すべての人の移動を楽しくスマートに
羽田空港で走る次世代のモビリティ

2020

すべての人の移動を楽しくスマートにする── WHILL は、さまざまな場所をシームレスにつないで快適に利用できるよう、デザインとテクノロジーを活用したパーソナルモビリティを開発しています。同技術・製品を活用した MaaS の提供も開始しており、自動走行・衝突回避機能を搭載したモビリティ「WHILL 自動運転システム」が羽田空港第 1 ターミナルに導入されました。IoT 基盤としてアマゾン ウェブ サービス (AWS) を採用し、効率のよいスピーディな開発と安定的な運用を実現しています。

AWS 導入事例  | WHILL(ウィル)株式会社
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私たちにとって AWS はあたりまえの存在です。IoT に必要なパーツがマネージドサービスとしてそろっているため、私たちは MaaS の開発と改善に全力を注ぐことができるのです

白井 一充 氏
WHILL 株式会社
システム開発本部
執行役員本部長

すべての人の移動を楽しく羽田空港での MaaS もスタート

WHILL は、従来の車椅子が持つ「心理的なバリア」と、悪路や段差といった「物理的なハードル」を払拭する、革新的な近距離用のモビリティとして誕生しました。今やファッションアイテムとしての地位をも確立しているメガネのように、デザインとテクノロジーですべての人のラストワンマイルを楽しくしたいと考えたのです。

2012 年に起業して苦労を重ねながら 2014 年、最初の「WHILL Model A」を世に送り出しました。デザイン性・新規性が高く評価されました。2017 年には軽量・普及価格帯の Model C を発売、日本国内だけではなく、世界 12 の国と地域で幅広く販売されています。

「当時、製品の完成だけで“すべての人の移動を楽しくスマートに”できるとは思っていませんでした。長距離の歩行が困難な人たちでも、自分らしくスマートに移動できるサービスがあり、空港や駅、観光地、病院やショッピングモールなどであたりまえに利用できる世界。WHILL をそうしたインフラとして走らせる MaaS を実現しようと考えたのです」と、システム開発本部 執行役員本部長の白井一充氏は述べています。

同社では、WHILL がこれまで培った技術をベースに、カメラや LiDAR などの各種センサー類を搭載した、自動走行・衝突回避機能を持つ「WHILL 自動運転システム」を開発しました。2019 年には米国・アラブ首長国連邦・カナダなど複数の空港で実証実験を繰り返し、ユーザービリティや精度、空港でのオペレーションとの親和性を向上させてきました。そして 2020 年 6 月、羽田空港第 1 ターミナルで WHILL 自動運転システムが導入されたのです。

ゲートエリア内に設置された WHILL Station で WHILL に乗り、簡単なデバイス操作で搭乗ゲートを指定すれば、自動運転で目的地まで乗ることができます。利用後は無人運転で WHILL Station に返却されるため、そのまま飛行機へ搭乗すればよいのです。

「2020 年の新型コロナウイルス感染症対策で、ソーシャルディスタンスを確保することが重視されています。従来の車椅子サポートサービスは、係員と利用者の距離が近いことが問題でした。WHILL 自動運転システムであれば、係員や介助者は一定の距離から見守るだけでよく、感染症拡大の防止にも役立ちます」(白井氏)

自動運転システムを支える AWS

WHILL 自動運転システムの運用基盤として、同社は「AWS IoT」をはじめとする AWS のマネージドサービスを活用しています。また、ユーザーが操作するスマートデバイスアプリとコミュニケーションできる空港スタッフ向けの Web システムも AWS 上で構築・提供しています。

システム開発部 ソフトウェアエンジニアの岸田宏治氏によれば、「もともと Model A/C の管理基盤として AWS を活用していた実績もさることながら、IoT 関連のサービスをいち早くローンチしていたこと、非常に多様な機能を実装していたことが採用の理由です。リアルタイム通信や外部連携、セキュリティ、可用性の確保など、IoT の運用に欠かせない機能があらかじめマネージドサービスとしてそろっているため、開発スピードを大幅に向上することができます」とのことです。また、創業当初からグローバルに製品・サービスを展開しようとする同社にとって、AWS のカバーエリアの広さも魅力の 1 つでした。

WHILL 自動運転システムの中核となっているのは、「AWS IoT Core」です。AWS とデバイスを簡単かつ安全につなぎ、得られたデータを AWS IoT Analytics や AWS IoT Events、AWS Elasticsearch などに受け渡します。IoT Analytics で生データの保存やパイプライン処理し、サービス状況の分析・可視化に活用しています。Elasticsearch はエンジニアがリアルタイムにデバイスの状況を解析するために用いています。

WHILL 自動運転システムを安定的に運転するための要は、IoT Events と言えるでしょう。周囲の状況や環境の変化によって、デバイスの状態は刻一刻と変化します。そうした状態変化を監視して、適切に運用する必要があります。

「IoT デバイスの状態変化を監視する仕組みが、マネージドサービスとして標準的に搭載されている点が重要です。私たちはそれらを利用するだけで、快適・安全な運行のためのデバイス処理に注力できるのです。IoT Core も非常に安定的ですし、WHILL が浸透して利用者数が増えても、柔軟にスケールしていくことができます」(岸田氏)

また岸田氏は、AWS のようなクラウドサービス全般について、「利用したぶんだけ支払えばよいため、WHILL 自動運転システムのような新しいサービスを開発するハードルを下げる効果を感じている」とも評価しています。

AWS IoT の発展で WHILL をさらなる未来へ

羽田空港での WHILL 自動運転システムの採用はまだ部分的なもので、2020 年以降、適用範囲の拡大も視野に入れています。世界の主要空港もいち早く商用化を果たしたWHILL に注目しており、ソーシャルディスタンスの必要性からも採用に前向きです。

また WHILL では、病院や美術館など他の施設でも普及を図り、MaaS をさらにブラッシュアップして本格的なサービスを世界中へ展開していきたいとしています。さらに将来には、WHILL 自動運転システムを活用した第三者による新しいサービスの登場にも期待しています。

「AWS のエンジニアは、私たちのリクエストへ真摯に回答してくれるだけでなく、積極的に構成や設定を提案してくれます。リアルタイムにコミュニケーションを取れる体制を整えており、気軽に相談できるのもたいへん助かります。IoT の領域ではすでにエコシステムが形成されており、有用なイベントやセミナー、オンライン情報などにも助けられています。IoT はまだ新しい分野ですから、AWS には、さらなるエコシステムの拡大やセミナーやイベントの開催など、今後も積極的に取り組んでほしいと考えています」(白井氏)

白井 一充 氏

岸田 宏治 氏


カスタマープロフィール:WHILL(ウィル)株式会社

  • 設立:2012 年 5 月
  • 従業員数:約 200 名(2020 年 8 月現在)
  • 事業内容:パーソナルモビリティ製品の開発・生産・販売・関連サービスの提供、パーソナルモビリティ製品を使用した移動サービス(MaaS)の提供

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • AWS IoT をベースに MaaS をスピーディに開発
  • 世界各地の空港で実証実験、羽田空港へ導入
  • 空港以外の施設にも MaaS を展開

ご利用中の主なサービス

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