基幹システムの主要基盤に AWS を採用
SoR 領域のクラウド化も推進し、DX を加速

2022

日本初の保険会社として創業し、「お客様と地域社会の“いざ”をお守りすること」を起点に成長を続けてきた東京海上日動火災保険株式会社。同社は SoE(System of Engagement)や SoI (System of Insight)に加え、SoR(System of Record)のクラウド化も進めています。その基盤として採用されているのが アマゾン ウェブ サービス(AWS)です。2021 年末時点ですでに約 3 割のシステムのクラウド化を実現。ロードマップを策定し、AWS への移行を進めています。

AWS 導入事例  | 東京海上日動火災保険株式会社
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今後もクラウドファーストによって、スピーディなシステム開発や効率的なシステム運用を実現していきます。人材育成も AWS の基礎的な知識・スキルはもちろんのこと、Associate/Professional レベルの育成も進めていきます

歌門 正師 氏
東京海上日動火災保険株式会社
理事 IT 企画部長

SoE/SoI から始まったクラウド活用

2018 年度には SoR のクラウド化をスタート

グローバルに展開する子会社および関連会社 274 社で構成され、国内損保、国内生保、海外保険事業という、大きく 3 つの事業を展開する東京海上グループ。その中でも東京海上日動火災保険は、国内損保事業の中核を担う存在です。「お客様と地域社会の“いざ”をお守りすること」をパーパスとし、これを起点に時代とともに変化するさまざまな社会課題の解決に貢献することで、持続的・長期的に成長しています。現在は「DX による価値創造」「多様性と働き甲斐の向上」「挑戦を支える企業風土や企業文化への変革」を中期経営計画の戦略の柱として、事業に取り組んでいます。

「当社ではテクノロジーとデータを徹底的に活用したデジタル戦略を推進しており、IT インフラについても長期的に形を変えていく必要があると考えています」と語るのは、東京海上日動火災保険で理事 IT 企画部長を務める歌門正師 氏です。最新の IT インフラを迅速に活用するため、各システムの稼働基盤に関してはクラウドファーストの方針を掲げ、新規システムの構築や既存システムの移行を進めているといいます。
「具体的なクラウド活用については、お客様接点となる SoE、データ分析のための SoI、基幹系業務を担う SoR という、3 つの領域別の構築方針を定めています。SoE/SoI は DX を加速させるために SoR とは別の基盤を用意し、領域間を疎結合にすることで、ビジネスニーズに合わせた迅速な開発が可能な環境を整備。これにより、SoR も従来どおりの「安定稼働」を実現しながら、「変化への柔軟な対応」や「少人数・効率的な運用」を目指しています」

上記方針に基づき、2013 年にはクラウドの活用を開始。個別アプリケーションをクラウド上で稼働開始したことを皮切りに、SoE や SoI のクラウド化が進められていきます。
「このような取り組みを 3 年ほど行った結果、開発の迅速化・効率化といったクラウド化のメリットが確認できたこともあり、2016 年頃にクラウド化が加速しました」と語るのは、東京海上日動火災保険 IT 企画部基盤グループの都築啓氏です。2017 年 には SoR のクラウド化検討もスタートしました。

継続的なサービスアップデートやクラウドの先駆者であることを評価し AWS を採用

これらのクラウド化の基盤として採用されているのが AWS です。その理由について都築氏は次のように説明します。
「クラウド化検討に着手した 2013 年当時、当社のニーズにも柔軟に対応できる唯一のクラウドが AWS でした。当時から、AWS は継続的なサービスアップデートを重ね、現在まで一貫してクラウドのトップランナーであり続けています。その後、SoE や SoI を AWS 上で稼働させてきた実績も踏まえ、基幹システムの移行も可能であると判断しました」

さらに、OS や DB、コンテナなどの選択の幅が広く、マーケットプレイスが充実しているなど、クラウドベンダーによるロックインが少ないことや、ユーザーコミュニティが充実しておりドキュメントが揃っていることも、AWS の大きなメリットだと指摘します。

SoR の標準基盤構築プロジェクトでは、IaaS(Infrastructure as a Service)基盤と FaaS(Function as a Service)基盤の 2 種類の基盤を構築することを構想し、まず IaaS を構築し、クラウド移行に着手。FaaS 完成後は、FaaS の利用を優先し、これが難しければ IaaS を利用するという順序でクラウド化を行うことで、開発の迅速化や運用工数の削減を目指していくと都築氏は説明します。

また IaaS、FaaS のいずれを利用する場合でも、単純移行ではなく、データベースを既存の商用データベースから Amazon Aurora または DynamoDB に移行することを基本にするなど、クラウドに最適化する検討を必ず実施するようにしているといいます。

IaaS では従来と同様の開発・運用を実現

FaaS ではより踏み込んだクラウド活用へ

具体的なシステム構築のアプローチについては、実際の開発・運用作業を担当する東京海上日動システムズ株式会社の篙直矢氏が、次のように説明します。
「まず IaaS に関しては、AWS レイヤーを意識せずにシステム開発 / 運用が行える仕組みを構築し、OS 以上は従来システムと同様の環境にしておく一方で、AWS レイヤーは特定のチームが横断して担当することにしました。また AWS のセキュリティ機能を活用しつつ、AWS とオンプレミスを AWS Direct Connect で接続することで、従来からオンプレミスで使われてきた統制と運用系の機能も AWS で利用できるようにしています。さらに有事対策のため、システム基盤は東京 / 大阪のマルチリージョン構成としており、停止した状態のサーバーを別のリージョンに用意する『パイロットライト』を基本方式としてテンプレート化、迅速な切り替えが求められるシステムの場合にはホットスタンバイ方式のテンプレートも準備しています」

FaaS に関しては、まずは AWS Lambda や Amazon DynamoDB を使えるようにし、その後で AWS Glue などのサービスを随時追加。有事対応は IaaS と同様に東京 / 大阪のマルチリージョン構成とし、オンプレミスシステムとも AWS Direct Connect で接続しています。その一方で、IaaS とは異なる取り組みも行われています。IaaS では避けていた統制機能の一部を AWS のサービスで実装し、資源配備の仕組みを AWS の Code シリーズで実装し利用者に提供するなど、IaaS よりもさらに一歩踏み込んだクラウド活用が行われています。
「FaaS を活用することで、インフラ面を意識する必要がなくなり、開発・運用ともにスムーズに進めることができます」と篙氏は語ります。

大幅に向上した開発スピード

DX で増加する他社との連携も容易に

クラウド化によりオンデマンドでのリソース作成が可能になったため、開発スピードは大幅に向上しました。また FaaS を活用した場合には AWS のクラウドネイティブなサービスによって、開発スピードはさらに高くなったといいます。

また、AWS PrivateLink を活用することで、セキュアかつ容易に AWS 上の他社システムと接続できるようになったことで、DX で増加する他社との連携も容易になりました。「これは AWS を利用している企業が多いために得られる効果だと考えています」と都築氏は述べます。

SoE / SoI でのクラウド活用に加え、基幹系の SoR 領域でもクラウド活用を進めることで、現時点で約 3 割のシステムがクラウドで稼働する状況になりました。今後もクラウドファーストを推進するため、AWS に関する教育も積極的に取り組んでいくと語ります。
「すでに基礎的な知識・スキルを学ぶためのハンズオンが行われていますが、これに加えて AWS の Associate レベルや Professional レベルといった中上級者層の育成も推進していく方針です。最終的には主要システムの多くをクラウドで稼働させる予定です。AWS には継続的な安定稼働と、大阪リージョンの拡充を期待しています」(歌門氏)

歌門 正師 氏

(かもん まさし)

都築 啓 氏

(つづき あきら)

篙 直矢 氏

(ふなざし なおや)

カスタマープロフィール:東京海上日動火災保険株式会社

  • 創業: 1879 年 8 月
  • 資本金: 1,019 億円
  • 従業員数: 17,176 人(2021 年 3 月 31 日現在)
  • 事業内容:損害保険業、損害保険業・生命保険業に係る業務の代理・事務の代行、確定拠出年金の運営管理業務、自動車損害賠償保障事業委託業務

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 開発スピードが向上し、他社と連携した DX も容易に
  • AWS には継続的な安定稼働と大阪リージョンの拡充を期待
  • 最終的には主要システムの多くをクラウド化

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Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。

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