より柔軟かつ俊敏な“流通の一気通貫”を目指し IT システムとデータ基盤を AWS へ展開
コストを削減しながらグループ内外の事業提携も強化し、40% のコスト削減を見込む

2022

東海地方を基盤として、スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンター、スポーツクラブなど複数の業態を展開するバローグループ。近年増加する M&A など経営環境の変化に対応するべく、グループで利用する IT システムの柔軟性と俊敏性を求め、AWS 環境に基幹システムを移行と、データ基盤を構築しました。従来比で 40% のコスト削減を見込むだけでなく、グループ内外での柔軟なデータ活用とともに、ビジネスの効率化やコストパフォーマンスの向上を実現しています。

AWS 導入事例  | 株式会社バローホールディングス
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AWS 活用や Amazon との連携は、小売業としての競合を懸念する以上に得られるメリットは大きいと判断しました。今後はデータ HUB を同業他社にも広めていきながら、ビジネスの成長を実現していきます

小池 孝幸 氏
株式会社バローホールディングス
取締役 流通技術本部長 兼 システム部長

事業戦略の多様化に向け柔軟性に優れたクラウドの活用へ

スーパーマーケットを中核に、ホームセンター、ドラッグストア、スポーツクラブなどを展開するバローグループ。小売業にとどまらず、農産物の生産、食品製造・加工、物流、資材調達、保守・メンテナンス、清掃などの多様な機能をグループ企業で補完する流通システムを構築しています。東海地方を中心に展開してきた同グループの事業は全国に広がり、2021 年 9 月現在で 1,243 店舗を経営するなど、成長を続けています。

グループを統括する株式会社バローホールディングス(以下、バロー HD)は、グループ子会社 55 社の事業活動を管理しています。グループの IT システムは、パートナーの協力を得ながら内製で構築してきましたが、近年 M&A が増加するなどのグループ拡大によってシステムの役割が大きく変わってきました。
「全体として成長を持続していくためには、システム環境の柔軟性が不可欠です。特に基幹システムについては、サブシステムとの連携や部分的使用のニーズが年々高まっており、接続を柔軟にするとともにマイクロサービス化ができる環境を整える必要がありました」と語るのは、バロー HD 取締役 流通技術本部長 兼 システム部長の小池孝幸氏です。

バローグループでは、2013 年に導入したスーパーマーケットの自動発注システムから AWS を活用してきました。当時は複数のクラウド事業者のサービスを併用していましたが、次第に AWS の利用を増やし、2019 年ごろには社内のシステムの 4 割を AWS で運用していました。「AWS は、ほかのクラウド事業者より技術の進化が非常に早く、セミナーなどで知識を得やすかったこともあり、導入が進みました」と、バロー HD 流通技術本部 システム部 次長 兼 中部薬品情報システム部長の近藤貴志氏は語ります。

IT システムの見直しに向け、事業会社に特化した戦略的なシステムと、グループ全体を管理する基幹システムに分け、それらを柔軟に連携する方針となりました。各業態のサブシステムをすでに AWS 上に展開していたこともあり、新しく作る基幹システムも AWS で構築することが決まりました。システム連携の中心的位置づけとなる基幹システムを AWS 環境に加えることで、システム全体の安定性と機動性がより発揮できると考えたからです。そして AWS 移行とともに、今回のシステム刷新の柱となったのがサプライチェーンの情報連携を担う『データ HUB』の構想です。
「システム間連携に集配信サーバと ETL ツールを利用してきましたが、数が増えて管理に限界を感じていました。新基幹システムの要件には、データ HUB として、複数のシステム間インターフェイスと対象となる共通データをクラウド上で一元的に管理する機能を盛り込みました」(近藤氏)

NEC のクラウドへの知見を活かしてスムーズな移行を実施

新しい基幹システムとデータ HUB 構築にあたり、パートナーに選定したのはバローグループと 19 年の付き合いのある日本電気(NEC)です。「従来の基幹システムやデータ HUB 構想など当社の考え方を熟知していた点に加え、AWS の認定資格取得者も多く、クラウド活用の豊富な実績を評価しました」(近藤氏)

こうして 2020 年 1 月から、低コストで長く使える拡張性・柔軟性を備えた基幹システムの構築、データHUB 導入によるシステム間連携強化、機能改善・運用体制の強化を行うプロジェクトを開始。挑戦的な取り組みであったため、NEC も流通業に詳しい担当者を充て、複数のアベイラビリティーゾーンに展開して可用性を高めるとともに、AWS のベストプラクティスを採用するべく「AWS Well-Architected Framework」や AWS のサポートなども活用しながら構築を進めていきました。
「NECの技術者と意見交換を行う中で、当社の状況を汲み取り、時には歯に衣着せぬ議論を重ねてくれたので、『これは良いものができる』と感じました」と、バロー HD 流通技術本部 システム部 インフラ保守課 課長の鈴木健生氏は振り返ります。

2020 年 5 月より新基幹システムとデータ HUB システムの開発が本格化。バローグループ 5 社(タイヨー、サンコー、中部薬品、ホームセンターバロー、スーパーマーケットバロー)それぞれに基幹システムを構築する計画で、その前に 2020 年 7 月に共通部分となる集配信システム、2020 年 9 月には物流システムの構築が完了。グループ 5 社の外部インターフェイスを共通化して、構築コスト削減・運用効率化・シナジー効果の創出を図りました。そして 2021 年 5 月から最もトランザクション量の少ないタイヨーのシステム切り替えを行い、そこで生じた課題をクリアしながら一社一社導入を進めていきました。あわせて NEC の運用保守体制も、従来の 8 時~20 時から、24 時間体制に強化されました。新基幹システムへの移行は、IT インフラコストの削減にもつながりました。バロー HD では、移行費用の償却後のコストを、従来と比較して 40% 削減できると見込んでいます。
「NEC は当社と付き合いが深いこともあり、非常にスムーズに移行を進められました。規模の小さな会社から切り替えていくというプロセスは、非常にうまく機能したと思います」と、バロー HD 流通技術本部 システム部 次長の小林正典氏は評価します。

サプライチェーンの連携を実現し「コネクトしていく会社」へ

また今回の移行後、IT インフラ環境の更新や運用に費やしていた人的リソースを戦略領域に向けることができるようになりました。リソースの状況もリアルタイムに把握できるようになっています。

さらに、ネットワークのハブとして採用した AWS Transit Gateway によって、複数の開発ベンダーの権限設定が容易になり、開発の俊敏性とガバナンスも強化されました。「パフォーマンスに問題がないか簡単に分かるので非常に助かっています。インフラ保守課のメンバーも、ROI を念頭に置いた攻めの業務遂行に向け意識が変わりました」(鈴木氏)

さらに、AWS からはコスト最適化の支援策 Cloud Financial Management の提案があり、導入から半年でさらに 4%、コストを削減。「利益が相反するような立場からこのような提案が出てくる AWS はとても信頼できます。クラウドの良さを広めたいという強い心意気を感じました」(小林氏)

バロー HD は、2019 年に株式会社アークス、株式会社リテールパートナーズとともに『新日本スーパーマーケット同盟』という戦略的な資本業務提携を実施。2022 年 3 月期からの 3 か年経営計画では『コネクト 2030~商品・顧客・社会を繋ぐ』を掲げ、社内外の連携を強化しています。
「今後もクラウドで柔軟にスケールしながら、データ HUB を同業他社にも広めて活用していきたいです。また、アマゾンジャパンとの提携によるネットスーパー事業なども進めており、さらなる成長を実現していきます」と小池氏が語るように、バローグループのビジネスはさらに多方面へと広がっていきます。

小池 孝幸 氏

近藤 貴志 氏 

小林 正典 氏

鈴木 健生 氏


カスタマープロフィール:株式会社バローホールディングス

  • 設立:1958 年 7 月
  • 従業員数:社員 8,661 名、パート等 19,655 名(2021 年 3 月 31 日現在)
  • 事業内容:チェーンストア事業およびそれに関連する事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • IT インフラコストの削減
  • リソースの可視化による ROI 改善
  • ガバナンス強化
  • 外部企業とのシステム連携

AWS プレミアコンサルティングパートナー

日本電気株式会社(NEC)

NEC は、AI や IoT などさまざまなテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションにより、安全・安心で効率・公平な都市実現を支える NEC Safer Cities と、人・モノ・プロセスをバリューチェーン全体で共有し新たな価値を生み出す NEC Value Chain Innovation の提供に取り組んでいる。プレミアコンサルティングパートナーに2017 年から認定されている実績、経験を活かし、お客様のデジタルトランスフォーメーションの実現をサポートしている。


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Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

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Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。

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Elastic Load Balancing は、アプリケーションへのトラフィックを複数のターゲット (Amazon EC2 インスタンス、コンテナ、IP アドレス、Lambda 関数など) に自動的に分散します。

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