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2021 ヤンマーエネルギーシステム株式会社

顧客価値向上とインサイドセールス強化に向け Amazon Connect による、夜間・休日対応のコンタクトセンターサービスを構築

概要

エネルギー関連システム事業を展開するヤンマーエネルギーシステム株式会社。同社内でデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も担っているカスタマーサポート部コンタクトセンターは、デジタル技術による課題の解決を推進する組織として、2021 年にデジタルデザイングループを設置。SCSK 株式会社を戦略パートナーに迎え、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のコンタクトセンターサービス Amazon Connect を活用した『夜間・休日電話代行サービス』の構築では、従来に比べて費用を 50% 以上削減しています。

A modern control room with multiple operators working at computer stations. Large display screens show maps and data charts, illustrating a high-tech environment for monitoring energy systems, as featured in the Yanmar Energy Systems AWS case study.

IT インフラの管理工数削減と顧客接点の強化に向け AWS を採用

ヤンマーグループのエネルギー事業は、1950 年代に始まりました。高度経済成長に伴うビルやダムなどの施設への電源装置の需要に応え、近年は省エネルギーや環境への配慮の高まりに対応。その中でヤンマーエネルギーシステムはガスヒートポンプ空調、コージェネレーションシステム、非常用発電機など、エネルギー関連事業を展開するヤンマーホールディングス傘下のグループ会社として 2003 年に設立された企業です。同社では、各種製品の開発・製造・販売だけでなく、導入先への搬入・据付の現場施工から遠隔監視システムを用いたメンテナンスに至るまで一気通貫で対応する体制を整えています。特に、社員に占める施工管理やカスタマーサポートの割合は 49% と、顧客との細かなコミュニケーションを大切に、現場第一の活動をしています。

「1980 年代から遠隔監視サービスを提供している当社は、データセンターにサーバーを構えて運営していましたが、今後のデータ活用を目指す上で、クラウド化が必要だと感じていました。そこで、ヤンマーグループで農業機械を見守る『SMART ASSIST』に活用していた AWS を当社でも採用することにしました」と語るのは、カスタマーサポート部 コンタクトセンター長の西川禎昭氏です。

こうして AWS を導入したのが 2018 年の 8 月。IT インフラを担当しているカスタマーサポート部 コンタクトセンター モニタリングシステムグループの青木大祐氏は「保守運用やリプレイスに多大な工数がかかっていたオンプレミス環境を AWS に入れ替えることで工数を削減できると思い、試験的に導入しました」と当時を振り返ります。

コンタクトセンターは遠隔監視をベースに展開していましたが、夜間・休日の 24 時間対応による顧客価値向上や、ヤンマーグループ全体でインサイドセールスを強化するため新たな設備を必要としていました。そこで注目したのが、Amazon Connect です。2020 年の夏にはコンタクトセンターに河井啓毅氏が加わり、青木氏とともに Amazon Connect を活用した『夜間・休日電話代行サービス』を開発し、運用を開始します。スモールスタートを目指した当初のシステムは、Amazon Connect で受けた電話を転送するシンプルなもので、録音装置に接続して録音する形でした。アナウンス音声は Amazon Polly によるテキスト読み上げ処理を使いましたが、抑揚の調整をしない機械的なものでした。最低限の要件は満たしていたものの、まだ改善の余地がある状況でした。

戦略パートナー SCSK との共創によりクラウド活用を促進

その後、カスタマーサポート部コンタクトセンターでは 2021 年 4 月に、デジタル技術の活用による事業課題の解決を推進する組織を目的に、河井氏を責任者とするデジタルデザイングループを設立。そこで最初に取り組んだのが、IT やクラウドの知見が豊富な戦略パートナーの選定です。河井氏は「コンタクトセンターという大きな顧客接点をデジタルによって変革するには、さまざまな課題があり、社内のメンバーだけでは難しいと考えていました。そこで、ヤンマーの IT インフラを支える SCSK に共創活動の提案をいただき、戦略パートナーとして迎えました」と述べます。

そこからデジタルデザイングループと SCSK は、クラウドを活用した遠隔監視システムのデータ分析基盤や問合せ工数削減を目的とした FAQ サイト、コロナ追跡システムを兼ねた在席確認システムなど、次々と課題解消を目指すプロジェクトを展開していきます。「SCSK と議論していくなかで、開発や研究が必要になったらその都度 Amazon EC2 でサーバーを立てたり、さまざまなサービスを使った試作をしたりしています」と青木氏が語るように、課題に対して最適な IT サービスの利用を検討・検証して実施していくサイクルができあがりました。

このような流れの中で、夜間・休日電話代行サービスにも改善が行われました。サーバーレスコンピューティングサービスの AWS Lambda によって営業時間を自動判定し、夜間・休日の受電を代行するオペレーターへ接続する処理や、通話記録をデータとしてクラウドストレージである Amazon S3 へ保存するという仕組みができ、Amazon Polly によるアナウンスも自然な音声への調整を実施。さらに、電話応答のオペレーターが新しいシステムに慣れた段階で、電話転送ではなくソフトフォン方式に移行し、リモート対応もできるようになっています。河井氏は「AWS や Amazon Connect に対する知見を持つ SCSK のサポートにより、より効率的なアクションを立てられるようになりました」と、共創の効果を語ります。

AWS の活用でコストと時間を削減。社内からも高評価を獲得

Amazon Connect による夜間・休日電話代行サービスの構築は、従来のハードウェアのアップデートや更新のコスト・手間を省きながら、インサイドセールスの強化につながりました。「初期費用なしで、通話時間に応じた課金体系で運用できる費用対効果は大きいです。ハードウェアを更新する場合と比較して 50% 以上のコスト削減になっていると思います。また、GUI 操作で内製できるのも構築スピードの面で役立っています」(河井氏)

今回の電話応対システムの開発は、顧客向けだけでなく、サービススタッフのエンゲージメント向上も狙った取り組みの一環として行われました。「教育や業務プロセスの見直しなど、ヤンマーグループ内でもコンタクトセンターの取り組みが注目されています。AWS を利用したシステムはその一部ですが、全体の取り組みとして社内で評価されています」(西川氏)

分析サービスなどを加え製品開発やアフターサービスへ活用

ヤンマーエネルギーシステムの夜間・休日電話代行サービスは、2021 年 10 月から全国展開されました。音声データを扱えるようになったことで、今後は Amazon Transcribe による音声のテキスト書き起こしや Amazon Comprehend を使った感情分析を行うことで、応対品質やセールスの効率化に活用していく計画もあります。

今後の展望について河井氏は「電話応対のメンバーから、文字に起こして記録されるのは助かるという声も聞きます。音声データを軸としてお客様へのサービスを向上していくうえで、そのための状況把握は必要ですので、各種 AWS に関連するサービスと連携したいです」と語ります。

青木氏は、SCSK との共創活動について「毎週勉強会に参加し、知識が身についたかどうかのテストも受けています。まだ使用した経験のない AWS サービスもいろいろと勉強していきたいです」と前向きに語っています。

西川氏は、共創活動によって身につけた技術を社内に共有していきたいとし、最後に次のようにコメントしました。「今後は定量的に AWS 側で分析していくことで、電話の応対だけでなく、顧客対応に新たな一手を打てると思います。さらに、次世代の製品開発やアフターサービスにも活用していければと考えています」
Yanmar company logo in red with stylized chevron design above the YANMAR name.
AWS のテクノロジーを活用したコンタクトセンターの設備強化と SCSK との共創活動は、ヤンマーグループ内でも注目を集めています。今後もこれらを活用して、顧客対応の新たな一手を打っていきたいと考えています

西川 禎昭 氏

ヤンマーエネルギーシステム株式会社 カスタマーサポート部 コンタクトセンター長

アーキテクチャ図

Architecture diagram showing an AWS Cloud-based contact center solution. It depicts customer interactions via phone with agents, who use Amazon Connect, AWS Lambda, Amazon S3, and CloudFront to manage call recordings, holiday calendars, control panels, and integrations with external systems such as Salesforce. Japanese labels and explanations highlight the flow and integration points.

ヤンマーエネルギーシステム株式会社

  • 設立:2003 年

  • 事業内容:空調システム、発電システム、ポンプ駆動システムなどの開発・製造・販売・メンテナンスなど

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 50% 以上の導入費用削減

  • コールセンターの在宅勤務への対応

  • コールセンター業務の最適化

  • 問い合わせ音声データ解析による業務改善

本事例のご担当者

西川 禎昭 氏

Portrait of a Yanmar executive wearing a suit, tie, and red lanyard, facing forward against a plain background.

河井 啓毅 氏

Portrait of a business professional in formal attire with a Yanmar-branded lanyard, suitable for use in business or corporate case study contexts.

青木 大祐 氏

Portrait of a Yanmar executive in a suit and tie against a neutral background.

SCSK 株式会社

AWS プレミアコンサルティングパートナー

東京リージョン開設と同時に AWS サービスの提供を開始して以降、システムインテグレーターならではの業界理解と AWS 上のアプリケーション構築ナレッジを強みに、多種多様なお客様の AWS 導入を手掛けるプレミアコンサルティングパートナー。AWS を活用し、徹底した自動化・標準化を進めることで短期構築、安定運用を実現する「S-Cred+(エスクレドプラス)プラットフォーム」で、お客様の DX 推進をサポートしている。

The logo image of SCSK, featuring the company name in bold blue letters on a transparent background.