1 名の担当者が複数拠点のシステムを管理する中で Web 会議システムやグループウェアなどを AWS に移行
構築運用負荷を 50% 削減し、IT 担当者は IT 戦略に注力
2022
ダイヤモンド工具の専業メーカーとしてモノづくりの現場を支える株式会社東京ダイヤモンド工具製作所。同社はオンプレミス環境で運用していた各種システムを運用負荷軽減、安定稼働の実現などを目的に、アマゾン ウェブ サービス(AWS)上に移行しました。現在、Amazon EC2 上で 10 近くの情報系システムが稼働しています。1 名の IT 担当者の環境下で、構築運用負荷 50%、調達金額 50%、調達リードタイム 90% 以上を削減し、担当者は IT 戦略にリソースを集中できるようになりました。
サーバーの運用から解放されたことが最大のメリットです。これにより、自分の時間とリソースを、当社が経営戦略として掲げる新規市場の拡大・既存市場への柔軟な対応に向けた IT 戦略の立案に注力していきます
小久保 拓志 氏
株式会社東京ダイヤモンド工具製作所
システム担当 担当部長
運用負荷の軽減を目的にクラウドサービスの活用を検討
1932 年の創業以来、ダイヤモンドの特性を活かした工具の製品開発を手がけてきた東京ダイヤモンド工具製作所。同社は東京本社のほか、仙台、長野、埼玉、タイに製造&開発拠点があり、営業拠点も大阪、名古屋、福岡、仙台、タイ、シンガポールなどに分散しています。「2021 年 7 月まで、システム調達、管理などの業務もすべて 1 人で担当しているため負荷がかかり、本来の業務に集中できない状況が続いていました」と語るのは、システム担当 担当部長の小久保拓志氏です。
そこで同社は運用負荷の軽減を第一に、可用性の向上、安定稼働の実現、スケーラビリティの確保、調達のリードタイムの短縮を目的として、クラウドサービスの活用を検討しました。
「2010 年に運用負荷の軽減を目的にデータセンターを活用して VMware による仮想化を進めてきましたが、東日本大震災で、さらに BCP 対策にも取り組むようになりました。当社は仙台に主力工場があるため、BCP 対策としてサーバーを保有しない方向にシフトするべきと考えていました。東京・目黒の本社も台風による集中豪雨などで瞬断が発生し、空調機器等が停止するリスクを考慮し 2015 年頃から全サーバーリソースに対して本格的なクラウドの利用を考え始めました」(小久保氏)
要件に対応した唯一のクラウドが AWS
10 近くのシステムが AWS 上で稼働
クラウド化を検討した同社はまず、オンプレミス環境で運用していたグループウェアと、テレビ会議システムの移行から着手することにしました。2015 年当時、グループウェアの運用は内製していたため、対応スピードやサーバーコストの負担が大きくなっていました。テレビ会議システムも、従業員同士の利用から外部の顧客との会議や打ち合わせなどに活用が拡がり、セキュリティの強化とコスト軽減が課題となっていました。
そこで同社は、移行先として AWS を採用し、パートナーには 10 年来の取り引きがあったソニービズネットワークス株式会社(以下、SBN)を選定しました。
「2015 年当時、当社の要件を満たすクラウドの選択肢は AWS だけでした。複数の工場と営業拠点があるため、既存の VPN バックボーンから Amazon Direct Connect 経由で AWS に接続できることはセキュリティ面で安心感がありました。SBN は、ネットワークからクラウドまでワンストップでソリューションが利用できるため、選定しました。SE 経験もあり技術的知見を持った SBN 営業担当者が、サービスごとのエンジニアを取りまとめて、総合的に提案していただけるため、私にとって何でも相談できるパートナーです」(小久保氏)
パートナー選定後、まずはグループウェア、テレビ会議システム、IT 資産管理システム、外部ベンダーが利用する開発・テスト環境を AWS 上に移行しました。それ以降、Active Directory をオンプレミスから AWS に移行し、Windows 標準のアップデートツール(WSUS)、ウイルスソフトやネットワーク検疫ソフトの管理サーバー、セルフサービス開発ツールは新規で AWS 上に導入しました。
2021 年 12 月現在、Amazon EC2 は 10 インスタンスが稼働し、AWS 上のサーバー群のイメージバックアップは Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)、オンプレミス環境の基幹システムのバックアップは Amazon S3 上に取得しています。システム構築のポイントとアーキテクチャの特徴について、提案・構築を支援した SBN ソリューション営業本部の田邉肇氏は次のように語ります。
「テレビ会議システムなど、社外のお客様が利用することも考慮して AWS 環境はマルチ AZ の VPC 構成とし、Public と Private の領域に分けて適切なセキュリティ要件で利用できるようにしました。複数拠点から安全かつ高速でアクセスできるように、ネットワークは SBN の VPN バックボーンから Amazon Direct Connect に直接接続しています。これにより、各拠点は高速で安定性の高い SBN の NURO 回線でつながり、かつ拠点間の VPN 網は冗長化されているため、仮に本社が罹災したとしても、拠点から AWS 上のシステムをその影響を受けずに利用できます。日々の運用負荷が軽減できるよう、ネットワークから AWS まで一元的に管理できる SBN 標準提供の AWS 運用管理ツール『クラウドポータル』を提供しました」
担当者がシステム運用から解放され IT 戦略の推進等の業務にシフト
今回の AWS 活用により、2015 年の導入前と比較して、サーバー構築・運用負荷は 50%、調達金額は 50 % 削減しました。サーバーの調達やセッティングに要していたリードタイムも従来の 1 か月から約 10 分まで短縮され、90% 以上の削減が実現しています。現在、AWS 上のシステムは安定稼働を続けており、リソース状況を見ながら臨機応変に拡張や縮小を実施しています。
「サーバーの運用から解放されたことが一番のメリットです。これにより、自分の時間とリソースを IT 戦略の推進に向けることが可能になりました。現在、事業変化に合わせた業務システムの刷新、先端技術への取り組み、セキュリティに配慮した信頼性の高いシステムの構築などのミッションに取り組んでいます」(小久保氏)
オンプレミス環境の基幹システム等を AWS に移行してフルクラウド化へ
今後は、オンプレミス環境で運用している基幹システム、勤怠管理システム、ファイルサーバーなどを、2025 年のサーバー更新に合わせて AWS へ移行し、IaaS として導入した人事給与システムなども含めてフルクラウド化を加速していくことも視野に入れています。
「現在、オンプレミス環境には約 20 台の仮想マシンが稼働していますが、一部ファイルサーバーはフルマネージドサービスの Amazon FSx へ 2022 年 3 月に移行、エンドポイントとして デスクトップサービスの Amazon Workspaces も 1 月に導入予定です。データベースは利用するアプリケーションに応じて、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)や Amazon Redshiftも検討してみたいと思います」(小久保氏)
2021 年 7 月には情報システム部門に中途採用の社員が 1 名入社し、今後は 2 名体制で IT 戦略を加速させ、全社の IT 活用を底上げしていく計画です。システム担当の河野靖彦氏は「最先端のシステムを導入しても、業務部門が使いこなせなければ意味がありません。そこで、全社員の IT リテラシーの向上を図るべく、ヘルプデスクの強化や、マニュアルの整備などに努めていきます」と語ります。
DX として、デジタルマーケティング、工場の IT 化にも積極的にチャレンジしていく予定で、AWS には先進技術の提供を、SBN には業務改善に向けた提案に期待を寄せています。
小久保 拓志 氏
河野 靖彦 氏
カスタマープロフィール:株式会社東京ダイヤモンド工具製作所
- 設立: 1940 年 11 月(創業: 1932 年 7 月 7 日)
- 従業員数:約 300 名(2021 年 6 月現在)
- 事業内容:ダイヤモンド工具全般の製造、販売、修理、機械器具の販売
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 構築運用負荷 50% 削減
- 調達金額 50% 削減
- 調達リードタイム 90% 以上削減
- システムリソースの柔軟な拡張・縮小の実現
- 情報システム担当者の業務が IT 戦略の推進等にシフト
AWS アドバンスドコンサルティングパートナー
ソニービズネットワークス株式会社
NURO Biz ブランドのもと 法人向けネットワーク&クラウドサービス事業を展開し、AWS 先進ユーザーでもあるソニーグループの経験とノウハウを活かした「マネージドクラウド with AWS」を提供している。
ご利用中の主なサービス
Amazon Virtual Private Cloud
Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) では、AWS クラウドの論理的に分離されたセクションをプロビジョニングし、お客様が定義した仮想ネットワーク内の AWS リソースを起動することができます。
AWS Direct Connect
AWS Direct Connect はオンプレミスから AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにするクラウドサービスソリューションです。AWS Direct Connect を使用すると、AWS とデータセンター、オフィス、またはコロケーション環境との間にプライベート接続を確立することができます。
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon EBS
Amazon Elastic Block Store (EBS) は、Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) と共に使用するために設計された、スループットとトランザクションの両方が集中するどんな規模のワークロードにも対応できる、使いやすい高性能なブロックストレージサービスです。