トッパン・フォームズ株式会社が 2020 年 6 月にリリースした共通手続きプラットフォーム「AIRPOST」は、これまで生活者が企業との間で個別に行っていた口座振替や住所変更などの手続きを共通化するワンストップサービスです。AIRPOST と EngagePlus のリリースに至る経緯について、企画販促統括本部 RCS 推進本部 RCS 開発部 部長の後藤聡氏は次のように説明します。
「お客様企業からお預かりしたデータの加工・編集やコンテンツの見せ方などは、長年にわたり当社が印刷関連の事業の中で培ってきた得意分野です。AIRPOST と EngagePlus は、こうした当社の強みをベースに、紙媒体だけではなく企業と生活者の重要な接点となる携帯電話番号を介して、煩雑な手続きをデジタルで簡素化する利便性の高いサービスです」

ビジネス部門と開発部門が一体となって AIRPOST のサービス設計を進める中で、大きな課題となったのがサービス基盤の選定です。サービスのリリース後は、銀行などの金融機関のほか、自治体やガス、電気などの公共サービス企業といった業界団体の参加も想定していたことから、そのサービス基盤には高度なセキュリティや可用性はもちろんのこと、リソース調整の柔軟性が不可欠です。

企画販促統括本部 RCS 推進本部 RCS 開発部 第二グループ マネージャーの田村康子氏は、AIRPOST のサービス基盤の要件について次のように話します。
「引越しに伴う住所変更や口座振替の登録などを考えれば、3～4 月または 9～10 月が利用のピークという予測は立てられますが、そこで処理しなければならないトランザクションは、参加するお客様企業数や生活者のユーザー数によって大きく変動します。この基盤をオンプレミスで構築するとなると、ハードウェアの管理に加えて、急なリソースの増強が難しいなど、さまざまな負荷や制約が生じることから、プロジェクトチーム内では必要に応じた拡張が可能なクラウドが最適という意見で一致していました」

もう 1 つの重要なポイントとして、AIRPOST を利用する金融機関などでは、こうしたオンラインサービスに対して厳しいセキュリティ要件が課せられます。この点について、後藤氏は「幅広い業界での採用実績もあり、AWS をサービス基盤とすることについて、お客様企業側から大きな異論が出ることはありませんでした。AWS でのセキュリティ対策に加え、オンラインでの本人確認サービス（eKYC：electronic Know Your Customer）を活用し、厳格な身元確認を行っています」と話します。

いくつかの選択肢の中から、トッパンフォームズが最終的に採用を決定したのが AWS のクラウド基盤でした。選定のポイントについて、EngagePlus を担当する企画販促統括本部 RCS 推進本部 RCS 開発部 第三グループ 担当課長の佐藤義輝氏は次のように話します。
「EngagePlus では、生活者のスマートフォンにさまざまな情報を配信します。不定期のキャンペーンなどを考えると、トランザクション量に応じて柔軟にコンピュートリソースを調整し、コストを最適化できる AWS は大きな魅力でした。また EngagePlus では、配信するときだけシステムを稼働させ、稼働時のみ従量課金されるサーバーレスの構成を想定していました。PoC でも問題がなかったことから、スムーズにリリースの見通しを立てることができました」と評価します。

EngagePlus を構築する初期の段階では、AWS のパートナーであるクラスメソッド株式会社からの開発支援も受けました。
「外部のサービスや自社データセンターのオンプレミス環境とのネットワーク構築の部分では、インターネットと社内環境の直接的な接続を回避するために高度なシステム設計が必要でした。AWS に関する豊富な知見を持つクラスメソッドからは多くのテクニカルなノウハウを提供していただきました」（佐藤氏）

システム運用に際して、トッパンフォームズでは AWS の最上位のサポートメニューである「エンタープライズサポート」を採用しています。エンタープライズサポートでは、システムの安定稼働と AWS 環境における最適化を維持するために構成を熟知したテクニカルアカウントマネージャー（TAM）による支援が提供されます。
「生活者と企業をつなぐ AIRPOST は、サービスの中断が許されないミッションクリティカルなシステムです。TAM の支援を通じて、どのような事態にも迅速に対応できる体制を整えています。TAM の支援は決して受け身ではなく、AWS の多彩なサービスメニューの中から最適な選択肢をプロアクティブに提案してくれるなど、非常に頼りになる存在です」（後藤氏）

また、田村氏はシステム管理者の運用を支援する AWS の豊富な機能も評価しています。「たとえば Amazon S3 のログを見るときなど、Amazon Athena の使い勝手が非常に良いと感じています。また、ミドルウェアを適切なタイミングでバージョンアップして、常にセキュリティが担保された状態を維持していけるのも運用面で役立っています」と話しています。 

生活者と企業をスマートフォン上で簡単かつシームレスにつなぐ AIRPOST と EngagePlus のデジタルサービスによって、従来の紙の印刷物のコストが削減されると同時に、情報提供のリードタイムも郵送で対応する場合の 3～5 営業日から大幅に短縮されます。こうしたメリットから、すでに銀行や証券、保険会社、クレジット会社など多数の企業が AIRPOST への参加を表明しており、EngagePlus と合わせて利用企業は今後も拡大が予想されます。
「何よりも生活者の利便性向上という視点に立って、まだまだ需要の高い紙の印刷物とデジタルを融合したハイブリッド型ソリューションの価値をさらに追求していきたいと考えています。その上で AWS のクラウド基盤は不可欠であり、パートナーであるクラスメソッドには今後も高度な技術支援を期待しています」（後藤氏）

トッパンフォームズのデジタルハイブリッドな新たな事業領域において、多くの価値を提供する AWS は、今後も不可欠な事業基盤として同社の成長を支えていきます。

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