AWS 導入事例

株式会社テレビ東京

民放キー局で国内最大級、13PB のテレビ映像アーカイブを Amazon S3 / S3 Glacier へ移行
年間数千万円の直接費の削減と既存コンテンツのスピーディな活用を実現

2020

独自性の高いコンテンツで人気のテレビ東京では、IT を活用した「データ連携・活用」「新しい映像体験の創造」「業務効率化」を目指しています。開局以来半世紀以上にわたり、最も重要な映像コンテンツを物理メディアにアーカイブしてきましたが、運用の煩雑さとメディア調達のコストに悩まされていました。映像データのアーカイブ先を Amazon S3 / S3 Glacier へ移行し、コストの削減や運用の効率化を図るとともに、AI など先端技術を応用したデータ活用の促進も目指しています。

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大量かつ巨大な映像データを扱う放送局にとって、クラウドは非常に重要で注目すべき技術・サービスであり、‘映像こそクラウド’と言えます。放送業界を取り巻く環境が激変する中で、新しいビジネスを創出するパートナーとして、AWS には大いに期待しています

新実 傑 氏
株式会社テレビ東京ホールディングス
専務取締役 CIO 技術・報道・メディア戦略統括

ネットの隆盛と視聴の変化

IT を活用して新しい一歩を

テレビ東京ホールディングスの事業会社として地上波テレビジョン放送を担っているテレビ東京。大都市圏に放送エリアを持つ TXN ネットワークのキー局として、経済・アニメ・健全な情報バラエティを中心に特色あるコンテンツを提供しています。

「BS 放送事業を担う BS テレビ東京、デジタルコミュニケーション事業を担うテレビ東京コミュニケーションズとテレビ東京の 3 社を軸に、放送と通信の連携を深めてグループとして経営資源を活用し、メディアとしての責務を果たしながら、映像と放送を核としたデジタル時代にふさわしい先鋭的で総合力のあるメディアグループを目指しています」と、テレビ東京ホールディングス 専務取締役 CIO、技術・報道・メディア戦略統括の新実傑氏は語ります。

放送事業者にとって、映像の提供方法、視聴の手段が変化しつつあることは注視すべき現象です。インターネットを活用する OTT(Over The Top)事業者の台頭、国内放送局によるネット同時配信、5G サービスの本格化など、旧来の放送事業のポジションに大きな影響を与えることは想像に難くありません。

新実氏は、こうした状況への対応においてテクノロジー分野での変革を進めています。「社内データのオープン化」「新しい映像表現や視聴体験の創造」「社内業務の効率化」という 3 つの IT 戦略を掲げて、AI や RPA、VR/AR/MR といった先端技術も採り入れながら、多面的なビジネス展開・コンテンツの進化・業務効率化を図りたいとしています。特に、社内情報システムの構築に関しては、クラウド・バイ・デフォルト、パッケージ・ファーストの方針で進めるといいます。

「テレビ業界は大きな転換期にあり、既存の序列や常識を覆すチャンスでもあります。その意味で、アマゾン ウェブ サービス (AWS) のような先進的なクラウドサービスは非常に重要な要素として注目しています。3 つの IT 戦略を基に、新しい一歩を踏み出していきたいと考えています」(新実氏)

増え続ける映像コンテンツ

メディアの運用とコストの負荷肥大

テレビ局にとって映像コンテンツはビジネスの源泉となる重要なデータです。番組の制作で撮影された映像は、開局以来、放送外の素材もアーカイブとして保管しています。現在HDCAM/XDCAM テープで 22 万本程度のコンテンツが、アーカイブとして保管されている状況です。

アーカイブメディアは倉庫に保管され、番組制作の必要に応じて 1 日数便の定期便で取り寄せていました。ある程度のタグ付け(メタデータ管理) はしているものの、どのメディアにどんな素材が入っているか正確には把握できず、多めに取り寄せて一部しか使わないことや逆に何度も取り寄せなければならないケースもありました。

メディアのコストも大きな問題です。年 600TB ほど増える映像データの保管と、紛失・故障による買い換えを含めて、年間で 1 万本以上のメディアを購入しており、数千万円のコストが発生していました。

「データ密度の高い LTO(Linear Tape-Open)テープへの乗り換えも検討しましたが、物理メディア運用の課題そのものは解決できません。検討を続けているうちに、クラウドストレージの低価格化がどんどん進んでいったので、ここがコンテンツを物理メディアから解放させるよいタイミングだと考えました」と、テレビ東京 技術IT統括局専任局長 兼 日本経済新聞社イノベーションラボの石田淳人氏は振り返ります。

堅牢なクラウドストレージ Amazon S3 / S3 Glacier であれば確実に映像を保管

堅牢なクラウドストレージであれば、テープメディアのように貸し出し中に紛失されたり、テープが故障したりすることはありません。ネットワークを介して素材データを入手できる方法が確立すれば、空いたメディアは制作などに再利用することができます。また 1 日数回の定期便よりも、早く素材を入手できるようになります。アクセス制御をしっかり行えば、セキュリティの懸念もありません。

検討の結果、テレビ東京ではアーカイブデータを保管するクラウドサービスとして AWS を選びました。

「Amazon S3はリーズナブルなうえ、99.999999999% という高い耐久性で提供されています。AWS Direct Connect を利用すれば、安全かつ高速なネットワークを利用できます」と、IT推進局 アーカイブセンター 担当長の北村嘉邦氏は述べます。

同社は、AWS Direct Connect で 2 つの拠点(本社、アーカイブセンター)と AWS を接続し、拠点間接続を介した冗長化を図りました。コンテンツファイルは、Amazon EC2 上のプロキシサーバを経由して Amazon S3 へ保管後、AWS Lambda を利用して MXF ファイルだけタグ付けをし、そのタグ付けされた MXF ファイルはライフサイクルで Amazon S3 Glacier へアーカイブされます。

「AWS は、パートナーが多いというのも選定理由の 1 つです。私たちのニーズを満たすには、クラウドだけでなく映像にも強いベンダーが必要でした。AWS から優秀なパートナーを紹介され、テープからデータを取り出してクラウドへ転送する仕組みを構築できました」(北村氏)

AWS に映像データを集約

先端技術でデータ活用を促進

テレビ東京では、メディアに保管していたデータの Amazon S3 移行を進めています。従来の保管メディアをリユースできるようになったことで新規テープ購入費用を大幅に削減できるようになりました。テレビ東京では、クラウド上のデータのさらなる活用法を検討しています。

「AWS 上に映像データを集約することで、新しい取り組みができると考えています。素材の種類や出演者などを AI で解析すれば、制作担当者は素材を検索しやすくなりますし、従来人がやっていた作業よりも漏れやミスが少なくなります」と、IT推進局 システム部 兼 アーカイブセンター 松尾信秀氏は話します。

すでにテレビ東京では、AI を活用した映像解析の試験とアプリケーションの開発に着手しており、アーカイブデータのさらなる有効活用を推進しています。

IT推進局 アーカイブセンター アーカイブセンター長の岩田牧子氏は、「当社では番組情報サイトにも AWS を活用していますので、アーカイブデータとの連携という“社内データの共有”も考えられます。AI を活用して“コンテンツへ進化”させ、新しい価値を生み出すことも可能でしょう。アーカイブのクラウド化や映像解析により、業務効率化を推進し、私たちが雑務から解放され、コアビジネスであるコンテンツ制作・活用に集中できるようになると考えています」と語ります。

新実 傑 氏

北村 嘉邦 氏

石田 淳人 氏

松尾 信秀 氏

岩田 牧子 氏


カスタマープロフィール:株式会社テレビ東京

  • 開局: 1964 年 4 月 12 日
  • 資本金: 89 億 1,095 万 7,000 円
  • 従業員数: 787 名(2019 年 4 月 1 日現在)
  • 事業内容:テレビジョン放送

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • メディア調達コストを数千万円 / 年削減
  • Direct Connect で回線の安全性と冗長性を確保
  • AI 映像解析を検証、社内データ連携も検討

ご利用中の主なサービス

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

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Amazon S3 Glacier

Amazon S3 Glacier は、安全性と耐久性に優れ、きわめて低コストの Amazon S3 クラウドストレージクラスで、データのアーカイブや長期バックアップに使用できます。

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AWS Direct Connect

AWS Direct Connect はオンプレミスから AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにするクラウドサービスソリューションです。AWS Direct Connect を使用すると、AWS とデータセンター、オフィス、またはコロケーション環境との間にプライベート接続を確立することができます。

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AWS Lambda

AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。

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