Amazon Connect を採用した次世代コンタクトセンターを構築
発信者番号選択やマルチコールの実装により架電数を 1.6 倍向上させ、数億円の投資効果を見込む
2021
移動体通信や固定通信サービスの ISP 事業および代理店販売を手がける株式会社オールコネクト。申し込み手続きなどに関する問い合わせ対応をおこなう約 1,200 席のコンタクトセンターにおいて、オンプレミス型 CTI の保守切れを機に Amazon Connect に移行しました。導入時は株式会社ウフルの支援を受けて、Salesforce との連携による発信者番号の選択機能や、架電を自動化するマルチコール機能などを実装。オペレーターのスキルに依存する業務がなくなり、架電数が従来比で 1.6 倍、有効通電率が 1.1 倍向上するとともに、数億円の投資効果を見込んでいます。
市場の動向に合わせて、当社のコンタクト本部の戦略も変化していくため、初期費用なしで導入できる Amazon Connect がマッチしていました。Amazon Connect CTI Adapter for Salesforce が公式で提供されていることが採用の決め手になりました
前田 知也 氏
株式会社オールコネクト
執行役員 情報システム本部 本部長
ビジネスの変化に対応するため CTI/PBX のクラウド化を決断
「社会をにぎやかに!」を理念に、通信インフラサービスを提供するオールコネクト。WiMAX や光回線などの通信サービスを自社ブランドとして販売する『オウンドサービス事業』と、通信事業者の販売代理店として Web 広告の展開やコンタクトセンター運営を代行する『ライフイノベーション事業』を軸にビジネスを展開しています。自社販売、代理店販売のいずれもお客様からの申し込みの確定、追加情報のヒアリング、申し込み内容の不備の解消などは、コンタクトセンターでオペレーターがお客様と電話で直接会話をしておこないます。自社販売では、購入後のカスタマーサポート、料金回収、解約などもコンタクトセンターで対応しています。
コンタクトセンターは、福井本社をはじめ東京、大阪、福岡など全国に設置し、約 1,200 席で運営。月間平均コール数は受電 30 万件、お客様への確認作業などの架電が 30 万件あります。「通信サービスの販売は専門知識が求められるため、商材ごとにオペレーターを割り当て、全国の拠点で対応しています。2019 年 10 月には在宅コールセンター部署を新設し、現在は約 20 名が在宅で対応しています」と語るのは情報システム本部 DX 推進部 部長の乙部美咲氏です。
従来のシステムはこれまで、国産の PBX とCTI をオンプレミス環境で運用してきました。しかし、導入から 10 年が経ち、保守期限切れを迎えることから、リプレースを検討しました。移行前の課題について執行役員 情報システム本部 本部長の前田知也氏は次のように語ります。
「1 つは増席や拠点追加に時間を要することです。既存 CTI ではネットワーク工事を含めて 2 ~ 3 か月は必要で、事業拡大の要求にタイムリーに応えることができませんでした。もう 1 つは業務の継続性の確保です。従来は音声系ネットワークが複雑に絡み合い、DC 拠点で障害が発生すると多くの拠点で機能停止に陥ってしまいます。そこで音声系をシンプルにして耐障害性を高める必要がありました」
初期投資不要の従量課金と Salesforce との連携機能を評価
同社は、クラウド型を中心に国内外 6 製品を比較した中から、Amazon Connect を採用しました。その理由は初期費用なしで使えるハードルの低さ、アップデートで新技術に対応できることなどにありました。
「コンタクト本部の戦略は市場の動向に合わせて変化していくため、数億円かかる製品より初期費用なしで導入できる Amazon Connect がマッチしていました。加えて、今後の Amazon Connect のアップデートも非常に期待できる点、別途進めていた CRM の刷新プロジェクトで Salesforce の採用を決めており、Amazon Connect と Salesforce の連携により実現できる機能が今後増えていくであろう点と、Amazon Connect CTI Adapter for Salesforce が公式で提供されている点から、Salesforce との親和性の高さが決め手になりました」(前田氏)
プロジェクトは、担当ベンダーに Salesforce パートナーでもあるウフルを採用して、スモールスタートを徹底しました。
「Amazon Connect を活用した 1,200 席の大規模事例は国内でほとんどありません。そこでまずは Salesforce 導入済み拠点の 4 席から進めました。ウフルにサポートしていただきながら、順次席数を増やしていきました。新型コロナウイルス対策で在宅コールセンター環境が必要になった際には、Amazon WorkSpaces を利用して 1 週間で構築することもできました」(乙部氏)
システム構築では同社独自の発信者番号の選択機能を、Salesforce との連携で実現しています。コンタクトセンターでは 1 人のオペレーターが複数の商材を扱うことがあります。お客様に連絡する際は、該当商材の電話番号から発信する必要があるため、発信者番号の選択機能は不可欠です。そこで Salesforce にマスター管理機能を追加して発信元の電話番号を管理し、Salesforce 側から Amazon Connect を動的に変更できるように工夫しました。
独自で実装したもう 1 つの機能が、Salesforce 上のリストから架電先を選択するだけで一斉発信できるマルチコールです。ウフルアカウントエグゼクティブの山田真也氏は「一斉発信の数を、Amazon Connect の発信許容数、API の実行回数制限、オペレーターの空き状況数などを考慮し、各所と調整しながら最大限のパフォーマンスが発揮できるように実装しました」と振り返ります。
導入初期から支援してきたウフルに対して前田氏は、次のように評価します。
「当社の企業文化、業務を深く知るところから取り組んでいただいて、直面している課題に即した提案をいただきました。開発時は忌憚のない意見を交わしながら、アジャイル的に進めました。担当したエンジニアの方も優秀で、スピーディーに技術課題を解決してくれました」(前田氏)
オートコールやマルチコールにより業務のオペレーター依存を解消
2020 年 12 月現在、ユーザーベースで約 49%、席数で約 600 席まで Amazon Connectに移行済みで、2021 年 3 月までに 100% の導入を目指しています。席追加や拠点追加も標準環境のコピーで可能になり、1 日で機材を用意して設定するだけで業務がスタートできます。
受・架電時間は直近で 1 か月あたり約 7,000 時間、マルチコール利用は 1 日約1,000 件です。管理部門では新たに実装したダッシュボードで、受架電数、応答率、平均処理時間などを可視化し、日々のデータを分析しながらオペレーションの改善に役立てています。
「マルチコールによってオペレーターのスキルに関係なく架電することが可能になり、架電数は従来の 1.6 倍、有効通電率は 1.1 倍に向上しました。全社導入した場合を想定すると、数億円の投資効果が得られる見込みです」(乙部氏)
次世代コンタクトセンターに向け自動応答や無人対応の導入へ
今後は Amazon Connect の横展開と並行しながら、既存機能の強化を進めていく考えです。その 1 つがチャットボットや Salesforce の情報連携を利用した自動応答や、電話・チャットによる有人・無人対応のシームレスな連携です。
「現在は音声合成での IVR を導入していますが、電話対応が不要というお客様もいらっしゃいます。そうした方に対しては、チャットボットが無人で対応したり、必要に応じて電話対応や有人チャットに切り替えたりすることで、お客様の望む方法で対応していきたいと思います」(乙部氏)
将来的には、お客様とのコミュニケーションを円滑化するための AI を活用したシナリオ分析や、機械学習を活用してお客様との通話内容から新たな示唆を得る Contact Lens for Amazon Connect の活用も検討中です。前田氏は「Amazon Connect をより効果的に活用するための新機能や、他のサービスとの連携に期待しています」と語ります。
前田 知也 氏
乙部 美咲 氏
カスタマープロフィール:株式会社オールコネクト
- 設立: 2005 年 4 月 21 日
- 資本金: 5 億 6,510 万円
- 連結売上高: 432 億円(2020 年 2 月期)
- 連結従業員数: 814 名(2020 年 5 月時点)
- 事業内容:各種スマートフォンを Web 販売に特化して提供する『スマホ EC 事業』、WiMAX や LTE などの移動体通信サービスや、光回線や光コラボレーションモデルなどの固定通信サービスを自社ブランドとして販売する『オウンドサービス事業』、通信インフラの代理店として集客から販売までをワンストップで提供する『ライフイノベーション事業』に 3 軸でビジネスを展開
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 架電数は 1.6 倍、有効通電率は 1.1 倍に向上
- オートコールとオペレーター依存の解消で数億円の投資効果を実現
- コンタクトセンターシステムの横展開の期間を従来の 2 ~ 3 か月から 1 日
に短縮 - チャットボットや Salesforce の情報連携を利用した自動応答を検討
AWS セレクトコンサルティングパートナー
株式会社ウフル
「テクノロジーと自由な発想で、持続可能な社会を創る」を理念として、企業や社会の DX とデータ活用を支援・推進している AWS セレクトコンサルティングパートナー。クラウドサービスの導入と運用をはじめ、コンサルティングやシステム開発等を自社製品とともに、エッジからクラウドまでワンストップで提供している。
ご利用中の主なサービス
Amazon Connect
Amazon Connect は使いやすいオムニチャネルのクラウドコンタクトセンターであり、企業が優れた顧客サービスを低コストで提供するのに役立ちます。
Amazon Kinesis Data Streams
Amazon Kinesis Data Streams (KDS) は、大規模にスケーラブルで持続的なリアルタイムのデータストリーミングサービスです。
AWS Lambda
AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。