2021 年 6 月のフルクラウド化を目指しオンプレミス環境の業務システムの約 4 割を AWS に移行
TCO を 30% 以上削減し、新たな IT 施策を実施できる環境を実現

2021

『暮らしを創る』を企業理念に、炊飯ジャーなどの調理家電や、ステンレスボトルなどのリビング用品、空気清浄機などの生活家電の製造・販売を手がける象印マホービン株式会社。2018 年より社内システムのクラウド化に舵を切り、2021 年 6 月のフルクラウド化を目指し 1 次基盤として約 4 割のオンプレミスシステムを AWS に移行。その結果、TCO を 30 %以上削減に成功。得られた予算で新たな IT 施策を進めています。インフラ調達のリードタイムも短くなり、業務部門のリクエストに応えて新たなサービスをクイックに立ち上げることが可能になりました。

AWS導入事例:象印マホービン株式会社
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6 ~ 7 年で試算した TCO で 3 分の 2 で維持ができており、かつ残りの予算で新たな IT 施策が実施できていることから、計画通りの効果が出ていると見ています

松浦 潤 氏
象印マホービン株式会社 経営企画部
システムグループ長

メニューの多様さと定期的な値下げを踏まえて AWS を採用

1918 年に大阪市西区で魔法瓶メーカーとして創業した象印マホービン。現在は大阪市北区に本社を置き、『日常生活発想』をスローガンに調理家電、リビング、生活家電の 3 つを柱に事業を展開しています。近年話題のプラスチックごみ問題に対しては、2006 年よりステンレスボトルを通してサステナブルな生活を呼びかける『マイボトルキャンペーン』を展開しています。

事業を支えるシステムは長年、自前で購入した物理サーバー上に仮想サーバーを構築したオンプレミス環境で運用してきました。しかし、全システムの約 4 割に相当する物理サーバーが一斉に保守期限を迎えることから、第 1 次基盤としてリプレースを検討。オンプレミスの継続とクラウドへの移行の 2 つを議論する中から、6 ~ 7 年先の長期的なコスト削減を見据えてクラウドを選択し、複数のサービスの中から AWS を採用しました。「コストを試算した結果、オンプレミスより安価で、品質や機能面でも遜色がなかったことからクラウド化を決断しました。AWS を選んだ理由は、次々と新サービスが提供されるメニューの多様さと、定期的な値下げで顧客に還元する姿勢です」と語るのは経営企画部 システムグループ長の松浦潤氏です。

同氏は前職でも AWS を利用していた経験があり、そのメリットを肌で感じていたこともポイントになりました。社内や経営層からは、システムをクラウド化することに対する不安の声はなく、スムーズに AWS への移行が決まったといいます。

「当社は新しいことへのチャレンジに関して積極的に支援、応援する社風があり、経営層も背中を押してくれました。AWS は知名度も高く、すでに金融機関などで採用されている実績があることから、セキュリティや機能面で不安が少ないことも安心感につながったと思います」(松浦氏)

システム単位でサーバーを立ち上げ段階的に移行

AWS への移行プロジェクトは 2018 年 1月にスタート。同年 11 月には 1 次基盤の移行を終えました。移行したシステムは、人事、会計、Active Directory などの業務系システムが中心です。移行とは別に、外部の委託会社の AWS 環境上で稼働していた社内ホームページや消耗品販売サイトも今回構築した AWS 環境に集約したほか、プロジェクト中に発生した象印製品の愛用者を対象とした『ZOJIRUSHI オーナーサービス』のサイトや、生産ラインの進捗管理システムなどの新規サービスも AWS 上に構築しました。

システムの移行は、大阪市に拠点を置く株式会社ターン・アンド・フロンティアの支援を受けながら作業を実施。AWS 環境の設計、構築、移行を担当した経営企画部 システムグループの杉森圭太氏は「AWS のメリットは、移行するシステム単位でインスタンスを設計・構築し、移行できることにあります。そのため、プロジェクト期間は全体で 11 ヶ月かかっているものの、アプリケーションベンダーとスケジュールを調整しながら、システム単位で段階的に移行しているので、作業日数自体はわずかで済みました」と話します。

安価に試せる AWS のメリットを活かし新たに 5 つのサービスをスタート

1 次基盤のクラウド環境は、Amazon EC2と Amazon RDS で構成し、データベースはアプリケーションに応じて Oracle と MySQL を利用しています。現在、Amazon EC2 上では約 50 のインスタンスがあり、移行から約 1 年が経った現在、安定稼働を続けています。

1 次基盤はオンプレミス環境全体の約 4 割を移行しました。「現在のところ、前年の 3 分の 2 のコストで維持ができており、かつ残りの予算で新たな IT 施策が実施できていることから、計画通りの効果が出ていると見ています」と松浦氏は語ります。
IT 部門にとっては、AWS によってコストがサーバーのリソース容量単位となり、環境を用意するまでのリードタイムがほとんどなくなったことから、新たなサービスに即座にチャレンジできるようになった効果は大きいといいます。

「サービスによっては数時間で新しいサーバーを立てて、数百円程度で試してみることができるので、アプリケーション開発側からの要求にも即座に応えて、本番と同じ環境で検証してもらうことができます。今回のプロジェクトでも、こうした特性を活かした結果、オーナーサービスサイトなど 5 つのサービスを新たにスタートさせることができました」(杉森氏)

IT 部門では現在も AWS から随時リリースされる新サービスの情報を積極的に収集し、実際の業務に使うことができないか、コストの軽減に貢献できないかなどの意識改革が進みました。

日々の運用面でもサーバーの台数やリソースを簡単かつ素早く変更できることや、サーバー構築時に見積もりや計画を立てる必要がないこと、アベイラビリティーゾーン(AZ)を使うことでコストをかけずに冗長構成が最適化できることなどにメリットを感じています。

AWS 環境の監視・運用は、ターン・アンド・フロンティアの運用サービス『cloud link』を利用し、24 時間 365 日のサーバー監視対応と AWS インフラに関する設定、バックアップ、請求代行を委託しています。松浦氏は「ターン・アンド・フロンティアは、私たちの話に親身になって耳を傾け、何がベストかを考えて最適な提案をしてくれました。日々の運用でも柔軟に対応する姿勢を感じています」と評価しています。

残りのオンプレミス環境を 2021 年に向けてすべて AWS に移行

1 次基盤の AWS 化を終えた同社は、追加で 2021 年 6 月に Oracle Exadata 上に稼働している同社の基幹システムを含むアプリケーションの AWS への移行を完了し、ほぼすべてのオンプレミス環境のクラウド化を完了させる予定です。

「2 次基盤は販売、受発注、出荷、WMS などの基幹系システムや、従業員が利用する情報系システムが中心です。1 次基盤以上に可用性が求められ、高性能のサーバーやデータベースを必要とするシステムも多いことから、慎重に検討していきます。とはいえ、今後もクラウドファーストの方針で AWS の利用を前提に考えていきます」(松浦氏)

AWS のサービスについては、多くの製品・サービスを理解・検証しながら今後の IT 施策にも活用していく考えです。杉森氏は「サーバーレスアーキテクチャの活用や Amazon AppStream を使ったアプリケーションのデスクトップ配信、コンタクトセンターの Amazon Connect と Amazon CloudWatch を使った AWS 環境の監視の自動化などを検討してみたいと思います」と展望を語ります。

松浦 潤 氏

杉森 圭太 氏


カスタマープロフィール:象印マホービン株式会社

  • 創業年月日:1918 年 5 月 10 日 
  • 設立年月日:1948 年 12 月 29 日
  • 資本金:40 億 2,295 万円
  • 従業員数(連結):1,357 名(2019 年 11 月 20 日現在)
  • 事業内容 :調理家電製品、生活家電製品、リビング製品などの製造・販売およびこれに附帯する事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • TCO を従来の約 3 分の 2 まで削減
  • 新たな IT 施策の実施が実現
  • リードタイムの短縮による新規システムの速やかな立ち上げ
  • サーバー台数やリソースを簡単かつ素早く変更が可能
  • コストをかけずに冗長構成を最適化
  • 2021 年までにすべてのオンプレミス環境のクラウド化を完了

APN アドバンスド コンサルティングパートナー

株式会社ターン・アンド・フロンティア

AWS 東京リージョン開設に先行して、2008 年から AWS の導入支援と運用サポートを開始。導入から運用支援までクラウド活用を包括的にサポートする cloud link を展開し、2014 年には関西に本社を置く企業としては初の APN アドバンスド コンサルティングパートナーに認定される。SIer からエンドユーザーまで関西を中心に全国で 400 社以上のサポート実績を有する APN パートナー。


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