Amazon Web Services ブログ
AWS Managed Services(AMS)で AWS クラウドインフラのセキュリティを強化する
本記事は 2024 年 2 月 16 日に公開された”Enhance your AWS cloud infrastructure security with AWS Managed Services (AMS)“を翻訳したものです。
はじめに
セキュリティやデータ損失インシデントは、金銭的損失と社会的信用の失墜につながる可能性があります。セキュリティとコンプライアンスは、AWS とお客様の間における責任共有により維持されます。この責任共有では、AWS は「クラウドのセキュリティ」に責任を持ち、お客様は「クラウドにおけるセキュリティ」に責任を持ちます。しかし、クラウドにおけるセキュリティは、特にクラウドインフラおよびオペレーティングシステム(OS)レベルにおいて、より広い範囲に及びます。クラウドにおいて、セキュアでコンプライアンスに準拠した監視環境を大規模に構築するには、高度な自動化、人的リソース、およびスキルが必要です。
このブログでは、「クラウドにおけるセキュリティ」を向上させるために AWS サービスを組み合わせて活用する方法を紹介します。多くの組織にとって、スキル不足やビジネスにおける優先順位により、セキュリティのベストプラクティスを大規模に順守し、導入することは容易ではありません。AWS Managed Services (AMS)が大規模にお客様の AWS インフラのセキュリティおよびコンプライアンス体制を強化してきたベストプラクティスをご紹介します。AMS は、モニタリング、インシデント管理、セキュリティ、パッチ適用、バックアップ、コスト最適化にわたって AWS クラウドでの運用上の優秀性を達成するための能動的・予防的・検出的な機能を提供します。これにより、お客様はイノベーションに集中できます。
例えば、Coinhako が AMS を運用パートナーとして AWS に移行した際、CTO の Gerry Eng 氏は次のように述べています。「AMS に標準搭載されている数多くのセキュリティ機能は、我々が独自に適切に展開するには数ヶ月、場合によっては数年かかっていたでしょう。」詳細は ケーススタディをご覧ください。
AWS におけるクラウドセキュリティ管理
予防(Prevention)
「予防は治療に勝る」と言われています。セキュリティ体制を改善し、問題を予防するための領域には、アイデンティティとアクセス管理(IAM)、受信 (Ingress)と送信 (Egress)トラフィックの保護、バックアップおよび災害復旧、そして脆弱性への対処があります。
AWS は AWS IAM とサービスコントロールポリシー(SCPs)を組み合わせてクラウドリソースへのきめ細かいアクセス制御を提供しています。AWS は IAM サービスのセキュリティベストプラクティスを公開しています。しかし、お客様がその最適な利用状況を長期にわたって監視・統制することは容易ではなく、結果として不正なアクセスや不要なアクセスを招いてしまうことが少なくありません。AMS を活用することで、IAM の変更が AWS のベストプラクティスや AMS の技術基準に適合しているかを継続的に検証することが可能です。また、AMS はカスタム AWS Config ルールを使用して IAM のガバナンスコントロールのベストプラクティスを実装し、異常または逸脱を積極的に検出・修正します。
受信 (Ingress)と送信 (Egress)トラフィックの観点から、エッジネットワークで AWS WAF(Web アプリケーションファイアウォールサービス)を使用して、Web アプリケーションリソースへ届く HTTP/HTTPS リクエストを検査することができます。AWS WAF は Amazon CloudFront、Application Load Balancer(ALB)、Amazon API Gateway などほとんどの AWS 外部向けサービスとネイティブに統合されています。ネットワーク層では、AWS Network Firewall を使用してファイアウォールルールを定義し、すべての受信 (Ingress)と送信 (Egress)ネットワークトラフィックをきめ細かく制御できます。Network Firewall は AWS Firewall Manager と連携して、複数の VPC およびアカウントにわたってポリシーを一元的に適用します。AMS は AWS ベストプラクティスを使用して、これらのサービスを継続的にセットアップおよび運用するサポートを提供します。
さらに、定期的なパッチ適用は脆弱性に対する最も効果的な予防策の一つです。Ponemon Institute の調査によると、「侵害被害者の 60% は、パッチが未適用の既知の脆弱性を悪用されて侵害された」と述べています。OS レベルでは、最新の脆弱性から保護するための完全なパッチ管理のために AWS Systems Manager の Patch Manager サービスを活用できます。継続的な脆弱性管理には、Amazon Inspector サービスで、OS の脆弱性のスキャン・特定ができます。しかし、パッチスケジュールの設定、パッチコンプライアンスのレポート、および大規模なパッチ失敗への対応は、困難ではあるもののビジネス上の差別化に繋がらないタスクとみなされることがあります。AMS は自動化とベストプラクティスを駆使し、大規模環境においても、これら一連の作業をお客様に代わって実行します。AMS は Inspector またはお客様のツールによって報告された高リスクまたはゼロデイ脆弱性に対処するための臨時パッチ適用も実行できます。また、AMS を活用して Security Technical Implementation Guide (STIG)ベンチマークに準拠したセキュリティが強化された OS の Amazon Machine Images(AMI)を構築し、安全な EC2 インスタンスをデフォルトで保護することもできます。
最後に、インシデント時のデータ損失に対して、堅牢なバックアップおよび災害復旧戦略が不可欠です。AWS Backup と AWS Elastic Disaster Recovery を組み合わせて AWS クラウドのデータを保護できます。大規模な環境において、バックアップ計画の設定とバックアップコンプライアンスの継続的な監視は複雑になることがあります。AMS は継続的なバックアップの監視・管理を支援するだけでなく、ランサムウェア保護プランを含むデータ復旧のビジネスユースケースに対応した複数のバックアップ計画を提供します。定期的なバックアップのテスト・復元は、予期せぬ問題発生時のビジネスサービスのダウンタイムを最小化するための重要な実践です。AMS はインシデント時の平均復旧時間(MTTR)を短縮するためのサービス復旧に関する SLA を提供します。AMS はお客様のチームとともに、侵害インスタンスやランサムウェアイベントなどのシナリオをシミュレートするセキュリティおよび運用重視のゲームデー(模擬訓練)を実施します。
検出(Detection)
クラウド環境を継続的に監視して異常や潜在的な悪意ある活動を積極的に検出・封じ込め・修正することは非常に重要です。AWS は、ログやイベントの処理、およびモニタリングを通じて、監査、自動分析、アラーム通知を可能にするさまざまな検知統制を実装するためのサービスを提供しています。例えば、Amazon GuardDuty は機械学習(ML)ベースの脅威検出サービスで、アクセス関連アクティビティと不正な動作を継続的に監視して AWS アカウントのワークロードを保護します。GuardDuty は Amazon Macie と組み合わせることができます。Macie はデータセキュリティサービスで、ML とパターンマッチングを使用して AWS アカウント内の機密データの検出・保護を行います。
AWS Security Hub CSPM はクラウドセキュリティ体制管理(CSPM)サービスで、セキュリティのベストプラクティスチェックを実行し、AWS およびサードパーティサービスからのアラートを集約し、修復手順を提案します。しかし、多数の AWS アカウントにわたってこれらのアラートを処理し、修復を実施することは、運用上すぐに困難な状況になることがあります。
AMS は Amazon GuardDuty を活用して、お客様が契約しているすべての AWS アカウントの脅威を監視し、そこから生成されるすべてのアラートを 24 時間 365 日体制でレビューします。AMS は GuardDuty アラートを分析する自動化技術を駆使し、誤検知を減らして、初期トリアージ(優先度判定)を行い、インシデント通知の一環として実用的な対応策を提供します。重大な問題については、AMS は積極的にお客様と連携して共同セキュリティ調査を実施し、修復に必要な承認を取得します。AMS は Amazon Macie の検出結果を監視し、お客様に代わって必要な修復を実施することもできます。
モニタリングとインシデント対応(Monitoring and Incident Response)
Amazon CloudWatch はオブザーバビリティのための AWS ネイティブの基盤サービスで、インフラ、アプリケーション、およびエンドユーザーモニタリングにわたる機能を提供します。Systems Manager の OpsCenter により、オペレーションスタッフは CloudWatch や AWS Config などのサービスによって特定された運用上の問題を表示・調査・修復できます。Systems Manager の Incident Manager 機能は、自動化された対応計画を使用して重要なアプリケーション問題をより迅速に解決するのに役立ちます。OpsCenter と Incident Manager は、Atlassian Jira や ServiceNow などの ITSM およびチケットシステムと統合して、お好みのツールでインシデントの包括的なビューを提供します。Incident Manager は Amazon Q Developer in chat applications とも連携しており、Slack、Microsoft Teams のようなコラボレーションツールを使用して、インシデントの調査や修復対応を行うことができます。(※1)
AMS は、世界各地の複数のサイトに配置されたエンジニアによる 24 時間 365 日のセキュリティ監視とインシデント対応を通じて、クラウドでの運用上の優秀性の達成を支援します。アラートとイベントは AWS Config、Amazon GuardDuty、Amazon Macie、Amazon CloudWatch、AWS CloudTrail などのネイティブサービスから監視されます。セキュリティインシデント対応(SIR)については、AMS は事前定義された National Institute of Standards and Technology (NIST)準拠のランブック(対応手順書)に従い、セキュリティアラートに対して、特定・分析・封じ込め・根絶・復旧の対応を行います。AMS は Systems Manager の OpsCenter を使用してすべての運用項目をログに記録し、AWS サポートケースを通じて通知し、お客様のチームと連携して解決します。Security Incident and Event Management (SIEM)や Endpoint Detection and Response (EDR)などサードパーティまたは自社開発のセキュリティツールを使用している場合、AMS はそれらによって報告された OS および AWS インフラ関連の検出結果を修復する支援も行うことができます。また、AWS Service Management Connector を ServiceNow や Atlassian Jira などの ITSM ツールと統合して、AMS とのシームレスなインシデント・チケット対応を実現することもできます。(※2)
コンプライアンス(Compliance)
AWS の責任共有モデルの下、お客様はゲスト OS、アプリケーションソフトウェア、および AWS アカウント内の AWS サービスの設定と選択に関して、セキュリティとコンプライアンスの責任を負います。さらに、ビジネスニーズに応じて幅広いローカル・グローバルのコンプライアンスフレームワークに準拠する必要があり、それらのフレームワークを AWS セキュリティコントロールにマッピングすることは困難な場合があります。
AMS を使用することで、AWS における全体的なセキュリティ体制を強化するだけでなく、必要なコンプライアンスレベルへの到達を加速できます。まず、AMS というサービス自体が、HIPAA、SOC、ISO27001、FedRAMP、IRAP、NIST、PCI-DSS、GDPR など、多くのグローバルなコンプライアンスフレームワーク、規制、セキュリティ基準に適合し、準拠しています(詳細は AWS コンプライアンスセンターを参照)。そのため、AMS によって管理されるクラウド環境は、特定のコンプライアンス要件や規制要件が求められるアプリケーションをホストするのに適しています。
次に、AMS では利用開始初日から、AWS Config を活用することで、CIS、NIST、PCI、HIPAA という、極めて厳格かつ多岐にわたる 4 つのグローバル・セキュリティ・フレームワークに対するお客様のセキュリティ体制を完全に可視化できます。AMS は、厳選された AWS Config Rules をデプロイし、お客様のアカウント内のリソース状態を継続的に監視することで、これらのコンプライアンス基準やフレームワークの要件への準拠を維持します。これらのルールは、ビジネスのニーズに応じて、自動修復を行うか、インシデントやレポートとして通知を行うかのいずれかに設定することが可能です。例えば、AMS では、AMS アカウント内で AWS CloudTrail によるログ記録がデフォルトで有効化されており、これが必要なときにいつでも行えるレポート作成、アラート通知、および監査に利用されます。この設定だけでも、セキュリティ基準である NIST SP 800-53 の監査と責任(AU)コントロールファミリーにおける AU-06/07(a-c, 1-4) や、ISO 27001 のコントロール A.12.4.1-3 といった複数の管理策を満たす上で有効です。
さらに、AMS はコンプライアンス要件を強化するために、OS レベルと AWS アカウントレベルの両方において、中央集権型のログ記録および監査コントロールを実装しています。AWS アカウント内で行われたユーザーアクセスや変更に関する監査レポートは、Amazon Athena コンソール経由で、AMS が事前構築した厳選されたクエリを使用して簡単に抽出することができます。
レポートとガバナンス(Reporting & Governance)
AWS クラウド環境全体におけるセキュリティ体制や潜在的なリスクを測定・追跡するためには、強固なレポート機能とガバナンスの実践が不可欠です。Key-Value のペアを使ってメタデータを作成する AWS Resource Tagging は、監査、自動化、およびコスト配分を通じて、運用上の優秀性を達成するために極めて重要な役割を果たします。例えば、AWS のメタデータやタグの値は任意の AWS ストレージサービスにエクスポートすることができます。これにより、AWS Glue、Amazon Athena、Amazon Quick Sight といったサービスを活用して、パッチ適用状況やセキュリティコンプライアンスのカバー率に関するレポート、あるいはその他のダッシュボードを構築できます。
AMS は、OS のパッチ適用レベル、バックアップのカバー率、および高緊急度のインシデントに関するレポートを、毎週・毎月セルフサービスで提供します。また、お客様専任の AMS Cloud Service Delivery Manager(CSDM)と Cloud Architect(CA)が信頼できるアドバイザーとして、月次ビジネスレビューを主導します。このレビューでは、管理されているすべての AWS アカウントを横断した中央集中型の追加レポートが提供されます。月次ビジネスレビューには、AWS Well Architected Framework の各柱にわたる主要なクラウド運用リスクへの洞察と高緊急度のアラートに対処するための将来的な計画が含まれています。
AMS のタグまたはお客様独自のカスタムタグを強制適用するために、AMS 管理下にある AWS リソースでは、AMS が提供する Resource Tagger ツールを活用できます。監査やレポート作成に加えて、AMS 固有のタグを使用することで、アクセス制御、監視、パッチ適用、バックアップ、および自動修復にわたる自動化アクションが可能になります。この AMS Resource Tagger とお客様のカスタムタグを組み合わせることで、クラウドガバナンスのための強固なタグ付け戦略を構築できます。
セキュリティオンデマンド(Security On-Demand)
AMS は、Operations on Demand(OOD)サービスを通じて、必要なときに拡張セキュリティサポートを提供しています。AMS OOD を活用することで、AWS サービスに関する変更を行い、AWS クラウドにおけるセキュリティ体制をさらに向上させることができます。このサービスには、既知の、あるいは未対策のセキュリティ脅威から保護するためのセキュリティ関連サービスカタログが含まれており、AWS Network Firewall の運用や、サポート終了が迫っているレガシー OS のアップグレードなどに対応しています。
おわりに
本記事では、AWS クラウドにおけるセキュリティ体制を強化するために実装できる、予防・検出・対応の管理を含む、多くの不可欠なセキュリティベストプラクティスを検討しました。また、お客様の AWS クラウド環境を管理することで、求められる「クラウドにおけるセキュリティ」を実装する信頼できるパートナーとして、どのように AMS を活用できるかを説明しました。AMS は、AWS のベストプラクティスを用いた複数のガードレールの実装に加え、24 時間 365 日のセキュリティインシデント対応および復旧を行うことで、クラウドのセキュリティ体制を強化します。さらに、AMS は初日からお客様の AWS アカウントにログ記録、監査、監視に関する多くの必要なセキュリティ統制とベストプラクティスの導入を支援し、コンプライアンスへの取り組みを加速させます。
セキュリティ特有の機能にとどまらず、AMS はインフラや OS の能動的な監視、アラートの自動復旧、コスト最適化、そして継続的なガバナンスの組み合わせにより、大規模なお客様の AWS クラウド環境における運用上の優秀性の達成を支援します。詳細については、AWS Managed Services の製品ページをご覧ください。
※1 2025 年 11 月 7 日に AWS Systems Manager Incident Manager は新規のお客様への提供を終了しました。AWS は引き続き Incident Manager のセキュリティと可用性への投資を継続し、既存の Incident Manager のお客様は、すでに Incident Manager が有効化されているアカウントにおいて、これまで通りサービスを引き続きご利用いただけます。
※2 2026 年 3 月 31 日に AWS Service Management Connector は新規のお客様への提供を終了しました。既存のお客様は、2027 年 3 月 31 日までサービスを引き続きご利用いただけます。2027 年 3 月 31 日以降、AWS Service Management Connector の機能にアクセスすることはできなくなります。AWS パートナーソリューションへの移行、または直接的な SDK 統合の構築をお勧めいたします。
翻訳はシニアオペレーションズマネージャーの木村が担当しました。原文はこちらです。