細設計フェーズでは、すでにノウハウを有する日本の SST チームと海外各社の IT 部門を加えたグローバルワンチームで進めました。そこに AWS のプロフェッショナルサービスチームに参加していただき、グローバルのガバナンスに関するアドバイスを受けました」(城後氏)

AWS への移行は、業務への影響を最小限に留めるために既存システムをそのまま載せ換える方式を選択。先行している日本をひな型として、グローバルに展開していく方針としました。日本のプロジェクトは 2019 年 4 月からスタートし、2020 年 7 月までに全システムの移行を終えています。

「自社でアーキテクチャの把握ができるように、SST 社内で AWS 人材を育成しました。AWS の知識を習得した約 10 名が、プロジェクトを牽引しました」(小山氏)
今も欧州、アジア、アメリカ、オセアニアの 4 極での AWS 移行は進められており、2022 年度までに完了する見込みです。

「海外では共通のガバナンスを維持したうえで、各社の権限で自由にインスタンスを立てられるようにしています。新規のシステムはクラウドネイティブなアーキテクチャで構築するケースが増えており、デジタルトランスフォーメーションの加速にも貢献しています」(城後氏)

空調費用、運用工数などを含めたトータルのインフラコストを約 25% 削減

AWS への移行を終えた日本では、サーバーの設置場所、空調費用、ソフトウェアのライセンス、運用工数などを含めたトータルのインフラコストは約 25% の削減が実現しています。加えて、多彩な AWS のサービスを活用したことで、社員の意識にも変化が現れたといいます。

「AWS をフルに活用してアプリ開発の高速化やメンテナンスの負荷軽減を推進するだけでなく、セキュリティ対策の強化やビジネスの見える化を図り、グループ全体で進化を続けていかなければ生き残れないという危機意識が強くなりました。AWS は単なるインフラではなく、IT に対する考え方に変化をもたらし、グループ全体をリードしていく新しい役割を果たしています」(加藤氏)

各国の CIO が主導で進める SI2 は、グループ内でも認知度が高く、“ ONE SUNTORY ”のスローガンを象徴するプロジェクトとして経営層も注視しているといいます。

消費財データや顧客データを分析するデータレイクの導入を検討

今後はネットワークの全拠点接続と統合運用などを目指していく考えです。

システム面では、サーバーレス化やマイクロサービス化によって、サントリーグループのビジネスの加速に貢献していくといいます。開発や運用の効率化に向けて、デプロイの自動化や、コードによるインフラの運用管理にも取り組む考えです。攻めの IT(モード 2)に向けた AWS クラウド導入フレームワーク (AWS CAF) を実施して将来のアクションを検討。現在は増大していく各国の消費財データや顧客データの活用に備えて、AWS のプロフェッショナルサービスチームに相談しながらデータレイクの構築も検討しています。

「日本がこれからもグループの IT 戦略を牽引していくために、一歩先を見据えたロードマップの作成に関するアドバイスや、グローバルで活躍できるデジタル人材の育成に向けた支援、さらには運用の効率化などを実現する AWS の新サービスをキャッチアップするための学習環境の提供を期待しています」(加藤氏)

城後 匠 氏

加藤 芳彦 氏

小山 知岐 氏


カスタマープロフィール:サントリーホールディングス株式会社

  • 資本金: 700 億円
  • 設立年月日: 2009 年 2 月 16 日(創業 1899 年)
  • 社員数: 40,210 名(2019 年 12 月 31 日現在)
  • 連結売上収益( 酒税込み): 2 兆 5,692 億円(2019 年 12 月 31 日現在)
  • 事業内容:サントリーグループ全体の経営戦略の策定・推進、およびコーポレート機能

カスタマープロフィール:サントリーシステムテクノロジー株式会社

  • 資本金: 1 億円
  • 設立年月日: 1990 年 3 月 29 日
  • 社員数: 271 名(2020 年 4 月現在)
  • 事業内容:サントリーグループの IT 戦略の策定・推進、IT による各事業会社の業務革新支援

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 日本リージョンにおけるトータルのインフラコストを約 25% 削減
  • 新規システムをクラウドネイティブで構築し DX の推進に貢献
  • 自社内で育成した AWS 人材が移行プロジェクトを牽引
  • 開発や運用の効率化に向けたデプロイの自動化やコード管理を検討
  • 消費財データや顧客データを分析するデータレイクの導入を検討

ご利用中の主なサービス

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

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Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。

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