AWS トレーニング活用事例 | オムロン ソフトウェア株式会社

AWS トレーニング活用事例 - 2020

グループのデジタル戦略実現に向けて AWS 人財を育成
半年間のトレーニングで 7 名が AWS 認定 5 冠を取得
自社勉強会を継続し AWS技術者 100 名体制へ

オムロングループの一員として駅務機器、金融決済、ヘルスケア、ファクトリーオートメーション関連のシステム開発を手がけるオムロン ソフトウェア株式会社。社会インフラ分野で“モノからコト”への動きが加速する中、クラウド人財の育成を決断し、2019 年度に AWS トレーニングを特別プログラムとして採用しました。今後クラウド技術をリードしていくコア人財 18 名が受講した結果、アソシエイトの資格を全員が取得。うち 7 名 はプロフェッショナルを含めた 5 冠を取得しました。2020 年度は AWS の有資格者 100 名に向けて認定資格者による自社勉強会を実施しています。
(AWS 5 冠:3 つのアソシエイト資格と 2 つのプロフェッショナル資格の全てを取得すること)

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トレーニングで獲得した知識をすぐに試せるように、事業部の壁を超えてクラウド案件に人財をアサインしています。
DX に資する IT サービスを事業の柱にしようとしている私たちにとって、それが成功への最短ルートだからです

今井 照泰 氏
オムロン ソフトウェア株式会社
代表取締役社長

「よりよい社会をつくる」ためにデジタルで社会課題を解決

オムロン ソフトウェア(以下、OSK)は、ファクトリーオートメーション(以下、FA)、ソーシャルソリューション、ヘルスケアの 3 つを注力ドメインとして事業を展開するオムロングループの中で、ソーシャルソリューションを担う事業会社の傘下で活動するソフトウェア会社です。オムロングループ内唯一のソフトウェア専門会社として、FA 制御機器に組み込むソフトウェア、自動改札機・券売機の駅務機器システムなど、社会課題を解決するソリューションを提供する役割を担っています。

オムロングループでは共通の価値観として「企業理念経営」を掲げており、創業者の立石一真氏が制定した社憲「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」を心の拠り所に、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」を社員共通の価値観として活動しています。現在は、長期ビジョン「VG2020」のもと、質量兼備の地球価値創造企業を目指しています。代表取締役社長の今井照泰氏は次のように語ります。

「社会課題をクラウド/ IoT/AI といった最先端のデジタル技術で解決し、世界中の人々が安心・安全・快適に生活できる豊かな社会に貢献することが私たちのミッションです」

社員が自らキャリアパスが描ける「スキルスタンダード」を制定

オムロングループは 2017 年度からの中期経営計画「VG2.0」で人財戦略を重要戦略として、“志を持って自律的に自己変革・自己成長に取り組める人財”の育成を重点テーマに定めています。

「目指すのは、自ら攻めの提案ができる人財です。デジタル化が進む現在はトータルソリューションが求められ、運用も含めたライフサイクル全般で提案ができる人財が求められています」(今井氏)

そのため OSK では独自の人財育成体系を構築し、キャリアとスキルをマトリックス化した「スキルスタンダード」を制定し、社員に公開しています。社員がキャリアパスを選びながら、自己のレベルを高めていけるものです。

「スキル体系は時代の変化に合わせて見直しをかけ、2019 年度からクラウド人財を新たに加えて体系的に育成する方針を打ち出しています」(今井氏)

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オムロン ソフトウェア株式会社
代表取締役社長
今井 照泰 氏

OSK の人財に対する基本的な考え方(クリックして拡大)

OSK のスキルスタンダード(クリックして拡大)

実践を通してスキルを習得するため、事業部を超えてクラウド案件にアサイン

スキルを高めるためのサポートは、独自の能力開発制度体系を用意し、職種別に必要な知識・スキルの習得が可能となっています。特に重視しているのが、実践を通して現場で使える技術を早期に身に付けさせることです。

「習得した知識をすぐに試せるように、事業部の壁を超えてクラウド案件にアサインしたり、新規の営業をかけたりしています。DX に資する IT サービスを事業の柱にしようとしている私たちにとって、これが成功への最短ルートだからです」(今井氏)
同社は今後もAWSトレーニングで獲得したクラウドスキルを組織全体に広めていく方針です。

「クラウド人財には企業理念経営を担う一員として、社会課題の解決を目指して欲しいと願っています。そのためにも AWS にはクラウド事業拡大と人財育成の双方での支援を期待しています」(今井氏)

AWS 有資格者を中心にクラウド案件を担当し

オムロングループのデジタル戦略を推進

OSK は 2019 年度上期に、18 名のメンバーを選抜し、半年間にわたる オンサイトでの集中AWS トレーニングを実施しました。2019 年下期は社内勉強会などで試験に向けた準備を実施。その結果、7 名が AWS 認定資格の 5 冠を取得し、うち数名はスペシャリティの(専門知識)認定資格も取得しました。

「2020 年度は、部門横断でCCoE(Cloud Center of Excellence:クラウド推進組織)を立ち上げます。2019 年度の選抜育成メンバーは様々なクラウド関連の案件で活躍しているほか、3 名が社内向けクラウド勉強会の講師となり、アソシエイト取得者 100 名達成に向けて後進の育成に当たっています。今後、CCoE は全社のクラウドスキルアップとナレッジ・ノウハウの蓄積を通してクラウド案件をリードし、グループのデジタル戦略に貢献していきます」(CCoE 原田真太郎氏)

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オムロン ソフトウェア株式会社
ISTソリューション事業部 プロセスエンジニアリング部
グループリーダ
原田 真太郎 氏


<座談会>

2019 年上期の AWS オンサイトトレーニングと、その後の取り組みについて、OSK の受講者 3 名が座談会で振り返ります。(司会:AWS シニアテクニカルトレーナー 鈴木 宏昌)

座談会参加者の自己紹介

鈴木:まず、みなさんの現在の業務をお聞かせください。
宮崎:健康ソリューション事業で、サーバーの運用保守を担当しています。入社 6 年目で、AWS を触り始めたのは 2017 年から。2019 年は 4 冠取得で終わってしまったので、2020 年は 5 冠達成を狙っています。
松尾:宮崎と同じ入社 6 年目で、健康ソリューション事業でサーバー側のAPI 開発などを担当しています。AWS との関わりは 2017 年頃からです。オンプレミスでインフラの構築経験があった自分にとって、AWS との出会いは衝撃的なものでした。
日下:FA ソリューション事業部で、FA 製品の開発を担当しています。装置メーカーからの中途入社で 3 年目。FA 業界でも IoT の文脈から AWS を用いた開発機会が増えていることを実感しています。

受講者の選抜方法

鈴木:トレーニングに参加するメンバーは、どのような経緯で決まったのでしょうか?
宮崎:私の場合は上長の「行きなさい」に対して「はい、行きます」でした(笑)。おそらく、実務で AWS の運用経験があったことが考慮されたのだと思います。
松尾:私は 2019 年 4 月に現部署に異動してきたその日に、上長から「翌日から研修に行ってきて欲しい」と言われました。アソシエイトの資格を持っていたので、その実績から推薦されたのかもしれません。
日下:私の場合は上長から「AWS トレーニングがある」と聞き、「受けてみたい」と立候補しました。FA 事業部の中でクラウド技術の必要性を感じていた中、チャンス到来という思いでした。
鈴木:AWS 側からは御社に対して、将来のエース候補をアサインして欲しいということと、さまざまな属性の人財を選定して欲しいということをお願いしました。その中で、各部門長の判断で声をかけたということですね。

AWSトレーニングの印象

鈴木:それではトレーニングを受けた時の印象はいかがでしたか?
日下:第一の感想は「楽しかった」ですね。学ぶたびに知識が増えていく手応えを感じました。
松尾:私も楽しかったです。1 つは実際に手を動かして楽しみながら知識を身に付けられるところ。もう 1 つは、現場で起こった面白いエピソードを交えて話してもらえるところです。AWSであればこうして解決できるといった説明もあり、具体的なイメージが浮かんできました。
宮崎:私が印象に残っているのは、講師の方の経験談です。AWS のサービスに対するこだわりが、ひしひしと伝わってきました。
鈴木:ありがとうございます。AWS のトレーナーは誰もが自分たちのサービスを愛してやまないところがあり、AWS を広めたくて仕方ない人をアサインしています。そこを評価していただけたのはうれしい限りです。
宮崎:反対に、厳しいところもあります。それはトレーニングのインプット量が他の研修と比べて半端なく多いことです。
鈴木:確かに私たちもそう思っています。しかし、最低限のカバレッジがないと、現場に出て困るところが出てしまいます。3 日間の中ではどうしても多くなってしまうのはご理解いただけると幸いです。

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座談会はオンラインで開催

ISTソリューション事業部
システムエンジニアリング部 松尾 雄二 氏(中央上)

ISTソリューション事業部
システムエンジニアリング部 宮崎 雅之 氏(右上)

FAソリューション事業部 第 1 開発部 日下 武紀 氏(右下)

原田 真太郎 氏(左下)

AWS シニアテクニカルトレーナー 鈴木 宏昌(左上)

集中 AWS トレーニングスケジュール(クリックして拡大)

資格取得に向けた勉強方法とは

鈴木:みなさんは認定 5 冠を取るまでに、どれくらい勉強しましたか?
日下:私は習ったことを忘れないうちに資格を取る作戦を取りました。試験日を予約しておき、トレーニングを受けたらその日のうちに復習し、週末に試験を受ける。結果的に勉強時間は大幅に短縮できました。
鈴木:スマートな方法ですね。松尾さんはいかがですか?
松尾:私は納得するまで勉強し、満点を取る勢いで試験を受けるスタイルでした。とにかく色々な参考書やWebサービスを活用し問題を繰り返し解いて慣れました。サービスを 1 つひとつ徹底的に調べ、問題集に出てきた内容はドキュメントを調べて理解する。結果として、満足のいく点数が取れました。
鈴木:身に付く勉強方法ですね。勉強時間はどのように確保しましたか?
松尾:業務終了後や土日を使って自宅で勉強しました。社内で自主勉強会もしていたので、手を動かしながらわからないことは調べたりしていました。
鈴木:素晴らしいですね。宮崎さんは?
宮崎:私はスローペースです。試験日を予約して期限を定め、目標に向けて準備をしました。毎日の通勤時間中に問題を解き、わからないところをつぶしていきました。見落としがちな細かい設定に関する問題も多いので、現場での運用にも役立っています。

受講後に感じた変化、成長

鈴木:トレーニング受講後、ご自身の中で変化はありましたか?
宮崎:お客様と自信を持って話すことができるようになりました。「宮崎が言っているのだから間違いないだろう」という目で見られるようになり、提案力にも強みが出ていると感じています。
鈴木:現場で使えないトレーニングでは意味がありませんからね。松尾さんはどうですか?
松尾:現場ではチームのメンバーからレビューの依頼や問い合わせを受ける頻度が増えています。私自身としてもお客様と相対した時に、相手が何を期待しているかが先読みできるようになり、1 回目の提案から質の高いアウトプットが出せるようになってきていると思います。
鈴木:どうしてお客様の要件を予測できるようになったと思いますか?
松尾:トレーニングの中でベストプラクティスを学んだことですね。そこでの体験が体に染み付いているので、どのような観点で考えればいいかがわかります。
鈴木:日下さんはいかがですか?
日下:FA 事業部の中で、クラウドで何かできないかといった話が出た時に、有識者の立場でコメントを求められる機会が増えました。以前はクラウドに取り組みたくても、外部から人を呼んで来たり、予算を確保したりしなければなりませんでしたが、内部で対応できるようになったことで積極的にクラウドを活用しようという雰囲気ができつつあります。
鈴木:いわゆる「内製化」ですね。内部だけで進められるのは強みになりますし、スピードも加速されます。

オンサイトトレーニングでの工夫

鈴木:今回私は OSK 様の専任トレーナーとしてアサインされました。それについて、みなさんから私に聞いてみたいことはありますか?
宮崎:素朴な疑問ですが、専任と通常のトレーナーの違いは何ですか? 今回、OSK のために特別な工夫をしたことはありますか?
鈴木:工夫の 1 つ目はわかりやすさを重視したことです。通常は 3 日かけるところを今回はカスタマイズして 4 日かけたりしました。「わかった気になる」ではなく、「わかって現場に持ち帰る」を意識して、ディスカッションやハンズオンにも比重を置いています。2 つ目は、楽しむための工夫です。みなさん自身に問題を作ってもらい、みんなで解くといったこともしてもらいました。3 つ目はトレーニングが終わった後の対応です。勉強が進まない、何がわからないかわからないといった方に対して、メールやチャットで「この本を読むと IT の基礎知識がわかる」「AWS のサービスを知りたいならこのドキュメントを読むといい」といったアドバイスをしました。御社の場合は開発メンバーが多く、ネットワークや物理インフラ構築の経験はそれほどない方がいらっしゃいます。そこ踏まえては手厚くフォローしたつもりです。
日下:個々のメンバーがどれくらい理解しているのかを、どのように把握されていたのですか?
鈴木:みなさんの表情や仕草を見ていました。人間は考えていることが顔や動作に出るので、トレーニング中に兆候を見つけたらできる限りフォローすることは心掛けました。あとはハンズオンや模擬試験の結果を見て、苦手分野や改善点を探し当てることもしました。
宮崎:私と日下は現在、社内勉強会で講師を担当しています。今のお話は参考になりますね。

トレーニング後の取り組み

鈴木:2019 年度の上期でトレーニングを終えた後、下期は御社独自でどのような取り組みをされましたか? 松尾さんは上期でも独自に勉強会をしていたそうですが、下期も継続したのでしょうか?
松尾:はい、講師をやりたい人をグループの中から募り、好きなテーマについて話す勉強会を開催しました。後半は他のメンバーにも横展開し、アソシエイト資格取得のための問題を解いて解説する機会も設けました。
鈴木:まさに社内伝道師ですね。日下さんと宮崎さんは業務として社内勉強会を実施したそうですが、具体的な頻度や人数、勉強の仕方を教えていただけますか?
宮崎:14 人のメンバーを各部門から集め、3 日間かけて集中的に座学とハンズオンを実施しました。結果、アソシエイトの資格は 14 名中 5 名が合格しました。2020 年度に入って残りのメンバーが受験しているので、全体の半分程度は合格しているのではと思います。
鈴木:これまでの取り組みを振り返り、どのような施策が効果的だったと思いますか?
宮崎:会社の支援としては、2 回まで受験料を負担していただけたのはありがたかったですね。気軽に受けてみようというアクションが起こせたのはよかったです。
鈴木:受験料の負担は大切ですね。大抵の会社は合格したら受験料を払うというものですが、心理的なプレッシャーがかかります。御社は早めに失敗して苦手なところをあぶりだしたうえでさらにもう 1 回トライができる。心理的なハードルはかなり下がりますね。

今後の目標とアドバイス

鈴木:最後に今後の目標と、これから試験を受験する人へのアドバイスをお願いします。
日下:個人の目標は横展開です。FA 事業部にはクラウドに明るい人が少ないので、少しでも知ってもらえるように広めていきたいです。FA 業界に関わるならクラウドサービスの読み替えも必要で、利活用の仕方が通常のアプリケーションとは変わってきます。コアになる人は、自分の事業背景を把握したうえで、学んでいく姿勢が大事になると思います。
宮崎:個人としては、クラウド運用のひな型を作り、運用力の強化につなげたいです。チームとしては、オムロングループが進める大規模システムや、さまざまな業界へのサービス展開に向けて、開発スピードと安全安心な運用の両立を目指していきます。事業会社でも目標を持って頑張ることで、5 冠の達成は夢ではないので、チームで頑張って会社の雰囲気も変えていけることを多くの方に知っていただけるとうれしいです。
松尾:会社のバックアップやフォローがあったからこそ安心して学ぶことができ、成果につなげることができたと思います。そういったバックアップがある受講者の方は会社の方針に応えるという点においても高い目標を持ち、前向きなマインドで臨んでいくことが大切だと思います。
鈴木:ありがとうございました。引き続き AWS をよろしくお願いします。

(敬称略)


カスタマープロフィール:オムロン ソフトウェア株式会社

  • 設立年月日: 1976 年 4 月 8 日
  • 資本金: 3 億6,000 万円
  • 売上高: 155.2 億円(2019 年度)
  • 従業員数: 436 名 (2020 年 4 月)
  • 事業内容: FA、モバイル、鉄道、EFTS(電子式資金移動)、データ、健康、金融にまつわる各種ソリューションの開発

受講した AWS トレーニング

  • AWS Technical Essentials 2
  • Architecting on AWS (+認定試験準備ワークショップ)
  • Developing on AWS (+認定試験準備ワークショップ)
  • Systems Operations on AWS (+認定試験準備ワークショップ)
  • Advanced Architecting on AWS (+認定試験準備ワークショップ)
  • DevOps Engineering on AWS (+認定試験準備ワークショップ)
  • Security Engineering on AWS

ビジネスの課題

  • オムロングループの進めるデジタル戦略への貢献
  • “モノからコト”への変化に対応する IT サポート力の獲得
  • オムロン ソフトウェアにおけるクラウドビジネスの拡大

AWS トレーニングを選択した理由

  • AWS トレーニングチームのタイムリーな提案
  • 専任トレーナーによる手厚いサポート
  • 多彩なカリキュラムと AWS 認定資格の取得に向けた学習支援

導入後の効果と今後の展開

  • アソシエイトの資格を 18 名(受講者全員)が合格
  • プロフェッショナルの資格を 9 名が合格
  • AWS 認定資格 5 冠を 7 名が取得
  • 受講者・認定資格合格者より 3 名を講師とし選任し、オリジナル研修を実施
  • 既存の AWS 環境の運用品質が向上
  • 個人のスキルから会社組織全体のスキルにすべく CCoE(Cloud Center of Excellence)を設立
  • AWS 案件に積極的に有資格者をアサインし、現場で使えるスキルの獲得へ


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