導入事例 / メディア

2024

朝日放送グループホールディングス、AWS を活用し『バーチャル高校野球』で 1 日最大 156 球場での試合を大規模配信

3,434 試合

地方大会ライブ配信数(2023年)

156 球場

1 日最多配信球場数

50%

ライブ配信運用対応人数の削減率

ライブ配信数の増加に対するスケーラビリティの強化

配信チャンネルの冗長化による可用性の強化

概要

高校野球を動画やニュースで楽しめるサービスとして、朝日新聞社と朝日放送テレビが共同で運営する『バーチャル高校野球』。試合のライブ配信数を年々拡大していく中、スケーラブルな配信、撮影現場担当者のスキルに依存しない仕組みを目指して AWS Elemental MediaLive と AWS Elemental Link を採用。撮影現場の負荷を減らしながら配信数を拡大し、2023 年夏の地方大会でついに全試合(3,434 試合)のライブ配信を実現しました。

技術課題 | ライブ配信数の拡大に向けたスケーラブルな基盤の確立

高校野球の動画やニュースをいつでもどこでも楽しめるサービスとして 2015 年にスタートした『バーチャル高校野球』。阪神甲子園球場で開催される全国高校野球選手権大会と地方大会、秋の国体・明治神宮野球大会の試合を無料でライブ配信するほか、見逃し動画や企画動画などのオンデマンド配信、記事によるニュース配信、SNS による発信など、高校野球の魅力を多くのファンに届けています。

2015 年当初、ライブ配信数は全国大会 48 試合と地方大会の決勝 26 試合でした。そこから、朝日放送テレビの系列局や地元ケーブル局の協力のもと、地方大会のライブ配信数を拡大。2018 年は約 700 試合、2019 年は約 900 試合、2020 年は約 1,100 試合と増やし、コロナ禍への対応を加速するなか、2021年には前年比の倍以上にもなる約 2,500 試合、2022 年には約 3,200 試合と急増しました。

そこで課題になったのが、配信数の拡大に耐えうる基盤の構築です。「ライブで配信する試合数は地方大会が始まる直前に決まるため、柔軟なスケールアウトに対応できるよう、クラウドの活用を検討しました」と語るのは、朝日放送グループホールディングス DX・メディアデザイン局 R&D チームの村中貴彦氏です。

配信試合数が増えると、配信する球場数も増えます。1 日に配信する最多球場数は、2020 年の 45 球場から 2021 年は 100 球場と急増。全試合となると 150 球場以上になることが想定され、運用方法やトラブル対応も含めて検討する必要がありました。

「各球場に赴く配信スタッフは、配信や映像に詳しい人ばかりではなく、また近年は配信エンコーダも多様化して扱いが難しくなっています。そこで、配信トラブルを最小限に抑えて誰もが容易に配信できる仕組みの構築とともに、運用ステータスの共有と連絡体制の効率化を図ることにしました」(村中氏)

 

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「地方大会の全試合をライブ配信できることの意義は大きく、AWS を活用して『バーチャル高校野球』の価値を高めることができました」

髙木 衛 氏
朝日放送グループホールディングス株式会社
DX・メディアデザイン局
R&Dチーム 主任
(兼)マーケティング局 マーケティング戦略部

ソリューション | 現場担当者の配信スキルに依存しない仕組みを構築

2020 年 9 月頃より配信基盤のクラウド化の検討に着手し、AWS Elemental MediaLive を採用。2021 年 6 月から地方大会で本格運用を開始しました。

「『バーチャル高校野球』が始まった 2015 年当初から、エンコーディングデバイスとしてオンプレミスの AWS Elemental Live を利用してきたため、AWS Elemental MediaLive を採用するのは自然の流れでした。ただし、最初から全球場の配信をすべて切り替えるのではなく、2021 年はライブ配信を行う半数の球場からスタートしました」(村中氏)

導入当初は AWS Elemental MediaLive をシングルパイプラインで運用していたことから冗長性が十分でなく、試合中のトラブルで再起動が必要になった際には手作業での対応が必要で、ダウンタイムが発生する懸念がありました。そこで、安定性を担保するため 2023 年からは 2 つのパイプラインを使用したスタンダードチャンネルに切り替え、ワークロード内でトラブルが発生すると予備ストリームに自動的に切り替わる冗長構成としています。

多様化が進むエンコーダへの対応や現場担当者の配信スキルに依存しない仕組みには、ライブ動画ソースを AWS Elemental MediaLive に接続する専用デバイスとして AWS Elemental Link を導入し、2023 年の地方大会から利用を開始。これにより、球場のエンコーダを AWS Elemental MediaLive 側で設定/管理できるようになりました。ステータス確認も AWS コンソールや Amazon CloudWatch から行えるため、トラブル対応時の切り分けも簡単です。球場の担当者は映像信号の入力とインターネット回線への接続だけを行えばよく、作業負担が大きく軽減。配信エンコーダの設定や配信設備へのアップロードも配信設備側の担当者が行うため、エンコーダによるトラブルも低減しています。

「2023 年の地方大会では、約 30 球場で AWS Elemental Link を利用しましたがエンコーダトラブルはたった 1 件(約 3%)で、それ以外の球場で発生した 26 件(約 10%)と比べて大幅に抑えられました。2024 年以降も球場数を拡大し、運用負荷とトラブルを軽減しながら安定運用につなげていきます」(村中氏)

もう 1 つの取り組みが、ステータス情報管理システム(ACOMS)の構築です。2020 年まで、全国の球場担当者とのスケジュール調整や連絡はメールや電話で行い、Excel で情報を管理していました。しかし、配信数の拡大により人力での対応には限界が見えてきたため、各所との情報を共有するシステムを AWS を活用して構築しました。

「ACOMS によって現場担当者、配信管理者、監視/運用担当者が球場ごとのスケジュールやステータスを一元的に確認できるため、トラブル時の連絡もスムーズになりました。2020 年以降の 3 年間で配信試合数は約 3 倍に増えましたが、1 試合単位の運用対応人数は従来の 50% と半減しています。AWS を活用して短期間でシステムを構築し、オフシーズンはシステムを最小限に落とすことで費用を抑えられます」(村中氏)

アーキテクチャ

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導入効果 | 2023 年夏の地方大会で全試合の配信を実現

AWS Elemental MediaLive を導入した 2021 年夏の大会は、コロナ禍で無観客で行われる試合や入場制限があったこともあり、ライブ配信数は前年から 2 倍以上増えて約 2,500 試合となりました。翌 2022 年は約 3,200 試合、2023 年はついに全 49 の地方大会で 1 回戦から決勝までの全試合(3,434試合)を配信。1 日の最多配信球場数も 156 に達しましたが、管理者の負担を増やさず安定したライブ配信が実現しています。このインパクトについて、朝日放送グループホールディングス DX・メディアデザイン局 R&D チーム 主任の髙木衛氏は次のように語ります。

「朝日新聞社、朝日放送テレビ、朝日放送グループホールディングス、配信プラットフォーマーを含めたステークホルダーにとって、全試合をライブ配信できることの意義は大きく、『バーチャル高校野球』の価値を高めることができました。現地に足を運ぶことが難しい方々にも、地方大会の 1 回戦から見てもらえることに私自身、野球経験者として喜びを感じています」

AWS のサポートに対しては、アーキテクチャや冗長化対応の提案、さまざまな質問に対するクイックな回答などを評価。今後もライブ配信の可用性を高めるため、継続的な支援に期待を寄せています。

「ライブ配信が放送に近付きつつある今、わずかなトラブルも許されなくなりつつあります。数百台の AWS Elemental Link を並行運用しながら、さらなる運用負荷の軽減と配信品質の向上、アーキテクチャの改善や監視機能などのアップデートを続けていきます。AWS には引き続き、冗長化を高めるための提案や最新のメディアサービスの情報提供に期待しています」(髙木氏)

カスタマープロフィール:朝日放送グループホールディングス株式会社

1951 年、朝日放送株式会社として設立。2018 年、テレビ・ラジオの事業を朝日放送テレビと朝日放送ラジオに継承して持株会社へ移行。現在、放送・コンテンツ事業を核に、ライフスタイル事業を展開する。中期経営戦略「NEW HOPE」では、「放送のチカラの活用と、グループ連携の強化・深化」、「データ利活用体制の構築とデジタル技術の活用促進」などを重点目標としている。

髙木 衛 氏

村中 貴彦 氏

ご利用中の主なサービス

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